<B/M>

2009・5・14

 「B/M」は、少年ガンガンで2009年3月号に掲載された作品で、ガンガンが盛んに掲載している読み切りのひとつにあたります。ここ最近数年のガンガンは、以前より読み切り作品をコンスタントに掲載するようになり、この号でも他に2本の読み切りが掲載されています。
 しかし、このマンガは、他の幾多の読み切りの中でも特に印象深いもので、多くの読者に強い衝撃を与えるに十分でした。このような作品がガンガンに掲載されるとは、以前では考えられなかったことです。

 事の発端は、この号のガンガンが発売される前年(2008年)の年末に、ある信頼できる情報筋から、わたしがこのマンガの掲載情報を入手したことから始まります。その方から聞いた情報によると、非常にエロい読み切りがガンガンの2月発売号に掲載されるらしく、しかもそのマンガは、「えっ、このマンガがガンガンに載るの?」というようなとんでもないマンガらしいのです。この情報はあまりにも強烈だったので、しばらくの間ずっと覚えていて、掲載される前号の予告ページを確認し、それらしい告知を見て確信しました。その告知の煽り文によると、「ガンガンに本格エロコメディ登場!!バレンタインはW(ダブル)ヒロインにノックアウト!!」となっていて、ふたりのヒロインがいろいろとエロいことをやる(ことになる)ようなマンガであることは間違いないと思われました。

 そして、掲載される3月号の発売を興味と不安を抱きつつ待ち、ついにその掲載号が発売されたのですが、実際にそのマンガを読んだところ、確かに事前の情報が間違っていなかったことを思い知らされました。そのマンガ「B/M」のエロ要素は、これまでのガンガンの掲載作品からは大きく飛び出たもので、ついにこのようなマンガがガンガンにまで掲載されてしまうのか・・・と感慨を抱かずにはいられませんでした。

 実は、このところのスクエニは、このような露骨に男性向けのエロ・萌えに満ちた作品が頻繁に掲載されるようになっているのです。青年誌のヤングガンガンでは当初から露骨にそのような作品が多いですし、新しく創刊されたガンガンONLINEにもそのような読み切りが相次いでいます。そして、スクエニ最大の名物企画となった「萌えアンソロジー」なる企画本では、全編がエロエロな掲載作品に満ちている状態です。このような状態が当たり前となった今、ついに中心雑誌のガンガンでも、このような作品を載せる運びとなったのでしょう。その点において、今のスクエニが目指すエロ重視の方針、その最先端を行く作品であると言えます。


・氷樹一世とはどんな作家か?
 さて、このマンガを描いたのは、氷樹一世という人であり、元々はスクエニで読み切りを掲載してデビューした作家です。しかし、最近では他社でいくつもの連載を手がけるようになり、そちらでの活躍の方が目立っています。過去にスクエニで3作ほど読み切りを掲載した頃は、まだ新人作家と言ってもよい存在でしたが、今ではもう新人とは言えないかもしれません。
 具体的には、2007年のドラゴンエイジでゲーム「アーマードコア」のコミカライズ作品を掲載し、その後2008年に同じくドラゴンエイジでアニメ作品「スレイヤーズREVOLUTION」のコミカライズ、その後2009年に今度はコミックアライブでライトノベル「えむえむっ!」のコミカライズを担当しています。原作付きのコミカライズばかりですが、それぞれの作品は中々の出来のようで、特に最新作の「えむえむっ!」のコミック版は、原作人気もあってかなりの売れ行きを達成しているようです。

 しかし、彼のスクエニでの掲載作品は、他社での華やかな連載作品とは異なり、これまではあまり成功してきませんでした。まず、最初に掲載されたデビュー作となる読み切りが、2005年のパワードで掲載された「機甲騎士団アーマードナイツ」なる作品で、ファンタジー系のバトルアクションのようなマンガでしたが、特筆すべき点は少なくさほど印象には残りませんでした。ただ、この当時から女性キャラのパンチラなどに妙なこだわりを見せ、「もしかしたらこの作家はエロい人なのではないか?」と直感したのですが、この予想は完全に当たることになります。
 さらに、今度はガンガンにおいて2005年に「CANNON BOY」、2007年に「Magnetico」という読み切りを掲載(後者は3回連続掲載で短期連載とも言える作品)。そのどちらもがサッカーマンガだったのですが、やはりこれもスポーツものとしてはありがちでかつ不自然な点も多く、決して面白いマンガとは言えませんでした。しかし、この時も後者の「Magnetico」において、ヒロインの露骨過ぎるパンチラが見られ、やはりエロの片鱗を感じるに十分でした。この当時、作者のサイトを確認したのですが、そちらでもすでにエロページで過激なハードエロイラストが見られ、やはりエロい人なのか・・・と思わずにはいられませんでした。

 そして、この最新読み切り「B/M」において、ついに作者がその本性をむき出しにしたようです。思い切って描いてと言われて本性のままにひたすらエロを描きまくったエロ全開の作品になっています。ここにきて、ついに本来の作者の作品が姿を現したと言えるでしょう。しかし、これでも最初にネーム切ったときエロすぎと注意されたので自重したらしく、最初は一体どんなネームを描いてきたのか驚き呆れます。


・ギアス設定の下に展開されるエロ全開のストーリー。
 さて、肝心の内容なのですが、これがもう凄まじいの一言に尽きます。ページすべてがエロシーンばかり、というほどではないのですが(このあたり自重しているのか)、ひとつひとつのエロシーンはこれまでのガンガンにないレベルの露骨で過激なものばかりで、これはさすがに・・・と思わざるを得ません。

 ストーリーとしては、なぜか全裸の神様に取り付かれた高校の男子生徒が、その神様の能力で言葉で相手を思うがままにする力を手に入れてしまい、しかしその力の発動がなぜかランダムで、主人公のふとした言葉をきっかけに女の子たちがエロエロな行為で迫ってくるという、なんというかエロのために考え出されたようなストーリーでした。

 冒頭、いきなり全裸で大股開きの女の子がキシキシいってる絵からスタートします。これからしてもうどうかと思ってしまうんですが、その後も過激で露骨なエロシーンが次々と登場します。
 主人公の幼馴染の女の子と、憧れの先輩と、ふたりのヒロインが登場するのですが、そのいずれもが、主人公の言葉の力によって突然エロエロな気分に陥り、スカートや上着をたくし上げて露出したり、主人公のあそこを舐め回そうとしたり、とそのような展開が続きます。しまいには、ふたりのヒロインのうち先輩の方が、実は素で淫乱だったことが発覚し、自分から服を脱いで主人公に迫ってくるというあまりにもありえない展開を迎えます。最後にはふたりまとめて言葉の力で欲情し、その時に主人公がずらしたスカートでふたりとも下半身全裸になるというクライマックスのエロシーンを迎え、そのままグダグダのラストを迎えます。

 これまでも、ここ最近(お家騒動後)のガンガンでは、ある程度男性・少年読者向けのお色気・サービスシーンのあるマンガは何度も見られましたが、ここまで露骨に「エロ」を追求したものはほとんどないでしょう。たとえば、同誌の「ながされて藍蘭島」でも、パンチラや半裸などのシーンはよく見られますが、いずれもソフトでライト感覚な描写が中心で、エロというよりも「エッチ」「お色気」という言葉の方がしっくりくるようなマンガでした。しかし、この「B/M」は違います。明らかに露骨にエロをひたすら追求したこのマンガは、今までのガンガンの同系のマンガと比べても、明らかに一線を画するものであることは間違いないでしょう。


・ネットでは大いに盛り上がってしまった。
 そして、このマンガは、案の定掲載直後からネットでも大いに盛り上がり、話題性の上ではこれ以上ない成果を上げてしまいました。
 これまでも、この手の「非成年誌での行き過ぎたエロマンガ」は、ネット上で話題になりまくる傾向にあり、スクエニ系でもあの「みかにハラスメント」(水兵きき)のコミックス発売時には空前の盛り上がりを示し、この手のマンガがネットで話題になる端緒を切り開いてしまったように思います。そして、この「B/M」もまったく同じような経過をたどり、しかも今回は雑誌での掲載直後から大いに盛り上がることになりました。「みかに〜」は、雑誌掲載時はパワードでの掲載で、あまり多くの人に知られていなかったのかほとんど話題にならなかったのですが、さすがに掲載誌がガンガンだとまったく反応が異なります。

 まず、大手のマンガサイト「大炎上」において、「少年ガンガンのエッチ規制枠を越えた読み切り「B/M」がスゴイ!」というタイトルで詳細な記事が書かれ、これを契機に一気にネットで話題が広がったようです。この記事を数々のブログやニュースサイトが取り上げ、実際にガンガンを読んで確認したブログも数多く見られ、一気に知名度が拡散してしまいました。つぶやきを気軽に登録するウェブサービス・Twitterでもこのマンガに関するやり取りが見られ、「そんなに気になるならガンガン買って『B/M』読めや」などという書き込みもありました。これは、このマンガが気になりつつも普段はガンガンを読んでいない男性ユーザーの大いなる葛藤が、あまりにも露骨に反映されていると言えるでしょう。

 そして、このようなネットの盛り上がりには、うちのサイトも少々貢献してしまったようです。雑誌掲載前に、ここの日記で「非常にエロい読み切りが載るらしい」という話題を振ってしまい、それがひょっとすると発売直後からの反応を早めてしまったのかもしれないのです。今思えば面白半分に軽すぎる行為をしたと思っています。

 しかし、このようなマンガが登場するたびに巻き起こるネットでの過剰な反応・大盛り上がりを見ると、ガンガンの編集部の方でも、このような「ネットでの話題作り」を狙ってこんなマンガを掲載している可能性があります。少なくとも、掲載する理由の一端にそのような思惑はあるのではないか。最近では、新創刊したウェブ雑誌・ガンガンONLINEでも、これまた露骨にエロや萌えを狙った読み切り作品が数多く見られるようになりましたし、それもこの方針のひとつなのではないでしょうか。


・The manga of the ero,by the ero,for the ero.
 以上のように、この「B/M」、これまでのガンガンの作品とは次元の異なるエロ全開志向の作品であり、これまでの同誌の読者に大きな衝撃を与えた読み切りだったことは間違いないでしょう。同じ少年誌でも「チャンピオンREDいちご」にでも掲載されるようなマンガであり、今すぐにでも作者がそちらの方に引き抜かれてもおかしくはない作品です(笑)。お家騒動以後のガンガンは、これまでも少年・男性向けの萌え系の作品をひとつの方針にしてきましたが、まさかここまで完全にエロのみを追求したマンガが載るようになるとは思いませんでした。これは、ガンガンのこれまでの歴史では、初期の少年マンガ時代に少年向けのサービスシーンとして一部に近い描写の作品もありましたが、最初からエロのみを目指してこの描写を達成したという点では、これが初めてかもしれません。

 しかし、ガンガンのみを見れば初めてでも、ここ最近のスクエニ全体の傾向を見れば、これも想定の範囲内の作品かもしれません。なにしろ、ここ最近のスクエニは、かつてよりもさらにエロ志向の作品を各所に載せるようになり、それが当たり前になりつつあるからです。かつて「みかにハラスメント」のコミックスが発売され、一部で爆発的に売れたのが2005年だったのですが、どうもあの頃からこの手のマンガを載せるのに抵抗がなくなったようで、むしろひとつのスクエニの方針となった感すらあります。
 2005年は、同時に青年誌のヤングガンガンが創刊された年ですが、この雑誌は初期の頃から男性向けのエロ路線の作品に事欠きませんでした。これは青年誌だからまだ良い方だとも言えますが、のちに2007年に今度は「萌えアンソロジー」なるタイトルで、男性向け・女性向けの萌えシチュエーションを集めたアンソロジー本を発行。このうち男性向けの方の内容が予想以上にエロエロで、まさかこのような本がスクエニから出るとは・・・と誰もが驚きました。そして、2008年に創刊されたウェブ雑誌「ガンガンONLINE」は、当初から萌え・エロ系のマンガをひとつの路線としているようで、そのような作品が数多く掲載され、中には露骨にエロ全開の読み切りまで見られるようになっています。そして、ついに中心雑誌のガンガンでもこのような読み切りが登場してしまった・・・。この「B/M」は、そんなスクエニの方針の最先端にある作品だと言えるのです。

 しかも、内容的にもこれまでの同系のマンガよりもさらに突き抜けており、ここまでエロのみを目的としたマンガを、エロい作者に描かせるようなマンガが、よりによってガンガンで読めるようになってしまったのです。まさに「エロい人の、エロい人による、エロい人のためのマンガ」であり、今のスクエニの露骨な方針をこれ以上ないほど体現しているのではないでしょうか。


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