<スクウェア・エニックスマンガ大賞考察(2)>

2007・2・5

<第6回エニックス21世紀マンガ大賞>(少年ガンガン1998年No.1発表)

大賞た・ま・ごしっちーしちだ(24)
入選未知とのグリーンコンタクトデイ!吉山一矢(25)
とってもHAPPY!えらむ(17)
竜信者北恒介(21)
佳作綺麗明智バタ子(23)
HARVEST RAIN中村真也(20)
それとなくONE STEP!三瓶友和(21)
愛NGは進行形かろやん(24)
その時彼女は女神の夢を見る谷本学(23)

 この回も、前回・前々回にまして低調です。ほとんど有望な新人が出ておりません。この低調だった第4回〜第6回の21世紀マンガ大賞は、ガンガン隔週刊行時代の後期に当たっており、この新人発掘の不調ぶりがのちの再月刊化に結びついているような気がしないでもありません。

 ただ、唯一、採り上げるべき受賞者としては、大賞のしっちーしちだがいます。受賞作の「た・ま・ご」はスケールの大きさを感じさせ、その後の飛躍を予感させるものでした。そして、この受賞から約一年後に、「風追い人」という大型連載をガンガンで始めるのですが、これも壮大なイメージの大作ではあるものの、それ以上にくせが強すぎて抵抗が強い作風で、ほとんどの読者に受け入れられませんでした。短期での打ち切りのような連載で終わり、その太く短い掲載ぶりが記憶に残っています。そして、それ以後は完全に消えてしまいました。

 彼以外でも、ほとんど見るべき受賞者がおりません。成果に乏しい時代だったと言えます。


<第7回エニックス21世紀マンガ大賞>(少年ガンガン1998年7月号発表)

準大賞水辺の物語MINAMO(27)
時計館の管理人真柴真(20)
入選学園忍法帖 JIRAIYA海藤ワタル(26)
魔法使い養成 M☆S学院南澤ミヅキ(19)
キミノチカラ七海慎吾(22)
佳作D・D・D酒乃渉(19)
Beauty and the Beast藤原みるく(14)
女っ子ちゃん東京ロビン(25)

 前回までの低調ぶりが一変、この回は素晴らしい成果を挙げています。この回の発表が行われた当時のガンガンは、隔週刊行から月刊に戻ったばかりの頃で、これ以後、特筆すべき新人読み切りが次々と登場する黄金時代へと突入します。同時に、連載作品のクオリティも最高の状態に達し、ガンガン自体も黄金時代となります。

水辺の物語  今回は、まずなんといっても、準大賞のMINAMO「水辺の物語」に尽きます。「初めてマンガを描いた」とは思えないほどの圧倒的な完成度を持ち合わせ、今でも屈指の読み切り作品として語り継がれています。これがあくまで準大賞で、大賞ではないというのが信じられません。受賞者のMINAMOさんは、約1年後のガンガンで、「コウノトリの仕事」というもうひとつの素晴らしい読み切りを残しますが、連載作家としてはあまり活躍の機会を与えられず、消えてしまったのはあまりにも惜しい結果だと言えます。
 一方で、もうひとりの大賞受賞者・真柴真も相当な実力派新人で、こちらの方はステンシル連載(のちにGファンタジーに移籍)の「夢喰見聞」が人気を得て、連載作家として定着します。

 入選作家でも見るべき作家は多い。まず、南澤ミヅキ「魔法使い養成 M☆S学院」は、のちに、「魔法使い養成専門マジックスター学院」とタイトルを一部変えただけで、ほぼそのままの形で連載を開始。これもGファンタジーでの人気作品となります。
 七海慎吾も成功した作家のひとりです。ステンシル連載(のちにガンガンWINGに移籍)した「KAMUI」で安定した実力を残します。
 佳作でも東京ロビンの名が挙がっています。ガンガンでのコラム系マンガ連載(「東京ロビンの見てるだけ」)で一世を風靡しました。同じく佳作受賞者の酒乃渉(さいのわたる)は、エニックスでのマンガではさほど成功しませんでしたが、のちにイラストレーターとして、電撃文庫等のライトノベルで活躍することになります。
 さらに、奨励賞においても、水谷悠珠・佐伯弥四郎といった受賞者が登場します。この新人たちは、のちにGファンタジーを中心に活躍し、お家騒動以後は一迅社に籍を移して現役で活動しています。

 以上のように、全体を通して優秀な新人が非常に多く登場し、活況を呈しています。特に、のちにGファンタジーやステンシルで成功する作家が多いのが特徴的です。

 そして、さらにもう一人、この受賞者の中に見逃せない存在があります。

 佳作受賞者の中に、藤原みるくという人がいます。この人は一体何者でしょうか?(笑)
 この人は、わずか14歳で入選という高い賞を受賞したあと、15歳で「Calling」という読み切りでデビュー。以後、ゲームアンソロジーで数点の読み切りを残した後、ガンガンWINGにおいて「わたしの狼さん。」という短編の連載を開始。しかし、当時のガンガンWINGがお家騒動で主要作家の大半が抜けたことを契機に、一気に雑誌の中心となる連載作家に昇格。以後、雑誌最大の人気連載のひとつとして、長期連載を続けています。しかし、この受賞作時代から、その独特のキャラクターやギャグのセンスは全く変わっておらず、すでにその作風は確立されていました。それにしても、なぜペンネームをみるくからここあに変えたのでしょうか?(笑)
 そして、この「14歳でマンガ賞受賞」「15歳で読み切りデビュー」というのは、あの茂夜夢未羅さん(笑)と全く同じです。当時、これほど早熟の作家がふたりもいたことは驚きです。


<第8回エニックス21世紀マンガ大賞>(少年ガンガン1999年1月号発表)

準大賞取り返し屋世存佐倉ケンイチ(21)
稀獣加藤克匡(30)
清村くんと杉小路くん土塚理弘(19)
入選オブリガード〜欠くべからざるもの〜ハルヤマカオル(?)
佳作鼓動森本テルミ(16)
CRUSH! BOOM! BANG!赤池真人(20)
Snap Dragon井上彩(17)
ビーストビートまじめたかこ(23)
聖騎士物語八荒酔人(?)
パノラマガーデン吉川博尉(24)

 今回も、前回ほどではないものの、かなりの有望な新人が登場しています。
 まず、最も成功したと言えるのが、準大賞の佐倉ケンイチでしょう。この方は、のちに集英社の雑誌(月刊ジャンプ)で活躍し、そこでの連載「ドラゴンドライブ」で一躍有名になります。しかし、彼が、実はエニックスからの新人であるということは、あまり知られてはいません。
 その一方で、エニックスで活躍する新人となると、同じ準大賞の土塚理弘がやはり大きい。受賞作の「清村くんと杉小路くん」は、受賞時から非常に面白いギャグマンガで、ほぼそのままの形で(タイトルは若干異なりますが)連載を開始。ガンガンを代表するギャグマンガとなり、その連載終了後も、土塚さんは雑誌で連載を続ける人気作家となります。
 もうひとりの準大賞受賞者・加藤克匡(かとうかつまさ)も、中々の実力を持つ新人で、若い新人が多いエニックスでは、例外的にかなり高い年齢で受賞しています。そのためか、当初からかなり渋い作風で、読み応えのある読み切りをいくつか残したのですが、残念ながら定着せずに消えてしまいました。

 佳作受賞の吉川博尉も、採り上げるべき作家に成長します。受賞作の「パノラマガーデン」を始め、中華風の世界観が魅力的な作品を多く残しています。現在はマッグガーデンに移籍して活動しているようです。


<第9回エニックス21世紀マンガ大賞>(少年ガンガン1999年7月号発表)

大賞STRAY DOG荒川弘(25)
入選ぼくらのポストマン神田晶(22)
徒爾少々山祇晶緋呂(17)
DIE手代木史織(20)
佳作チカラ西島純(18)
密林から愛をこめてカトアサ(?)
水音永尾一(17)
○邪師麗音風森敬士(29)

 この回は最高に素晴らしいです。これだけの成果を挙げた新人賞は、エニックスでは他に見当たりません。

 まず、なんといっても、荒川弘の存在が大きすぎます。この受賞作「STRAY DOG」が非常に素晴らしい完成度を持ち、当初から最有力の新人作家としてその名を知らしめることになります。そして、のちに「鋼の錬金術師」の連載を開始、エニックスでも最大の人気作家として大飛躍することは、もはや言うまでもありません。

 荒川弘だけでも十分な成果ですが、脇を固める入選作家も粒揃いです。
 まず、神田晶「ぼくらのポストマン」は、濃い絵柄のギャグで大爆笑を誘う、これまた素晴らしい受賞作でした。神田さんも、のちにガンガンの連載作家として定着します。
 そして、山祇晶緋呂(やまぎしあきひろ)「徒爾少々」も、作者の瑞々しい感性が全面に出た、新人らしい素晴らしい読み切りでした。しかし、荒川さんや神田さんとは対照的に、山祇さんは、この一作のみを残して消えてしまいます。これはあまりにも残念だったと言わざるを得ません。
 そしてもうひとり、手代木史織も、かなり本格的な受賞作を残します。その後も、Gファンタジーを中心に読み切りをいくつも残しますが、雑誌には定着できず、このまま消えてしまうのかと思いきや、なんと突如として、秋田書店(チャンピオン)の方で「聖闘士星矢」の新作連載を開始。まったく、世の中何が起こるか分かりません(笑)。

 そして、奨励賞でも、宇夢和実(のちの梅川和実)が「時間ですよ」という作品で受賞しています。知っての通り、この作家は、のちに新潮社の「コミックバンチ(現在は「REX」に移籍)」で、「がうがうわー太」の連載を開始、一躍人気作家となります。この作品、奇遇にも荒川弘の「STRAY DOG」と同じ号のガンガンで、しかも隣同士で掲載されていました。
 それ以外でも、のちにガンガンで「マジック・マスター」の作画を担当する阿白宗可や、ステンシルで「POCKET HEART」という良作短編を残す吉崎あまねの名前も挙がっています。

 以上のように、とにかく成功した受賞作家が多数見られ、荒川弘のような超大物作家まで登場しています。これほどの成果を挙げたマンガ賞は、エニックスではいまだに見ることができません。まさにガンガン誌上最高のマンガ賞だったと言えます。


<第1回新世紀マンガ大賞>(少年ガンガン2000年1月号発表)

大賞DOME CHILDREN山崎風愛(25)
入選赤眼童杉本貴宏(22)
書伝御伽草子山本クラフト(18)
BAD FARTHERカトアサ(20)
ベイビートロン金城マナブ(21)
マスタード永田恭子(20)
佳作ずっと…神谷隆光(21)
JUNK MAN菊池かおり(19)
オカマの関係渡瀬うに(21)
Choo Choo DAYSはすねのゆみ(19)
幻想夜話立川陽之介(21)
ふたつのねがい十日野鬼久(28)

 タイトルが一新され「新世紀マンガ大賞」となって第1回。この回から「審査員特別賞」「編集部推薦賞」という賞が併設されることになります(ここの表では省略しています)。通常の大賞や入選とは別枠で、審査員のマンガ家や各雑誌編集者が特別に賞を与えるという試みで、中々に面白いものがありました。

 さて、この回も大賞が素晴らしいですね。山崎風愛(やまざきふうあ)「DOME CHILDREN」は、核戦争後の未来に生きる子供たちの姿を描いた素晴らしい読み切りで、ほぼそのままの形で連載化されます。そして、連載作品の方も実に高い評価を獲得します。ただ、その後の山崎さんは、連載を持つことが出来ず、消えてしまったのはあまりにも惜しいと言わざるを得ません。ほとんど前回の荒川弘クラスの実力派作家だというのに、なぜこうも消えてしまうのでしょうか。

 しかし、大賞受賞者が素晴らしかった一方で、それ以外の受賞者からは、これといった作家が現れませんでした。入選受賞者の山本クラフトやカトアサは、当時はかなり面白い読み切りを残したと思うのですが、その後はふるわず、ほどなく消えてしまいました。それと、佳作受賞の立川陽之介「幻想夜話」が、個人的にかなり印象に残っているのですが、この作者も、ゲームアンソロジーの執筆と1回ほどの読み切りを残しただけで、ほどなく消えてしまいます。
 奨励賞では、袴田めらの名前が挙がっています。エニックスでは何度か読み切りを残すものの定着はしませんでしたが、のちに芳文社のきらら系4コマで人気を得ることになります。


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