<黄金ぱるふぇ>

2007・11・17

 「黄金ぱるふぇ」は、ガンガンWINGで2006年5月号に掲載された読み切りで、同誌が「1年間連続新連載」を行っていた最中に掲載されました。当時は、もちろん新連載も多かったのですが、同時に読み切り作品も毎号数多く載るようになり、この2006年5月号でも、これを合わせて4つの読み切りが掲載されています。作者は、新人の高崎ゆうきで、これが商業誌初掲載作品にあたります。

 内容的には、いかにもWING的なゆるゆるな萌えマンガで、しかもやや少女マンガ的な作風を感じます。「少女マンガ的な萌えマンガ」でしょうか(WINGでは割と定番です)。新人の第一作ということで、すごく完成度が高いマンガではないと思いますが、それでもドタバタコメディとして中々面白く、マンガとして筋の良さを感じました。絵柄はややくせの強いところもあるのですが(後述)、総じてかわいらしく描けており、その点でも好印象でした。最近のガンガンWINGの新人読み切りよりも面白かったと思います。
 個人的にもかなり好感を持った読み切りで、これならば再度の読み切り掲載、その後の連載獲得までありうるのかなと思って待っていたのですが、結局今までWINGに再登場することはなく、しかも、作者はのちに他出版社で連載を始めてしまったため、今後の登場はやや厳しいかもしれません。

 この当時の読み切りは、この作品以外にも比較的良く出来たものが多く、これと同時掲載された読み切りでも、はましんや月ノ輪航介の作品はかなり面白く、前後の刊まで当たってみれば、鳴見なるやあらきかなお、蜷川ヤエ子、桃山ひなせなどの作家も見られます。この作家たちの中には、連載デビューできた作家も幾人かいますが、出来ればこの高崎ゆうきさんも連載デビューさせるまでもっていってほしかったところです。「1年間連続新連載」の成果が芳しくなかっただけに、余計にそう思われます。


・絵のかわいさ、画面の構成は十分合格。
 とりあえず、WINGの掲載作品として、かわいい絵、それも安定した絵を描けたことは最大の魅力であったと言えます。どうもこのところ、WINGの読み切りでも、絵的な安定感がいまいちな作品が多くなってきたように思え、少々残念なのですが、この作品レベルなら十分に合格でした。

 若干ながら絵にくせがあり、少々人物の造形に特徴があるのですが(顔が縦に長い)、しかし、それでもそれなりにバランスが取れた描き方になっており、かつ小さい女の子(幼女)が非常にかわいいのがポイントでした。作者の後の連載作品と比べてもすでに見劣りせず、むしろどういうわけか、こちらの方がバランスが取れていたような気がします。後の作品では、なぜかさらにくせが強くなってしまったような気がするので、純粋にこちらのデビュー作の方が(若干ながら)印象は良いように思えます。

 そして、やたらキャラクターたちの登場が多く、画面隅々まで賑やかにキャラクターが描かれている印象があります。そして、そんなキャラクターがくるくると動き回り、絵的なかわいさを増しています。また、キャラクターだけでなく、背景や効果も含めたマンガ全体の絵も良好で、画面全体の構成がしっかりしており、全体的に賑やかでポップな絵柄を確立していました。絵そのもののレベルはさほどでもなく、若干見づらさを感じるところもあったのですが、それでも全体を通しての雰囲気は決して悪くなく、新人のデビュー作としてはかなりいい印象を与えてくれました。いかにもWING的な萌え絵ではあるのですが、絵の明るさ、ポップさでは他の同系連載作品と比べても見劣りしませんでした。これで連載してくれればなあと思っていたんですが・・・。


・賑やかなドタバタラブコメ。
 そして、内容的にも、ドタバタの賑やかなラブコメ話が面白く、さほど深い内容のある話でもないものの、明るく楽しく読めるマンガとしては十分でした。最後にちょっとしんみりした展開が入るのも、お約束ながら悪くない。

 肝心のストーリーですが、「黄金律」なる完璧な美しさを持つとされる主人公の高校生・冬野ユキの下に、「黄金律保存委員会」なる組織からメイという少女(幼女)がやってきて、黄金律を守るためにボディーガードをするというようなお話です。ちなみに、タイトルの「ぱるふぇ」は、スイーツのパルフェではなく、フランス語の元の意味である「完全、完璧」(parfait)の意味で使われているのではないかと思われます(作中にケーキも出てくるので、パルフェの意味とひっかけているのかもしれませんが・・・)。
 メイは、見るからに小さな子供で、ボディーガードというほどの能力もなく、ユキを助けようと色々とチャレンジしますが、ことごとく失敗に終わります。しかし、それにこりずにくるくると動きつつ奮闘するさまは、実に微笑ましい。子供そのもののかわいらしい言葉使いも萌えまくりです。最後にかぼちゃぱんつで一緒に寝ようとする姿もなんとも言えません(笑)。そして、ユキもメイのそんな姿に影響を受け、少しずつ雰囲気がやわらかくなっていきます。

 しかし、翌日には、あまりの失敗続きに業を煮やした本部から、別の保安官がやってきて、メイの解雇を告げてしまいます。メイはショックのあまり家出してしまいますが、追ってきたユキに励まされて立ち直ります。失敗続きで損なわれたと思っていたユキの黄金律も、メイにいい感化を受けて逆に輝きを増し、最後はちょっといい話で終わっています。すごく深い話でもないものの、読後感は中々のものがありました。


・WINGときらら系には何か関係でもあるのか。
 このように、新人のデビュー作としてはかなり好印象のマンガで、いかにもWINGらしいかわいらしい絵柄、くるくるとよく動くコメディの楽しさ、幼女の萌えレベルの高さなど、随所に見るべきところのあった作品だと思いました。これならば、もう一度読み切りとして次回作もあるだろうし、いずれ連載まで行ってもよい作家だとも思っていたのですが、意外にもその後再び登場することはなく、WING、及びスクエニの雑誌からは完全に消えてしまいました。

 しかも、2007年に入って、どういうわけか今度は芳文社のきらら系雑誌(フォワード)で連載を始めてしまい、完全にそちらの方に活躍の場を移してしまった感があります。これは、かつて好印象だった新人作家が連載を得られて嬉しかった反面、最初に読み切りを載せたWINGの方で連載が出来なかったことに、一抹の寂しさも残りました。

 それにしても、この高崎さんもそうなのですが、この当時から、どうもWINGときらら系雑誌の間で、一方の作家が他方で読み切りや連載を手がけるといった例が目立つようになりました。一体、両者の間に何か関係でもあるのでしょうか。しかも最近では、ガンガンの4コマ企画「特上!GGグランプリ」でも、きらら系作家の招聘が非常に目立ちます。以下に、これまでに見られたケースを示します。

 最初のうちは、単なる偶然が重なっただけかとも考えていたのですが、こうも長期に渡って5度も6度も同じようなことが続くと、さすがに何か関係があるのではないかと疑わずにはおられません。普通、異なる出版社にまたがって作品を掲載する作家は、思った以上に少数です。それが、ここまで同一の出版社間で作家の相互掲載が続くとなると、「実は編集部同士で交流でもあるのではないか」と本気で考えられます。特に、WINGときらら系雑誌は、ゆるい雰囲気の萌え作品という点において、掲載作品のカラーにもかなり近いものがあるように感じられます。つまり、雑誌同士の親和性が非常に高く、そのままふとしたきっかけから交流に及んでもおかしくはありません。


・WINGで連載デビューしてほしかった惜しい逸材。
 しかし、そのような交流(?)が見られるのは良いことなのかもしれませんが、この高崎ゆうきさんについては、是非ともWINGで連載デビューさせてほしかったところです。前述のように、同時期の読み切り作家の中には、後に連載を持つことの出来た作家を何人か見ることができますし、その中に高崎さんを入れても良かったのではないでしょうか。それが、たった一回の読み切り掲載のみで終わってしまい、以後音沙汰がなくなってしまったのは、ひどく意外で残念なことのように思いました。

 しかも、今のきららフォワードでの連載作品が、ひどくオタク的で変態的な作品となっており(笑)、まあこれはこれで面白いからいいのですが、少々人を選ぶ作品になっているように感じるのに対し、こちらのWINGの読み切りはまだそれほどでもなく、そのまま行けば、このWINGの方向性に合った素直な連載が期待できたように思えるのです。もちろん、この高崎さんのマンガの最大の魅力が、幼女の萌えレベルの高さであることは否定しませんが、WINGならばそこまでエロネタが前面に出た作品にはならなかったのではないでしょうか。少なくとも、イケメンエロオタ青年がエロゲーショップの地下から元兵器の裸マントニーソックスの幼女を拾ってセクハラエロ行為全開、というようなマンガにはならなかったはずなのです(笑)。これは、この「黄金ぱるふぇ」が、読者の間でもかなりの好印象を残したことからも、容易に推測できます。

 そして、当時のWINGの「1年間連続新連載」がさほどいい成果を残すことができず、今のWINGがかなり落ち込んでいることを考えても、この高崎さんを逃したことが大きく悔やまれます。読み切りから連載デビューできた作家も何人かいるのですが、その一方で、この高崎さんに代表されるように、いい読み切りを残しつつもその後に繋がらなかった作家も、WINGにはかなりいるように思えるのです。WINGは、他の雑誌に比べれば雑誌の力に乏しく、少ない戦力をなんとかやりくりして運営しているのですが、だからこそこういった逸材を逃すことなく、丹念に連載ラインナップに加えていくべきではないでしょうか。


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