<スクエニ雑誌読み切り作品補遺(1)>

2012・3・23

 以前より雑誌で気に入った読み切りを保存しているのですが、もう随分とたまってしまいました。うちいくつかは記事で本格的に、あるいは日記で簡単に取り上げたこともありましたが、しかしそれ以上にほとんど紹介せずに死蔵しているものが増えてきてしまいました。ここでは、そんなスクエニ雑誌の読み切りの中から、いくつかを取り上げて補完してみたいと思います。今回は最近の掲載からいくつかを取り上げてみました。


<Rebel:0(リベル・ゼロ)>
 これは、第19回スクウェア・エニックスマンガ大賞受賞作で、少年ガンガンの2012年2月号に掲載されました。作者は高木勇志(たかぎつよし)

 天使や悪魔の闘いを描くバトルファンタジー。いわゆる王道少年マンガとも言える一作で、これがガンガンで掲載されたのも分かります。しかし、このころから絵柄を中心にやや大人びた作風も感じられ、のちにヤングガンガンやビッグガンガンで活動するようになった萌芽も、また同時に窺えます。

 とにかく力強いストーリーと迫力の作画が特徴的。神をも殺すと言われた強大な力を持つ天使が主人公で、悪魔の少女を守って薄汚い天使を倒していく。やがては神をも倒しに行く壮大な物語の序章のような終わり方で、このまま連載になっても面白かったかなと思います。絵は今思えばまださほどでもなかったかなと思いますが、しかしキャラクターはかっこよくアクションシーンも過不足なく描かれているために、悪い感じはしません。このころからマンガの絵として完成されていたと思います。

 のちに高木さんは、ヤングガンガンやビッグガンガンでいくつか読み切りを掲載した後、現在はビッグガンガンであの「ローズガンズデイズ」のコミカライズを連載しています。かっこよさを感じる作風が、この原作のスタイリッシュな雰囲気にも合っているとは思いますが、この大賞受賞作の出来を見るに、できればオリジナルの連載も読みたかったなと思いますね。


<花喰の庭園(はなはみのにわ)>
 こちらは一転して少女マンガ的な作品。第20回スクウェア・エニックスマンガ大賞入選作品で、ガンガンJOKER2012年8月号に掲載されました。作者は倉田望。JOKERは比較的昔のエニックスの面影が残っている雑誌といえ、こうしたマンガがたまに掲載されているのはありがたい。

 「花喰(はなはみ)」と呼ばれる願いをかなえる木の精霊?のような少女と、人間の男の子との切ない交流を描いた物語。花喰の少女は、かつて少年の父に大切に育てられていた経緯がありましたが、しかし自分より花喰に没頭しているように見えた父に少年は反発、残った少女にも反発を続けてしまっています。しかし、父が花喰に没頭していたのは、病弱だった少年の病気の回復を願ってのことでした。そのすれ違いがとても切ない。
 さらに、花喰は、それを食う虫に侵されており、このまま弱ってやがては消滅してしまう運命。物語の最後もひどく悲しい終わり方となっています。

 ただ、その一方で、絵柄は中性的でとてもかわいらしいもので、コミカルなシーンも多く、この手のエニックス的な作品の雰囲気を堪能できると思います。かわいい絵柄とキャラクターでありながら、しかし物語は切ない。これこそがエニックスマンガのひとつの大きな魅力だったのではないかと。最近の読み切りの中では、これが最もそれを強く感じることの出来る、個人的には出色の一作でしたね。


<ユリカは魔女に食べられて>
 こちらは一転して男性的な萌えとエロを強く感じる読み切り。同じくガンガンJOKERの読み切りで、こちらは2013年2月号に掲載。作者は矢樹貴

 歴史ある寺院を改築して出来たと言う学園校舎。その地下には封じられ石にされた魔女─人食いの魔女カキネ─がいるという。おどろおどろしい雰囲気と徹底的に描きこまれた絵柄で始まる本作。一見して本格ホラーファンタジーのような雰囲気ですが、内容はコミカルとシリアスが半々の独特の作風でした。

 主人公は学校の服飾部に所属するデザイナーで、女の子大好きで百合趣味全開の女の子・リリカ。彼女が暗い地下に迷い込んで出会ったのは美少女。その正体は噂となっている人食いの魔女カキネでした。彼女は主人公を文字通り「食べて」しまい、しかし殺すわけではなく、逆に不死身の体にしてしまう。しかし、不死身ながらふたりが離れていると死んでしまう、そんな状態にされてしまいます。

 これだけだとおどろおどろしいホラー全開ですが、その後の展開は非常にキュート。ふたりは学園生活をともに送ることになり、リリカはカキネにかわいい服をデザインし、これからは学校で暮らしていこうと勧誘。一転して明るい希望に満ちた展開に。
 しかし、その後また雰囲気は一転、カキネが人食いの力を暴走させ、おぞましい触手で学園を破壊するすさまじい展開に。それをリリカが命がけで封じ込め、今度こそふたりで楽しく生きていこうと宣言することで物語はハッピーエンドを迎えます。全体を通して、エロ・グロ要素満載のホラーファンタジーと、百合趣味全開のかわいいコメディシーンが合わさっているような、まさに独特の作品になっています。人によって好みが分かれそうな作品だと思いますが、個人的には大変気に入りました。絵が非常に達者で描きこまれた重厚な背景が存分に見られるのも高評価のポイントでした。この絵の次回作をまた読みたいですね。


<傾奇魂−カヴキズム−>
 こちらは第六回スクウェア・エニックス戦漫画大賞受賞作品。Gファンタジー2012年8月号掲載。作者はモトタチタカヒロ

 以前、スクエニが歴史ものを集めた「戦国IXA」という雑誌を出したことがありましたが、どうもあまりうまく行かなかったようで、不定期に何号か刊行されたのみで終わってしまいました。現在では、ガンガンONLINEの連載の一部として残っているのみとなっています。そのONLINEも宣伝媒体として盛んに宣伝のページも設けられていましたが、最近はそこの更新も途絶えているようです。

 そんな中で、この「傾奇−カヴキズム−」は、久々に本当によく出来た新人作品が登場したようです。まず、この漫画、主人公はあの石川五右衛門。戦国武将・三国志の武将・幕末の志士などが作品のテーマになりがちだった戦国IXAの作品に対して、それとは異なる人物をヒーローとして描いたオリジナリティをまず買いたい。

 ストーリーも本当によく練られていた。かつての石川五右衛門の意志をあの鼠小僧が受け継ぐという設定で、後の時代から五右衛門の最後の日々を描くというスタイルで物語は進みます。その粋な生き様が、自分の最期を知ってもなお自分を貫き通す生き様が、彼に出会った「未来を見通す青年」の目を通じてよく描かれています。最後は彼を救う形で刑場の露と消える五右衛門ですが、「石川や 浜の真砂は尽きるとも 世に盗人の種は尽きまじ」というよく知られた時世の句が効果的に使われた、印象的なラストで締めくくられています。

 作画も洗練されていて、五右衛門の粋な傾奇者としての姿を、スタイリッシュな絵柄で存分に描き切っています。まさに「戦漫画大賞」の受賞作品にふさわしい雰囲気を持つ、文句の付け所のない一作でした。Gファンタジーは読み切りの掲載作の多い雑誌ですが、その中でも最近では最も優れた作品だったと思いますね。


<たくします。>
 このマンガもGファンタジーの読み切りなのですが、しかしこれを覚えている人は多くないでしょう。これは、雑誌の巻末に毎月掲載されている新人読み切り競作企画「ほぼ8マンガバトル」の中の一作です。2012年1月号の掲載で、作者は凡助(はんすけ)となっています。

 「ほぼ8マンガバトル」は、「約8ページ」程度の短編で新人が連載権を競う企画で、毎号3〜4名の新人が作品を連ねています。しかし、ページ数が少ない作品に複数並んでいるため、普通の読み切りに比べれば個々の印象が薄い感は否めないですし、さらには作品自体の完成度もいまいちなものが多いような気がします。
 しかし、そんなほぼ8マンガバトルのエントリー作の中でも、きらりと光る良作が見つかることは珍しくありません。この「たくします。」もそのひとつで、Gファンタジーの作風とは大きく異なったイメージだったために、特にわたしの印象に残りました。

 内容は、現代日本を舞台にしたホラー・・・というかいわゆる「怪談話」に近いものがありました。
 幸久(ゆきひさ)と孝(たかし)というふたりの青年が、ある日道に落ちていた封筒を拾います。その封筒には一万円が入っていて、封筒の表には「ひろったかたにたくします」の文字が・・・。真面目に交番に届けようとする幸久に対して、孝はそのまま使ってしまえ、封筒にもたくしますと書いてあるじゃないかといって、その日のうちに全額使ってしまいます。幸久も、孝のおこぼれにあずかる形で、結局いくらか使って遊んでしまったのでした。

 その後しばらく経ち、そろそろお金を使ってしまった罪悪感も薄れた頃。幸久の元へ孝がひどい顔をしてやってきます。話を聞くと、夜寝ているときに「タクシマス」という言葉とともに蛇がからみついた髑髏が襲ってくるというのです。憔悴しきった孝は、その後連絡が取れなくなり、一週間後に無残な死体で発見されます。

 その葬式の場で、自分までも髑髏が襲ってくる幻覚を見た幸久は、恐怖のあまり祖母に電話で連絡を取って助けてくれと懇願していました。話を聞いた祖母は、それは「厄うつし」の儀式を施した封筒で、そのお金を使ったら最後、呪いを引き受けてしまうと言います。死にたくないと訴える幸久に対して、祖母は「安心しなさい。わたしが何とかする」といい、幸久に次のような指示を出します。新たに封筒を用意して「拾った方にたくします」と血文字で書き、中に拾ったのと同額の一万円を入れて、わたしの指定した場所に置いておくようにと。恐怖に藁をもすがる思いで指示に従った幸久でしたが、後になって意外な事実が発覚します。

 それは、祖母の死。あれから自ら封筒を拾った祖母は、自分が呪いを引き受けて、幸久を助けて死んでいったのでした。これを聞いて幸久は嘆き悲しむことになりますが、すべては後の祭りでした。

 この物語は、ひとつの怪談話としてよく出来ていて、優しい祖母の情けにほろっとできるいい話になっていると思います。加えて、作画が非常によかった。Gファンタジーの連載としては異色の濃い目の絵柄で、女性向けの線の細い絵が中心の同誌で、同じ「ほぼ8マンガバトル」のエントリー作品にもそのような絵が主流の中で、このような女性向けとは異なる雰囲気の絵が見られたのは意外でよかったと思います。こういった作者が、今後もGファンタジーで掲載されるかはちょっと分かりませんが、ひとつ読み切りが読めただけでも収穫でした。


<ヒメごと>
 最後に少し前のヤングガンガンのシリーズ読み切りを。確か2011年の10号・13号・14号と3回ほど掲載された学園コメディ4コママンガでした。作者は原作が中村ミヤビ、作画が佳月玲茅。中村ミヤビは、以前ドラクエ4コマを描いたこともある新人らしく、一方で佳月玲茅は、以前「キミキス」や「ひぐらしのなく頃に 昼壊し編」のコミカライズ連載を行ったこともありましたが、いずれも少し前の掲載(2009年以前)で、この「ヒメごと」で久々に名前を見た記憶があります。

 作品の内容ですが、現代社会を学ぶため普通の高校に入ってきた世間知らずのお姫様・天海(あまみ)と、彼の世話役となったロリコン高校生・修二、彼の幼なじみのミーコらの日々の楽しい生活を描く学園コメディ・・・でしょうか。とにかく世間知らずなお姫様である天海ちゃんの行動がとてもかわいい。そしてそのお姫様をことあるごとにいじって遊ぶ修二とミーコの言動が笑えます。「お姫様転校生とロリコン側近のほのぼの(?)4コマ」という煽り文もそのままに、いい感じに壊れた個性的なキャラクターたちが魅力的な4コママンガでした。

 4コマとしてはかなりの良作だと思ったのですが、残念ながらさほどの反響はなかったのか、数回ほど掲載されただけで終わってしまいました。同時期に不定期掲載が始まった4コマ「ゴッホちゃん」や「よん駒!」が何度も掲載を重ね、「ゴッホちゃん」に至ってはついにコミックスまで刊行したことを考えると、こちらの扱いは不遇だったなと思います。個人的にはこの2作に匹敵する内容だと思ったのですが・・・。

 久々登場の佳月さんの絵が、ずっとうまくなっていたのも評価のポイントでした。以前よりすごく仕上がりがきれいな絵になっていて、キャラクターのかわいさが引き立ちます。のちにビッグガンガンで手がけることになる「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」のコミカライズも、同様に非常に整った安定した作画となっているので、こちらもおすすめしたいと思います。


「読み切り作品」にもどります
トップにもどります