<スクエニ雑誌読み切り作品補遺(2)>

2012・3・23

 今回もまた、以前書いたスクエニ雑誌読み切り作品補遺(1)の続きで、読み切りをいくつか紹介してみようと思います。ガンガン、JOKER、Gファンタジー、ヤングガンガン、ビッグガンガンと、スクエニ各誌において、コンスタントにこれはと思える読み切りは見られますし、ウェブのガンガンONLINEでも力作が見られ、さらに今では、かつての新人読み切り雑誌だったフレッシュガンガンも、このONLINE上での新人読み切り競作ページという形で残っています。こうして多数出続けている力作読み切りですが、雑誌を読んでいない人にはもちろん、雑誌を読んでいる読者でさえ、よほどのものでない限り印象に残らないものも多いと思います。そんな作品を、再び少しでも紹介する意義を感じました。


<となりの極道くん。>
 これは、元々はガンガンの巻末企画である「GGグランプリ」の人気作品で、好評を得て単独の読み切りとなり、少年ガンガン2011年11月号に掲載されました。同時にガンガンNETの方でも一時期掲載されていたようです(現在はなくなっています)。作者は都(みやこ)さん。

 頭脳明晰・運動神経抜群・容姿端麗と一見して完璧と見える生徒会長と、彼の隣の席に座る女子生徒・平山(趣味はマンガとアニメ、二次元大好きな同人作家)、このふたりが織り成すショートギャグコミックです。一見して完璧人間な生徒会長ですが、実は彼は極道の人間。事あるごとに平山を脅し、パシリなどをさせる極悪な(?)性格を隠し持っています。

 そんな彼に振り回される平山さんの姿も楽しいですが、しかし平山さんの方も負けてはいません。ひたすら自分のオタク趣味(同人誌執筆)に勤しみ、あるいはともすれば会長をネタにしようとして怒鳴られ、しまいには執筆の手伝いまでさせる。会長は会長の方で、無駄に横柄なアドバイスを出して平山を困惑させ、その作画で平山を引かせるほどひどいものを披露。こんな風に、ふたりが双方ともに突っ込み合うギャグが最高に面白い作品になっていました。

 GGグランプリの掲載時代から、頭ひとつ抜けて面白いマンガだと思いましたし、この読み切りも最高に面白くて、これなら連載させてもいいと思っていました。しかし、残念ながらその後都さんの再登場はなくなってしまい、しかものちに他出版社に投稿してそちらで認められ、現在では「COMICポラリス」というウェブ雑誌で「会長クンのしもべ」というタイトルで連載しているようです。興味のある方はそちらの方を読んでみてください。

 会長クンのしもべCOMICポラリス


<fantasma221B>
 ガンガンJOKERという雑誌は、スクエニの雑誌の中でもコア寄りの読者に向けた雑誌ということで、絵がきれいで整った作品が、他の雑誌よりも多いような気がします。それは読み切りでも例外ではなく、今回紹介する「fantasma221B」も例外ではありません。これは、2011年12月号に掲載された読み切りで、作者は宮ちひろ。第16回スクウェア・エニックス漫画大賞で入選を受賞した作家で、その受賞作「Killer Logic」は、以前ガンガンONLINEで掲載されたことがあるようです。

 その時から高い画力とアクションシーンが高評価だったようですが、それはこの作品でも健在。整った絵柄と躍動感溢れるアクションが魅力のスタイリッシュなイメージの作品に仕上がっています。

 舞台は現代イギリス。名探偵シャーロック・ホームズが”国民的英雄”として慕われている国の物語となっています。
 権力をかさにきた政治家の子息が、人質をとり収監された父親を釈放せよと要求する事件が発生。彼らに捕われた眼鏡とひげの男。彼こそが国民的英雄ホームズだと、人質に取った者たちは思っていたようですが、実際は違いました。政治家の権力を恐れて踏み込めない警察に代わって、現場に蹴り一発で乗り込んできた少女。彼女こそがホームズの末裔・シャルロッテだったのです。捕まっていたのは、彼女のパートナーであるワトソン。そのシャルロッテのワトソンふたりのスタイリッシュなアクション、そしてホームズの名を継ぐものとしての矜持。きれいで整った作画ながら、迫力の演出と骨太なストーリーが楽しめる快作だったと思います。

 十分な実力を備えた作者だったと思うのですが、残念ながらその後はスクエニでの活動は見られませんでした。現在は双葉社の「コミックハイ!」で「機械仕掛けのメルディーナ」という連載を行っているようです。


<どこの馬の骨とも分からない男>
 Gファンタジーの巻末企画・「ほぼ8マンガバトル」に掲載された読み切りのひとつ。2012年8月号に掲載。作者は井口オステガ

 娘が紹介する恋人を待ち受ける父親。「どこの馬の骨とも分からん奴に娘はやらんぞ!」と意気込んでいる彼の元に、本当に馬の骨がやってきてしまったという、まさに一発ギャグそのものといったマンガでした。ほぼ8マンガバトルは、ほぼ8ページ程度の読み切りによる競作企画なので、このような読み切りも十分ありでしょう。

 なぜか馬の骨なのに平然と対処する娘と母親に対して、ひたすらつっこまずにはいられない父親のツッコミがとにかく笑えます。「それは白骨化した骨だ」「(やせてる男性が好きという娘の言葉を聞いて)少しどころじゃないけどな」「どこにピアスあけたんだよ!」と、そのたびに爆笑。
 そんな感じで笑える面会が続くのですが、しかし最後には馬の骨の方が(倉骨さんというらしい)、「自分の方が誠意を示すしかない!」と奮起し、「娘さんを必ず幸せにしてみせます」と力強く訴え、ついに父親の方も折れて娘を託す。このくだりは定番ながらやはりいい話だなと思ってしまいました。

 と、このように冴えたギャグマンガを描く作者だなと思っていましたが、その後の井口さんは、同じGファンタジーで「毒甘異国少女パリトキシン」という連載を開始。こちらもかなり切れたシュールなギャグを見せてくれていますし、やはり実力は確かだと思いました。こちらもおすすめです。


<ドラゴンクエストモンスターズ++(復活夜)>
 これを単体の読み切り作品として紹介するのは、少々抵抗もあるにはあったのですが、しかし本当に素晴らしい読み切りであったので、やはり紹介せずにはいられませんでした。そう、あの吉崎観音さんの、かつてのガンガンの名作「ドラゴンクエストモンスターズ+」の、一回限りの復活読み切りです。ガンガンJOKERで2012年8月号に掲載。

 かつて、この「ドラゴンクエストモンスターズ+」が、打ち切りに近い形(というか打ち切り)で終わったのが、2003年。それからなんと9年ぶりの復活ということになります。原作ゲームの3DS版が発売されたのを契機に、このマンガのコミックスも新装版が刊行され、それに伴う形で新作読み切りが掲載されたのです。

 そして、今回の読み切りも、かつての連載とクオリティはまったく変わっておらず、少年の希望が感じられる気持ちのいい一編になっていました。
 今回の主人公は、マンガの主人公であるクリオではなく、原作ゲームの主人公であるテリー。彼は、大きな目的だった星降りの大会での優勝と姉との再会を果たしたのですが、しかし「それ以上の究極を目指したらどうなってしまうのか、そこで冒険は終わってしまうのではないか」と、一抹の寂しさを感じていました。しかし、再び開いた新しい旅の扉を見て元気を回復、飛び込んだ先の世界で、自分よりもずっと強いモンスター・マスターたちの存在を知り、再び前を向いて進むようになるのです。
 物語のラストでは、そのテリーがクリオと出会い、会話を交わすシーンで終わっており、これにはかつてのクリオの勇姿を知る自分としても、ちょっとじんと来てしまいました。

 最後に、わたしがこのマンガを紹介したかったもうひとつの理由は、かつての連載の読者で、今この読み切りの存在を知らない人が大勢いるのではないかと いう点です。最近、たまたまわたしのサイトの記事を読んでいた方と出会って、話が弾んだことがあるのですが、その方もこの読み切りの存在を知らず、驚いて いました。そんなかつての読者にこそ、是非ともこの読み切りをチェックしてほしいと思いました。


<グッバイシガレット>
 他誌でも渋い作品で大きな評価を得ているオノ・ナツメさんの読み切り。2013年のビッグガンガンVol.02に掲載。
 これは、「シガレットアンソロジー」という、タバコをテーマにしたアンソロジーの一編です。禁煙が進むこの時期になんでまたこんな企画を・・・と最初見たときはどうかとも思ったのですが、しかし読んでみると実力派の作家を多数起用していて、どれも力作で面白いと感じてしまいました。特に、このオノ・ナツメさんの読み切りは、この禁煙の風潮をストーリーに取り入れており、最も印象に残りました。

 政府の政策で禁煙が進み、タバコに膨大な増税がかかり、タバコ一箱の価格でひと月生活できるとまで言われるようになった時代。その時代においてなお、タバコを作り続ける職人の青年が主人公。彼は、タバコを作る職人でありながらタバコが嫌いで、彼にあこがれて弟子入りしてくる少年にも冷たくあたる有様です。しかし、彼は人のいないところでそっとタバコを吸って、物思いにふけるほど、タバコに対して思うところがありました。

 そんな時、彼の作ったタバコが強盗に奪われ、犯人は捕まったがタバコがダメになってしまい、在庫がなくなってしまうという事件が起こります。すぐに急いで作ろうと依頼主に提案する彼ですが、しかしここで意外な事実を聞かされます。それは、彼のタバコを買っているのはただ一人の女性であったということ。その女性は、彼にタバコを作り続けてほしいと提案します。「私だけのために」と。彼女は、かつては有名な歌手で、タバコ好きのヘビースモーカーでもありました。かつて政府がタバコを廃止しようとしたとき、彼女に歌を歌わせたのですが、タバコ好きの彼女は「廃止ではなく増税ならいい」という条件でこれを受けたのです。その結果、タバコは今まで存続することができた・・・。このことを聞いたタバコ職人は、そこで穏やかに笑うのです。

 相変わらずいい余韻を残す終わり方で、オノさんの実力を確かに感じる読み切りでした。この春から連載も始まるということで、それも楽しみです。


<終焉のカテドラル>
 最後にガンガンONLINEからひとつ紹介。2013年3月21日に前編、28日に後編が公開されました。作者は東方などの同人で知られたkireroさん。以前にスクエニのカードゲーム「拡散性ミリオンアーサー」でも多数のイラストを手がけていて、先日はコミティアのチラシのイラストに採用されるなどしていて、スクエニでの仕事にも期待できるのかな?と思っていたのですが、ここに来てついにマンガの新作が来ました!

 司教や修道士が登場するファンタジーストーリーで、主人公は修道女の少女エリザと、彼女と共に行動する悪魔の少女ルキ。彼女たちが、各地を旅しながら、最後には悪い主教を倒しにいくというストーリーなのですが、これがまず面白かった。主人公側の思い、主教側の思惑、その双方が描かれているのがよかったと思います。主教とのバトルがややあっさり終わったのが、個人的には少し物足りなかったかなと思いましたが、後日談はよかったし、全体としてはよくできたファンタジー物語になっていたと思います。

 そしてなんといっても絵が美しすぎました。もともとイラストでも繊細で描き込まれた美しい絵を描かれるので、その点でも注目してみていたのですが、商業での初コミックとなるこの作品でも、そのクオリティは健在でした。教会や街並みなど繊細かつ迫力の背景で目を奪われますし、そしてキャラクター、というか女の子がかわいい(最重要)。

 というかですね、東方とかでかわいいイラストや同人を描いていたkireroさんの女の子が、こうしてスクエニのガンガンONLINEの読み切りで読めるとか、最高です。そもそも、ここまでいろいろなタイプの読み切りを紹介してきましたが、わたしは普段はかわいい女の子が出るマンガばかり読んでますし、こういうマンガを読んでいるときが一番幸せなわけですよ。というわけで今はkireroさんのスクエニ再登場を期待してやみません!

 終焉のカテドラルガンガンONLINE


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