<生徒会のヲタのしみ。>

2009・6・1

 「生徒会のヲタのしみ。」は、ガンガンONLINEで創刊時から連載(更新)されている4コママンガで、タイトルどおり「生徒会」を舞台にして「オタク(ヲタ)」たちが独特の活動を繰り広げる様を描いたギャグマンガとなっています。ガンガンONLINEは、創刊当時から4コママンガの連載が非常に多く、4コマ専門のマンガ賞(部門)も設立されるなど、4コママンガに相当な力を入れているようです。このマンガも、そんな創刊当時からの4コマ新連載のひとつで、他の4コマ同様に大いに人気を得ているようで、真っ先にコミックス化が発売される作品のひとつになりました。

 作者は丸美柑(まるみかん)。元々はパワードで何度か読み切りを掲載していた新人でしたが、しかしそちらではさほど奮わなかったのか、連載獲得には至らないうちに終わっています。しかし、スクエニから2008年に新創刊されたウェブ雑誌・ガンガンONLINEにおいて、4コママンガでついに初の連載を獲得、コミックスの発売にまで達することが出来ました。
 読み切り時代からくせの強い作風で、やたら萌えるキャラが主人公をひたすらいじりまくるようなマンガの記憶が強いのですが(笑)、このマンガもまさにその通りで、萌える生徒会の役員たちが主人公その他の人間をいじりまくる極めて過激な作風となっています。オタク作品からのパロディネタや、最近の若者のスラングも多用されており、人によって好みの分かれそうな作風ではありますが、ギャグの面白さには確かなものがあり、その萌えを主体にしたかわいらしくも濃いキャラクターでも受けているようです。

 また、ここ最近では、生徒会を扱ったマンガが各所で見られるようになっていますが、このマンガもその典型的な作品と言えるところがあります。生徒会の仕事をやっているシーンはほとんど見られず、ほとんどが日々の日常でのオタク的会話・キャラクターいじりに終始している点で、他の生徒会もの作品とも共通したところがあります。その一方で、より深くオタクネタに依存しているところもあり、生徒会というよりは明らかに「オタクサークル」に近いノリも強く感じられ、一迅社の「ぱれっと」で連載されている「こまらぶ」あたりとも非常に近い共通性があるように見えます。

 生徒会のヲタのしみ。ガンガンONLINE


・生徒会マンガにしてオタクマンガ。
 このマンガは、なぜか生徒会副会長に選ばれた斉藤健という男が、美少女のオタク3人+イケメンオタク1人で構成される生徒会役員たちに、ひたすらいじられるところから始まります。斉藤健はオタクを隠して生きたいといういわゆる「隠れオタク」なのですが、生徒会長を始めとするオタク生徒会員たちには、その趣味を隠し切ることができず、むしろバレバレで、そのあたりの不自然な挙動を散々突っ込まれていじられることになります。
 生徒会員たちは、美少女&イケメンでありながらみな異様なまでに濃いオタクたちばかりで、生徒会室で普段から同人誌を執筆しまくり、アニメの時間になったら速攻で帰宅するというような、とても生徒会とは思えないような日々を送っており、これにやがて隠れオタクの斉藤も巻き込まれることになります。

 そして、このような現実離れした生徒会のグダグダ感全開の日常を描くマンガは、最近はあちこちで見られるようになり、特にアニメ化も決まった「生徒会の一存」あたりと比較してみても、「生徒会員たちが美少女(やイケメン)ばかりで構成される」「生徒会室でのグダグダな日常ばかりで構成される」「生徒会員たちにオタク的な趣味を持つ者が多く、オタク作品からのパロディネタも多用される」あたりで、実に共通した点を多数持っています。

 しかし、このマンガの場合、キャラクターたちがよりディープなオタク寄りな性格となっており、よりダイレクトにオタク趣味を持っている点が目立ちます。日々の活動も、コアな同人誌制作が中心というあたり、生徒会というよりもむしろ「オタクサークル」に近いものも感じられます。その点において、このマンガと共通するマンガとしては、むしろ一迅社の4コマ雑誌「まんが4コマKINGSぱれっと」に連載中の「こまらぶ」(森圭治)にほど近いところがあり、こっちの方と作風は酷似しているようにも思えます。特に、「キャラクターがオタクたちにえげつなくいじられる」点がよく似ており、それも「こまらぶ」の方はオタクが一般人をいじるのに対して、この「生徒会のヲタのしみ。」は、オタクが同じオタクをいじるという点が最大の特徴となっています。


・定番にして個性的すぎるオタクキャラクターたち。
 そして、そんなオタクサークルと化している生徒会の役員たちのキャラクター、その個性がすばらしい。いや、どれもオタクとしては定番の設定ではあるのですが、それでもいちいちコアなオタク趣味が徹底的に強調されていて、萌えキャラな外見とのギャップのあいまってすばらしく印象的なキャラクターたちとなっています。
 主人公の斉藤健だけは、隠れオタクとして普段は趣味を表に出さず、比較的まともな言動を取っていますが、それ以外の生徒会員たちは、自分のコアな趣味を隠そうともせず、生徒会室で自分たちの趣味の同人誌制作に明け暮れています。

 まず、生徒会長の一之瀬蘭。極めてレアなロボットオタクで、どのジャンルにも属さないような異様な設定の同人誌を描きまくる、このマンガの中でも屈指の個性派色モノキャラとなっています。そのかわいらしいロリた外見とは裏腹に、人を食ったような性格で斉藤をいじりまくるそのふざけた姿がなんとも言えません。このマンガを象徴するキャラクターであると言えます。
 続いて、書記の南あや。大手サークルとして活動を行っている同人作家で、ジャンルはエロエロスというキャラクター紹介の通り、かわいい顔で一生懸命男性向けの18禁同人誌を描きまくるという、「萌えキャラ+エロ同人」といういかにもオタクマンガらしいキャラクターとなっています。このような設定のキャラクターは、前述の「こまらぶ」をはじめ他の同系のマンガにも見られますし、ひとつの定番といってもいいかもしれません。「オタク読者が萌えるキャラクターが、自分たちの好きなエロ同人を描く」という、オタクにとって極めて都合のいいキャラクターになっていると言えるでしょう(笑)。まあ、実際にそういう同人作家がいないわけではないと思いますが、同系の作品に同じような設定のキャラクターがよく登場するあたり、やはり読者(や作者)の好みを強く反映しているような気がします。
 さらには、会計の夏目沙耶子にも同じことが言えます。こちらも同人作家で、そして二次元でも三次元でもBL趣味を持ついわゆる腐女子として、あくなき妄想と執筆活動を行っています。このような腐女子キャラは、もうこの手のオタクマンガでは定番中の定番と言えるでしょう。前述の「こまらぶ」にはもちろん、「生徒会の一存」の方にもこのようなキャラクターは見られます。今では、もはや腐女子やBL趣味というものが、男性読者にもネタとして受け入れられる素地が完全に出来上がってしまったようです。
 そして、健と並ぶもうひとりの副会長・菊地秀。眼鏡のイケメンキャラクターでありながら、二次元の幼女萌えを徹底的に貫く典型的な濃いオタクとして描かれています。このような男性のイケメンオタクもまた、この手のマンガでは定番と言えるでしょう。健に対してはクールで高圧的な態度を取りながら、一方で幼女への愛を語りまくるそのギャップがなんとも言えません。
 最後に、連載がしばらくたってから登場した生徒会の顧問教諭・梅原帝(うめはらみかど)も見逃せません。教師でありながらゲームの発売日には徹夜でエロゲーに没頭するというオタクでダメな大人として描かれ、しかもナルシストで空気を読まずに生徒会室で同人誌制作の邪魔をして他の生徒会員たちに嫌われまくるという、このマンガならではの濃すぎるキャラクターとなっています。

 このようなキャラクターたちは、最近の同系のマンガでは本当にありふれた定番のキャラクターになりました。しかし、このマンガの場合、それ以上に印象的で濃い味付けが成されており、十分に個性的なキャラクター作りが出来ていると言えるでしょう。


・オタクのいじられ方がすさまじいひどすぎるマンガだ(笑)。
 そして、そんなオタクたちが繰り広げるストーリーがまたえげつない。大抵の場合、各人がひたすら自分のオタク趣味を強硬に主張しまくり、それに比較的まともな主人公の健が振り回されるという顛末になっています。

 特にひどいのが会長である一之瀬蘭の傍若無人ぶりで、ひたすら自分の特異な趣味を追求しつつ、他の生徒会員たちの弱みのようなものも握っており、秀に対してはフィギュアを人質にとってばらすと脅しにかけ、沙耶子に対しては彼女の趣味の逆となるカップリング小説を朗読するなど、それぞれのオタク趣味で攻撃して制圧するという、このマンガならではの生徒会長にして最強キャラクターとなっています。

 中でも主人公の健に対するいじりがすさまじく、彼がオタク趣味を隠していることを完全に見切り、数々の揺さぶりをかけてオタクであることを引きずり出そうと企みをめぐらし、ことあるごとに健をいじりまくっています。ひとを軽蔑したようなじと目の姿も最高で、そのかわいい性格とひどい性格にやたら萌えるキャラクターとなっているようです(笑)。

 このような「キャラクターいじり」は、最近のギャグマンガではひとつの定番ネタではありますが、このマンガの場合、そのいじられ方がかなり過激で、しかも一般の方には敷居が高いディープなオタクネタも多数登場しており、かつ最近の若者のスラングも頻繁に登場していることから、人によってはかなり抵抗が強い部類に入るかもしれません。いじられ方では、「こまらぶ」の方がさらにひどいような気もしますが、こちらの方も相当にえげつないところがあり、顧問教諭の梅原帝が登場した回には、同人誌の執筆の邪魔をするという理由で顧問なのに部屋から追放するという行為に出ており、もはや先生すら人とも思っていない傍若無人ぶりを見せています。逆に、このような(いい意味で)ひどいマンガを面白いと感じる読者には、たまらなく面白いマンガであると言えるかもしれません。


・ガンガンONLINEを代表する秀作4コマのひとつ。今時の生徒会ものとして更なる発展に期待したい。
 このように、「生徒会のヲタのしみ。」、ガンガンONLINEが力を入れている4コマの中でも、コンスタントに秀作と言える作品となっており、同誌を創刊号から支える優良な連載となっているようです。同じく創刊号からの4コマ連載として、「まほらば」の小島あきらの新作で同誌看板ともなっている「わ!」や、スクエニでの名物異色作家・坂本太郎の「おじいちゃん勇者」、同じくパワードからの新人・佐伯イチによる連載「今日もまちわびて」などがあり、いずれも高い人気を獲得しているようです。ガンガンONLINEでの4コマ攻勢は大いに成功していると見てよいでしょう。

 そして、このマンガは、その中でも特にコアでディープな作風で、オタクサークル的な生徒会でオタク全開なキャラクターたちが、過激なキャラクターいじりを繰り返す作風が大いに受け、一方でかわいらしい萌える絵柄の魅力もあいまって、独特の魅力を構成しているような気がします。どちらかと言えばコアなマニアに受けるような作品で、多少人を選ぶようなところもあるとは思いますが、ノリのいいギャグの面白さにも確かなものがあり、よく描けたギャグ4コマと見ていいと思います。

 そして、生徒会もののマンガとしても今後の動向が気になるところです。今のところ、いまだマイナーなウェブ雑誌掲載の4コママンガということで、他の同系のマンガに比べるとやや露出が弱いかな?とも思えますが、それもコミックスの発売で変わるかもしれません。今時の日常描写中心の生徒会ものとしてその破天荒なノリがよく描けており、決して引けを取る作品ではないと思いますし、丸美甘さんのかわいらしい萌えキャラクターの魅力と、恒常的に面白いギャグの完成度も合わせて、この内容ならかなりいけるのではないでしょうか。ガンガンONLINEが週刊の更新で連載ペースが早く、毎週読める上に他の4コマ作品よりもコミックスの刊行ペースが早いのも長所と言えます。

 最初に見たときには、「こまらぶ」とあまりにもよく似た作風に思いっきり既視感を覚え、まさかこんなマンガがONLINEで始まるとは・・・となかばあきれた記憶があるのですが、実際に連載され始めたマンガは思った以上によく出来ており、これならば面白いと言えるものに仕上がっていると思います。ガンガンONLINEの良作4コマの一角として、あるいは今流行りの生徒会ものとして、更なる発展に期待できるのではないでしょうか。


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