<エニックスマンガと2ちゃんねるについて>

2008・8・6

 正直、このことはあまり書きたくなかったのですが、それでもいつかは書かなくてはならないと思っていました。もうこのことは、わたしがネットを始めた頃(99年)から、一貫してずっと思い続けていたのですが、今までは書く勇気がなかった。しかし、ここで思い切って書きます。


 ここで書くべきは、2ちゃんねるにおけるエニックス(スクエニ)マンガの扱いです。平たく言えば書き込みです。この、2ちゃんねるの書き込みを、いまだに役に立つ意見だと思っている人がいるようですが、わたしの見たところ、2ちゃんねるの開設以来、その書き込みの方向性にほとんど変化がありません。わたしは、99年の2ちゃんねる開設とほぼ同時期にネットを始め、ずっとその動向を見てきましたが、改善の兆しがまるで見られない。つまり、いつの時代にも非常に問題があるということです。

 特に、このサイトで扱っているエニックス(スクエニ)のマンガについても、その扱いに非常な問題があり、長い間ひどく悩まされてきました。その書き込みがある一定の方向性に大きく偏っており、むしろ書き込みを真に受けることで、あらぬ見方に染まってしまうこともあると思えます。というか、露骨に2ちゃんねるの影響を受けて、困ったことを書くサイトが一時期たくさんあり、非常に困りました。これは、わたしが2ちゃんねるを嫌って評価しない理由のひとつであります(もちろん、すべての理由ではありません)。これまで「なぜここの管理人はそこまで2ちゃんねるを嫌っているのか」と不思議に思っていた人もいるかもしれませんが、以下の記事を読めば理由のひとつが分かると思います。

 2ちゃんねるという場は、決して優れた意見が出てくる場所ではありません。「中には鋭い意見もある」という見方は完全な間違いです。2ちゃんねるは、いわば「井の中の世間」であり、外の一般世間とはまるで違う異質で異常な言論が出る場であり、それを真に受けると大変なことになることが多い。それは、マンガにおいても例外ではありません。


・なんでお家騒動以前のエニックスはそこまで叩かれたのか。
 そもそも、2ちゃんねるの99年の開設直後から、エニックスのマンガ(特にガンガン)はやたら2ちゃんねるで叩かれる傾向にありました。それも、ネットのほかの場所、特に個人のサイトでは特に評判が悪くないのに、それとは明らかなギャップが見られた。なぜか?

 理由のベースとなる要因としては、「2ちゃんねるのマンガ関連の利用者に、少年マンガの非常な愛好者・支持者が多い」という傾向があります。これは、実は2ちゃんねるだけでなく、他の大規模匿名掲示板(ヤフー掲示板やザ・BBSなど)やレビューサイトでもかなりの場所で共通した傾向が見られ、個人サイトの傾向とは大きなギャップがあります。なぜそのような場所に少年マンガ支持者が集まりやすいのか、それはかなりの謎です。
 そして、ガンガンという雑誌が、初期の少年マンガ色が強かった時代から次第に変化し、どちらかと言えばマニアックでオタク志向の雑誌へと変わっていった。これは間違っていない認識ですが、これが2ちゃんねる(など)に集まってくる少年マンガ愛好者・支持者には納得できなかった。これがベースとなる大きな理由を成しています。そして、これはガンガン、エニックスだけの現象でなく、他の少年誌の変質ぶりも同時に叩かれており、特に週刊少年ジャンプなどは、よりひどく叩かれています。

 しかし、これは真の理由ではないのです。これだけならば、ガンガンにしろジャンプにしろ、あそこまでひどい叩き方にはならない。
 真の理由は、「女(女性読者)に好まれていたマンガだったから」だと思われます。
 2ちゃんねるでのいわゆる女叩き、女性蔑視的な思想で女を罵倒しまくる書き込みは、今も昔もひどいものがありますが、これがマンガという分野にも波及している可能性があります。なぜ2ちゃんねらーがあそこまで女叩きに走るのかは諸説あり、「普段経済的にも社会的にも恵まれないニート系の男性が、ネット上で立場の弱い女性を叩いて楽しんでいる」という推測がよく見られます。これも決して間違いではなさそうですが、わたしとしては、もう少し広く理由を取って、「2ちゃんねるの主要利用者層である、若年男性層の嗜好のみが異常に強く露出している」結果だと考えています。2ちゃんねるは、当初からアングラ系の要素が強い場所で、そういう過激な場所を好む男性の若者が多く集まりやすい傾向にあり、そんな若年男性層たちの趣味・嗜好ばかりが徹底的に持ち上げられている場であると考えています。だから、2ちゃんねるではエロネタは常に多いし、アニメやゲームのような男性の若者に好まれるオタク系の趣味も数多く見られます。
 そして、そんな若年男性層にとって、女性の価値観や習慣、好みなどは受け入れ難いことが多く、それが女叩きの理由の根幹を成しているのではないか。 だから、2ちゃんねるでは、女性そのものが叩かれるのはもちろん、「女性が好きなもの」も徹底的に叩かれます。最近では、「スイーツ(笑)」という言葉がそれを代表していますし、それに限らず、女性が特に好むもののほとんどが、何らかの形で叩かれていると言ってよい。

 そして、これはマンガにおいても言えているのです。エニックスの場合だと、元々少年誌的要素が強かったガンガンの変化が叩かれるのはともかく、最初から少年誌ではなかった、ガンガンWINGやGファンタジーまで叩かれるのは説明できません。これらの雑誌は、ガンガン以上に2ちゃんねるでは叩かれていましたが、その理由は、これらの雑誌の作品に女性的・中性的な作風が多く見られ、女性の作家によるものも多く、そして女性読者に高い人気があったからに他なりません。

 そのことをよく表しているのが、「同人女」(今でいう「腐女子」)という言葉であり、これは、主に少年マンガを好むマニアックな女性読者層を指す言葉ですが、この層に好まれる(と思われていた)マンガは、特に2ちゃんねらーには嫌われ叩かれます。これも、ガンガン・エニックスだけでなく、他の少年誌でも言えていることで、特に週刊少年ジャンプでは、この同人女(腐女子)向け(とされた)作品が多いというだけで、徹底的に叩かれています。
 ガンガン、エニックスにおいて、あるいはジャンプあたりにおいて、実際にそういった読者層が多かったのかどうかは知りません。しかし、2ちゃんねるでは疑いなくそうに違いないと思われており、それらの女性層や、その層が好みそうな(好みそうだとされる)マンガは、2ちゃんねるでは徹底的に叩かれることになりました。


・わたしが「少年ガンガンの歴史」を執筆したもうひとつの理由。
 そして、この偏った見方が、一部では2ちゃんねるの外にも飛び出し、実際にそんな理由でそういったマンガを罵倒し、中傷するようなサイトが他にも見られるようになりました。「ちゆ12歳」などは、その最たるものであり、当時流行ったこのテキストサイトは、主に2ちゃんねるなどから適当に面白そうな意見を引っ張ってきて、それをフォント弄りで煽って面白おかしく記事にしただけのサイトでありましたが、ネットでそういうオモシロいネタが好きな人たちの間では大人気でありました。そんなサイトでも、アクセス数だけはやたら多いのであり、そんなサイトが2ちゃんねるのガンガン系に対する偏った見方を自分の記事にするわけだから、純粋なエニックスの読者にはたまったものではありません。

 この当時、2ちゃんねるの書き込みやこのようなサイトの記事で、ショックを受けたエニックスの読者はかなりいたのです。わたしの知っている当時のサイトで、非常に真面目で純粋にマンガを読んで、熱心にサイトを運営していた方がいたのですが、その方は、そういった書き込みや記事を目の当たりにしてしまい、ひどいショックを受けてサイトを閉鎖してしまいました。これは、それを楽しみに見ていたわたしにとっても大変なショックであり、大いに憤る出来事でした。それ以来、わたしにとって2ちゃんねるは常に敵となってしまったのです。

 わたしは、のちに自分のサイトにおいて、「少年ガンガンの歴史」という連作記事を書くのですが、これがどういうわけかネット上でかなりの話題となり、多くのサイトに採り上げられてリンクも多数貼られました。これをきっかけにこのサイトに来る人も多くなったようです。
 この記事を執筆した最大の理由は、「自分が知る限りの少年ガンガンの創刊時代からの歴史を記述しておきたい」という思いに他なりません。が、実は理由はそれだけではなかったのです。実はもうひとつ、非常に大きな理由がありました。すなわち「2ちゃんねるになんとしても反抗したかった」のです。
 そのために、この「少年ガンガンの歴史」は、お家騒動以前の中期ガンガンを強く評価する内容になりました。創刊初期のガンガンも評価していますが、それ以上にそこからの変化の流れを肯定し、新しいタイプのマンガを大いに評価する記事になったのです。そのタイプのマンガを表現するために、「中性的」という 言葉も採用することにしました。この記事全体が、実は2ちゃんねるに対する対抗言論になっています。
 実は、最初はもっと過激な記事を書こうと思っていました。2ちゃんねるのエニックスマンガに対する罵倒・中傷的な書き込みを糾弾し、少年マンガ偏重の見方や、なによりも女性読者蔑視の見方を徹底的に批判するような記事を予定していました。しかし、さすがにそれはまずいだろうと思いなおし、より穏やかな、バランスを重視した記事を目指し、過激な物言いは極力避けた結果、あのような形の「少年ガンガンの歴史」になったのです。

 このような隠れた執筆理由は、「少年ガンガンの歴史」執筆直後からいつかは明かそう明かそうと思っていたのですが、長い間思い切って言い出すことが出来ませんでした。しかし、いつかは言うべきだろうと思い、ここ最近自分にこのような記事を書かせるきっかけとなる出来事がありましたので、ようやくこの場を借りて公開することにしました。


・記事に対する意外な反応。
 で、記事を書いたあと、しばらくの間かなりびくびくしていた時期があり、要するに「ネット(特に2ちゃんねる)で多数派の見方に真っ向から反対するような記事を書いて、多数の反発意見が来るのではないか」と思っていたわけですが、意外にもそういう反応はほとんど来ませんでした。

 大手のニュースサイトに記事が紹介された後、多数の書き込みが掲示板に押し寄せたのですが、記事の内容を素直に受け入れる、あるいは肯定するものがほとんどでした。中には、昔の少年マンガの愛好者の人から、記事の見方に反対する意見もあるにはありましたが、それはかなりの少数派であり、全体の2割以下だったと思います。
 掲示板だと、多数派の意見に流れやすいのかな、と思ったので、今度はその記事にリンクを貼ったサイトを検索し、そこでのコメントを眺めてみました。すると、こちらでもやはり変わらないのです。中には昔の少年マンガの愛好者の反対意見もあったのですが、やはり全体の中ではかなりの少数派。ほとんどの人は、記事の内容を素直に受け入れ、あるいは自分もそうだったと、あの当時のガンガンにはまっていたという人も多数いました。

 ここまで来て、わたしはふと気づいたんです。「あれ?実は2ちゃんねるって大したことない?」

 前々から、「2ちゃんねるの意見は実はかなりの少数派。無記名の書き込みの集まりだから多いように見えるだけ」という話を何度も聞いていたんですが、いまいちそれを強く感じることができませんでした。しかし、ここに来て、はっきりとそれを認識することになりました。「ああそうか、自分は2ちゃんねるの力を意識しすぎていたな」とはっきりと分かったのです。

 上で散々書いたとおり、2ちゃんねるの書き込みの方向性は、個人サイトやブログのそれとは大きく異なります。まったく異なる異様に偏った見方が出てくることが非常に多い。で、2ちゃんねると個人サイト・ブログと、どちらが少数派かと言えば、そりゃ2ちゃんねるに決まってます。そんな簡単なことも分からなかった。

 そもそも、2ちゃんねるの人口は決して多くありません。利用者数1000万人と言われていますが、これは全体の訪問者数の総数であり、どうということはありません。スレッドごとの平均人口は非常に低くなります。
 そもそも、2ちゃんねるにはスレッドの数がどれくらいあるのでしょうか。10000以上あります。利用者数1000万人を、単純にスレッド総数で割ると、1スレッドあたりの訪問者数は2桁程度に過ぎません。だいたい70人くらいでしょうか。そう、1つのスレッドにたった70人しかいない。もちろん、中には書き込みがほとんどなく機能していないスレッドも相当数ありますので、そういったスレッドを除外すれば、機能しているスレッドの平均訪問者数は少し上がります。しかし、それでも大したことはないのです。せいぜい数百人程度であり、利用者数が1000人を超えるのはごく一部のスレッド(ニュー速とか)のみとなります。
 かつて、2ちゃんねるのスレッドにリンクを貼られたサイトがありまして、どれだけ2ちゃんねるから荒らしが来るかとびくびくしていたら、「カウンターの1日のヒット数が200上がっただけ」という話がありました。つまり、せいぜい200人程度、リンクをクリックしなかった人の数を考えても、せいぜい300〜400人程度しかそのスレッドには来ていないということになります。思った以上に少ない。
 まして、エニックスマンガのようなマイナーなジャンルのスレッドなど、どこも完全に過疎であると考えてよさそうです。いたとしても、せいぜい2、300人程度ではないでしょうか。利用者数が二桁というのも大いにありそうです。これならば、個人によるサイトやブログの方が、訪問者数ははるかに多い。このサイトでも、最近は常時600程度、多い日には800以上から1000を超えるヒット数があります。つまり、2ちゃんねるの1スレッドよりも、このサイトの訪問者数の方がはるかに多いということです。


・2ちゃんねるの書き込みを真に受けてはいけない。
 それだけの少数派の書き込み、しかも2ちゃんねる独特の女叩きのような偏った思想に満ちた書き込みなど、まったくもって無意味なものに過ぎず、それをあたかも多数派の意見であるかと勘違いして、真に受けるようなことがあれば、とんでもないことになってしまいます。つまりは、2ちゃんねるの書き込みなどまったく気にする必要が無いし、むしろ「気にしてはいけない」とも言えます。

 特にここ最近は、ブログやミクシィなどの流行で、さらに2ちゃんねるの人口は減っているようですし、ますますもって意味はなくなりつつあります。わたしが「少年ガンガンの歴史」を書いた2004年当時と比べても、今の2ちゃんねるの影響力はさらに低下しています。先の参議院選挙の時に2ちゃんねるで与党を(特に新風を)支持する書き込みが席巻しましたが、実際の選挙には微塵の効果もありませんでした。もう民主党の圧勝でした。2ちゃんねるがいかに少数派の偏った思想に満ちた場所に過ぎないのか、それを象徴する出来事だったと言えます。つい最近でも、毎日新聞英字サイトの記事に対して一部2ちゃんねらーが祭りを行っているようですが、2ちゃんねる以外、ネット以外ではまるで話題にすらなっていません。元から2ちゃんねるには大した力はなかったようですが、最近ではもう力がないことが完全に証明されたようです。(ただ、そんな中で、いまだ2ちゃんねるに入り浸る少数のマニアが先鋭化しており、重大な事件を起こすまでに至るケースが増えているので、その点では注視する必要があります。)

 そして、このように政治やマスコミのような大規模なスレッドですらそうなのですから、エニックスのマンガのようなマイナーなスレッドなど、その影響力は皆無と言ってもよいでしょう。もちろん、スレッドに常駐する2ちゃんねらーの中には、性質の悪い荒らしを行うような者もかなりいますので、そういったことには注意する必要がありますが、しかし、それはあくまで極少数の行動。必要以上に恐れる必要はありませんし、彼らの偏った書き込みをまともに受ける必要はまったくありません。むしろ、必要以上に恐怖して、自由な創作活動や評論活動が出来なくなる方が問題です。
 わたし自身、エニックス(スクエニ)のマンガについて、かつてはかなり2ちゃんねるを意識した時期があったわけですが、その後、2ちゃんねるに反発して書いた自分が書いた記事の方が評価され、それで完全に理解しました。実は、2ちゃんねるの書き込みはあくまで少数派の偏狭な意見に過ぎなかった。もちろん、彼らの粗暴な行いは許されることではありませんが、それを必要以上に恐れ、やみくもに恐怖することだけはもうないと思います。

 (ただ、唯一の問題としては、そんな2ちゃんねるの書き込みを真に受けて、ガンガン、エニックスに悪影響を与えた人がかなりいたことであり、実はガンガンの編集部も、ひょっとすると彼らのネットでの書き込みを見て影響を受け、それがお家騒動を引き起こすひとつの原因となったのでは?と推測されることです。これに関しては、また別の機会に論じたいと思います。)


「四季のエッセイ・マンガ編」にもどります
トップにもどります