<スクエニはこんなにアニメ化を連発して大丈夫なのか?>

2008・10・17

 このところ、スクエニ原作のコミックのアニメ化が非常に多くなりました。特に、この2008年に入ってからはさらに異様なまでに多くなり、年初から数えてなんと6、7本もアニメ化されています。かつて、スクエニ(エニックス)が今よりもさらにマイナーだった頃と比べれば隔世の感があり、最近のアニメ本数の増大化の傾向を鑑みても、このアニメ化の多さは異様です。

 実は、このアニメ化企画の多発ぶりは、昨年の2007年から急激に目立つようになったものです。その前年の2006年には、スクエニ原作でアニメ化された作品は、「すもももももも」一本のみ、2005年以前を見ても、多い年に2〜3本ある程度で、そこまでアニメ化連発という傾向は見られませんでした。それが、この2007年以降、一気にアニメ化企画が多発するようになるのです。

 具体的には、2007年には、ガンガンから「ながされて藍蘭島」、ガンガンWINGから「瀬戸の花嫁」、Gファンタジーから「ZOMBIE-LOAN」、パワードから「獣神演武」、そしてヤングガンガンからは「BAMBOO BLADE」と、なんと各雑誌ごとに1本ずつアニメ化作品が出るという状態になりました。これだけでも5本です。しかも、これに加えて、他社のアニメ企画を自社に引っ張ってきてコミック化を行うような連動(メディアミックス)企画も目立ち、こちらもあたかも自社からのアニメ化企画として宣伝するようなふるまいも目立ちました。こちらも、ガンガンで「精霊の守り人」、ヤングガンガンでは前年からの連載である「天保異聞 妖奇士」に引き続いて、「モノノ怪」の連載を開始、Gファンタジーでは「地球(テラ)へ・・・」、ガンガンWINGでも「東京魔人學園剣風帖 龍龍(トウ)」と、パワード以外の雑誌に1本ずつそのような企画があるという状態で、このような他社連動型メディアミックス企画の多さもあまりに顕著になりました。

 そして、2008年に入ってからは、そのような他社連動型企画はやや下火になりますが、代わりにスクエニ自社からの純粋なアニメ化作品はさらに増え、もう全部をチェックするのも難しいほどの本数になりました。こちらは、まず4月から、ガンガンから「ソウルイーター」Gファンタジーから「隠の王」がアニメ化。特に前者は1年(予定)の長期アニメ化で、今のスクエニで最も力の入ったアニメ企画となっています。さらに7月からはヤングガンガンの「セキレイ」、そして10月からのアニメ化ラッシュが凄まじく、ガンガンから「屍姫」、Gファンタジーから「黒執事」、ヤングガンガンからは「天体戦士サンレッド」と、いきなり3本。加えて、ガンガン連載の「とある魔術の禁書目録」も、原作は他出版社(メディアワークス)のライトノベルで、正確にはこちらのアニメ化ではあるのですが、これもガンガン作品のアニメ化のひとつと考えてもよいかもしれません(他社連動型のメディアミックスに近い企画とも考えられます)。これを加えれば、合わせて4本。なんと、この2008年だけで、スクエニ作品からのアニメ化が、全部で6本(「禁書目録」を加えれば7本)もあるのです。これは、スクエニのようないまだマイナーとも言える出版社からのアニメ化としては、異様なほど多い数字であり、それこそアニメ化企画の多さだけなら、集英社や小学館のようなメジャー出版社にも劣っていないかもしれません。しかも、早くも次のアニメ化企画として、ヤングガンガンから「黒神」のアニメ化が予定されており、まだまだこの路線は続くような気配が感じられます。

 そして、ここまでアニメ化企画が多発するとなると、これは単なる偶然ではありえず、スクエニという会社の方針として、アニメ化企画を恒常的に行うようになったと推測できます。つまり、「アニメ化を常に行い続けることで強力な話題作りをなし、雑誌やコミックスの売り上げを伸ばす」という経営方針に転換したのではないか?と思われるのです。

 このようなアニメ化頼りの方針自体も少々疑問に感じますが、加えて、このようにアニメ化を行い続けることで、個々の作品に対して何らかの弊害が起こるのではないか?とこのところ危惧するようになりました。安易な乗っかりに感じられる他社連動型メディアミックス企画はもちろん、自社作品からのアニメ化も、ここまで連発されると少々不安です。確かに、自社の作品のアニメ化ならば、純粋に連載マンガが人気を得てアニメ化を達成した、という側面は強く、その点では素直に歓迎できます。人気マンガが評価を得てアニメ化されるのは、元からのファンにとっては喜ばしいことでしょう。しかし、それ以上に、「ここまで簡単にアニメ化が行われることで、原作のマンガや掲載雑誌の方に何らかの悪影響が出るのではないか」とも強く感じられるのです。以下に、そのようなアニメ化によって考えられる影響を、ひとつずつ挙げていきたいと思います。


(1)連載がまだまったく進んでいない段階でアニメ化されてしまう作品が増えてしまう。
 まず、非常に大きな問題として、ここまで積極的にアニメ化を推進するとなると、原作がさほど進んでいないのにアニメ化されてしまう作品が、必ず出てきてしまうだろうということです。

 そもそも、普通のアニメ化企画でも、連載が最終盤、もしくは完結してから満を持してアニメ化するケースは稀であり、大抵は連載の中途で、作品に大きな人気が出てきた段階でアニメ化されてしまうケースが圧倒的です。このような場合、アニメ放映中に原作のエピソードを消化してしまい、そのまま中途半端な終わりを迎えてしまうか、あるいは原作とは異なるオリジナルの展開へと突入してしまいます。これは、原作マンガにとって、必ずしもいいことではないでしょう。

 そして、昨今のスクエニでは、積極的なアニメ化企画が次々と行われているために、そのような作品が増えてしまっているのです。上記に挙げた2007年以降の作品では、まず「隠の王」がそうで、原作がある程度進んでいたとはいえ、まだ最も重要なクライマックスのエピソードが描かれていない段階であり、そのためにアニメは原作とはまったく異なる結末へと向かってしまいました。もう少しじっくりと待ってからアニメ化を行うべきだったと思います。

 これ以外の作品も、基本的にはほとんどがそうであり(1話完結形式のギャグマンガ「天体戦士サンレッド」だけは例外か)、特に「セキレイ」は、まだまだストーリーの終盤にも達していない段階でのアニメ化決定であり、アニメの話数も少なく(1クール13話)、さほど深く原作のストーリーに立ち入ることは出来ませんでした。最近では、「屍姫」「黒執事」もその傾向がかなり強く、これから先どういう結末を迎えるのか非常に疑問です。特に、「黒執事」は、原作の圧倒的な人気に引きずられる形で、非常に早い時期にアニメ化が決まってしまった感が強く、果たして原作のストーリーをどこまで再現できるのか、それが非常に難しいと思います。

 元々、原作が連載の途中でアニメ化するケースが多いのは仕方ないのですが、昨今のスクエニでは、この「黒執事」や「セキレイ」のように、さらに早い段階でのアニメ化が目立つようになっています。このような、あまりにも原作が進んでいない状態でのアニメ化は、原作の再現という点で非常に不安なことは、言うまでもないでしょう。そして、もうひとつ大きな問題は、アニメが終わったあとに原作が勢いを失って人気が盛り下がることです。これは、昔からしばしば指摘されてきた問題点なのですが、今後さらにそのような原作が増えてしまうのではないでしょうか。


(2)1クール(13話)での終了など、ごく規模の小さいアニメ化が目立つようになる。
 そしてもうひとつ、今はまだ幸いにもさほど多くありませんが、ここまでアニメ化の本数が増えると、当然ながら1クール(13話)程度の小規模なアニメ化作品も増えるだろうと予測されます。これは、スクエニの原作マンガにとって、決していいこととは思えません。

 元々、マイナーなスクエニの作品は、アニメ化されることはさほど多くなく、一旦アニメ化されれば、それは非常に重宝され、それなりの規模と期間でアニメ化が行われることが通例でした。実際のところ、これまでのスクエニアニメは、最低でも2クール(26話程度)は必ず放映されており、1クールでのアニメ化は(2006年以前では)「これが私の御主人様」しかありませんでした。原作を大切に育ててきて、ようやく晴れてアニメ化を達成したのだから、最低でもその程度はアニメを続けたいと考えるのは当然で、これまでは忠実にその路線を踏襲してきました。これは、メディアミックスでアニメ化を第一に考える角川系の雑誌とは大きく異なる点であり、1クールであっさり終わるようなアニメが見られないことは、スクエニのひとつの長所でもあったと思います。

 しかし、ここ最近のアニメ化連発路線で、いよいよそのようなアニメも見られるようになってきました。前述の「セキレイ」がその代表で、正直かなり中途の時期でのアニメ化で、しかも1クールで終了はひどくもったいないと思ってしまいました。「天体戦士サンレッド」も、おそらくはそれに近いものがあり、テレビ神奈川という地方局1局で(これは原作の設定に合わせたものではありますが)、しかも1回15分放送と、随分小規模なアニメ化企画となっており、これも少々もったいないような気がします。
 このような1クールでの放映期間などの小規模のアニメ化企画は、明らかに原作の軽視に繋がるような気がしますし、短いアニメ期間の終了後、原作の勢いが落ちることがさらに懸念されます。

 また、「屍姫」のアニメ(アニメ版のタイトルは「屍姫 赫」)は、一応2クールの放映なのですが、前半と後半の1クールずつを別の制作会社(GAINAXとfeel.)が担当する方式で(いわゆる「みなみけ」方式)、このような原作の扱いもかなりの疑問です。アニメ制作側主導の企画とも思え、これでうまく原作が再現できるとは思えないのですが、どうでしょうか。


(3)アニメ化候補作品のストックが尽きる可能性がある。
 そして、最も懸念されるのはこれでしょう。ここまでアニメ化が頻繁に行われると、そのうちスクエニの原作マンガの方で、アニメ化できる素材が早晩尽きてしまうのではないかと不安なのです。

 最も不安なのがガンガンでしょう。元々中堅以下のラインナップが薄い上に、ここ数年でアニメ化出来そうな人気マンガはほとんどアニメ化されてしまい、後に続く新連載も、アニメ化まで行けそうな素材が見当たらなくなってきました。ここに来て、あの「鋼の錬金術師」の再アニメ化の話が出てきたのも、これ以上アニメ化企画が続けられないための苦肉の策とも思えます。これから先、どうなるのかは不安です。まさか、手に困って「ブレイド三国志」のアニメ化などということが起こりえるのでしょうか(笑)。

 Gファンタジーもあまり事情が変わらず、ここ最近いまいち新規作品が奮わない状況で、ラインナップに陰りが見えてきた感があるのですが、それでいてここで「ZOMBIE-LOAN」「隠の王」「黒執事」と、立て続けに人気マンガをアニメ化してしまったため、この後がやはり不安です。これ以降でアニメ化できる候補となると「Pandora Hearts」くらいでしょうか。
 ここ最近で大きく調子が崩れたガンガンWINGからは、そもそもアニメ化できそうな作品がほとんど見当たらなくなりました。アニメ化で話題作り、というスクエニの今の戦略は、この雑誌においては明らかに限界があります。

 唯一、まだまだ堅調なのがヤングガンガンで、ここだけはまだアニメ化できそうな作品のストックがかなり残っています。しかし、このところの「セキレイ」「サンレッド」のように、小規模な1クール程度のアニメ企画が、今後も頻繁に見られるようになると、その消費のペースの速さがやはり不安になってきます。実際、このところヤングガンガンはアニメ化が非常に多い。このまま「ヤングガンガンのアニメ化頼み」のような戦略を続けるなら、いずれはこの雑誌のストックも尽きるのではないでしょうか。また、ここ2年程度は、かつてほどいい新連載が少なくなっていますし、その点からも、長期連載の人気作のストックを、次々とアニメ化、アニメ化で食い潰している今の状態は不安と言えます。


(4)有名人の声優の起用など、話題優先の企画が行われる。
 これは、原作マンガとは直接関係のない話なのですが、このところのスクエニアニメには、話題作りとも思える声優の起用が目立ちます。本職が声優でない 者を声優に起用し、しかも主人公やヒロインのような重要な役どころを任せるケースが多い。採用される人の出自も、アイドル的な新人俳優や人気お笑い芸人など、明らかに話題作り優先の企画と思えるものばかりで、その実力にはひどく不安のあるケースが大半です。

 そして、実際の放映でも、声優としてうまくいっていないケースがやはり多い。中には「天体戦士サンレッド」の髭男爵のように、予想以上にうまく好演しているケースもありますが、これは残念ながら珍しいケースであり、むしろ明らかにうまいとは思えない、演技に大きな問題のあるケースが頻繁に見られるのです。このために、せっかくのいい原作のアニメ化に、一点気になる欠点が付いてしまい、それが作品の評価にまで影響を与えているケースも毎回のように見られます。

 出来れば、本職のしっかりした声優を採用して、堅実なアニメ化企画を推進するのが妥当だと思いますし、それが出来ないはずもないと思います。そこまでして話題作りが重要なのでしょうか。スクエニアニメの原作マンガが、いまだマイナーな作品が多く、アニメ化に際してある程度の話題作りで人目を引く必要がある、との判断でしょうか。しかし、そんな要素で視聴者の注目を集めても、そちらの方ばかりが話題になってしまい、肝心の原作の方に目が行かないという、原作軽視となる可能性も出てきます。実際、先の「天体戦士サンレッド」のアニメ化では、マスコミ報道で作品の内容よりも髭男爵の声優採用が前面に出た記事ばかりを目にすることになりました。これで視聴者の目を引き付けても、原作のアピールに繋がるのかははなはだ疑問です。


・ここ最近の傾向は好ましいとは言えない。従来のような堅実な方針を求めたい。
 以上のように、ここ2年ほどのスクエニは、とにかくアニメ化企画を大量に行い続ける路線に変更した感があり、そのために一時的に話題性の上で盛況を迎えているようでも、その後に控える悪影響を考えると決して素直には喜べない状況になりました。中途半端な時期での見切り発車的なアニメ化で、原作の持ち味が出されないままで終わるもったいない作品が増える傾向にあり、そんな企画を続けてもいずれアニメ化候補のストックが尽きるという最大の不安があり、肝心の企画の中身でも声優の採用などで話題作り優先の方針が垣間見えるなど、決してかつてのアニメ化作品よりもいい傾向にあるとは思えません。

 スクエニは、かつてはアニメ化の出来に芳しくないものが多く、原作ファンにはあまり評価されていませんでした。しかし、このところのアニメは、明らかに質が安定した感があり、とりわけ大きな成功を収めた「鋼の錬金術師」以降、「まほらば」「ぱにぽにだっしゅ!」「瀬戸の花嫁」「BAMBOO BLADE」などの評価の高い良作が見られるようになり、一方で致命的に劣るアニメ化作品はほとんど見られなくなっています。そんないい状況にあったわけですから、今のような安易なアニメ化乱発路線は控えて、ひとつひとつの原作を大事にする、従来のような堅実な企画・作品作りを求めたいと思うのです。


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