<ネットで拾ったエニックス読者の凄まじい話(前編)>

2003・12・8

・きっかけはインターネットだった。
 インターネットにつなぐまでは、わたしはエニックス(現スクウェア・エニックス)のマンガがここまで人気があるとは思っていませんでした。大手出版社に比べるととにかくマイナーで、周りで読んでいる人も少なく、「ガンガン系を読んでいるのは自分くらいだろう」と勝手に思い込んでいました。
 しかし、ネットにつないでみるとこれが全然違う。ネット上にはエニックス関連のサイトが無数に存在し、掲示板では大勢の読者がたくさんの書き込みをしている。「実は読んでる人は読んでるんだな」と初めて実感しました。
 その後、ネット外でもエニ関連のコミックが本屋でも割と大きく扱われるようになったり、いくつかの作品が定期的にアニメ化されるようになったりと、人気の広がりをさらに実感するようになりましたが、とにかく最初にエニックス系読者の存在を知ったのはインターネットだったのです。

 で、これ自体は大変喜ばしいことなんですが、それらネット上で見かけるエニ系読者の中に、実にマニアックな方々が多数おられまして、これがとんでもなく凄まじいのです。そこで、このページで彼らの動向をまとめて報告してみました。


・東京ゲームショウ関連の話。
 わたしがネットをやり始めたのは99年の4月だったのですが、その前年(98年)8月の東京キャラクターショーを皮切りに、以後年二回の東京ゲームショウ(当時は春4月と秋10月の年二回開催)でエニックスが物販ブースに出展していました。で、このエニックス物販の熱狂ぶりが凄まじいものでした。当時のホームページで98年10月のショウレポートを読むことができたんですが、その内容がすごい。

 実は、エニックスはその2カ月前の8月に、「東京キャラクターショー」というイベントに物販を出展していて、その時もかなりの盛況だったらしく、「今回もある程度混雑するだろう」とエニックス側も準備していたらしいんですが、そのエニックスの予想をはるかに上回る事態になりました。
 まず行列が凄まじい。隣のスクウェアブースの行列をはるかにしのぐ2倍以上の大行列。おそらく全ブースの中でもトップクラス。「エニックスってこんなに人気があったのか?」と誰もが疑う光景(笑)。
 その時に出展されたのは「まもって守護月天!」「ツインシグナル」「刻の大地」の3作品のグッズ(時代を感じますな)。ちなみに「守護月天」はこの当時はまだアニメ化されていませんでした。「シグナル」と「刻の大地」ももちろんそう。アニメ化されてもいない時点でこの人気の高さ。
 この時にはいろんな人が行列に詰めかけ、子供から大人までたくさんいたそうですが、その中で子供をつれた母親が並んでいて、その母親が子供に向かって一言。

「あなたは守護月天を全部買いなさい。わたしはシグナルと刻の大地を全部買うから。」

・・・なんとも豪快な話である(笑)。ちなみにこの時は午後の早い内にすべてのグッズが売り切れたとか。

 そして、以後エニックスが東京ゲームショウに出展するたびに毎回のごとく熱狂的な行列が出来て、スタッフとしても収拾がつかない事態にまで発展することが多く、まさにエニックス物販は盛況を極めました。出展作品がアニメ化してさらに熱狂的な売上を記録したり、果てはガンガンヴァーサス(後述)まで売り出されてそれがあっという間に売り切れたりと、回を追うごとに凄まじい状況になったことはいまだ記憶に新しい。

 しかし、最近になってなぜかエニックスはゲームショウ物販の出展をやらなくなりました。とにかく儲かるであろう物販をなぜやめたのかは謎ですが、やはり毎回の混雑の処理が大変だったのが原因か? 以後、このゲームショウ物販のコンセプトはGコレショップ(誌上通販)に受け継がれたものと思われます。


・応募者全員サービスの話。
 雑誌上で応募者全員サービス(通称「全サ」)をやっているところは非常に多いですが、かつてのガンガンはこれが凄かった。
 東京ゲームショウに出展していた時と同じくらいの時期に、ガンガンは全員サービスの中でも特にテレカのサービスを定期的にやっていて、それが連載マンガのほとんどすべてをカバーしていました、一部の人気作ではなく、ほとんどすべて(約20作品中15作品以上)でテレカのサービスをやり、その画像が見開き2ページを賑わしていたことも記憶に新しいところです。この例からも分かるとおり、当時のガンガンは確かに一部の人気作はあったものの、個々のマンガにまんべんなく固定ファンがついているという状況で、すべての作品のテレカサービスをやっても問題なかったのです。

 そして、そのような応募者全員サービスを半年ごとに定期的に開催し、中には2カ月連続で「合体テレカ」という形で2枚連続でサービスをやることも多かったのです。そして、それらの中で自分の最も好きなマンガのテレカを応募するのが普通のファンなんですが、中にはそれらすべてのテレカに応募するという読者まで現れました(笑)。20枚近くあるテレカすべてに応募し、それが届く時には分厚い封筒が郵便受けに入っているというから恐ろしい。一体いくらカネをかけているのでしょうか? 当時はそのような凄まじいガンガン読者がいたということですね。

 今でも全員サービス自体は存在しますが、当時のように連載の多くを網羅するものではなく、あくまで人気作のみのものです、まあWINGやGファンならともかく、今のガンガンでは連載すべてでサービスをするようなことは無理でしょう。今の誌面に連載すべてにわたる幅広い人気はないと思われます。仮にやったとしても応募が集まるのは「鋼の錬金術師」を筆頭とする一部の人気マンガだけではないでしょうか。


・「まもって守護月天!」な話。
 しかし、この程度ではまだまだ序の口です。世の中にはさらにとんでもない人々が存在します。
 当時のガンガンの中でもまぎれもなく最大人気を誇った「まもって守護月天!」ですが、このマンガは他のエニックスの作品とは異なり、外部から大量の美少女マニアの読者を呼び込みました。美少女マニアといえば「オタク」と呼ばれる人々の中でも中心的な存在。彼らの持つ パワーは一般のエニックス読者をはるかに凌ぎ、ここに守護月天を巡って多くの伝説を残しました。
 とにかく美少女マニアというのはグッズに賭ける意気込み、そして財力が凄まじい。守護月天もその例外ではなく、決して安いものだけではない多くのグッズを買いあさる光景がネットを通して伝わってきました。
 まず、5800円する画集「支天輪」。1冊買うだけでも大変ですが、これをなぜか4冊持っているという人が。1冊5800円もする画集をなぜ4冊も買うのでしょうか。理解できません。
 そして、定価14000円という超豪華限定商品「月天BOX」。こんなものをよくエニックスも出したなと思うのですが、これをなぜか2つ買ったという人を発見。だからなんで14000円もするものを2つも買うのか。一体なんの必要があるというのでしょうか?

 そして、このようなグッズを大量に買いまくり、例えば「月天」にはまって一カ月で10万円以上使ったと平然と語る人が出てきます。美少女マニアにとってはたいして珍しい金額ではないと思われます。
 中には、まずマンガにはまってまもないうちに、前述の東京ゲームショウの物販が行われ、まだコミックスを最初の3巻しか持っていないという段階でいきなり物販にグッズを買いにいった人もいました。「はまったらまずグッズ」というのは美少女マニアの基本だと思われます。

 そして極めつけは、当時の懸賞で500名に当選したグッズ「ロングピロー」(抱き枕)。これがものすごい高値で取引されたそうであります。一般的な相場が3万円らしい。抱き枕に3万円か・・・。
 そして中には、その抱き枕を15万円で買ったという人を発見(驚愕)。15万だよ、15万。フリーターの一カ月の賃金より多いんじゃないか?

「どうしても欲しかったので15万で買いました。」

 とても一般人には理解できませんが、彼ら美少女マニアは等身大のフィギュアを40万円で買ったり、シスプリの1枚15万円の原画を12人まとめてお買い上げ(計180万円)な人々なので、これはまだ全然問題ないレベルではないでしょうか。日本人すべてが美少女オタクになれば日本の経済は一気に回復すると思われます。


・「最遊記」な話。
 さて、守護月天とくれば最遊記です(なんでや)。
 こちらも「月天」同様にかつてのエニックスで最大人気を誇ったマンガです。ただし「月天」が主に美少女マニアを引き付けたのに対し、「最遊記」は女性読者、それも同人活動を行うマニア系の女性読者、いわゆる同人女に大人気を博しました(いや、もちろん普通のファンもいますよ。念のため。もちろん月天に関しても)。
 そして同人女もまた美少女マニアと同格ともいえる「オタク」のもうひとつの中心的存在。美少女マニアがオタクの東の横綱なら、同人女は西の横綱。彼女らのグッズに賭ける意気込み、そして財力は美少女マニアに負けずとも劣らないもので、一部では上回っているところさえあります。彼女らの「最遊記」に賭ける行動もまた数々の伝説を残しました。

 もともと連載当初から女性人気の高かった「最遊記」ですが、2000年にアニメ化されたことですさまじい熱狂的な人気となりました。その熱狂ぶりは凄まじいの一言に尽きます。それまでにもアニメ化されたエニックスのマンガはいくつかありましたが、ここまでアニメ化の影響を受けまくったものはありません。
 まず、なんといってもアニメ化でGファンタジーが売れまくったことが記憶に新しい。それもただ売れ行きがよくなったというレベルのものではない。アニメ放映地域でGファンタジーが店頭から消えたのです。嘘でも誇張でもなく、本当に一冊も無くなった。ありえないレベルですね、もはや。アニメ化の影響力と、それ以上に同人女の恐ろしさをまざまざと見せ付けられた驚愕の事態でした(笑)。
 そして、この事件の余波で、あのさらなる驚愕のGファン一冊5000円事件が起こるのです。

・Gファン一冊5000円事件。
 さて、その消えたGファンタジーですが、その号は単に「最遊記」が連載されているのみならず、応募者全員テレカサービスが行われていました。そして、そのテレカを求めて女性読者が押し寄せてきたのも売れまくった原因のひとつなのですが、それが高じて、ついにヤフーオークションで全員サービス応募券つきのGファンタジーが高値で取引される事態にまで発展しました。
 その時の落札価格が、なんと5000円以上! これが「Gファン一冊5000円事件」です。たかが580円の雑誌一冊に5000円。一般的な常識では考えられません。そこまでしてテレカが欲しいのか? もはや一般人の理解の範囲を超越しています。

 そして、これはほんの一例であり、大量に出される関連商品やグッズを求めて凄まじい財力をつぎ込む姿がネットを通して伝わってきました。「最遊記」のおかげでカネが飛ぶように消えていった話は珍しくなんともありません。まさに「最遊記」にかける費用、いわば最遊費で個人の財政が傾くケースも存在したのです。日本人すべてが美少女オタクと同人女になれば日本はバブル期を凌ぐ好景気になると思われます。



 さて、この程度ではまだまだ話は終わりません。あまりに量が多すぎるので残りは中編・後編に回します。まず中編は、エニックスの最大支援ショップといえる「アニメイト」についての話です。ではどうぞ。

ネットで拾ったエニックス読者の凄まじい話(中編)


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