<スクエニ系コミック2006年展望>

2006・12・26

 この記事では、今年2006年におけるスクエニ(エニックス)系コミックの展望予測をしていきたい。2005年のエニックスコミックは、各所で健闘が光る良い一年だったと思うが、今年はどうだろうか。


・とりあえず「壮太たん」アニメ化。
 まずは、Gファンタジー連載『壮太くんのアキハバラ奮闘記』のアニメ化が決まったことを挙げたい。同誌連載の『ぱにぽに』のアニメ(『ぱにぽにだっしゅ!』)が終了して、その後のスクエニ系アニメの予定がなかったが、このアニメ化が決まったことで、遅くとも半年後までには再びスクエニ系アニメ作品がテレビで見られるようになるだろう(予測としては、放映開始は四月あたりだろうか?)。
 『壮太くんのアキハバラ奮闘記』は、タイトルからして察しがつくように、オタクの生態をネタにしたマンガである。Gファンタジーの、ひいてはスクエニ全体の中でも意外とも言える作品のアニメ化決定だと思われるが、この背景には、確実に昨今の『電車男』以来のオタクブームの存在がある。オタクやメイド喫茶、アキハバラがテレビで取り上げられる現状があるからこそ、この作品にTVアニメ化の白羽の矢が立ったものと思われる。
 もうひとつ、この手の「オタクネタマンガ」が、単純にコアなアニメファンに受けるだろうという理由もある。昨今、特に深夜枠において、萌え系のアニメが大量に放映されるようになり、萌え系のマンガやゲームが簡単にアニメ化される一方で、それ以外の原作はアニメ化されにくい状況が生まれている(特に女性向けのアニメは極端に少なくなった)。そんな中で、唯一萌え系以外でアニメ化される余地があるのが、この手の「オタクをネタにしたマンガ」である。この手のオタクネタマンガは、とにかくマニアやオタクには受けがよく、萌え系アニメと同様なオタク視聴者層からの支持を狙えるのである。この点からも、今回『壮太くんのアキハバラ奮闘記』がアニメ化の材料として選ばれたのだと思われる。

 さて、肝心のアニメの内容であるが、個人的には結構期待している。『壮太くんのアキハバラ奮闘記』は、原作では登場人物たちのバカバカしい行動が最高に面白く、オタクでなくとも単純に笑えるギャグマンガに仕上がっている。このバカバカしいノリを忠実にアニメ化すれば、かなり面白いものが出来上がるのではないだろうか。


・再アニメ化が待たれる『ぱにぽに』。
 2005年のスクエニ系アニメは全体的に良作が揃っていたが、その中でも突出して異様な評価を得たのが『ぱにぽに』のアニメ化作品である『ぱにぽにだっしゅ!』である。この全編に渡ってネタ全開の密度の濃い凄まじいアニメは、原作ファンのみならずコアなアニメファンをことごとく引き付け、アニメに引きずられる形で原作の人気・知名度も一気に上昇した。そして、多数の原作ファン・アニメファンに惜しまれつつも、2005年末に全26話で終了してしまった。
 しかし、終了後も続編を望む声が後を絶たず、第二期の放映が切実に望まれている状況である。ここは是非もう一度『ぱにぽに』をアニメ化してほしいところだ。まだまだ使われていない原作のネタも多数あるし、たった半年のアニメで終わらせるには惜しい作品である。
 しかし、個人的な希望として、『まほらば』と『ぱにぽにだっしゅ!』が同一の時間枠の前番組・後番組であり、両方とも評価の高い良作であったので、『ぱにぽにだっしゅ』終了後に今度は『まほらば』の第二期をやり、次に『ぱにぽにだっしゅ!』の第二期をやればいいなあなどと思っていたのだが、この夢は露と消えてしまった。この枠(日曜深夜)のスクエニアニメが一年で終了したのが悔やまれる。


・先行き不安な少年ガンガン。
 アニメの話はここまでにして、次にスクエニ系の中心雑誌である少年ガンガンの展望について考えてみたい。

 今の少年ガンガンは、『鋼の錬金術師』以外にこれといった連載マンガがなく、さらには連載本数もかなり減少している状態である(現在14本)。しかも、未だにその穴を埋めるべき新連載が予定されていない。これは決していい状態とは言えない。
 しかも、昨年に『鋼』のアニメが劇場版での完結によって一段落ついたことで、これ以上の『鋼』の展開には期待できず、もう『鋼』の人気だけで雑誌を保つのは難しい状況になるだろうと思われる。しかも、『鋼』の後を次ぐほどの力のある連載があまり見当たらないのが現状である。
 ただ、その中でも数少ない、アニメ化までもが見込める人気作品として、『ソウルイーター』と『ながされて藍蘭島』が挙げられる。
 『ソウルイーター』は、ガンガンの少年マンガ系連載の中でも数少ない成功作品で、ポスト『鋼』を担う作品として唯一期待できるものである。ただ、この手の少年マンガは、萌え系が席巻する今のTVアニメの状況を考えると、アニメ化までこぎつけることは難しいかもしれない。内容的にも確かに完成度は高いが、あと一歩抜きん出たところがなく、今のままでは今後期待できるかどうか微妙なところである。
 『ながされて藍蘭島』は、いわゆるハーレム系のラブコメマンガとしてオーソドックスなもので、オリジナリティは乏しいものの気軽にそこそこ楽しく読めるマンガである。萌え系のマンガやゲームが簡単にアニメ化されている現状を考えれば、この作品にアニメ化の声がかかることも大いにありうる。しかし、実はもうかなり巻数を重ねているのにアニメ化の噂は聞かれず、人気の点でも今ひとつ突出したものがない状態で留まっている。ハーレムアニメが飽きられつつある今のTVアニメの状況もマイナス材料だ。
 結論として、『鋼』の後を次いでアニメ化できそうな作品の登場にはあまり期待できない。ガンガンは、先のお家騒動以来、『鋼』以外のアニメ化作品が全く出ておらず、実際の人気は落ち込んだままの状態だが、それは今後もまだまだ続くかもしれない。

 アニメ化は別にしても、今後のガンガンの連載ラインナップ自体も不安である。先ほども記述したとおり、今のガンガンは連載本数が極端に減っている。長期に渡る人気連載だった『スパイラル』も先日終了し、もはや唯一『鋼』のみが人気を維持している状況で、しかも連載マンガの本数まで減っているのは厳しい。しかも、今のガンガンはメジャー系少年誌を目指すとかいう方向性で、個性的な作品の存在が影を潜めており、数少ない連載の中にもこれといったものはない。最近の読み切りマンガを見ても、これといって期待できそうな作品が見当たらない。今後どうなるのだろうか。
 実は、2006年の初期のうちに、先に終了した『スパイラル』の外伝作品である『スパイラル・アライヴ』の連載再開が決定している。しかし、この『スパイラル・アライヴ』、実は元々はガンガンWINGでの連載だったのである。それを半ば奪うような形でガンガンで連載すること自体が、今のガンガンの切実な状況を示している。人気連載だった『スパイラル』の関連作品にもう一度頼らねばならないほどの状況に陥っているわけである。

 この状況を打開する唯一の方法は、個性的で真に面白い新連載を大量に投入し、連載の質と量を増やす以外にはない。しかし、それが本当に実現可能なのかどうか、昨今のガンガンの現状を見る限りでは、あまり期待できないのが正直なところだ。


・動きの激しいガンガンWING。
 ガンガン本誌とは対照的に、ガンガンWINGは今後の新連載攻勢が決まっている。2006年の1月号から1年間、毎号新連載予定となっている。単純に考えれば一年後には12個も連載が増えることになるが、実際にはその分終了を迎える連載も数多くあると思われるため、連載ラインナップが大きく変動することになるだろう。
 実は、今のWINGの主要連載陣は、ほとんどが約3年前から続いており、このところ大きな誌面の変化がなかった。しかし、ここにきていよいよストーリー的に佳境を迎えつつある連載が増えており、主要連載の多くが近いうちに終わってもおかしくない状況になっている。具体的には、今の時点で既に『KAMUI』や『がんばらなくっチャ!』は終了しており、『dear』や『天正やおよろず』『ショショリカ』のような人気連載も近いうちに終了を迎える可能性があり、そしてあの『まほらば』すら例外ではない。そして『ひぐらしのなく頃に』はそもそも単行本2巻で終了が決まっているし、これも半年経たないうちに終わる(ただし、終了後に「解決編」の連載が始まる可能性はある)。一年後に確実に残っていると言える連載は非常に少なく、おそらくは『瀬戸の花嫁』と『機工魔術師』くらいのものであろう。

 そして、肝心の新連載攻勢だが、第一弾の『ちょこっとヒメ』、第二弾の『ネバー☆ネイバー』、短期シリーズ連載の『リアル・ファミリー・リレイション』と、それぞれ中々の出来で、今のところ出足は順調のようである。さらに、新連載以外にも多くの読み切り作品の掲載がすでに予定されており、昨年以上に積極的な攻勢が目立つ一年となりそうだ。
 ただ、これらの新連載や読み切り作品は、今まで同様に、あるいは今まで以上に萌えを意識したものが多く、WINGはもはや完全に萌えな雑誌を目指しはじめたことは間違いない(笑)。今後どのような萌えマンガが登場するのか注目される。


・大安定のGファンタジー。
 ガンガンWINGとは対照的に、主要連載陣が安定しきっているのがGファンタジーである。アニメ化で絶大な人気を得た『ぱにぽに』、近いうちのアニメ化が決定している『壮太くんのアキハバラ奮闘記』を筆頭に、『ZOMBIE-LOAN』『隠の王』『カミヨミ』『ToHeart2〜colorful note〜』『ティルナフロウ』『switch』『夢喰見聞』等々、雑誌の中核を担う連載陣が充実している。長期連載の『E'S』『阿佐ヶ谷Zippy』もいまだ健在で、しかもこれらすべての連載がまだまだ長く続きそうである。新連載の予定はWINGに比べて少なめだが、現行の主要連載が質・量の両面において堅調なので、さほど問題には感じられない。

 ここ最近のGファンタジーは、内容こそ充実していたものの発行部数がかなり少なく、その点が非常に不安だった。しかし『ぱにぽに』アニメの成功と、『壮太くんのアキハバラ奮闘記』の今後のアニメ化によって、部数もかなり底上げされることが予想されるため、この点でも不安はなくなった。おそらく、今年のGファンタジーは、スクエニ系コミックの中で最も安定した雑誌となるだろう。


・期待度の高いヤングガンガン
 昨年のヤングガンガンは、創刊当初の状態からは予想できないほど誌面が改善され、連載ラインナップはかなり充実してきた。つまらない連載を素直に打ち切り、良質な新連載を地道に投入してきた結果である。今年もこの調子で堅実な雑誌作りを続ければ、昨年同様のクオリティが維持できるだろう。
 さらに、今年は創刊2年目で、人気連載が順調に続いてきたことで、そろそろアニメ化・ドラマCD化などの何らかの動きがあるかもしれない。今のヤングガンガンの人気連載としては、『すもももももも』『黒神』『ユーベルブラット』『WORKING!!』『BAMBOO BLADE』あたりだろうが、このうち『すもももももも』は、萌え系マニアに対する人気が異様に高く、話数の条件さえクリアできればいつアニメ化の動きがあってもおかしくはない。「ラブコメ」に「格闘バトル」と、人気を得やすいジャンルであるのも好材料だ。そして『黒神』も、韓国作家の描く美少女バトルものということで話題性も十分で、こちらも期待できる。王道少年マンガ系の展開で、一般層でも馴染みやすい点も評価できる。
 加えて個人的には、スクエニ系では数少ない社会派作家である筒井哲也(『マンホール』)の活躍にも注目していきたい。

 ただ、ヤングガンガンについては、あの無意味なアイドルグラビアだけはやめてほしいところだ。そもそもヤングガンガンの読者で、グラビアを求めて買う人がどれくらいいるというのか。表紙が他の青年誌と区別できないし、本気でやめてほしいと切に思う。


・ガンガン本誌よりも充実している?パワード。
 昨年ガンガンパワードは、今までに無く連載陣が充実し、読み応えが増してきた。まだまだ他誌に比べれば連載本数は少ないものの、新人の読み切り作品と合わせれば、かなり充実した雑誌になってきたと言えるし、今年度もかなり期待できる。

 ただ、昨年から話題となり、雑誌の中心ともなった「ひぐらしのなく頃に」の連載が、単行本2巻分で終了ということで、早期に終わることが予測されるため、その後を継ぐほどの看板作品を作るとなるとやや厳しいかもしれない(ただし、終了後に「解決編」の連載が始まる可能性はある)。『これが私の御主人様』は、アニメも終了してさすがに旬は過ぎているし、あるとすればドラマCD化もされた『君と僕』くらいだろうか。しかしこれも女性読者中心の人気で雑誌を引っ張るには弱いだろう。出来れば『妖幻の血』の連載再開を待ちたいところだが、作者の赤美氏は一体どうしているのだろうか。
 困った予測としては、あの『みかにハラスメント』の復活も考えられる。あの強烈なエロマンガがオタク人気に釣られて復活し、あげくの果てにはアニメ化という最悪の事態すらあり得る(笑)。

 新人作家の読み切りでは、昨年のマンガ賞受賞以来高い完成度の作品を見せる石川泉に注目していきたい。


・2006年展望総括。
 それでは、ここで今年のスクエニ系コミックの展望を総括しておきたい。

 昨年のスクエニコミックでは、中心雑誌であるはずの少年ガンガンが(『鋼の錬金術師』以外)まるでぱっとせず、むしろ『まほらば』『ぱにぽに』のアニメ化が成功したWINGやGファンタジー、予想外の健闘が光ったヤングガンガンなど、ガンガン以外の雑誌の健闘が光った一年であった。そのため、スクエニ系コミックの主流がガンガン以外の雑誌に移りつつある気配が感じられたが、今年になってその動きがさらに顕著になると思われる。
 早くもGファンタジー連載の『壮太くんのアキハバラ奮闘記』のアニメ化が決定しているし、『ぱにぽに』の再アニメ化の声も高い。まずGファンタジーについては安定した人気が期待できる。変動の激しいガンガンWINGについてはまだ未知数だが、中核となる連載は今のところ健在なので、その上で新連載がいくつか成功すれば、昨年同様の積極的な誌面作りが期待できるだろう。ここ最近のWINGの読み切りは他誌に比べてクオリティが高く、そこからの新連載が成功する可能性は大きい。ヤングガンガン・ガンガンパワードも今の状態を維持すれば昨年同様の充実した誌面が期待出来る。

 対して、唯一不安が大きいのがガンガンである。連載本数が少ない上に新連載が未定なので、今後の雑誌作りが見えてこない。現行の連載も決して面白いとは言いがたい。アニメ版の『鋼の錬金術師』が完結し、これ以上『鋼』で雑誌を維持することが難しい点も厳しい。個人的には、ポスト『鋼』として唯一期待できる『ソウルイーター』の奮闘と、質の高い個性的な新連載の早期投入を望みたいところである。


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