<スクエニ系コミック2007年展望(後編)>

2007・1・2

*前編はこちらです。

<ヤングガンガン>
 2006年を通して堅調だったヤングガンガンですが、2007年もかなり期待できそうです。ヤングガンガンは、元々新連載に関して非常に積極的で、常に新連載の本数が多く、来年も新しい作品に期待できそうです。

 2006年から継続して連載する作品では、初期からの定番の人気連載に加え、比較的後発で始まった雑誌の中堅どころの作品、例えば「死がふたりを分かつまで」「JACKALS」「ムカンノテイオー」なども引き続き健闘が期待できます。中でも、「ムカンノテイオー」は、テレビ局の仕事を描く「職業もの」で、従来のヤングガンガンのカラーとは異なる、一般向けとも言える青年誌的な作品で、初期の頃は不安でもあったのですが、実際にはかなり面白く描けており、雑誌に定着した感があります。他のスクエニ系姉妹誌と異なり、このような一般向けのカラーの作品でも受け入れられるのが、ヤングガンガンの強みであると言えそうです。
 そして、年末より始まった、「ウルトラバロック・デプログラマー」「キズナ」の2作品も、(ファンタジーやSFの要素はありますが)どちらかと言えばこちらに該当するような作風で、連載開始時の出来も悪いものではなく、これまた期待できるかも知れません。さすがに、ヤングガンガンの読者層を考慮すれば、大きな人気は出ないかもしれませんが、それでも雑誌の中堅で頑張ってくれるのではないか。

 一方で、それとはまったく正反対の方向性のマンガとして、”前代未聞の萌え麻雀”「咲 -saki-」の存在もあなどれません。2006年末に単行本も発売され、一部読者の間で大ブレイクを巻き起こしましたが、2007年はもう雑誌の看板のひとつとして大いに活躍が期待できます。

 そして、このところの人気連載の充実ぶりを見るに、2006年の「すもももももも」に継ぐアニメ化作品の登場も期待できそうです。候補としては「黒神」「BAMBOO BLADE」あたりが筆頭で、「ユーベルブラット」「WORKING!!」あたりが次点でしょうか。個人的な予想ですが、2007年内、秋頃にはこれらのいずれかがアニメ化してもおかしくないと考えています。その後の2008年には、いよいよ「咲 -saki-」の出番でしょうか(笑)。


<ガンガンWING>
 ガンガンWINGは、2006年の大幅な連載陣の変化、とりわけ看板だった「まほらば」の終了と、年内を通して行われた「一年間連続新連載」によって、大きく誌面が様変わりしました。しかし、良質の新連載は多くなく、誌面の質はかなり崩れてきた感があります。2007年は、それでもまだ堅調な長期連載陣と、数少ない新連載の良作とを組み合わせて、誌面を構成していくことになりそうです。

 具体的には、長期連載陣の「dear」「瀬戸の花嫁」「機工魔術士-enchanter-」「ショショリカ」「ひぐらしのなく頃に解 目明し編」あたり、新連載では「ちょこっとヒメ」「東京☆イノセント」、そして小林尽の「夏のあらし!」も合格でしょう。これらが誌面の中心となり、中でも、すでにアニメ化が予定されている「瀬戸の花嫁」を全面に押し出して運営することになるでしょう。「瀬戸の花嫁」のアニメについては、元々原作が一般層にも幅広く受けている作風で、告知されたアニメの設定画も悪いものではなく、かなり好意的に期待できるのではないかと思われます。

 ただ、上記以外の連載陣があまりにもぱっとせず、連載本数も増えておらず、まだまだ力のある連載が求められます。一年間連続新連載の後、2007年2月号より始まった新連載である「東京魔人学園剣風帖 朧」「今印」も正直いまひとつで、まだ不安が残ります。ただ、その次号より始まる予定の「ネクロマンシア」は、これまでWINGでいくつかの安定した読み切りを残してきたはましんによる新連載で、これはかなり安定した作品が期待できそうです。ただ、仮にこれが成功しても、まだ力のある連載陣は不足しており、同様の連載をいかに確保するかが2007年WINGの鍵を握ることになりそうです。


<Gファンタジー>
 このところのGファンタジーは、大きな動きがなく、特に新連載がおしなべて少ない状態が続いています。2006年では、わずかに「Pandora Hearts」と「黒執事」のふたつが、新連載として成功しましたが、それ以外はほとんど新しい作品が出てきませんでした。今では、このふたつの新連載は、人気を得て雑誌に完全に定着しているばかりか、センターカラーなどで大きく扱われることも珍しくなく、編集部もこのふたつを期待作として大きく扱っているようです。しかし、それは、このふたつ以外にこれといって新鮮な作品がないことの裏返しとも言える状態であり、力のある連載がさらに求められる状況です。

 しかも、このところ、雑誌を支えてきた定番長期連載が多数終了を迎えつつあり、それを補うための新連載は絶対に必要です。2006年中に「現神姫」「阿佐ヶ谷Zippy」が終了し、長期連載ではないものの「たまごのきみ」も先日終了、そして2007年には、すでに最終盤を迎えている「E'S」や「夢喰見聞」も終了することが予想される状態で、早期にかなりまとまった新連載が必要なことは明白でしょう。

 実は、すでに今の段階で、4つの新連載の告知が掲載されています。具体的には、2007年1月号より、「憑かれて候」「テイルズオブブレイカー」「白木苺新連載(タイトル未定)」「春季限定いちごタルト事件」の4つの連載が順次始まる予定です。しかし、ざっと予告を見たところ、期待できそうな作品が少ないのが正直なところです。

 まずは、すでに連載第1回が掲載された「憑かれて候」ですが、どうにもさほどの面白さは感じられませんでした。しかも短期連載で終了予定です。次の「テイルズオブブレイカー」は、携帯で出ているテイルズシリーズのコミック化らしいですが、さすがに定番すぎるRPGのコミック化ということで、さほどの目新しさは感じられません。そして、残りのふたつは短期連載で、前述の「憑かれて候」と合わせて、3つも短期連載があるのです。4つのうち3つが短期連載では、さすがにこれからの誌面を担う戦力として期待するのは難しいでしょう。まるで2006年のWINGでの「一年間連続新連載」のようです。正直、この4カ月の新連載攻勢だけで、長期連載が次々終了を迎える誌面を補うことは不可能で、その後にさらなる新連載の必要があるのではないでしょうか。今年は、このGファンタジーが、ちょうど前年のWINGのように、誌面に大きな変化が生まれる雑誌になるような気がします。

 そしてもうひとつ、「アキハバラ奮闘記」のアニメ化ですが、これはいつ行われるのか現時点ではまったく分からず、今のところ戦力としては未知数です。まさか立ち消えになることはないと思いますが、早いうちになにか告知をする必要があるでしょう。


<全体総括>
 総じて、堅調であるヤングガンガンをのぞいて、いずれの雑誌も、力のある新しい連載が必要な状態であることは間違いないでしょう。2006年において、新連載が少なかったり、あるいは新連載攻勢が成功しなかったりした、そのツケが2007年に回ってくるような気がします。

 まず、中心雑誌のガンガンと、その増刊誌であるパワードですが、ガンガンの「ブレイド三国志」、パワードでは大量のゲームコミック新連載と、どちらでも編集者の企画能力を疑わざるを得ないような企画マンガが多く、2007年の雑誌作りにも不安が残ります。特に、「ブレイド三国志」という史上稀に見る珍奇な企画が、2007年に本連載化されるとなると、それはあまりにも問題です。まずは、このあたりでガンガンの動向に注目が集まります。
 対して、ヤングガンガン、WING、Gファンタジーの3つは、それぞれ独自の手堅い誌面作りを行っているようですが、ヤングガンガン以外はいまひとつふるわず、2007年での巻き返しが待たれるところです。現時点では、どの雑誌でも定番の人気連載の何本かは健在であり、いきなり雑誌が危機に陥るような状態ではないのが幸いです。その分、今のうちに体制を充実させる必要があると言えるでしょう。

 そしてもうひとつ、スクエニ作品のアニメ化についてですが、2007年は、アニメ化作品の少なかった前年よりも数が多く、対外的にもかなりの話題を呼びそうで、それ自体は朗報と言えます。特に、ガンガンの「ながされて藍蘭島」、WINGの「瀬戸の花嫁」は、どちらも割と期待してよいのではないでしょうか。

 ただ、それが雑誌の興隆に繋がるかは少々疑問です。これまでのアニメ化でも分かるとおり、アニメ化で原作コミックの売り上げが伸び、一時的に雑誌の部数が伸びる効果は認められますが、それが他の連載作品の人気までは反映しないことが大半です。雑誌離れが完全に定着した昨今、アニメ化で雑誌が売れても、アニメ作品以外を読む人は少なく、アニメが終われば部数も元に戻ってしまうことがほとんどでしょう。スクエニ系は、一旦連載のひとつがアニメ化すると、そればりが表紙になったり大々的な特集が組まれたりと、過大な扱いをされるケースが非常に多いのですが、そのようにアニメ化ばかりに頼る姿勢は問題でしょう。

 特に、一部の人気作に頼りがちなガンガンは心配です。「ながされて藍蘭島」は、「鋼の錬金術師」や「スパイラル」とは異なるイメージの作品で、これだけがガンガンのイメージを代表するとは考えにくいマンガです。それがガンガンの表紙とトップを独占し、そんな偏ったイメージが全面に出てしまう雑誌にはしてほしくないものです。


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