<スクエニ系コミック2009年展望(後編)>

2009・12・15

*前編はこちらです。

<Gファンタジー>
 2008年のGファンタジーは、「隠の王」と「黒執事」の二大アニメが雑誌の中心となり、特に後者の「黒執事」の人気は凄まじく、後半になるにつれてほとんど「黒執事」一色となりました。2009年もこの状況は変わりそうもなく、いまだアニメが放映中であることもあり、まず間違いなく「黒執事」一色となるでしょう。それに加えて、新たにアニメ化が決まった「Pandora Hearts」も雑誌の中心的存在になると思われます。
 「黒執事」も「Pandora Hearts」も原作の連載は極めて好調であり、これらの作品については申し分ないのですが、しかし雑誌全体の連載ラインナップには物足りなさがあります。これらの連載を中心とした上位の人気作品は、どれも非常に堅調なのですが、それらは合わせてもぜいぜい6〜7作品程度であり、それ以外のマンガのラインナップが極めて頼りないのです。作品の内容だけでなく、作品数自体も少なくなっており、最近では連載本数が20本を大幅に割り込むことが当たり前になりました。

 6〜7作品でも充実した作品があれば十分、という見方も出来ますが、それらはいずれも長期連載の定番ものばかり。ここ数年の新連載でそれらと肩を並べるほどの作品がいまだ登場せず、最後に大ヒットしたのが、2006年に開始された「Pandora Hearts」と「黒執事」という状態なので(つまり、今最大のヒットを記録している「黒執事」以降の作品で、成功したものがあまり見当たらない)、やはり新規作品の弱さが目立ちます。ミステリー小説を原作に持つ「春期限定いちごタルト事件」などは例外的にいい作品と言えますが、これは不定期のシリーズ連載で、毎号見られないのが辛いところ。夜麻みゆきの「トリフィルファンタジア」は、偉大なる作者の復活ということで期待したいのですが、これもページ数の少ない小品にとどまっています。2007年の「まじかる無双天使 突き刺せ!! 呂布子ちゃん」「キューティクル探偵因幡」あたりが、数少ない成功と言える作品かもしれません。

 また、前年の2008年では、「ひぐらしのなく頃に 皆殺し編」「うみねこのなく頃に Episode2」の竜騎士07原作2作のみが、雑誌に定着した作品となり、オリジナルの新規連載の弱さがさらに際立ってきました。

 このような状態なので、やはり新連載の強化は2009年でも必須と言えます。ここ最近は、どういうわけか新人による短期シリーズ連載が多く、あまり長い連載が見られないのが大きなネックです。そのため、あまり盛り上がりのないうちに連載が終わってしまうケースが大半です。最初から通常の連載を任せても よいのではないでしょうか。2009年は、「黒執事」と「Pandora Hearts」の2大アニメ作品で雑誌自体は安泰でしょうし、その間に新しい戦力の確保に今まで以上に力を入れてほしいと思います。個人的には、「うたた日和」が早期に帰ってきてくれるとうれしい。


<ガンガンWING>
 ガンガンWINGは、今のスクエニでは突出して厳しい雑誌であることは間違いないでしょう。安定して読める人気作品が、おそらく片手の指で数えるほどしかなく、しかもそんな作品の中でアニメ化もされた最大人気作品「瀬戸の花嫁」が長期休載中、2008年に入って「dear」も「機工魔術士」も終了し、「機工魔術士」の外伝の掲載で何とか命脈を保っている、と言っても過言ではありません。しかし、これも新年早々終了予定であり、今後さらにラインナップは危機的な状況となります。

 2009年も質の高い新連載の投入が急務なのは間違いないところですが、それに加えて、このところ行っている方針を今一度考え直す必要もあるのではないかと思われます。すなわち、「王道系(バトル系)ファンタジーマンガ」と「女性に向けた作品」のふたつです。かつて(2006年より前)のWINGが、いわゆる「ゆる萌え」なマンガが主流を占める路線であり、とりわけ「まほらば」が長らく看板だった影響で、男性読者にかなり傾いてしまった雑誌のバランスを戻そうとする施策なのかもしれませんが、残念ながら成功している作品は多くなく、むしろそれらの作品が散発的に投入されることで、連載ラインナップに統一感がなくなってしまいました。結果として雑誌のカラーが不鮮明になり、雑誌全体で見てもあまり魅力的なイメージではなくなってしまったように思えるのです。

 このところの新連載を見ても、そのジャンルの作品で成功したと言えるのは「戦国ストレイズ」のみ。しかも、このマンガの作者の七海慎吾は、かつてWINGでも長期連載(「KAMUI」)を連載していたベテランの作家であり、新人の作家で大きく成功した作家がまだ見られません。むしろ、かつてのゆる萌え路線をそのまま引き継ぐような「アリスのお茶会」(大川マキナ)の方が、開始早々から優れた作品になっていると思われます。(が、この作品は近々終了するとの話も・・・。)
 今後の新連載で、今の路線の作品をさらに採り入れるにしても、まず雑誌のカラーに統一感を出すことが必須ではないかと思うのです。個人的には、ベテラン作家の実力派作品である「戦国ストレイズ」は別格扱いとして、それ以外はWING的なカラーの連載をある程度増やした方がうまく行くのではないかと思っています。もう最近ではゆる萌え系の作品も残り少なくなり、ほぼ数作品しかありません。これをある程度取り戻すことが急務ではないかと思われます。

 そして、2009年は、アニメ化が決まった「夏のあらし!」を中心に雑誌運営をすることは間違いなさそうです。原作は非常に優秀な連載なので、アニメ化自体は妥当としても、その開始時期が早すぎるのはやはり気になります。できれば、終了後も外伝が掲載された実力派作品「機工魔術士」にも日の目が当たると良いと思っています。


<ガンガンONLINE>
 2008年において、既存の雑誌以上に目立った成果を残したウェブ雑誌「ガンガンONLINE」ですが、2009年にもやはり一層の期待がかかります。
 まず、できれば本連載作品をもう少し増やした方がよいでしょう。これまでも、既存の連載作品はどれもかなりの仕上がりに達していますが、4コマ以外のページ数の多いストーリーマンガの数がまだまだ少ない状態です。紙媒体の雑誌と比べても、連載本数はまだまだ少ない。このあたりのラインナップの強化を図れば、スクエニの第六の雑誌としての体裁は十分に整います。
 さらには、いまだかなりの重さを感じるサイト閲覧体制をなんとか改善したいところです。イラスト一枚見るのにいちいち読み込みが入るのは感心しません。もっと軽い形式でとりあえず気軽に読める体制を作り上げるべきではないでしょうか。トップページのデザインもちょっと見づらさを感じるような気がします。

 もっとも、およそ欠点と言えるのはそれくらいで、それ以外はこのままの方針でまだまだ運営できるような気がします。特に4コママンガの前途が有望です。これまでの4コママンガの充実ぶりと新人発掘の積極性から見ても、今後このジャンルがさらに発展していくのではないかと期待が持てます。短い不定期の間隔でも更新できるウェブ雑誌と4コママンガの相性の良さも見逃せません。これまでのスクエニでは、4コママンガの良作は多いものの、連載本数自体は限られていました。しかし、そのような点は、このガンガンONLINEの登場で変わろうとしています。

 マンガ以外、とりわけ小説の発展にも期待が持てそうです。個人的には、もっと掲載本数を増やして、これだけで小さな規模の「小説雑誌」のような形態を取ってもよいと思っています。他社が発行している、「電撃文庫MGAZINE」や「ザ・スニーカー」のようなライトノベル雑誌のウェブ版のようなものが出来れば、スクエニのライトノベルも発展していくのではないでしょうか。そこまでサイトを発展させてもいいのではないかと思いますし、現状でも連載に加えて読み切り小説も掲載され始めたところを見ても、実際にその方向へと向かう兆しは見られると思います。


<全体総括>
 とりあえず、2009年も前年以上にアニメ化の話題が中心になることは間違いないでしょう。スクエニの方針としてアニメ化を恒常的に行って雑誌を盛り上げる戦略に出ていることは明らかですし、これまで同様にどの雑誌もアニメ化作品中心の誌面構成になるのではないでしょうか。特に、最大人気を誇る「鋼の錬金術師」の再アニメ化を行うガンガンや、2つもアニメ化が予定されているヤングガンガンなどは、特にアニメ化に依存した作りとなりそうです。一方で、落ち込みが激しいガンガンWINGや、少数の定番作品が中心のGファンタジーも、やはりアニメ化作品が中心となるのは避けられないでしょう。

 しかし、これらのアニメ化予定作品の中には、まだ時期的に中途半端なものがかなり多く、アニメがうまく制作出来るかひどく疑問を感じずにはいられません。これほど多数のアニメ化連発攻勢は、やはり無理があるのではないでしょうか。今年は、昨年以上にこの路線の成否が試される一年になるだろうと推測します。また、異例とも言える新シリーズでの再アニメ化となる「鋼の錬金術師」の動向も見逃せません。一体どんな内容になるのでしょうか。

 その一方で、どの雑誌も総じて新規連載が停滞気味なのが気がかりなところです。昨年同様に有望な新連載が待たれますが、しかし今年は今のところヤングガンガン以外の雑誌では目立った新連載攻勢が見られません。そのため、まだ完全には今後の新連載の予測ができないのですが、出来ればどの雑誌も早期に新連載を企画を立てた方がよいと感じます。特に、昨年新連載があまり成功できなかったガンガンや、雑誌の落ち込みが激しいWINGなどは、本当に急務であると言えます。

 雑誌の中では、やはりそのWINGの動向が本当に気になります。実際、ここ数カ月のWINGの落ち込みは、これまで以上に厳しい。一部の定番人気連載以外に、本当に読めるものが少なくなってきました。「夏のあらし!」のアニメ化で雑誌をもたせるつもりでしょうが、その間に有望な新人の新連載をどんどん積極的に打ち出すべきだと思います。これまで、この雑誌は有望な新人を何人も逃してきたような気がするので、余計にそう思います。

 それとは対照的に、今後に純粋に期待できるのがガンガンONLINEで、今やスクエニで最もその動向が注目される雑誌となっています。まず、最も気になるのは、コミックスの刊行でしょう。いずれコミックスが出されるとは思うのですが、その時期や選ばれる作品のタイトルなど、注目すべき点は多い。久々に衛藤ヒロユキや小島あきらの新刊が出るのかもしれません。そして、新人による4コママンガの新刊や、あるいは連載ライトノベルの新刊もかなり楽しみなところです。コミックスの売り上げが、ガンガンONLINEの今後にも大きく影響すると思いますし、いい結果が出ることを期待しておきたいと思います。


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