<スクエニ系コミック2010年展望(前編)>

2009・12・14

*後編はこちらです。

 さて、2009年の総括に引き続き、2010年の展望に移りたいと思います。

 2010年のスクエニですが、まずは前年以前から引き続いてのアニメ化攻勢に注目しなければなりません。前年は、「鋼の錬金術師」の再アニメ化や「咲 -saki-」のヒットなど話題が多かったですが、今年は昨年以上にこれはと思えるアニメ化作品が多く、期待できるものが多いのではないでしょうか。特に、ヤングガンガン勢のアニメ化作品、「はなまる幼稚園」「WORKING!!」「荒川アンダーザブリッジ」の3つは、いずれも原作からしてかなりの良作で、しかもアニメ制作も有力なスタッフが担当しており、どれも本気で期待できるのではないかと思います。
 また、それとは別に「鋼の錬金術師」のアニメの終了も、ひとつ大きな話題となりそうです。すでに終了時期は決まっているようですが、どのような終わり方になるのか、こちらも最終盤を迎えている原作の方はどうなるのか、など注目すべきところは多く、普段スクエニを読まないマンガ読者にとっても、この「鋼」という一時代を作り上げた作品の終了は、今年一番の話題になるのではないでしょうか。

 雑誌の方でも、まずガンガンはその「鋼の錬金術師」の終了で持ちきりになりそうです。また、その「鋼の錬金術師」が終了したのちの誌面の動向も見逃せません。「鋼」以外の人気作もほぼ既にアニメ化は完了しており、それらの雑誌の核となっている作品以外で、なにか新しい期待作が出てくるのか。あるいは、それら人気作の再アニメ化などでまた誌面を維持していくのか。そのあたりの動向に注目したいと思います。

 ガンガン以外の雑誌では、前年(前々年)に創刊されたガンガンJOKER、およびガンガンONLINEの動向がまず注目です。JOKERは、休刊雑誌から移籍してきた作品で、すでにアニメ化されている作品がいくつかありますが(「うみねこのなく頃に」「夏のあらし!」)、このJOKERからの新作において、さらなる人気作品が出てくるかどうか。小島あきらや藤原ここあなどの旧WINGからの人気作家陣だけでなく、このJOKERからの新人作家にも有力なものが多く、それらの動向に最も注目すべきだと思います。
 一方でONLINEでも、膨大な掲載本数の中で意欲的な作品も幾本も見られるようで、こちらも面白い。「舞勇伝キタキタ」や「うみねこのなく頃に EP4」のような一部の人気作をのぞき、看板的な作品が少なく、膨大な連載本数に埋もれてあまり注目されていない作品が多いのですが、そんな中でこれはと思う作品を積極的にピックアップしていきたいと思います。

 ヤングガンガンとGファンタジーは、どちらもいい意味で堅調と見てよさそうです。特にヤングガンガンの奮闘ぶりは相変わらず顕著で、今年もまだまだアニメ化攻勢が止まらず、しかもその後に控える新作にもまだまだ有力な作品がいくつも見られるという状態です。新興のJOKERやONLINEの健闘が著しいとはいえ、ヤングガンガンの質の高さは、いまだそれを上回るところがあると思います。Gファンタジーも、雑誌の中核となっている作品が健在で、「黒執事」のアニメ二期も控えており、堅調と言えるのですが、ここ最近の新作でこれはという作品が少なくなっているのが、やや寂しいところです。この1年で雑誌の中核となりえる新作が待たれる状態だと思います。

 最後に、「ガンガン戦(IXA)」という歴史に特化した新雑誌も見逃せません。今はまだ半年に1回ペースの発刊のようですが、これまで軌道に乗って発刊ペースが速まるとなると、スクエニの雑誌数はさらに増えることになります。今でさえ、4つの紙雑誌と膨大な更新量を誇るONLINEを誇り、これだけでも非常に多い状態なのですが、さらなる拡大を目指すのか。マンガの質的には、全体を通して今は相当健闘しているだけに、これ以上の拡大で質が保てるのか気になるところです。


 
<少年ガンガン>
 2010年の少年ガンガンは、まずは何を置いても「鋼の錬金術師」がどう終わるかということに話題が集中するのではないでしょうか。今の「鋼の錬金術師」(原作)は、ストーリーがクライマックスに達してから長いですが、いよいよ今年1年内には終わりそうです。それも、現在放映中のアニメ新シリーズが、全5クール予定で2010年6月に終了と予定が決まっていることが告知されています。となると、この原作「鋼の錬金術師」も、それに合わせて終わりを迎えることは、十分に考えられます。あるいは、それからしばらく置いて終了するようにセッティングされているか。アニメ終了前に原作が終了という可能性もないわけではありません。いずれにせよ、長くスクエニが進めてきた「鋼」コンテンツの総決算とも言える今回のアニメ終了をひとつの契機として、原作も終わるのではないか。そう思うのです。「鋼の錬金術師」は、クライマックスを迎えている今でも高い質を保っており、このままきれいに最終回を迎えてくれると思っていますが、果たしてどのような結末を迎えるのかまではまだ想像がつきません。一読者として楽しみに待ちたいと思います。

 そしてもうひとつ、注目すべきは、「鋼の錬金術師」が終わったあとのガンガンです。今のガンガンは、一時期の本当に「鋼の錬金術師」に頼り切っていた頃とは異なり、連載の数と雑誌のページ数は大きく増大し、コンテンツの量ではまったく安泰です。よって、「鋼の錬金術師」が終わったからといって即座に雑誌が揺らぐことはないと思いますが、それでも長らく雑誌を支えてきた最大の看板作品が消えてしまうことは、雑誌にかなりの変動をもたらすと思われます。
 それに、最近のガンガンは、ここ数年特に新規連載が奮わず、一部の長期人気作品に多くを依存している状態です。「ソウルイーター」「ながされて藍蘭島」「屍姫」「とある魔術の禁書目録」などの人気作品は、アニメ化をすでに終えていますし、それ以降の作品でこれはというものがない。「HEROMAN」というメディアミックス企画が、今年ボンズによるアニメ化が決まっているようですが、これはガンガンでのコミック連載がまったく奮わず、あまり期待できないように思われます。数少ない有望な作品として、スパイラルの城平京原作の新作「絶園のテンペスト」、土塚理弘原作の「BAMBOO BLADE B」、ベテラン作家による少年マンガの快作「RUN day BURST」などに期待したいと思います。


<ヤングガンガン>
 ヤングガンガンは、来年度もさらなる健闘が期待できそうです。アニメ化予定作品で有望なものがいくつも揃っている上に、その後に続く新興の作品でもまだまだ期待できる作品が出続けているからです。この雑誌の良作を次々と手がける企画力は本当に侮れません。

 アニメ化作品では、「はなまる幼稚園」「WORKING!!」「荒川アンダー ザ ブリッジ」の3つは、どれも本当に期待できそうです。まずは、早速1月からの放映が決まっている「はなまる幼稚園」。原作が非常な良作の上に、あのガイナックスによる制作で監督も水島精二と実力のあるスタッフが手がけており、出てきている作画も良好で、これがまず楽しみです。4月から放映予定の「荒川アンダー ザ ブリッジ」も、あのシャフトによる制作で、中村光の秀逸なギャグをどのように料理するのか、こちらも負けず劣らずの楽しみです。同じく4月から放映予定の「WORKING!!」とともに、ヤングガンガンのアニメ化ラッシュでまずは話題が盛り上がりそうです。
 それと、先日終了したアニメのコミック連載「DARKER THAN BLACK −漆黒の華−」も引き続き注目できます。アニメの評価も高いですが、ヤングガンガンのコミック版もすこぶる評判が良く、アニメは終わったもののこちらはどのような決着が付くのか、目が離せません。

 そして、さらなる新興の作品としては、長期連載ながら最近更なる盛り上がりを見せている「死がふたりを分かつまで」、こちらも既に長期連載でハードな戦争ドキュメンタリー「FRONT MISSON DOG LIFE & DOG STYLE」、まったり風味の高校生徒会コメデイ「んぐるわ会報」、しっかりした原作者と作画担当者のタッグによる幕末新選組もの「新選組刃義抄 アサギ」などが挙げられます。この中で最有力なのは、やはり「アサギ」でしょう。しっかりした構成の新選組ものとして、さらには最近大きな盛り上がりを見せている「歴女」(歴史好きのマニア女性)ブームに乗せようというスクエニの試みが感じられ、もし成功すればメディアミックス展開も夢ではなさそうです。これらの有望作品の展開にも注目していきたいと思います。


<Gファンタジー>
 ここ最近のGファンタジーは、スクエニ雑誌の中で最も動きがおとなしく、良くも悪くも安定した雑誌になっていると言えるでしょう。中心雑誌でなにかと話題のガンガン、次々とアニメ化作品でにぎわうヤングガンガン、新創刊で最大の注目を得たJOKERなどとはやや距離を置いて、ひとりマイペースでやっているように見えます。そして、この動きは2010年もさほど変わらないように思えます。

 しかし、その中でも、スクエニでもトップクラスの人気作品で、アニメ二期が予定されている「黒執事」だけは、俄然注目度の高い状態が続いています。女性読者を中心に圧倒的かつ不動の人気を確保している本作、前回のアニメも視聴者には評判が良かったようで、今回の再アニメ化も期待されているようです。今年もまたこの「黒執事」を中心に雑誌が回ると見て間違いないでしょう。

 「黒執事」以外でも、人気のある定番作品の多くが安泰のようです。「ぱにぽに」隠の王」「ZOMBIE-LOAN」「カミヨミ」「キューティクル探偵因幡」「鳥籠学級」、スクエニでも屈指の優良ゲームコミック「ひぐらしのなく頃に 皆殺し編」「うみねこのなく頃に Episode2 Turn of the golden witch」と、この中では「ZOMBIE-LOAN」「カミヨミ」がそろそろクライマックスかなといった程度で、まだまだ連載は続きそうです。この中では、個人的にはあの秀逸なギャグマンガ「キューティクル探偵因幡」に、そろそろ何かしら展開があってほしいと思います。唯一、鈴木次郎の」「まじかる無双天使 突き刺せ!! 呂布子ちゃん」の連載が、同作者の「うみねこ」連載との兼ね合いで長期休載状態に入ったのが、若干気になるくらいでしょうか。

 ただ、これに続く新連載で、ここ最近ぱっとしたものがなく、今年も今のところあまり有望な作品が見当たらないのが、少々懸念されるところです。それでも、2010年に入ってすぐに、新人による連続読み切りが3号連続で予定されているようですが、これが即戦力になるかというと難しいところです。ここ最近のGファンタジーは、新人による読み切りや短期連載は多いのですが、それが長期の安定した連載につながらないことがほとんどで、このまま新しい戦力が出てこないようだとちょっと心配が増えてきます。まだ定番連載が安泰なうちにいい作品を輩出してほしいものです。

 最後に、「黒執事」以外のメディアミックスとして、電撃文庫のライトノベルのコミカライズ「デュラララ!!」のアニメ化が1月から予定されています。他のアニメ化作品ほど話題にはなっていないようですが、コミック版の出来がよく、原作の人気もあり、期待できるのではないかと思います。


 続きは後編でどうぞ。こちらです。


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