<スクエニ系コミック2010年展望(後編)>

2009・12・17

*前編はこちらです。

 それでは、後編では残りの雑誌について記述していきます。


<ガンガンJOKER>
 昨年新創刊されたガンガンJOKERは、スクエニでも最もコアな力のある連載を集めており、かつ新人の新連載にも有力なものが多く、まず安泰と見てよさそうです。当初は連載本数がかなり少なかったのですが、創刊1年でラインナップも増してきて、雑誌の形はほぼ整ったと言えるでしょう。

 どれも有力な作品ばかりですが、中でも最も注目されるのは、やはりスクエニでも最大のヒットコンテンツである「ひぐらしのなく頃に」「うみねこのなく頃に」の竜騎士07原作の2大ゲームコミック、そして既に2回に渡ってアニメが放映された「夏のあらし!」、小島あきらによるガンガンONLINEからの移籍作品「わ!」、歴女ブームの後押しでさらに人気が高まっている「戦國ストレイズ」、原作が劇場映画化されさらなる展開も期待できるライトノベルのコミック化作品「”文学少女”と死にたがりの道化」あたりでしょうか。同人ゲームからのコミック化「ひまわり」や「コープスパーティー」、晴瀬ひろきのスクエニでの新作「ラブ×ロブ×ストックホルム」等の作品も控えています。小島あきらの体調不良によって、これまで最大の看板として連載していた「まなびや」が休載となってしまったのは痛いのですが、それでもなお良作の数は揃っています。

 さらには、今年は新人による新規作品の展開に期待したいところです。「ヤンデレ彼女」「黄昏乙女×アムネジア」「プラナス・ガール」の3作は、創刊号からすでに高い人気を獲得していますし、その後の新連載でも「レール・エール・ブルー」「死神様に最期のお願いを」等、期待できそうな作品は多い。これらの中でも、個人的に最も期待しているのは、松本トモキによる女装少年コメディ「プラナス・ガール」です。昨年の段階で既に巻頭カラーを獲得するなど、もう上位クラスの人気作品の地位を確立しているようですが、今年はさらなる展開を期待したい。このさわやかなイメージの学園コメディは、スクエニの新たなる女装少年ものとして非常に楽しめます。みなさん、「プラナス・ガール」を、「プラナス・ガール」をよろしくお願いいたします(笑)。

 また、昨年末には、WINGからONLINEへと移籍して終了した「ちょこっとヒメ」のカザマアヤミの新作「はつきあい」も始まりました。これもまた今年大いに期待できる作品となりそうです。


<ガンガンONLINE>
 拡大傾向が止まらないスクエニの今を象徴する存在、それがガンガンONLINEです。
 とにかく膨大な連載本数を抱えており、コミックスの刊行点数も一気に増大しました。雑誌の看板となるような作品こそ少ないけれども、意欲的な作品が数多く見られ、その数の多さでは最も注目すべき存在です。4コママンガに力を入れ、良作を輩出する傾向もまだまだ続きそうです。

 その中でも特に人気がありそうなのは、衛藤ヒロユキの「魔法陣グルグル」からのスピンオフ「舞勇伝キタキタ」、うみねこ最新エピソードのコミック化「うみねこのなく頃に Episode4:Alliance of the golden witch」、数多い4コママンガの中でも現時点で最も人気が高そうな「生徒会のヲタのしみ。」、前年末に待望のコミックスが発売された「ひゃくえん!」あたりでしょうか。個人的には、方條ゆとり久々のオリジナル「学園ナイトメア」、人気イラストレーター・しめ子によるうじゅ新シリーズ「からす天狗うじゅ 和みっくす」、これもまたPCでの同人推理ゲームのコミック化「湖岸の盲点」あたりにも期待したいと思います。

 また、スクエニのほかの雑誌からの移籍作品でも、まだまだ健在なものは多い。ガンガンからの「マテリアル・パズル ゼロクロイツ」、WINGからの「アホリズム」、パワードからの「ばらかもん」などは、ONLINE移籍後も注目度は高く、これからの発展もありえるかも知れません。

 それともうひとつ、創刊号から延々と毎週更新を続けている「おじいちゃん勇者」(坂本太郎)のコミックス化があるのかにも注目したい。登場時から一貫して不遇な扱いをネタにされてきた坂本太郎ですが、ここにきていよいよコミックスで日の目を見るのか、それともこのまま延々とスクエニに飼い殺しにされるのか(笑)、今年1年見守っていきたいと思います。



 加えて、このところ一気に掲載数が増えてきた小説にも注目です。今ではスクエニでの小説掲載場所となってきたONLINE、「短編小説カーニバル」の名で新人による競作企画が行われるなど、こちらの展開も積極的です。今現在の注目作は、日日日(あきら)によるスクエニでの新作「うさぎさん惑星。」あたりでしょうか。


<ガンガン戦(IXA)>
 前年の最後になって創刊されたこの「ガンガン戦(IXA)」、今年も発展するかどうかはまだ未知数であると言えます。次回の発売が半年後ということで、このまま発刊ペースが上がって雑誌として定着するのか、それとも数号のみで終わるのか、この1年で決まるような気がします。

 創刊号では、掲載作品の量・質ともに中々のもので、雑誌としていきなり形が整っていましたが、その多くが読み切りで占められ、とりわけスクエニ他誌の連載の外伝が雑誌最大の売りともなっていました。これらの作品に良作が多かったのですが、一方で連載作品はまだ数が少なく、内容的にもいまひとつ目立つものはありませんでした。これから先、雑誌を存続させることを考えた場合、連載作品の拡充こそが急務であると言えます。
 また、総じてスクエニで連載中、もしくは経験のある実力派作家の読み切りに良作が多かったのですが、これらの作家がこの雑誌で連載を行うことがあるのか。もし彼らがこの雑誌に活躍の場を移して連載するようになれば、大きな戦力になると思うのですが、そういった動きがあるかどうかにも注目です。

 また、スクエニ他誌では非常に盛んなメディアミックス作品ですが、この雑誌ではまだ少なく、唯一今年放映のアニメ作品である「戦国驍刃デュラハン-Dullahan-」のコミック版が掲載されているのみ。この作品も今のところ突出しているところが少なく、アニメの人気が未知数なところも合わせて、まだ成功するか分からないのが正直なところです。スクエニゆえに今後他にもアニメとのメディアミックス作品も出てきそうですが、果たしてどうなるか。

 また、内容からして歴女ブームを想定して作られた傾向の強いこの作品ですが、果たしてそのブームがいつまで続くのか、そのあたりにも雑誌に行く末が左右されそうです。歴史ブームが終わった、下火になった場合でも、この雑誌を続けるつもりなのか、それとも立ち消えにして終わるのか。スクエニ側には、この手の時代物にかなりの思い入れがあるようですが、雑誌を定着させるまで力を入れ続けていくのか、そのあたりを見守りたいと思います。


<全体総括>
 以上のように、2010年のスクエニは、活況だった2009年に引き続いて話題が多く、各雑誌もその多くが堅調で、まだまだ好調ぶりは続きそうです。とりわけ、年明けの1月とその後の4月からは、いきなりヤングガンガンからのアニメ化作品で賑わいそうですし、さらには「鋼の錬金術師」の原作・アニメ双方の終了も控え、これが最大の話題になりそうです。年の前半から色々な話題に恵まれそうな状態になりそうです。また、ここ数年のスクエニの戦略を見る限り、後半にもさらなるアニメ化作品が控えてる可能性は高いのではないでしょうか。「黒執事」や「セキレイ」の二期目が決まっているほか、他にもまた新規のアニメ化や、他社に連動してのなんらかの動きがあるかもしれません。

 雑誌も、ガンガンの連載がいまいち奮わないことをのぞけば、それ以外の各誌はみなよく健闘していると思いますし、今年1年も安泰ではないかと思われます。不安定だったガンガンWINGとパワードがガンガンJOKERに変わって安定しましたし、新規連載で期待できる作品が多い点が最も評価できます。今のスクエニで最高の質を誇るヤングガンガンも、まだまだ新しい有望作品を次々と輩出していますし、これらの力のある雑誌が全体を引っ張っていく形になりそうです。

 その一方で、一気に拡大化してきた今の雑誌が、どこまでさらに拡大するのか、そのあたりでちょっとだけ危うさも感じます。既に今の時点でONLINEも含めて5誌、ガンガン戦(IXA)が定着すれば6誌、さらには、ONLINEは通常の雑誌の2倍はあろうかという更新量を誇ります。ヤングガンガンも月2回刊行で、他の雑誌よりコミックスの刊行ペースも早い。かつては一誌のみだったエニックスの雑誌の世界が、ここまで広がってきたのはある種感無量でもありますが、一方で今の時点ですべてを把握する読者も少なくなっていますし(よほどスクエニに思い入れのある一部の読者以外、雑誌の看板作品以外の多くを知らないのではないか)、むしろ個々の作品に対する注目度は下がってきているのではないか。増えたタイトルのひとつひとつをどう読者に周知させていくか、それがひとつの課題となりそうです。


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