<エニックス系サイトの昔と今(前編)>──エニックス系サイトから見るネットの現状──

2006・9・9

*後編記事はこちらです。

 わたしがインターネットを始め、エニックス系サイトを見るようになってから、もう7年になります。自分でもサイトを運営するようになってから、もう5年以上が経ちます。この間、インターネットにも様々な変化があって、それに伴いエニックス系サイトも大きく様変わりしてしまった感があります。ここでは、わたしがかつて訪れたエニックス系サイトの姿を、今のそれと比較を兼ねて紹介してみたいと思います。


・99年当時のガンガンNET。
 わたしがインターネットを始めたのは、1999年の4月です。具体的には、1999年の4月11日です。なんでそんなことを覚えているのかというと、この日(正確にはこの日の翌日)に、ガンガンNETが開設されたからです。当時はPCを所持しておらず、インターネットも「やってみたい」とは思いつつも中々最初の一歩が踏み出せなかったんですが、ここでガンガンの公式サイトが開設されると雑誌の告知で読み、これはもう外せないと思ってついに踏み出しました。その当時は今以上にエニックスマンガにはまっていた時代だったのです。

 実は、開設当時のガンガンNETは、今のそれとはかなり異なっていて、割と素朴な感のあるサイトでした。当時は、公式のサイトでも、このような素朴で手作り感のあるサイトは多かったのです。技術的にもこなれてなく、不必要に重いページとなっていて、しかも開設当初読者のアクセスが殺到したため、夜間(当時は電話回線でテレホーダイの時代)はまともに見られないほど重かったこともありました。
 そして、今と異なり読者の文章投稿を掲載するページがあり(掲示板と異なり、投稿を編集者が管理してサイトに載せる形式)、これが実は大盛況でした。わたし自身、このページが更新されるのを日々楽しみにしていたくらいで、「マイナーだと思っていたガンガンにも、実はこれだけの熱心な読者がいた」ということを鮮明に知ることとなります。


・作品ごとのファンサイトが大盛況。
 ガンガンNETだけではありません。ネットを回って見ると、エニックス系コミックをかなり本格的に取り扱うサイトがたくさんあることを発見します。しかも、作品ごとにファンサイトの中心とも言えるようなサイトが存在しており、そこに大勢のファンが集まって交流を楽しんでおり、そこを拠点に放射状に多くのサイトが繋がっていたのです。

 当時のガンガン系の人気も手伝って、主要な連載作品のほとんどに中心的なサイトが存在していました。
 ほぼ最初に訪れたのが「東京アンダーグラウンド」のサイトである”有楽街”です。これは、作者の有楽さんの半公式とも言えるようなところで、そこで有楽さん本人のイラストが見られたことにひどく感動した記憶があります。インターネットとはこんなことが出来るのかと。

 そして、ネットを巡るにつれて、それ以外の作品の中心的なサイトも次々と見つかりました。「まもって守護月天」(桜野みねね)の”月天招来”あるいは”シャオリング”、「PON!とキマイラ」(浅野りん)ならば”神獣の寝床”、「東京アンダーグラウンド」(有楽彰展)ならば”有楽街”、「突撃!パッパラ隊」(松沢夏樹)の”スットン共和国”、「浪漫倶楽部」(天野こずえ)ならば”天の剣”、「GOGO!ぷりん帝国」(くぼたまこと)ならば”My Favorite Things”、「魔探偵ロキ」(木下さくら)の”竜駆亭”、「新撰組異聞PEACEMAKER」(黒乃奈々絵)だと”ワガママ”、「スパイラル〜推理の絆〜」だと”T・Q・S@GB”といったところでしょうか。これ以外にも、もちろん「ハーメルン」や「魔法陣グルグル」「TWIN SIGNAL」「刻の大地」「アークザラッドII」「ジャングルはいつもハレのちグゥ」「ワルサースルー」などのガンガン系主要作品のほぼすべてで、中心となるようなサイトが栄えていました。なにぶんにもかなり前の話なので、サイト名が思い出せないのが悔しいです。「TWIN SIGNAL」と「刻の大地」は、このふたつを両方扱った、人がたくさん集まったサイトがあったんだけどなあ。なんて名前だったかなあ。

 ガンガン以外に連載された作品でも、もちろん中心となるサイトがいくつもありました。例えばGファンタジーの「最遊記」(峰倉かずや)だと”天竺まであと5分”あたりでしょうか。「エルナサーガ」(堤抄子)の本格的なサイトも目に付きました。ガンガンWINGだと「ナイトメアチルドレン」「まいんどりーむ」(藤野もやむ)や「ワールドエンド・フェアリーテイル」(箱田真紀)、「悪魔狩り」(戸土野正内郎)あたりのサイトも色々ありました。もちろんそれ以外の作家・作品でも、人気のあるものならば、必ずといっていいほどそれを本格的に扱うサイトが見つかりました。

 これらのサイトは、とにかく管理人さんが熱心で、本格的なホームページとなっており、そこに多数の熱心なファンが集まって、盛んな交流が行われていました。そして、非常に重要なのが、これらのサイト間で横のつながりが見られたことです。
 つまり、同じ作品のサイト間だけでなく、エニックス関連ならば異なる作品間でも盛んにリンクが結ばれていたのです。そして、多くのファンの方が、異なる作品同士でも盛んに交流していました。それによって、「エニックス系コミック」というジャンルで、ひとつの「コミュニティ」とも言えるような空間が成立していたのです。これはわたしにとっても非常に居心地がいいもので、まさに楽園のような状態でした。当時のわたしは、深夜のネット時間になると、まず上記の中心サイトをひとつひとつ巡回するのが日課になっていました。


・エニックス全般を扱うサイトの存在。
 もうひとつ重要なのが、エニックスのコミック全般を扱うサイトが存在し、そちらも盛り上がっていたことです。対象をエニックス全般に広げることで、上記のコミュニティの中でも中心的な存在となっていたところも少なくありません。作品ごとに中心サイトがあるだけでなく、それらのさらに中心となるようなサイトがあったのです。
 具体的には、まず「エニックスのお部屋」。これは絶対に外せません。初期インターネット時代においては、まさにエニックスサイトの中心的な存在で、もの凄い数の人が集まっており、個人サイトとは思えないほど掲示板は大盛況。マンガ家からの書き込みも多く見られたようです。加えて、「MINERVAのお部屋」。これは今でも存在する数少ないサイトですが、当時の方が盛り上がっていました。あとは「Second Sight」「胡桃林地区広域圏だより」あたりの存在も大きい。

 これらのサイトでの交流により、エニックスのコミックに集うファンというものが、実はかなりの強固なまとまりをもって存在することを確信しました。「エニックス系のマンガ全般が好き」という読者層が確実に存在しているということ。個人的にはマイナーだと思っていたエニックス系コミックが、実はかなりのまとまったファン層を獲得していることを、ネットで初めて知ることとなりました。これは、この当時のエニックスコミック自体が充実しており、かつ全体的に連載マンガの雰囲気や方向性が似ており、エニックスのマンガ全体でひとつの統一感があったことが大きな理由です。そのために、雑誌全体、出版社全体の作品を愛好する読者が多数おり、そんな読者たちが、インターネットの「同好コミュニティ」に集まって盛んに交流を行っていたのです。

*この当時のガンガンについては、少年ガンガンの歴史(5)エニックスマンガの完成にあります。

 これらのサイトは、その多くがテキスト系、あるいはデータ系のサイトで、内容はかなり本格的なものでした。とにかくコンテンツが充実している。これは、作品ごとのファンサイトにも言えることですが、とにかく相当な管理人の熱意がないと出来ないようなサイトが多かったのです。このことは、今改めて考える必要があります。


・ガンガンヴァーサスについて。
 これは少し遅れた話ですが、2000年にガンガン系全般を扱うトレーディングカードゲーム「ガンガンヴァーサス」が発売されて以降の、ガンガンヴァーサス関連サイトの隆盛にも見るべきものがありました。ガンガンヴァーサスは、そもそも全体的に連載マンガの雰囲気や方向性が似ているエニックス系作品とは相性がよく、ここでもエニックス全般のファン層を集める役割を果たしました。
 数多くのサイトが登場しましたが、そんな中でも中心的なサイトは、紛れも無く「あすみんの雑貨箱」でした。そこは驚くほどコンテンツが充実し、多数の人が集まっていました。ガンガンヴァーサスとはさほど興味の無い読者でも、ここでの交流に惹かれて掲示板に集まっていたほどです。ここもまた、エニックスのコミック全般を扱う中心サイトだったと見てよいでしょう。


 このように、当時はエニックス系コミックサイトが非常に充実していて、わたし自身も、この当時がネットをやっていて最も楽しかったと記憶しています。しかし、これらの楽園のようなコミュニティは、どういうわけか時間が経つにつれて次第に崩れていき、特に2001年を境に一気に崩れ始め、2002年以降は完全に呈を成さなくなります。今では、上で採り上げたサイトのほとんどは閉鎖、消滅してしまい、ほとんど現存していません。なぜこれらが完全に崩壊してしまったのか、後編ではそのあたりを検証していきます。


・おまけ。
 上記のとおり、この当時のサイトは、今ではほとんど残っていませんが、それでもごくわずかに現存しているサイトも存在します。ここでは、今では貴重なそのサイトのいくつか紹介をしてみましょう。


*続きは後編記事でどうぞ。こちらです。


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