<期待できるガンガンオンライン(1)>

2008・10・28

*(2)はこちらです。

 2008年10月から、スクウェア・エニックスは、新しい企画としてウェブコミック雑誌「ガンガンONLINE」(以下ガンガンオンライン)を創刊しました。このガンガンオンライン、これまでもスクエニは既に雑誌を5つも抱えている状態で、さらにウェブコミックまで創刊するとは・・・と少々手を広げすぎでは?と疑問にも思っていたのですが、いざ読んでみると、これが予想以上に好感触で、今後も大いに期待できそうな内容になっていました。ここでは、このガンガンオンラインの期待できる点について、色々と語ってみたいと思います。


・概要。
 ウェブ上での雑誌ということで、複数の連載作品を掲載する通常の雑誌と同じ形態を採っています。ただ、他のスクエニ雑誌がどれも15〜20作品程度の連載を行っているのに対して、このガンガンオンラインは、当初6作品(+1)という少数の連載本数で始まりました(現在は8作品+1)。もっとも、他の出版社のウェブ雑誌でも、通常の雑誌と同程度の連載を行っているところは多くなく、10作品以下の比較的小規模のところが主流なので、このガンガンオンラインもそうなのかもしれません。

 連載ラインナップとしては、衛藤ヒロユキ小島あきらの2名の人気作家が雑誌の看板的存在となっており、それに加えてベテラン・新人の双方がバランスよく採用されている印象です。意外に新人作家が多く、これまではアンソロジーなどで主に執筆していた作家を積極的に採用しているのも特徴です。
 そして、これら新人作家の作品を中心に、4コママンガが多いのも目立つ特徴です。ウェブ雑誌という特性上、4コマのような少ページの作品を載せやすいという理由があるのかもしれませんし、あるいはそれ以上に4コママンガを重視している路線なのかもしれません。マンガ賞に4コマ部門があるのもそれを示唆しています。

 さらには、マンガだけでなく小説(ライトノベル)も掲載されているのも見逃せません。最近では、小説を一部載せる試みを行っているマンガ雑誌が、他出版社でもちらほら見られますが、このガンガンオンラインのそれはかなり本格的で、割と実力のある作家にかなりのページ数を書かせている点が印象的です。
 さらには、一枚絵のイラストの掲載をひとつのコンテンツにしているのも特徴です。既存のスクエニ雑誌でも、まれに何らかの企画でイラストギャラリーが見られる場合がありましたが、このガンガンオンラインでは、やはりより本格的な(マンガと並ぶ)ひとつのコンテンツとなっており、スクエニの人気作のイラストのほか、スクエニ外からのゲスト作家によるイラストも頻繁に見られます。

 そして、これらの多彩なコンテンツが、ほぼ週刊のペースで更新されているのも大きな特徴です。すべての作品が週刊というわけではなく、毎回かにかの作品が更新されるという形態で、読者としては若干チェックするのが煩雑な側面もありますが、作品ごとにそれぞれのペースで新作を発表していけるのは魅力かもしれません。


・全体的に外れが少なく、特に看板作が面白い。
 以上のように、既存のマンガ雑誌と違い、小説やイラストなどのコンテンツも併設されているのが大きな特徴ですが、それでもやはり中心がマンガであることは間違いありません。そして、このマンガの粒が揃っていて全体的に外れが少なく、特に衛藤・小島両看板作家の作品が非常に面白いのが特長です。

 まず、衛藤ヒロユキの「舞勇伝キタキタ」なのですが、これはあの「魔法陣グルグル」で主人公やヒロインまで差し置いて最大の人気を誇った(?)あの色モノキャラ「キタキタおやじ」を主役に据えたスピンオフ的な作品で、これがかつての「魔法陣グルグル」の全盛期を思わせるような面白いギャグマンガに仕上がっていました。
 「魔法陣グルグル」は、ゲーム(RPG)のお約束を爆笑ギャグに仕立てた初期の頃と、少しギャグが控えめになり、世界観・ストーリー重視のファンタジー要素が強くなったそれ以降の時代とで、若干作風が変わるのですが、この「舞勇伝キタキタ」は、その初期の爆笑ギャグ全開の時代を彷彿とさせるもので、久々にこのタイプの「グルグル」を読めたような気がします。キタキタオヤジの変態性(笑)を全面に出し、畳み掛けるようなギャグの連打でとことんまで笑わせる作風は、実に衛藤ヒロユキらしいものを感じます。

 そしてもうひとつ、小島あきらの久々の新連載「わ!」も、この作者らしい面白さが強く感じられました。
 小島あきらの代表作「まほらば」は、ゆるやかな日常を描く癒し系コメディとしてよく知られていますが、実は決してそれだけのマンガではなく、むしろ、小島あきらならではの「毒」が随所に散りばめられた作風だったと思います。「毒」とは何か? これは「毒舌」の延長とも言えるもので、マンガの中のキャラクターが作者によっていじられまくる現象を指します。「まほらば」の毒も相当なものがあったのですが、この「わ!」は、その毒のあるネタが毎回のように見られる4コママンガとなっており、非常に笑えるギャグマンガとなっています。これもまた実に小島あきららしい作風で、個性的なキャラクターのアクの強さについては、「まほらば」以上のものも感じられます。

 このように、看板作家ふたりが久々にその作家らしい面白さを見せてくれたのは、大いに評価できることで、とりあえずこのマンガふたつを目当てにガンガンオンラインにアクセスしてきた読者も、大いに楽しめるのではないかと思われます。

 それともうひとつ、このガンガンオンラインでは少数派の本格ストーリーマンガとして、神田晶の「シキソー」があります。現代を舞台にした刑事もので、かつてこの作者の読み切りに近い印象の作品がありました。今のところまだ導入部ですが、中々にこなれた始まり方で、読み始めた印象は悪くありません。これまでの神田さんは、バトルマンガやゲームマンガを主に任されていましたが、どれも今ひとつでした。この作品は、それらの連載よりも期待できそうで、これも好感が持てます。神田さんは、荒川弘と同期の新人で、今ではもうベテランの域に達する作家ですが、今度こそこのガンガンオンラインで成功してほしいと思いますね。


・4コママンガへの力の入れ方が最大の特徴。
 そして、このようなベテランの作家による看板作品が面白い一方で、新人作家を中心に4コママンガの連載が非常に多いのが目立ちます。

 具体的には、今挙げたばかりの「わ!」(小島あきら)に加え、あとはすべて新人の作品で、「今日も待ちわびて」(佐伯イチ) 、「生徒会のヲタのしみ。」(丸美甘) 、「おじいちゃん勇者」(坂本太郎) 、「浅尾さんと倉田くん」 (HERO)、「からす天狗うじゅ」(塒祇岩之助)などとなっています。このうち、「今日も待ちわびて」だけは、少し前にスクエニの他誌で掲載されたことがある作品ですが、それ以外はすべてこのガンガンオンラインからの新作であり、この雑誌の4コママンガにかける意気込みが感じられます。

 この中で、個人的に特に注目しているのは、「生徒会のヲタのしみ。」でしょうか。一般人の男の子がオタクな美少女ばかりの生徒会に入っていじられまくるという、本当に実にまったくどうしようもないマンガなのですが(笑)、これが4コママンガとして面白いのだから仕方がない。一迅社のぱれっと掲載の「こまらぶ」に設定その他がやたら似ており、こういうオタクの一般人いじり系マンガ(そんなジャンルあるのか)が好きな人にはこたえられないマンガになっています。

 それ以外だと、「おじいちゃん勇者」は、あの坂本太郎がガンガンオンラインにも登場ということで、早くも一部読者に大いに話題を集めているようです。この気持ち悪すぎる変態男キャラネタは、この坂本太郎にしか描けないでしょう。最近になって女性キャラが変に萌えキャラ化しているところも注目です(笑)。また「浅尾さんと倉田くん」 は、先日ウェブコミック(これも4コマ)「堀さんと宮村くん」がスクエニから書籍化されたばかりの作家による新作で、新たなるウェブコミック出身作家の作品ということで、これも注目したい一品です。その一種独特の不安定さを感じるキャラクター、雰囲気は他の4コマにはないものです。

 あとは・・・これは外部からの版権キャラクターもの「からす天狗うじゅ」にも注目が集まります。「太秦戦国祭り」の公式マスコットらしく、昨今一部で定番になりつつある(?)「萌えを全面に押し出したイベントキャラクター」らしいのですが、このような企画をわざわざ採り入れるところがすごい。個人的には「いくらなんでもやりすぎだろ」と思うのですが(笑)、まだガンガンオンラインは始まったばかり。さらにウェブ上で読者の注目を集めるためには、ここまで積極的な企画をどんどん進めていった方がいいのかもしれません。

 もうひとつ、4コママンガに対する積極的な企画として、このガンガンオンラインが企画する月例マンガ賞があります。このマンガ賞、普通のマンガ作品の賞(「GO」)と並行して、4コママンガだけの賞(「FOUR」)が独立して存在するのです。しかも、この「FOUR」は、大賞・入選・佳作に加えて、奨励賞にまでガンガンオンライン掲載権が与えられるという優遇ぶり(「GO」の掲載権は、大賞・入選・佳作のみ)。このマンガ賞の仕様だけ見ても、ガンガンオンラインが4コマにひどく力を入れているのが分かります。

 以上のように、まず4コママンガの数自体が非常に多く、しかも個性的な作家や企画による作品も多く、さらにはマンガ賞も4コマを重視しているという、非常なまでの4コママンガへの力の入れようが目立ちます。そして、今のところこの4コマへの取り組みは成功しており、読者としてもかなり楽しめる4コマラインナップになっているのではないでしょうか。

 それにしても、なぜここまで力を入れているのでしょうか。その理由としては、ページ数の制約の少ないウェブ雑誌では、4コマのような少ページの作品でも載せやすいという長所があるのかもしれません。さらには、作品ごとに掲載ペースがかなり自由に設定されていることも、大きな利点ではないでしょうか。毎週ネタを数本ずつ小出しにして、連載を継続させることも可能なのです。4コママンガならば、このような短いペースでの掲載の方が、作品のテンションを保つのに適しているのかもしれません。さらには、このようにコンスタントに自由なペースで掲載を続けることで、作品のたまるのが速くなるという利点も考えられます。元々、スクエニの4コマは他社よりもコミックスの出るペースが速く、これが長所となっているのですが、このガンガンオンラインの掲載作も、その長所を引き継いでいける可能性が高いのではないかと思われます。


 以下、(2)に続きます。


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