<マンガ情報誌はなぜ必要とされないのか>

2013・4・17

 もうかなり前になりますが、唯一の漫画情報誌と言えた「ぱふ」が休刊して久しく、現時点でマンガ情報誌と言えるものは、まったく見られなくなってしまいました。ゲームの情報誌(ゲーム誌)は、数は減ったとはいえ今でもいくつもありますし、アニメの情報誌も健在です。それに対して、このマンガの情報誌というものは、ほとんど見られない。しかも、これは近年に限った状況ではなく、もう随分と前からずっとこのような状態が続いています。マンガ情報誌の数自体少なく、創刊されたとしても長続きしない。しかも今では完全に刊行が途絶えてしまっています。ここでは、なぜマンガ情報誌がやっていけないのか。必要とされないのか、その理由を考えてみたいと思います。


・近年のマンガ情報誌の状況。
 まず、理由を考える前に、この近年の「漫画情報誌」の状況について、今一度振り返ってみます。

 まず、ここ数年以上、具体的には2000年代に入ってからは、この手の情報誌はほとんどなく、唯一、ずっと以前からの定番の雑誌である「ぱふ」のみが続いている状態でした。ただ、この「ぱふ」、創刊は1974年と非常に古く、歴史ある雑誌ではありましたが、近年は長く女性向けの要素の強い雑誌となっていて、女性向けのマンガや趣味がメインの誌面となっていて、男性では読みづらい雑誌となっていました。もちろん、それ以外のマンガの記事も存在し、マンガ全体の情報を扱うページもありましたが、しかしマンガ全般を扱う情報誌としては、かなり偏った誌面であった点は否定できなかったと思います。あるいは、そういった誌面を支持していた、女性の固定読者に読まれて今まで存続していた側面もあるかもしれません。

 90年代には、まだマンガ情報誌はいくつか見られました。「ぱふ」のように女性寄りではなく、マンガ全般を平たく扱う一般志向の情報誌が、いくつか存在していたのです。中でも、「ComNavi」という雑誌は、コアなマニア読者向けになりがちなこの手の雑誌の中では、かなりのメジャー志向の誌面作りが感じられ、中でも「新刊ガイド」というコーナーは、毎月発売されるすべての新刊のレビューを行うという、意欲的なページだったと思います。しかし、この雑誌も、残念ながら売り上げは芳しくなかったのか、当初の月刊からやがて隔月刊となり、その後じきに休刊してしまいました。これ以外の情報誌も、しばらくのうちにほとんどが休刊してしまい、なぜか定着しませんでした。

 その後は、「ぱふ」が唯一の情報誌として長らく存続する状態が続いてきたわけです。ただ、あえて他にマンガを扱う雑誌を挙げてみれば、あの「ダ・ヴィンチ」あたりがそれに該当するかもしれません。ただ、これはマンガ専門ではなく、本全般を扱う評論誌のような雑誌で、あくまでマンガは部分的にj評論の素材として扱われるのみです。これ以外にも、いわゆる批評誌・評論誌のような雑誌で、マンガ評論が扱われるのが、ここ近年続いている状態だとも言えます。逆に言えば、平易にマンガ情報を扱う雑誌というものは、もう長らく存在してこないままで今に至っているわけです。


・なぜ、マンガ情報誌は必要とされないのか?
 では、ここからいよいよ、こういったマンガ情報を扱う雑誌が存在しないのか、考えてみたいと思います。マンガ自体は、かつてより雑誌が売れなくなったと言われて久しいですが、しかしコミックスはコンスタントに幅広く売れています。それなのに、なぜ売れているはずのマンガを扱う情報誌が存在しないのか。出ても売れなくて休刊してしまうのか。これにはいくつかの明確な理由が考えられます。


(1)ネットの情報サイト・ブログの存在。
 まず真っ先に思いつく理由はこれでしょう。インターネットが普及して久しいですが、初期のころからマンガを扱うテキスト系のサイトはいくつも存在し、ブログが普及してからは、コアなマンガ読みによるマンガ感想・評論ブログが一気に広まりました。あるいは、個人サイトだけでなく、感想やレビューを広く投稿するタイプのサイトも人気を得るようになり(読書メーター)などはその代表でしょう)、個人の感想が広く参照できるようになりました。単純に個人のレビューや感想を見たいだけなら、ネットを開けばいつでも見られるわけです。

 さらには、こうした感想やレビューだけでなく、純粋にマンガ情報を扱う本格的なサイトも登場してきました。コミックナタリーなどはその代表で、しかも個人ではなく企業によるサイトで、その情報量は圧倒的です。かつての紙の情報誌と比べてもまったく遜色ない、というか純粋に情報量と速さだけなら、こちらの方がずっと上でしょう。こうしたネットでの情報サイトが存在する以上、紙の雑誌を必要としなくなっても無理はありません。コアなマンガ読みならば、ネットで情報を集めることを厭わないでしょうし、あえて紙の雑誌を必要とはしないでしょう。

 しかし、決してそれだけが理由ではなさそうです。かつて90年代に存在した情報誌が次々と休刊した頃は、まだネットは黎明期で今ほどには普及していませんでした。それなのに、その時期から情報誌の売れ行きは芳しくなかったわけです。ゲーム雑誌やアニメ雑誌が、今も昔も多数存在しているのに対し、マンガ情報誌は、昔から雑誌の数自体少なく、極めてマイナーな状態で推移し続けてきた。やはり、もっと根本的な理由がありそうです。


(2)ライトユーザーにとって情報誌の必要性は低い?
 そこで、さらに考えられる理由として、こうした情報誌自体が、多くの読者にとって必要性が低いのではないかという推測があります。具体的には、コアなマンガ読みと呼ばれる、マンガを何冊も熱心に読む読者ならいざしらず、話題作や自分の好きなマンガを数冊程度軽く楽しむ、いわゆるライトユーザーの多くは、わざわざ情報誌を読もうとはしないのではないかということです。

 毎月出るマンガの新刊は、今でも数百冊にのぼりますが、そのすべてがまとまって売れているわけではありません。ヒットと言えるほど売れているのはほんの一握りであり、そうしたヒット作・話題作に多くの読者が集中しているのが現状でしょう。特に、ジャンプやマガジンなどのメジャーなマンガ雑誌の連載や、あるいはアニメ化・ドラマ化した作品の多くがそれに該当します。特にアニメ・ドラマ(=テレビ)の力は非常に大きく、これで一気に売り上げが伸びるマンガは珍しくありません。

 そして、こうしたメジャーなヒット作・話題作を中心に追いかけるライトユーザーが、それ以外のマンガの情報が載っている雑誌を、わざわざ買うとは思えません。毎月数百冊の新刊が出るとはいえ、ほとんどの人にとって、その多くは知らない・興味のないマンガばかりなのです。そうした、自分の興味のないマンガの情報が延々と載っている雑誌が出ても、ほとんどのライトユーザーは敬遠するでしょう。そうしたマンガ全般を平坦に扱うタイプの情報誌が、これまで売れなかったのも無理はありません。

 これが、例えばアニメ雑誌との大きな違いで、テレビ放映されているアニメならば、多かれ少なかれ見ている人は多いはずなのです。アニメの本数が近年増えているとはいえ、その本数は一期につき数十本程度で、その中のヒット作・話題作ならば、かなり多くのアニメ視聴者が同時に見ている可能性は高い。そうした作品を取り上げるアニメ情報誌の方が、ずっと売れやすいと思いますね。


(3)マンガ読みにとっても平坦な情報誌の必要性は低い?
 そしてもうひとつ、そうしたライトユーザーだけでなく、上で挙げた「マンガ読み」とでも言うべき、マンガを何冊も読むコア・マニアユーザーの間でも、情報誌の必要性は低いのではないかと推測しています。

 なぜか。それは、たとえマンガ読みであっても、毎月数百冊出るすべてのマンガをチェックして読んでいる人は、ほとんどいないと推測されるからです。
 いわゆる「趣味の細分化」と言うべき現象ですが、刊行点数の多いマンガの場合、それが非常に顕著です。ジャンプやマガジン、サンデーなどメジャーな雑誌の話題作ならば、まだ少しは読んでいる人は多いでしょう。しかし、これが少しマイナーな雑誌、コアなファン層向けのマンガになってくると、マンガ読みでも読んでいるかどうかはかなり割れます。

 例えば、このサイトで中心的に扱っているスクエニのマンガ。これも、アニメ化して話題となった作品ならば、まだ知名度と読書率は多少上がります。しかし、それ以外の雑誌のマンガまでチェックしている人は、マンガ読みでも本当に少ない。これは、スクエニのマンガが、全体的にマンガ読みにはさほど好まれないタイプの作品が集まっていることも関係していますが、そういったジャンルのマンガとなると、さらに読書率は減ります。純粋な固定読者以外には、さほど読まれていないのが現状でしょう。

 もうひとつ例を挙げると、コアなマンガ読者による投票でランキングを決める「このマンガがすごい!」という毎年恒例で刊行されるムックシリーズがあります。ここで投票されて掲載されるマンガは、確かにどれも優秀なマンガばかりです。しかし、同時に、ここに載りにくい(投票されにくい)タイプのマンガも数多く存在しているのが現状で、例えば4コママンガが投票されることは非常に少ない。あまりに少なかったために、2013年に刊行された最新号では、4コママンガのみを取り上げた特集ページが組まれたほどです。逆に言えば、こうしてあえてスポットを当てない限り、マンガ読みの間でさえ話題にのぼらない作品が、数多く存在していることになります。

 こうした状況においては、マンガ全般を平たく扱うタイプの情報誌は、マンガ読みと呼ばれるコアなマンガ読者の間でさえ、敬遠される可能性が高いのではないでしょうか。むしろ、同じ情報媒体でも、自分の好きな作品・興味のある作品の記事を拾って読める、インターネットでの情報サイトの方が、ずっと都合がよい。今なら、ネットのブログやサイト、Twitterから得られる情報で十分である。それが、幅広くマンガ全般を扱う情報誌が必要とされない最大の理由ではないでしょうか。


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