<マンガサイト・ブログに希望すること>

2008・12・6

 2008年もようやく過ぎ去ろうとしています。今年は、マンガそのものを振り返る記事だけでなく、インターネット上におけるマンガサイト・ブログについても、あれこれ思うこと記事にして書きたいと思います。
 日本で、ブログ(ウェブログ)というものが登場し普及し始めたのは、2003年のことです。当時、イラク戦争で現地(バグダッド)からブログで情勢を伝えるニュースが話題になり、それでブログというものが広く知れ渡り、普及するきっかけになったことを覚えています。あれから5年がたち、ネットの多くの箇所において、ブログの存在は主流となり、特に個人のサイトではその普及率は圧倒的で、今や「ブログ以前」のネットの状況を思い出すのも難しくなってきています。
 そこまで個人サイトに広まったブログなのですが、どこもあまり芳しい成果は挙げていないようにも見受けられます。ブログから何か新しいムーブメントが興るような気配が感じられない。これはマンガ系の個人サイトでもまったく同じであり、ここから例えば新しく面白いマンガが発掘されるとか、マンガの見方・思想に新しい流れが興るとか、そんな話は寡聞にして聞きません。これは、ブログが普及し始めた5年前から一貫してその状況で、特に最近はさらにレベルが低下しているように見受けられます。つまり、ブログ以前の方が個人サイトのレベルは高かった。

 なぜブログがそこまで成果に乏しいのか。答えは明白で、「なんら体系だった内容を持たない」からに他なりません。ブログ以前の時代に、なんらかのサイトを作ろうと思えば、なにかしらそこに「中身」を作る必要がありました。少なくとも、何か有機的な繋がりを持つ記事をまとめた集合体を作り出す必要があったのです。

 ところが、ブログの場合、基本が「日記」形式ですから、そのような中身を作る必要がありません。毎回気の向くままに雑多で無関係の文章を書いても、ひとつのサイトとして成立します。つまり、サイトを作る敷居が極端に低くなり、それに伴って中身のレベルも低下した。なんの関係もない、体系もない文章を、自分の衝動と快楽の趣くままに書きまくるだけで、ひとつのサイト(ブログ)として成立し、そしてそんなブログが主流となってしまいました。
 そして、そんな衝動と快楽の趣くままに書かれた記事は、おしなべてレベルの低いもので、それも精度の観点からも文化の観点からもレベルの低さが際立つもので、つまりはおしなべて低俗かつ見識のない記事であり、読者に対して有用な「知識」を与えるようなものではなく、一時的な悦楽と衝動を与えるに過ぎない記事が大半を占めるようになったと言えます。

 具体的に、今のマンガ(アニメ)系ブログの記事を分類すると、ほとんどが以下の範疇に当てはまります。

 こういう、目の前に飛び込んでくる情報から得られる衝動のみでやみくもに書かれた記事が、なんら人間の知識、見識の向上をもたらさないのは明白でしょう。ただオモシロそうな情報が一瞬だけ頭の中で火花を散らして消え去り、それに対する衝動的な賛同や批判・中傷、それが飛び交うだけであり、頭の中で何らかの事象が反芻され、解析され、より高度な知識に結びつくことがないのです。

 今のブログは、あるいは昔からそうだったのかもしれませんが、単にひたすら早く多い更新量と、いかに面白いネタ的な記事を載せてアクセス数を稼ぐかということのみに全力をささげており、それ以上の意味のある場所は多くありません。更新の量とオモシロさのみが求められる空間。それは、ブログだけでなく、より大きなニュースサイトにも当てはまります。


・ネタとアクセス数のみで構成されるニュースサイト。
 ブログの大規模的な存在として、マンガに関する情報を集めるニュースサイトというものも多数見受けられるわけですが、これも芳しい成果を挙げているものは多くありません。むしろ、こちらの方がより問題が深く、単にオモシロそうな記事のリンクをひたすら貼るだけのサイトが大半です。
 ただ単に面白そうだと思える記事のみをピックアップし、なんの秩序も体系もなくひたすらそれを羅列し続け、そこに一行程度のどうでもいいコメントをつけるだけ。それだけの短いコメントが的確に記事内容を捉えている保証はどこにもなく、むしろ記事内容を個人的な嗜好に合わせて曲解した、問題のある紹介になっているところも多いようです。そもそも、あれだけの大量に並べた記事すべてに対して、中身のあるコメントを付けられるわけがありません。いきおい、衝動的なファーストインプレッションだけで書かれた、中身を精査しないコメントがおしなべて多くなります。

 そもそも、あんなに大量の記事を集める必要がないはずです。いや、そういうサイトがあってもいいと思いますが、そうでない方向性のサイトもほしい。つまり、真に有用な記事のみを、他の情報と組み合わせて体系立てて紹介していく。そして、そのひとつひとつに対して、ある程度まとまった量の文章で、よく吟味した紹介文を加えていく。そういうサイトがあればいいのですが、寡聞にしてそういうニュースサイトはあまり見たことがありません。単に、自分の趣味嗜好の趣くままに、ネタ的で面白そうな記事のみを雑多に大量に集めているだけのところが多いように思えます。また、アクセス数を稼ぎたいという意志も顕著に感じられます。多かれ少なかれアクセス数への意識があることも明白でしょう。「ネタ」と「アクセス数」のみで構成された世界。卑俗でオモシロいだけの刹那的な快楽と、それを求めて群がってくる皮相な人々によるアクセス数のみで成立する世界。それが今のニュースサイトの紛れもない現実であり、残念ながらこの事実から逃れることはできません。

 マンガ好きな閲覧者に対して、体系立てた意味ある知識を与えようとするサイトが存在しない。これはブログもそうですが、そのためにここからなんらかのムーブメントが興りようがないのです。真に面白いマンガを発掘したり、新しいマンガの読み方、思想が出てくるようなことがまったくない(ネタ的な卑俗なマンガが爆発的に流行したり、しょうもない中傷合戦に発展することはありますが・・・)。つまり、マンガの情報を一手に扱うはずのニュースサイトが、マンガ文化の向上に貢献していないのです。


・今望むのは、ポータルサイトの存在と、じっくりと書かれた体系的な記事構成。
 そして、そんなニュースサイトは数あれども、それがマンガの世界の入り口になる「ポータルサイト」の役目を果たしていないことが問題です。わたしは、今のマンガサイトには、マンガについて何も知らない初心者に対しても、それを分かりやすく伝えるサイトがもっと多く存在すべきだと思います。

 ネット全体の傾向として、特に個人サイトの傾向として、とにかく自分の趣味だけに特化した「分かる人にだけ分かればいい」と考えているような場所が多いことが挙げられます。あくまで個人の趣味に留まっていて、単に同好の士だけが集まる場と化していて、それ以上何らかの動きに発展することがあまりない。
 それに加えて、このネットでの個人サイトや掲示板では、現実以上に新自由主義的というか、必要以上に実力主義なところがあり、なんらかの情報を親切丁寧に優しく伝えようとする機運があまり見られません。つまり、「ネットでいい情報を見つけられないのはそいつが悪い」「ネットは自分で情報を見極める人間でないと生き残れない」などと考えている人が少なからずいるのではないかと思えるのです。マンガやアニメのような、コアユーザーが多く集まる場所だと特にそうで、マニアックで排他的というか、「分からないなら分からないでいい」というような傾向が感じられます。

 わたしは、このようなあり方はやはり不満であり、今必要なのは、マンガについて全く知らない人に対して、マンガを分かりやすく紹介し、体系立てた有用な情報を懇切丁寧に優しく教え導くポータルサイトの存在だと思うのです。これまで見られた大規模なマンガサイトは、どれもこの用件には適応しない、明らかに最初からある程度コアなマンガ読者に対して書かれたものばかりでした。そういうサイトがあってもいいでしょうが、そうでない初心者に対する間口の広いポータルサイトがもっとほしいところです。
 (*なお、このことに関しては、実はわたしの運営するこのサイト(たかひろ的研究館)にも当てはまるところが多く、我ながら大いに反省するところが多いと考えています。「エニックス(スクエニ)系コミック総合サイト」を名乗るにしては、広く伝えるべき基本的な知識のコンテンツが欠けており、初見の方には分かりづらいサイトになっていると思います。)

 そしてもうひとつ、今のマンガサイト・ブログに望むべきは、徹底してじっくりと描かれた、真に内容のある記事だと思うのです。単に更新の量が多ければいいというものではなく、書きたいものを書くという衝動のみに突き動かされた、雑多で卑俗な記事ばかりが存在するのは、決して好ましいことではないでしょう。
 さらには、アクセス数をひたすら求めすぎるのも考え物です。これもネットの新自由主義的なところなのですが、現実でカネを稼ぐことばかりが評価されるように、ネットではアクセス数ばかりがまず第一に評価される。しかし、そのためにひたすらアクセスを集めるネタばかりを求めるのは感心しません。アクセス数などただの飾りです。アクセス数よりも、マンガ文化の向上に繋がる内容のある記事の方が重要なのです。求められるのは、マンガに対する深い見識によって書かれた深く内容を捉える記事。そして、そんな記事を書ける知識と教養と理想と矜持と想像力を持った人間が、ネットの先頭に立ってマンガ文化の向上に努めなければならない。少なからずそう思うのです。


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