<スクエニ系コミック2006年総括(前編)>(少年ガンガン・ガンガンパワード・ヤングガンガン)

2006・12・13

*後編はこちらです。

 さて、今年も1年ようやく終了しましたが、ここで今年のスクエニ系コミックの動向を振り返ってみたいと思います。幾多のアニメ化作品で賑わい、新創刊したヤングガンガンも1年目で活気に溢れていた2005年に比べると、今年は全体的にこれといった大きな出来事(それも対外的に知名度を上げるようなもの)が少なく、変化も少なかったように思います。全体を通してみれば、良くも悪くも安定した1年だったと言えるのではないでしょうか。

 変化の少ない中でも、あえて最も大きな出来事を挙げるならば、ガンガンの増刊雑誌であったガンガンパワードの隔月刊化と、大幅な誌面のリニューアルでしょうか。従来の、季刊誌でかつ新人の読み切り中心の雑誌から、隔月刊で通常の連載作品中心の雑誌へと変貌しました。もっとも、これは確かに大きな変化ではあるのですが、元々のガンガンパワード自体、スクエニ系雑誌の中で最もマイナーかつ読者数の少ない存在であり、多くの読者にとってはあまり縁のない話だったかもしれません。逆に、中心雑誌のガンガンにはさほど大きな変化がなく、こちらの読者はほぼ固定化されてきた印象があります。かつてのエニックスお家騒動、およびその後の「鋼の錬金術師」のヒットにより、ガンガンの誌面の方向性や読者層も大きく様変わりしてきましたが、このあたりで一旦ひとつの形に定着したと言えるかもしれません。

 ガンガンの姉妹誌を見渡しても、Gファンタジー、およびヤングガンガンには大きな変化はありませんでした。ヤングガンガンは創刊2年目ですが、創刊当時の決してレベルの高いとは言えない誌面からは大きく改善され、完全にひとつの雑誌として定着した感があります。スクエニ系以外の読者でも購読している人は多いようで、実はスクエニ系で最も一般性の高い雑誌になったと言えるかもしれません。
 唯一、ガンガンWINGだけが、看板作品の「まほらば」を始めとする主要連載の多くが終了を迎え、代わりに数多くの新連載作品を開始したことで、この1年で誌面は様変わりしました。しかし、新連載の中で有望な作品は多くなく、雑誌の連載ラインナップが大きく乱れてきた感があります。かつての「まほらば」を中心に定番の人気連載群が誌面を固めていた安定感がなくなってしまい、かつての読者もかなり去ってしまったのではないかと危惧されます。今後、誌面を支えるべき力のある連載もさほど多いようには見えず、現時点ではかなり先行き不安な雑誌になってしまったと言えます。

 以下、各雑誌別の総括に入ります。


<少年ガンガン>
 ガンガンは、大きな変化はないとはいえ、前年・前々年に比べれば大幅に新連載が増えた点は目立ちます。前年・前々年は、それぞれわずか数本程度の新連載しかなく、連載ラインアップにほとんど変化が見られませんでした。それが、今年に入って7本もの新連載が入り(それでも一般的な他誌と比べれば平均レベルの本数か)、ようやく誌面に動きが生まれたような気がします。

 ただし、7本のうち成功したものは多くなく、未だ今後のガンガンで大きな人気を得て、アニメ化までするような作品はさほど見当たりません。「鋼の錬金術師」に代表される一部の作品のみに人気が集中する状態はさほど変わっていないとも言えます。
 具体的には、まずかなりの人気を得た作品として「スパイラル・アライヴ」「ひぐらしのなく頃に 暇潰し編」があります。このふたつは成功と言ってよいと思いますが、しかし、前者はかつての人気作「スパイラル」の外伝作品、後者は、ガンガン系のほかの雑誌ですでに成功している「ひぐらし」のコミック化作品のひとつということで、さほど目新しさはありません。しかも「ひぐらしのなく頃に 暇潰し編」の方は、最初から短期での終了が決まっている連載で、もう2006年以内に終了してしまいました。

 そこそこの読める新連載として「キングダムハーツII」と「はじめての甲子園」があります。「キングダムハーツII」は、スクエニでも定番人気ゲームのコミック化で、前作(「チェインオブメモリーズ」)から引き続いての連載ですが、ゲームコミックとしてそれなりに読める作品になっています。ただし、原作ゲームの人気に依存している点は否めず、これからさらに人気を得られるかどうかは未知数でしょう。一方で「はじめての甲子園」は、高校野球部を舞台にしたギャグマンガで、ガンガンのギャグマンガとしては久々に人気を得て、雑誌に定着しつつある感があります。編集部もかなりこの作品を推しているようで、先日出たコミックス一巻も積極的な宣伝活動が見られました。しかし、内容的には未だ微妙に面白いかどうか判断しかねるところがあり、雑誌外でもさほど話題になっておらず、編集部の推進ぶりほどには盛り上がっていないようにも感じられます。

 そして、決して成功したとは言えない作品もあり、「衛星ウサギテレビ」と「ブレイド三国志」がそれに該当します。「衛星ウサギテレビ」は、かつての「魔法陣グルグル」の作者・衛藤ヒロユキの新作ですが、まったくといっていいほど面白さは感じられず、読者人気もなく、まず確実に失敗でしょう。「ブレイド三国志」の方はさらに大問題で、三国志という新鮮味のないモチーフの上に、肝心の内容も設定ばかりが先行して面白さはまったくありませんでした。編集部による大型の新連載企画の割には、短期連載でたった4回で終了というちぐはぐな方針も大いに疑問でした。昨今のガンガンは、企画物で成功と言える作品がまったくといっていいほど出ておらず、このマンガも編集部の企画能力を疑わざるを得ない一作だったと言えます。

 新連載以外では、連載マンガに大きな変化がなく、この1年で盛り上がって大きな人気を得た作品がないのも残念です。しかも最近では、「ソウルイーター」や「屍姫」のような、今後のガンガンを支えるべき数少ない期待作品も、少々勢いが薄れてきた感があるように思います。結果、「鋼の錬金術師」や「スパイラル(アライヴ)」等、一部の作品に人気が集中する状態は変わっていないように見えます。来年は、久々のアニメ作品である「ながされて藍蘭島」を中心に誌面を構成するのでしょうか。


<ガンガンパワード>
 このところ変化のないガンガンとは対照的に、大きなリニューアルを遂げたのがガンガン増刊であるパワードです。どうも最近は、ガンガンが一般向けの作品にこだわり続ける一方で、パワードの方がより自由な誌面作りを行っているような気がします。
 今年6月に行われたリニューアルで、パワードは従来の「新人の読み切り作品中心の季刊誌」から「通常の連載作品中心の隔月刊誌」へと大きく変わりました。新人の読み切り作品はほぼ一掃され、その後に大量の新連載、中でもゲームコミックの新連載が大量に入りました。これは、かなり思い切った試みで、おそらくはこれでパワードを通常の形態の雑誌に格上げし、従来の「新人発掘のためのマイナー雑誌」から脱却し、他のスクエニ雑誌と同等の売り上げ・知名度を得ようとしたのだと思われますが、正直なところこれは疑問点、不安点が多いものでした。

 まず、新連載がゲームコミックばかりというのが気になりました。ゲームコミックが即悪いとは言いませんが、そもそも原作ゲームのファン向けの要素が強く、しかもゲームの発売から日が経つに連れて連載の勢いを持続させるのが難しくなるマンガであり、はっきりいってこれを雑誌の目玉として中心に据えるのはかなりの疑問です。肝心の内容を見ても、「ヴァルキリープロファイル-シルメリア-」「ファイナルファンタジー12」の連載だけはかなり読めるもので、これだけは成功といってよさそうですが、それ以外はぱっとせず、雑誌のラインナップの充実につながったとは言えない側面があります。

 そして、完全に新人の読み切りがなくなったことも疑問です。元々、パワードは新人発掘のための雑誌であり、ほかの雑誌にはない「新人の作品が載る貴重な場」としての役割があったのです。それがなくなるということは、スクエニ雑誌において新人の活躍の場が少なくなることを意味します。これは、新人発掘の妨げになる路線変更ではないでしょうか。

 また、肝心のリニューアルの成果としても、今のところは特に売り上げが伸びたようには見えません。さすがに、まだ隔月刊の雑誌で発刊ペースが遅く、しかもゲームコミックばかりが大量に入り、その他の連載も雑多で統一感に欠ける誌面であり、新しい読者を呼び込むには弱いのではないでしょうか。もちろん、今回のリニューアルで面白い連載がいくつか入ったのも事実で、面白い連載もそれなりに揃ってはきました。従来からの人気作品である「陽だまりのピニュ」「君と僕」「シューピアリア」「勤しめ!仁岡先生」、優れたゲームコミックである「ひぐらしのなく頃に解 罪滅し編」あたりに加え、今回のリニューアルで加わった、上記のゲームコミック2作品と、そしてきづきあきらの新連載「メガネ×パルフェ!」あたりが優良な連載と言えるでしょう。しかし、これだけのラインナップが揃っているとはいえ、雑誌全体の魅力はいまひとつといったところで、まだまだ新しい雑誌としては力不足のように思えます。


<ヤングガンガン>
 今年のスクエニ系雑誌の中で、最も健闘した雑誌ではないでしょうか。
 創刊1年目にして、初期のレベルの低い誌面が大きく改善され、最後にはかなり安定したクオリティを確保しましたが、2年目も1年間を通してそのレベルを維持できたように思います。創刊1年目でヒットした人気作品はほぼそのまま維持され、かつ新しく入った連載の質も全体的に良好で、かつ作風も多岐に渡っており、安定感のある優良な誌面でした。スクエニ系をあまり読まない読者の間でも、比較的この雑誌は読まれていることが多いようで、その一般性の高さも評価されるべきでしょう。

 去年からのラインナップはほぼ健在で、特に「すもももももも」「黒神」「ユーベルブラット」「WORKING!!」「BAMBOO BLADE」あたりの人気作を筆頭に、中堅どころの作品もほぼ揃って連載が継続しています。誌面の安定感は抜群と言えるでしょう(休載が多いのだけはいただけませんが)。

 今年に入ってからの新連載では、「ムカンノテイオー」のような従来のスクエニ系作品とは一線を画するような連載(普通の青年誌に載っているようなもの)に重点が置かれているように感じられました。年末からの新連載である「ウルトラバロック・デプログラマー」「キズナ」もその路線でしょうか。従来、このような作風はスクエニでは受けにくいと思いますが、このヤングガンガンの連載作品に関しては、意外にもかなりの好感触で誌面にも合っているように思われます。前年からの連載では「死がふたりを分かつまで」「あいどる」あたりも、これに該当します。他のスクエニ系雑誌と異なり、一般向けの作風のマンガでも載る余地があるのが、この雑誌の強みと言えそうです。
 それとは正反対の新連載として、史上初の萌え麻雀マンガ(笑)「咲 -saki-」の存在は見逃せません。これは、雑誌の中でも表に出るほどの人気作になる可能性があります。
 あとは、WEBコミックからの連載「いわせてみてえもんだ」も一風変わった作風で面白い。前年の筒井哲也・高津カリノに次ぐ、WEBコミックからの起用です。ただ、さすがに、このふたりほどの一般的な人気を得るには、やや力不足でしょうか。

 秋には、雑誌最大のヒット作のひとつ「すもももももも」のアニメ化も達成されました。今年のスクエニ作品で唯一のアニメ化作品です。ただ、実際のアニメ作品は、大量の萌えアニメが氾濫する今のアニメラインナップに埋没してしまったのか、今ひとつインパクトに欠けた感は否めず、大きな話題にはなっていないように感じられます。前年の「まほらば」「ぱにぽに」のアニメがかなりの人気を得たことと比べても見劣りがします。
 むしろ、同時期の「天保異聞 妖奇士」のテレビアニメとの連動企画(コミック化作品掲載)の方が、まだ話題になったような気がします。定番のMBS土曜6時枠(土6)ということで、こちらの方のコミック化作品(コミック化担当は蜷川ヤエ子)の方にも注目が集まったようです。


*続きは後編でどうぞ。こちらです。


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