<スクエニ系コミック2007年総括(前編)>

2007・12・18

*後編はこちらです。

 さて、2007年ももうじき終了しつつありますが、ここで毎年恒例の記事として、今年1年のスクエニ系コミックの動向を振り返ってみたいと思います。

 まず、全体的な傾向としては、どの雑誌も低調で、今ひとつ大きな動き、特に新規の成功作品には乏しかった印象があります。ガンガンについては、ここ数年ずっとそうなのですが、前年からはそれに加えてWING・Gファンタジーも低調になり、今年になってその動きはさらに強まってきたように思えます。ガンガンパワードも、前年の新装刊以来、混沌とした誌面が続いており、安定した人気を得ているとは言い難い状態です。唯一、ヤングガンガンのみが非常に堅調で、唯一面白い誌面を維持しているように思えます。読者の間でも、ここ最近は「スクエニではヤングガンガンが一番面白い」という評価が定着してきたようにも感じられます。ただし、そのヤングガンガンも、今年1年に限ってみれば、新規連載も成功作も大きく減少しており、前年以前からの人気作に頼っている状態なので、油断はできません。

 ただ、雑誌内での連載では大きな動きは少なかったのですが、反面、TVアニメ化作品が異様に多かったことがひどく目立ちます。前年のスクエニからのアニメ作品は、ほぼ「すもももももも」1本程度しかありませんでしたが、今年はなんと5本もあります。ガンガンから「ながされて藍蘭島」、ガンガンWINGから「瀬戸の花嫁」、Gファンタジーから「ZOMBIE-LOAN」、パワードから「獣神演武」、そしてヤングガンガンからは「BAMBOO BLADE」と、なんと各雑誌ごとに1本ずつアニメ化作品が出るという状態です。こんなことは多分今まで一度もありません。ガンガンの初期、数年に1本程度しかアニメ化されなかった時代と比べれば、隔世の感があります。

 これらのアニメ化作品の中で、特に成功したと言えるのは「瀬戸の花嫁」と「BAMBOO BLADE」でしょうか。どちらもかなりの人気、評価を獲得しました(しています)。他のアニメ化作品も悪くありません。ここ数年のスクエニ系アニメは、かつてよりも安定して完成度が高く、はずれが少ない状態が続いていますが、今年もまたそれを引き継ぐことが出来たようです。

 ただ、今年のスクエニは、上記のような自社からのアニメ企画だけでなく、他社のアニメ企画に参入し、自社の雑誌でそのコミック版を掲載するという、いわゆる「メディアミックス」的な企画が非常に目立ったのが特徴的です。具体的には、ガンガンで「精霊の守り人」、ヤングガンガンでは前年からの連載である「天保異聞 妖奇士」に引き続いて、「モノノ怪」の連載を開始、Gファンタジーでは「地球(テラ)へ・・・」、ガンガンWINGでも「東京魔人學園剣風帖 龖(トウ)」があります。なんと、パワード以外のすべての雑誌において、このような企画が行われているのです(パワードの連載でも「キミキス」のコミック化はこれに相当するかもしれません)。
 これらの作品は、そもそも外部からの企画であって元からの読者には興味が薄く、単にメディアミックスの力で雑誌に読者を引き込もうとする意思のみが感じられ、あまり好ましい企画とは思えません。元作品が、すべてスクエニ自社の作品ではないにもかかわらず、まるで自社からのアニメ作品のように宣伝するような 行為も目立ちます。

 また、上記の作品の中で「獣神演武」は、一応は自社からのアニメ化作品ではありますが、他の自社作品とは異なり、最初からメディアミックス前提でアニメ化が決まっているような企画であり、このようなやり方にも大いに疑問が残ります。今までのスクエニでは、このような企画はまったくありませんでした。作品自体も決して面白いとは言えないもので、そんな作品を雑誌の看板として押し出している雑誌作りのあり方にも、ひどく問題があるように思えます。

 以下、雑誌ごとの総括に移ります。


<少年ガンガン>
 今年の少年ガンガンは、前年に続いて、かなりの量の新連載が投入されたのですが、やはり面白い作品は少なく、ひどく低調な状態は変わっていません。いまだに「鋼の錬金術師」を始めとする一部の人気作品に頼っている状態なのは間違いないでしょう。少年マンガを中心とするメジャー雑誌志向の雑誌作りも変わっていないようで、今後の雑誌にも期待しづらい状態が続いているようです。

 今年に入ってからの新連載を見ると、2月号から「閉ざされたネルガル」、3月号から「鬼切様の箱入娘」(不定期連載)、4月号から「精霊の守り人」、5月号で「とある魔術の禁書目録」「紅心王子」の2作品、7月号から「ブレイド三国志」(本連載化)、8月号から「Doubt」、10月号から「FULL MOON」といったところですが、純粋に面白いと言える作品は多くありません。中でも、7月号からの「ブレイド三国志」の本連載化はありえないような話で、あまりにも破天荒でバカバカしいこの作品を本連載化してしまった編集部の雑誌製作能力には、不信を抱かざるを得ません。

 数少ない良作としては、「とある魔術の禁書目録」「紅心王子」の2作品があります。しかし、「とある魔術の禁書目録」は、原作はメディアワークスのライトノベル作品で、他社の作品に参入するようなメディアミックス的な連載となっており、企画そのものにかなりの疑問点が残ります。連載自体が良作だったのが救いですが、元々他社の原作作品が、これからのガンガンを支える中心作品となるかは未知数です。
 「精霊の守り人」も良作ですが、これもアニメからのメディアミックス作品です。しかも、今のガンガンの読者とは合っていないようで、ほとんど人気を得られていない不遇な状態が続いています。

 新連載だけでなく、新人の読み切りでも大したものがなく、これでは今後投入される新規作品にも、あまり期待できないのが正直なところでしょう。特に、10月号掲載のマンガ賞での特別大賞受賞作品「ROLL」は、完全に破綻したレベルの作品で、これが特別大賞というのはあまりに疑念が拭えませんでした。

 新連載が多数あった一方で、長期連載作品の多くが2007年末期になって一気に終了していきました。「女王騎士物語」「王様の耳はオコノミミ」「666〜サタン〜」「円盤皇女ワるきゅーレ」などの作品群で、2008年に入ってすぐに「PAPUWA」の連載終了も決定しています。これで一気に連載本数が減少しました。ただ、これらの作品は、長期連載だがもさほど大きな評価や人気を得ていなかった作品が多く、とりたてて問題だという気はしません。むしろ、これらの後を継ぐ存在として、2008年に入ってすぐに予定される新連載攻勢の質の方が問題です。果たしてどうなるでしょうか。

 新連載以外で大きな話題として、「ながされて藍蘭島」のアニメ化があります。萌え系のラブコメ(エロコメ)ということで、今のTVアニメの趨勢から考えれば、最も妥当なアニメ化決定だったと言えます。アニメの評価は、序盤は良かったものの、のちに原作からかなりかけ離れた展開を見せたため、原作ファンからの評価は微妙でした。アニメファンの間ではまずまず好評で、総じてみれば成功作だったと言えるでしょう。ただ、これがガンガンを盛り上げる役割をどれだけ果たしたかは分かりません。「藍蘭島」と他のガンガンの多くの連載では、作風に大きな開きがあり、アニメをを見てガンガンを読んでみた読者で、ガンガンを読み始める人は多くなかったとも思えますし、あまり大きな影響はなかったような気もします。

 以上、総じて今後に期待させるような明るい兆しは見られず、今後のガンガンには相変わらず期待しづらい状態が続いているようです。来年は、「ソウルイーター」の大規模なアニメ化(4クール放映)が決まっているようですが、今度はこればかりを中心にして雑誌運営をしていくつもりでしょうか。


<ガンガンパワード>
 ガンガン増刊の隔月刊誌であるパワードですが、今年は前年に行われた雑誌の新装をそのまま引き継いだ形となりました。新連載の本数も多くなく、ほぼ前年の誌面そのままで1年間やってきたと見てよいでしょう。

 そして、今年は「獣神演武」に振り回された一年でもありました。最初からメディアミックスでアニメ化前提で組まれていたこの連載、予定通り今年の10月にアニメ化を達成します。しかし、原作からしてまず面白いとは言えない連載で、アニメ作品もほとんど話題になっておらず、到底成功したとは言えない作品となってしまいました。アニメ化以降、毎号のように雑誌の表紙を飾る看板扱いとなっていますが、そこまでの内容を有する作品なのかどうか、甚だ疑問です。

 今年に入ってからの新連載は、「天真愛譚」「ハザマノウタ」「メガロマニア」「キミキス after days」「うみねこのなく頃に」の5本。今ひとつどれも話題性には乏しい連載です。「メガロマニア」は、この中では新人による期待作品ではあるのですが、今のところ内容はそこそこといったところでしょうか。年末に開始された「うみねこのなく頃に」は、「ひぐらしのなく頃に」のような大ヒットとなるかは未知数です。原作のうみねこもひぐらしほどの話題にはなっていないようで、さすがに今回は前回ほどの成功は期待できないのではないでしょうか。

 連載陣はさほど悪くありません。新装以前からの長期連載である「陽だまりのピニュ」「君と僕。」「シューピアリア」「仕立屋工房」などは揃って健在ですし、ゲームコミックにして最大の人気作品「ひぐらしのなく頃に 罪滅し編」は、雑誌の事実上の看板となっています。新装時に多数打ち出されたゲームコミックは、失敗した作品も多かったものの、それでも「ヴァルキリープロファイル2」「ファイナルファンタジー12」のふたつは、かなりの良作となっています。「勤しめ!仁岡先生」という4コママンガの秀作も生まれ、これは10月に他のスクエニ雑誌の4コマ2作品を合わせて「スクエニ4コマ×3フェア」を開催し、好評を博しました(詳しくはガンガンWINGの項で触れます)。ガンガン本誌に比べても、こちらの方がはるかに良作の多いラインナップであり、明らかに本誌よりも読めることは間違いありません。

 しかし、このパワードの場合、雑誌読者がかなり少なく、マイナーなままで終始しているのが最大の問題です。そして、その最大の原因が、「雑誌の方向性、ターゲットが判然としない」混沌とした状態が続いていることではないでしょうか。
 確かに良作は多いのですが、ひとつひとつの作品の方向性がまちまちで、一体どんな読者がついているのか良く分からない。少女マンガ的で女性人気の高い連載もあれば、萌えやエロに特化した男性マニア向けのマンガもある。新装でゲームコミックも増え、「獣神演武」というメディアミックス前提の企画マンガも出てきた。加えて、いまだに「ひぐらし」というゲームコミックが看板的存在である。ゲームコミックが看板で表紙を何度も飾るようでは、一体どんな雑誌なのか外からは分からないのも無理はありません。今後、誌面を整理して新規読者を呼び込めるか、そのあたりは未知数ですが、今のマイナーぶりを見ても、あまり成功の期待度は高くないような気がします。やはり前年のゲームコミック中心の新装リニューアル自体が、粗雑でひどく問題のあるやり方だったのではないでしょうか。

 このような誌面は、新装以前のガンガンパワードもそうでしたが、あの頃は新人による読み切り中心の雑誌だったから良かったのです。そのため、ガンガンでは載せられないような個性的な連載を色々と集めても、「あくまで新人の読み切り中心の雑誌」として問題ありませんでした。しかし、新装で通常連載中心の普通の雑誌となった今、様々な連載作品が混在する雑多な誌面となってしまい、どんな読者をターゲットにしているのか、それがまるで分からない状態となってしまったのです。今後は、いかに誌面の方向性を整理して新規読者を呼び込むか、それが鍵となりそうです。


 続きは後編でどうぞ。こちらです。


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