<スクエニ系コミック2007年総括(後編)>

2007・12・19

*前編はこちらです。

<ヤングガンガン>
 ヤングガンガンは、今年一年も堅調でした。前年以前からの連載のほとんどが健在で、そんな連載の本数も多く、充実していたと言ってよいでしょう。最近では、ヤングガンガンがスクエニで一番面白いという見方が支配的にもなってきました。

 そんな連載陣の中で、突出したのが、やはり秋にアニメ化された「BAMBOO BLADE」でしょう。元から評価の高かった本作ですが、アニメ化でより知名度が高まり、さらに高い人気と評価を獲得しています。創刊当時は雑誌の中堅的な位置づけでしたが、今では完全に雑誌の看板となったと見てよいでしょう。
 「BAMBOO BLADE」以外の主要連載も揃って健在で、「すもももももも」「黒神」「ユーベルブラット」「WORKING!!」「セキレイ」「天体戦士サンレッド」「ニコイチ」「荒川アンダー ザ ブリッジ」「死がふたりを分かつまで」「はなまる幼稚園」など、様々なタイプの作品がバランスよく誌面を賑わせています。そして、これらに加えて、今年1年で大きな人気を獲得した美少女はいてない麻雀マンガ「咲 -saki-」の存在はあなどれません。最近の盛り上がりを見るに、他の長期連載を飛ばして一足先にアニメ化まで達成しかねない勢いです。また、それとはまったく対照的な作品として、社会派テレビ業界マンガ「ムカンノテイオー」の面白さも見るべきものがあります。大きな人気を得るような作風ではなく、コミックスも売れていないのが残念ですが、雑誌内ではその評価は高く、センターカラーを獲得することも珍しくない状態です。

 ただ、今年1年のみの新規連載を見ると、前年以前より明らかに本数が少なく、いまだ定着した人気を得ている作品も少ないようです。このあたりで若干の不安要因がなくもありません。具体的には、「FRONT MISSON DOG LIFE & DOG STYLE」「探偵になるための893の方法」「激流血 〜over bleed〜」「フダンシズム ─腐男子主義─」「モノノ怪」などがありますが、どれも大きな人気を得ることは厳しそうな作風で、今後の展開は未知数です。ただ、「探偵になるための893の方法」は、我孫子武丸原作の推理物で、坂本あきらの作画も良質と、中々読める作品に仕上がっていますし、「FRONT MISSON DOG LIFE & DOG STYLE」も、硬派に戦争を扱った描写に見るべきところがあり、雑誌内ではかなり評価されているようです。個人的には、「激流血 〜over bleed〜」にも期待したいところです。
 ただ、「モノノ怪」については、前年の「天保異聞 妖奇士」に引き続いてのメディアミックス作品で、他雑誌同様にこの手の企画が目立つ結果となりました。内容的には悪くないのですが、ここまで各雑誌にメディアミックス企画が見られるのはどうでしょうか。

 以上のように、今年一年の成果についてはやや薄かったのですが、しかし全体的にはおおむね堅調だったことは間違いなく、来年度もそのままの誌面で期待できそうです。また、今年は7月と11月に2回ほど増刊が刊行されましたが、この内容も良質で好感が持てるものでした(エロ系の作品が多かったことだけは気がかりでしたが)。


<Gファンタジー>
 前年のGファンタジーは、とにかく新連載が極端に少ない1年でしたが、今年はかなりの新連載を確保してきました。しかし、そのほとんどが短期連載であり、ことごとく予定通りの連載期間を終えて早期に消えてしまい、まったくもって雑誌の戦力とはなりませんでした。具体的には、1月号から「憑かれて候」、2月号から「テイルズオブブレイカー」、4月号から「紅墨少女」、5月号から「春期限定いちごタルト事件」、6月号から「Diabolic Garden」、8月号から「緑のリオ」といった布陣ですが、ほとんどが3〜5カ月程度で、長くとも1年持たないうちに終了してしまいました。唯一、「春期限定いちごタルト事件」だけは、米澤穂信のミステリー小説が原作で、作画も安定しており、中々の良作として連載が継続しているのですが、それもいまだ不定期連載であり、雑誌に定着しているとは言い難い状況です。

 そして、新連載が定着しない一方で、雑誌を支えてきた長期連載が次々に終了しており、ラインナップがひどく寂しくなってきた感があります。前年のうちに、既に「現神姫」「阿佐ヶ谷Zippy」「聖戦記エルナサーガII」などは終了しており、今年になってさらに「夢喰見聞」「ククルカン」「私の救世主さま」「壮太君のアキハバラ奮闘記」「たまごのきみ」などが次々と終了、最大の長期連載である「E'S」も、今年に入って長期休載状態が続いており、一気に雑誌の核が抜けてしまった感があります。後を継ぐ新連載として、「銀のクルースニク」「鳥籠学級」などが始まっていますが、まだ雑誌を支えるほどの連載にはなっていませんし、数的にも乏しい状態です。「壮太」を無理矢理終わらせて正式連載となった「まじかる無双天使 突き刺せ!! 呂布子ちゃん」も、さほどの作品ではないように思えます。このため、雑誌の連載本数と厚さも一気に減少し、一時的にWINGに匹敵するほどに薄くなった時期もありました。

 このような状態の中で、雑誌を支えたのが、まだまだ残っている安定長期連載陣である「ぱにぽに」「ZOMBIE-LOAN」「カミヨミ」「隠の王」「To Heart2」などの作品群と、それに増して前年からの新連載である「Pandora Hearts」と「黒執事」であり、前年発掘した新人作家が、今や名実共に雑誌を支える存在となっています。特に「黒執事」の躍進ぶりは凄まじいものがあり、大人気を得たこの作品ばかりが誌面を席巻した感すらあります。これ以外でも、アニメ化を達成した「ZOMBIE-LOAN」と、同じく連載が大いに盛り上がってきた「隠の王」も、同時に雑誌を支える大きな存在でしたが、それ以上に「黒執事」の存在感が目立ちました。はっきりいって、今年のGファンタジーは、ほとんど「黒執事」頼みだったと言っても過言ではありません。もし、このマンガがなければどうなっていたかと懸念されるほどです。アニメ化終了以降大きな盛り上がりのない「ぱにぽに」に代わって、今後のGファンタジーを一手に引っ張っていく連載であることは間違いないでしょう。

 しかし、このように一部の人気連載に頼る状態で、新作がふるわず、連載本数が大幅に減少しているこの状態は、やはり大いに不安であることは間違いありません。いまだ定番の人気連載がまだまだ残っているので、すぐに雑誌が揺らぐことはなさそうですが、それでも来年以降、本気で新人の育成、雑誌の底上げが急務であると言えます。

 最後に、アニメについての話ですが、前述の「ZOMBIE-LOAN」のアニメは、わずか1クールのみでさほどの話題にもならずに終了してしまいました。最初から今のアニメの状況では人気を得難いことは予想できましたが、それでも少々残念な結果です。そして、このGファンタジーにもメディアミックス企画のコミック化作品「地球(テラ)へ・・・〜青き光芒のキース〜」が連載されました。連載自体は幸いにも良作だと思えますが、Gファンタジー(あるいはスクエニマンガ)の作風、方向性に合っているかはかなりの疑問でした。他のスクエニ雑誌でも多数見られたメディアミックス企画ですが、このような企画を積極的に行うべきとは思えませんでした。


<ガンガンWING>
 今年のガンガンWINGは、前年に引き続いて雑誌を支えてきた長期連載が終了し続け、本当にラインナップが寂しくなってきました。雑誌の薄さも極度に達し、存続まで懸念されるような状態が続いています。
 前年において、あの超人気連載「まほらば」が終了、加えて「がんばらなくっチャ!」「KAMUI」なども終了しました。そして、今年に入ってさらに人気連載が立て続けに終了し、「天正やおよろず」「ショショリカ」そしてまほらばと並んで雑誌をささえた「dear」までが終了、今残っている長期連載は、「瀬戸の花嫁」と「機工魔術士」のたったふたつしかありません。このふたつ以外の連載は、すべてここ2年以内に始まった作品です。この事実だけを見ても、いかに今のWINGの誌面が寂しいものであるか、一目瞭然であると言えます。

 しかも、その後を継ぐべき安定した新作が、中々現れない状態が続いています。前年は、1年を通して「1年間連続新連載」という企画を行いましたが、あまり多くの成果を挙げることができませんでした。わずかに「ちょこっとヒメ」「東京☆イノセント」「夏のあらし!」の3本のみが成功し、これにゲームコミックの成功作である「ひぐらしのなく頃に解 目明し編」を加えて4本が、先に挙げた長期連載2本(「瀬戸の花嫁」「機工魔術士」)と合わせて、今のWINGを支えていると言ってもよいでしょう。

 ただ、これだけでは長く雑誌を保つことは難しく、今年に入ってさらなる新連載攻勢が続いています。「ネクロマンシア」「イグナイト」「磨道」「WARASIBE」あたりですが、今のところどれも今ひとつでしょうか(僅かに「ネクロマンシア」はあと一歩で定着できそうな気がしますが・・・)。これでは、いまだに雑誌を安定させるだけの連載陣を確保できていないのが現状です。

 ただ、今年のWINGについては、「瀬戸の花嫁」のTVアニメが絶好調でした。雑誌自体が非常に落ち込んでいた時期だけあって、ほとんど「瀬戸の花嫁」頼みだったと言っても過言ではありません。アニメは非常に高い評価を呼び、歴代スクエニアニメ作品の中でも、屈指の作品となりました。そのため、アニメ放映中は、さすがに雑誌も安泰だったのですが、その最中でも雑誌の薄さはまるで変わっておらず、「これで『瀬戸の花嫁』がなかったらどうなるのか」と考えてしまうような状態でした。

 そして、そのアニメが終了した今、WINGは岐路に立たされていると言えます。「まほらば」と並ぶ最大の人気作品だった「dear」まで終了し、来年以降の雑誌運営が非常に不安視されます。最近は、どういうわけか新人の読み切りまでぱっとせず、明らかにクオリティの低い粗雑な作品の掲載が目立つのも、今後の雑誌作りを不安に思う一因となっています。今年の新連載では、かつてのWINGとはやや異なる方向性の作品(王道バトル的ファンタジー)が目立っていますが、これが定着するかもまだ未知数です。

 数少ない明るい話題として、このガンガンWINGの「ちょこっとヒメ」と、ヤングガンガンの「WORKINNG!!」、ガンガンパワードの「勤しめ!!仁岡先生」の3つの4コママンガを合わせて、「スクエニ4コマ×3フェア」を行ったことが印象に残りました。この3つがどれも良作だったこともあり、大いに盛り上がったイベントだったと言えます。特に「ちょこっとヒメ」の作者のカザマアヤミさんは、今年二度もサイン会を行うなど、完全に人気作家として定着した感がありました。


<全体総括>
 このように、今年のスクエニ系コミックは、今ひとつ新しい人気作品を出せておらず、雑誌そのもののクオリティは停滞、もしくは下がっていると思われる一方で、アニメ化などのメディアミックス企画が相次ぎ、むしろそちらの方で人気を確保しようという意図が強く見られた1年だったと思います。自社からのアニメ化作品に成功が多かったのは朗報ですが、一方で安易とも取れる他社作品のメディアミックスが相次ぎ、その方針には大いに疑問を投げかけざるを得ません。純粋に自社からの作家を育てて成長させるべきだと思いますが、今の雑誌はこのような企画に頼らなければならないほど厳しい状況なのでしょうか。

 特に今年は、Gファンタジー・ガンガンWINGの二大マイナー誌の落ち込みがひどく激しかったように思います。それでも、Gファンタジーはまだまだ力のある連載が多く、今のところは安心して見ていられるところもありますが、ガンガンWINGはもう本当に存続を懸念してしまうような状態だと見えます。このふたつの雑誌の動向は、来年以降特に注視する必要があります。
 そして、それ以上に、主要誌であるガンガンの低レベル化も定着してきた感があります。こちらは、雑誌に力がある分存続が危ぶまれるようなことはありませんが、連載マンガのクオリティについては、他のどのスクエニ雑誌と比べてもひどく見劣りがします。相変わらず雑誌の方針(無謀と思えるメジャー志向)も変わらないようで、今後も期待できない状態はまだまだ続きそうです。

 総じて、前年に増してスクエニ系コミック全体の力(ポテンシャル)が、さらに落ちてきたように思います。雑誌の看板クラスの上位連載についてはよいのですが、中堅以下の連載作品の質・量が大きく下がっています。外側から見ればアニメ化まで行くような人気作が揃っているように見えて、実際の内側では雑誌の連載ラインナップの力が大きく落ち込んでいるという状態です。そのため、普段スクエニ系雑誌を読まず、アニメ化作品などの人気作のみをコミックスで追いかける読者には活況に見えても、実際に雑誌を追いかけている読者にとっては、決して満足できない状態が続いています。「『鋼の錬金術師』はあっても・・・」「『ながされて藍蘭島』はアニメ化しても・・・」「『瀬戸の花嫁』はアニメ化しても・・・」というような状況なわけです。そろそろ、雑誌によっては今後が危ぶまれるような状況もちらほらと出てきました。来年以降、さらなる雑誌のクオリティの底上げ(新鮮な戦力の早期確保)が急務と言えそうです。


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