<スクエニ系コミック2009年総括(後編)>

2009・12・7

*前編はこちらです。

 それでは、後編では残りの雑誌について記述していきます。


<ガンガンWING、ガンガンパワード>
 今年は、休刊してしまったこの2誌についても語る必要があるでしょう。

 まず、ガンガンWINGですが、この雑誌は休刊前の数年間ほど、長い間不振を極めていました。2001年のお家騒動で主要作家のほとんどが抜け、雑誌の存続が危ぶまれるような状態から、からくも復興してきた同誌ですが、雑誌の体制が脆弱なところは変わらず、スクエニの他の雑誌に比べれば連載本数も少なく、雑誌も極端に薄い状態で推移してきました。それでも、2005年までは、「まほらば」を始めとする人気作品が健在で、比較的堅調に推移していたのですが、それらが次々と終了を迎えた後の2006年以降、後を継ぐはずの新規連載のほとんどが不発で、連載の質が一気に転落した感がありました。末期の頃は、人気のある優良連載はごく一部、中には掲載するには恥ずかしいような作品も多く見られ、雑誌が末期的状態にあることは明白でした。そのため、常に休刊が囁かれる状態となっており、2009年に休刊が決まった時でも、それほどの驚きはなく、「やっぱり休刊か」と思ってしまいました。この雑誌の休刊は仕方なかったと言えます。

 一方でガンガンパワードの方ですが、こちらはWINGとは対照的に、かなりの堅調ぶりを見せていたと思います。元々はお家騒動直前に新人による読み切り雑誌として始まったこのパワード、2006年に新装して普通の連載マンガ雑誌となり、その後の連載陣は中々の充実ぶりを見せていたと思います。隔月刊という遅い刊行ペースではありましたが、連載ラインナップは近年ことに充実していて、「ひぐらしのなく頃に」を始めとする人気マンガも幾本か見られ、決して休刊するような悪い雑誌ではありませんでした。
 ただ、このマンガの場合、雑誌の内容はひどく充実していたものの、雑誌自体がマイナーで、読者はかなり少なかったと思われるのです。元が新人による読み切り雑誌で、その当時は熱心に購読する読者は多くなく、新装して以後も隔月刊であり、他のスクエニ雑誌のように、毎号雑誌を買って追いかける読者は相当少なかったのではないか・・・と考えられます。そのため、ここで読者の少ないパワードを思い切って休刊し、「JOKER」というより注目度の高い雑誌にチェンジしようとした、その試みは納得できます。

 休刊に際して、パワードの既存連載は、その作風に応じて、スクエニのヤングガンガン以外の各誌に移籍していきました。「ひぐらし」など最も人気の高い作品はJOKERに集め、少年マンガ系の「獣神演武」や「仕立屋工房」はガンガンに、女性に人気の高い「君と僕。」「シューピアリア」はGファンタジーに、といった按配です。元々様々な連載が載っていた雑多な誌面でしたが、それぞれ行くべきところへ行ってしまった、と見るべきでしょうか。

 そしてWINGの方の連載ですが、末期の頃の連載は元々評価の低いものばかりで、多くは休刊時に終了となり、一部の連載のみがONLINEへと移籍して継続することになりました。一方で、かつてのWINGの主要人気作家である小島あきら・藤原ここあ・河内和泉らが、新たにJOKERで新連載を行うことになったのです(小島あきらはONLINEと同時連載でした)。



<ガンガンJOKER>
 では、休刊した雑誌の代わりに登場したJOKERは、どんな雑誌になっていたのか。

 基本的には、パワードの人気連載とWINGの人気作家、その双方の最もいいところを取ったような雑誌となっています。旧雑誌の主力を集めたマンガとなっており、単純な連載ラインナップの力を見れば、スクエニ雑誌の中でも最高でしょう。

 その中でも最も人気のある看板となっているのが、旧パワードから受け継いだ「ひぐらしのなく頃に」「うみねこのなく頃に」の竜騎士原作の2大ゲームコミックでしょう。元々このふたつ、特に「ひぐらし」は、スクエニでも最も人気の高い作品のひとつでしたが、新雑誌に移籍してもその扱いはまったく変わりませんでした。いや、JOKERという注目度の高い雑誌へ移籍したことで、さらに扱いが大きくなった感があります。
 このふたつに次ぐ扱いの作品が、旧WINGの小島あきら・藤原ここあ・河内和泉らかつての人気連載陣の新作です。特に、小島あきらの「まなびや」は、ひぐらし・うみねこと同等かそれ以上の看板作品として、創刊号では表紙を飾っています。藤原ここあの「妖狐×僕SS」、河内和泉の「EIGHTH」も、それに次ぐ扱いとなっています。
 加えて、旧パワード・WINGからの継続連載「夏のあらし!」「戦國ストレイズ」「”文学少女”と死にたがりの道化」「コープスパーティー BloodCovered」も、極めて大きな扱いとなっています。特に「夏のあらし!」は、今年2回に渡ってアニメ化され、これも雑誌の看板のひとつとなりました。

 このように、休刊した雑誌からの有力連載が雑誌の中核となる一方で、JOKERから新規で始まった新連載にも力のあるものが多く、こちらも見逃せません。正確にはガンガンパワードからの開始ですがJOKERで一気に花開いた「プラナス・ガール」、これとルーキーズフェアを開催した「黄昏乙女×アムネジア」「ヤンデレ彼女」の3作品は、いずれも創刊号からの新人作家による優れた新連載となっており、元から力のある連載を集めたJOKERの誌面をさらに押し上げることになりました。

 このように、総じてラインナップは充実しているのですが、一方で読み切り作品の掲載は非常に少なく、毎号1つあるかないかという状態です。旧パワードや旧WING(特にWING)では、毎号必ず、時に数本も見られるほどに読み切りの掲載量が多かったのですが、JOKERでは方針を一変させたようです。また、この雑誌、どういうわけか読者コーナーと作者コメントのコーナーが見られません。マンガ以外の余計な記事等のページがないことで、マンガに集中できる誌面構成は歓迎したいところですが、読者コーナーや作者コメントまでなくす必要はなかったのではないか。読み切りの本数が極端に少ないことと合わせて、これは少々寂しく感じてしまいました。


<ガンガンONLINE>
 ガンガンONLINEについては、前年10月の創刊以来、その規模の拡大ぶりが顕著な雑誌になりました。何しろ、毎週更新で毎月ごとの更新量が1500ページを超えるようになり、これは既存の雑誌の2倍かそれ以上の規模に匹敵します。連載本数も常時30本前後と非常に多く、マンガ以外に小説やイラスト、各種企画ページまで手がけるなど、とんでもない規模の雑誌になってしまいました。

 毎週更新というペースと相性がいいこともあるのか、4コママンガの充実ぶりが目立ちます。当初からの看板作品だった小島あきらの「わ!」(現在はJOKERに移籍)、コミックス発売時に話題となった「生徒会のヲタのしみ。」、他「今日も待ちわびて」「ヤンデレ彼女」、久々の復活となった坂本太郎の「おじいちゃん勇者」などの良作が見られ、かつ4コママンガ専門のマンガ賞(「FOUR」)を創設するなど、4コママンガへのその力の入れ方に著しいものがあります。それ以外では、衛藤ヒロユキのかつての人気連載「魔法陣グルグル」や、最近では「うみねこのなく頃に EP4」などが看板的作品となっているようですが、それ以上に連載本数の多さ、多彩さで攻める雑誌のスタイルが顕著に感じられます。

 その一方で、このONLINEへの他雑誌からの移籍作品を見ると、どうも他の雑誌で二線級の(だと思われる)作品の移籍先となっているような傾向が感じられ、ここにちょっと疑問があります。一線級の作品はJOKERやガンガンなどの既存の紙雑誌へと配分され、やや扱いで劣ると思われている作品がこちらに回されている。そんな傾向はやはり否めなかったと思います。
 ただ、パワード・WINGの休刊とJOKERの創刊という大規模な再編が一通り終了した今、これ以上そのような移籍は少なくなりそうですし、それにONLINEでの連載も決して悪いものにはなっていないので、さほど心配する必要はないのかもしれません。むしろ、最近ではONLINE発の新連載からも本格的なストーリーマンガがいくつも見られるようになり、他の雑誌と比べても、そのラインナップに遜色はなくなりました。

 そして、7月になって待望のONLINE発のコミックスも発売され、以後毎月盛んに発売されています。とにかく連載本数の多いウェブ雑誌であり、そのすべてがコミックス化されるわけではないにしても、その刊行点数は非常に多く、これで毎月発売されるスクエニコミックスの数が一気に増大した感があります。特に、ONLINEコミックスは毎月22日発売と、ガンガンやJOKERのコミックスと同じ日であり、この日の発売数が飛躍的に増大しました。
 発売されたコミックスでは、連載当時から内容の過激さで話題だった「悪魔と俺」のコミックスが発売中止となり、ONLINEからもすべての掲載が消されるという事態となり、これは大変な物議を醸しました。これは今年のONLINE、もしくはスクエニにとって最大の落ち度ではなかったかと思われます。


<ガンガン戦(IXA)>
 ONLINEもそうなのですが、今年のスクエニの拡大傾向は本当にとどまるところを知らず、年末間際の11月末には、戦国や三国志など、歴史をテーマにした作品のみで構成された雑誌「ガンガン戦(IXA)」まで創刊してしまいました。
 この雑誌、歴女(歴史好きのマニア女性)をメインターゲットにしていることは間違いないところで、Gファンタジーからの作家陣が多数見られ、絵柄的にも女性好みの作品が多数見られます。歴史もののみ、という狭いコンセプトの雑誌でもあり、これまでのスクエニ雑誌にはないひどく専門的な雑誌となりました。
 しかも、創刊号ながらいきなり1000ページを超える厚さと多数の掲載作品が見られ、まさかいきなりここまで本格的にやるとは思いませんでした。どの作品もそれなりに読めることもあり、いきなりある程度の形を整えた雑誌を出してきたことは評価できます。

 肝心の内容ですが、既存のスクエニ雑誌での歴史もの作品の外伝作品をひとつの売りとして、さらにGファンタジーを中心としてスクエニの作家たちによる新作も多数あり、さらに新人の作品も多数掲載されています。メディアミックスとしては、アニメ化予定作品の「戦国驍刃デュラハン-Dullahan-」のみ。次号の掲載が半年後ということで、本格的な連載は多くなく、まずは読み切り作品で数を揃えた感じです。

 そして、その読み切りの中で、これはというものが多かった。特に、Gファンタジーで「隠の王」を好評連載中の鎌谷悠希による「ぶっしのぶっしん」、ヤングガンガンの連載「新選組刃義抄アサギ」の外伝のふたつは、この雑誌の中でひときわ映える出来栄えでした。それ以外にも、スクエニの作家たちによる読み切り作品には良作が多かったです。

 一方で、新人の作品や、あるいは数少ない連載作品は、まだこれからといったところでしょうか。今後いい連載が揃うことで、雑誌の刊行ペースが上がり、雑誌が軌道に乗ることを期待したいと思います。

 この雑誌については、こちらの記事も参考にしてください。
 ガンガン戦(IXA)創刊号所見


<全体総括>
 以上のように、今年のスクエニは全体を通して動きが激しく、しかも随所で良作を数多く輩出しており、活況を呈していたと思います。田口氏のインタビューでは、売れ線にターゲットを絞ってコンテンツ戦略を行うという、ビジネス優先の手法が浮き彫りになりましたが、その中でも各誌から良作がコンスタントに出ており、商業性と作品性の双方をなんとか両立させている状態だと思います。

 雑誌に関しては、中心雑誌のガンガンだけは相変わらず中堅以下の良作に乏しく、評価しづらい状態が続いているのですが、それ以外の雑誌は軒並みよく健闘しているのではないでしょうか。特にヤングガンガンの良質ぶりは極まったところがあり、アニメ化作品を多数輩出している上に、今年登場した新連載にも有望株がいくつも見られます。新雑誌のJOKERも、休刊した雑誌からの有力な作品・作家を集めており、各連載の力は非常に高い。加えて、新人作品でも良作がいくつか見られ、連載ラインナップはかなり充実しています。Gファンタジーは、今年一年の新規連載には恵まれませんでしたが、まだ主力連載は健在です。そしてONLINEは、今年一気に規模が拡大して盛況を呈しており、コミックスも多数刊行され、これでスクエニコミックのラインナップが一気に増大しました。

 一方で、相次いだTVアニメでも、今年は良作・話題作が多かった。今期最大の成功を収めた「咲 -saki-」を筆頭に、新シリーズでの再アニメ化で再び注目を集めた「鋼の錬金術師」、シャフトによる遊び心が光った「夏のあらし!」、アニメからの視聴者にも好評だった「Pandora Hearts」と、どれも相当な成果を挙げたと思います。ここ数年のスクエニのアニメ化連発路線の中でも、今年こそが最大の成果を挙げた年だったのではないでしょうか。

 その上で、年末間際には、さらなる新雑誌「ガンガン戦(IXA)」を投入し、歴女をターゲットにして新たに大規模な戦略を立ち上げるなど、スクエニの活発拡大路線は止まりそうにありません。この傾向は、来年2010年以降もまだまだ続くのではないでしょうか。


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