<2011年のスクエニ雑誌を振り返る(前編)>

2011・12・22

*後編はこちらです。

 このサイトで以前恒例だった、年末に一年間スクエニコミックの動向を振り返る記事を、今年再び書いてみます。去年はいろいろあってやらなかったので、今年は再び雑誌ごとの動向を書いて一年を振り返ることにしましょう。「こんな新連載があった」「こんな企画があった」「このマンガがアニメ化した」と、その時のことを思い出してくだされば幸いです。


<少年ガンガン>
 スクエニの中心雑誌である少年ガンガンですが、今年は昨年に比べれば動きは少なかったと言えます。なぜなら、昨年はあの「鋼の錬金術師」が終わるという大きな節目の出来事があり、同時にアニメの方も原作と合わせるように終了、どちらも各所で大きな話題となりました。ガンガンのみならず、マンガ界全体でも屈指の人気作が終わるという、その1年に比べれば、今年はまだずっと静かだったと言えます。
 しかし、その一方で、かねてより懸念されていた「『鋼の錬金術師』終了後のガンガン」が、ここに現実化した年でもあります。かつて、「鋼の錬金術師」の人気が最盛期を迎えていた頃、ガンガンのこの作品への依存度が極端に高くなり、他の作品の存在感が大きく薄れていました。そんな時に「もし『鋼』が終わったらガンガンはどうなるのか」と、多くの人が懸念の意を表明していました。それが現実化したこの2011年のガンガンとは、果たしてどうだったのか。

 結論から言えば、突出した看板作品こそなくなったものの、残った定番連載に新連載を加える形で、かなり健闘しているのではないでしょうか。以前、2005年前後のガンガンは、「鋼の錬金術師」に依存するあまり、他の連載作品の本数が極端に少ない状態が続いていました。しかし、2007年以降、それは大きく改善され、新しい連載を積極的に打ち出すようになっています。むしろ、「鋼の錬金術師」最盛期よりも、ここ数年のガンガンの方が、連載のラインナップは充実しているのではないかと思います。

 しかし、この1年に関して言えば、オリジナルの新連載は少なく、その多くが原作付きやメディアミックス、スピンオフの新連載が相次ぎました。スクエニのほかの雑誌では定番の「うみねこ」シリーズの一作の「うみねこのなく頃に Episode7:Requiem of the golden witch」、ヤングガンガンの人気連載のスピンオフ「咲 -saki- 阿知賀編」、テレビアニメ放映と連動してのコミカライズ「ギルティクラウン」、FF最新作のコミカライズ「ファイナルファンタジー零式」などが、今年の主な新連載となっています。このように、有名な原作がついた作品のコミカライズやスピンオフは、他の雑誌でもひとつの定番と言えますが、それはガンガンでも例外ではなくなったと言えそうです。この中では、来年のアニメ化が決まっている「咲-saki-阿知賀編」(小林立・五十嵐あぐり)が、一番大きな期待作でしょうか。

 逆に、オリジナルの連載については、前年の2010年に始まった少年マンガ作品の健闘が光ります。「スカイブルー」「Red Raven」「HELL HELL」の3つで、とりわけ「スカイブルー」(小林大樹)は、迫力のコマ使いとケレン味溢れる奇抜なキャラクター・熱いストーリー展開が評価され、かなりの人気を博しているようで、ガンガンの編集部もこれを強く推しているようです。ガンガンの次期看板作品としては、これが最有力候補ではないでしょうか。また、これら少年マンガ作品とは大きく方向性は異なりますが、こちらは2009年に開始された、「スパイラル」の城平京が原作を手がける異色ファンタジー「絶園のテンペスト」(城平京・彩崎廉)も、非常に大きな扱いとなっています。
 さらには、以前からの定番人気作品「ソウルイーター」「とある魔術の禁書目録」「屍姫」あたりも健在で、このあたりが今のガンガンの中心となっているようです。「ソウルイーター」に関しては、この2011年に、スピンオフの新連載「ソウルイーターノット!」も開始されています。

 そして、こうした以前からの中心作品に、今年始まった原作付きコミックを加えた形が、今のガンガンだと言えそうです。今年だけを取ってみると、原作付きの連載がやや過多にも思えますが、前年以前からの連載を加えると、比較的バランスの取れた誌面になっているのではないでしょうか。ただ、今年1年は、メディアミックスの「ギルティクラウン」以外にはアニメが始まった作品はなく、外への話題性には少し乏しかったように思います。おそらくは、来年の「咲 -saki- 阿知賀編」のアニメ放映開始あたりで、また雑誌を盛り上げていくつもりではないでしょうか。


<ガンガンJOKER>
 ガンガンJOKERも、今年はさほど大きな動きはなかったように感じます。とはいえ、コンスタントに良作を出し続け、今年1年も安定した評価を獲得したようです。また、これまでは、原作付きコミック以外にはアニメ化された作品はなかったのですが、それも今年後半に2作ほど発表され、放映が始まる来年に盛り上がりを持ち越した形となったようです。

 今年始まった新連載としては、まず、新人読み切り競作企画である「J1グランプリ」で選出された作品が、3つも連載開始されています。「カミヨメ」「かしずき娘と若燕」「繰繰れ! コックリさん」の3作で、いずれも新人らしい瑞々しい感性の作品になっていると思います。しかし、「カミヨメ」は1年の連載期間で終了、他2作はまだ開始されたばかりで、まだ他の連載以上の作品になれるかは未知数といったところでしょう。

 むしろ、この1年で雑誌の新たな中心となったのは、新たに始まった原作付きメディアミックス作品でしょう。特に、アニメが高い評価を受けた「花咲くいろは」 (P.A.WORKS・千田衛人)は、かなり大きな扱いが見られました。スクエニでは定番と言えるひぐらし・うみねこシリーズのコミカライズ・「うみねこのなく頃に散 Episode5:End of the golden witch」「ひぐらしのなく頃に礼 賽殺し編」、新たなライトノベルのコミカライズ「俺の彼女と幼なじみが修羅場すぎる」(裕時悠示・七介)あたりも、やはり大きく扱われました。とりわけ、「俺の彼女と幼なじみが修羅場すぎる」のコミカライズは、スクエニ他誌のヤングガンガンとビッグガンガンでも並行して行われており、スクエニ全体で盛り上げるつもりのようです。

 その一方で、オリジナルの人気作品も健在で、ついにここに来てテレビアニメ化作品が発表されました。まず、創刊以来からの看板作品のひとつ「妖狐×僕SS」(藤原ここあ)。JOKER創刊以前、休刊したWINGでの長期連載「dear」の評価も高い作者の新作で、JOKERでも大本命の作品のひとつと言えるものでした。 このアニメ化は妥当な決定だと言えるでしょう。放送前の情報を見ると、キャラクターデザインはかなり良好で、制作陣にも期待できそうです。
 そしてもうひとつ、年末になって情報が入ったのが、同じく創刊時からの連載「黄昏乙女×アムネジア」(めいびい)。こちらは、先月のJOKERで予告こそあったものの、アニメ化決定の報には多少意外な印象も受けました。雑誌内では中堅どころの作品で、随所にかなり暗い雰囲気もあるホラー作品であり、アニメ化は少し難しいタイプで、あってもまだ先かなと思っていましたが、ここで決定となりました。内容自体は非常に充実しているだけに、しっかりしたアニメ化を望みたいと思います。


<Gファンタジー>
 Gファンタジーも、ガンガンやJOKER以上に安定した動きだったように思います。元々、スクエニの雑誌の中では最も発行部数は少なく、マイナーな雑誌だけあって、「黒執事」などの一部有名作品を除いては、話題性でやや劣る感はあります。唯一、「君と僕。」(堀田きいち)のアニメ化が、久しぶりに大きな話題となったようです。

 ただ、肝心の誌面を見ると、今年1年の新連載が、まだまだ雑誌に定着していない短期連載ばかりで、新たに雑誌の中心となるであろう作品は少ないように思われます。いまだ「黒執事」や「Pandora Hearts」のような定番連載が雑誌の中心となっている状態は、大きく変わらないようです。
 唯一、一時的に大きな話題を呼んだ新連載が、5月に開始された「El Shaddai 外伝 エクソダス」(イグニッション・エンターテインメント・リミテッド・青桐良)でしょうか。前年末にネットで爆発的なネタとしてヒットした「エルシャダイ」のコミカライズです。これは、Gファンタジーでコミックになるということ自体がまず話題を呼びましたが、肝心のコミックが始まって以降は、逆に話題が収まってしまったように思います。やはり「ネタ」としての旬が過ぎてしまったこと、肝心の連載が真面目な内容で、ネタとして受けたものとは雰囲気が大きく違っていたことが大きいと思われます。内容自体は力作だと思われますし、決して悪い作品ではないのですが・・・。

 それ以外の新連載では、以前にも増して女性向けの作品が目立ちました。「TOKYOヤマノテBOYS」のような乙女ゲーム原作のコミカライズ、「シキズム」のような美形男子たちが中心のストーリーがその代表です。あるいはそれ以外の作品でも、美形男性キャラクター中心の作風が以前にも増して増加しており、さらに女性向け雑誌としての色を強くしたように思われます。

 その方向性を最も象徴した出来事が、「ぱにぽに」(氷川へきる)の最終回でしょう。今のGファンタジーで残る数少ない、女性向けではない連載だったと思いますが、ここに来て10年以上に及ぶ連載が終了。決して大きく人気が落ちたわけでもないのに、ここに来ての終了は、やはり女性向けの色が濃い誌面の中で浮いてしまっていたことが、大きな理由のひとつではないでしょうか。作者本人のTwitterの書き込みでも、「雑誌の方向性との兼ね合い」を連載終了の理由のひとつに挙げており、やはり今のGファンタジーには合わなかったのではないかと推測されます。

 逆に、期待できる新連載としては、今年の短期連載で、ほぼ唯一長期連載化に成功した「BLOOD PARADE」(唐沢一義)、来年より始まる電撃文庫のライトノベルのコミカライズ「魔法科高校の劣等生」(佐島勤・きたうみつな)が挙げられます。いずれも、女性向けの要素が比較的薄いと感じられるもので(特にライトノベルのコミカライズ)、幅広い読者に読まれることを期待したいと思います。


*続きは後編でどうぞ。こちらです。


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