<2011年のスクエニ雑誌を振り返る(後編)>

2011・12・23

*前編はこちらです。

<ヤングガンガン>
 今年のヤングガンガンは、以前ほどのアニメ化ラッシュはかなり収まり、アニメ化作品は少なめだったものの、それでもなお堅調を維持し、前年以前からの人気連載の多くは健在なうえに、今年の新連載もさらに優れた良作が多数見られたような気がします。まだまだ、「スクエニで一番面白い雑誌」のステータスは健在なようです。

 今年に入ってのアニメ化作品は、オリジナルの連載では、「WORKING!!」(高津カリノ)の2期がありました。これは前回に続いて好評だったようで、このマンガの人気ぶりを再び示しています。また、前年にアニメ化された「荒川アンダー ザ ブリッジ」は、今年になってなんとテレビドラマ化され、さらに来年には劇場映画も予定されています。キャストに小栗旬や山田孝之がいることも話題になりました。ただ、実写のドラマ化は、企画自体正直微妙で、あまり大きな反響は聞かれなかったように感じました。

 それ以外では、アニメ作品のコミカライズや、アニメ化された作品のコミカライズである「STAR DRIVER 輝きのタクト」「輪廻のラグランジェ」「緋弾のアリアAA」等、メディアミックス作品が今年も見られました。スクエニのほかの雑誌でも今では定番の企画であり、中でもヤングガンガンは最も積極的で、これからも先も見られそうです。

 さて、今年の新連載ですが、後半になって攻勢が始まり、これまでに一気に8作品が登場しています。この新連載攻勢は、優秀なものが多く、中でも、既に他誌の連載で高い評価を得ている作家「緑のルーペ」による青春もの「ブラパ THE BLACK PARADE」(緑のルーペ)、「DARKER THAN BLACK」のキャラクターデザイン&コミカライズも好評だった岩原裕二のオリジナルSF作品「DimensionW」(岩原裕二)、韓国で人気を博したウェブコミックのコミック化「神と一緒に」(Ju Homin・三輪ヨシユキ)などが、特に注目できるのではないかと思います。

 前年からの有力連載では、近年ヤングガンガンがずっと推し進めているバトルアクション系の作品の充実度が、さらに上がってきたように思われます。中でも、「FRONT MISSON DOG LIFE & DOG STYLE」(太田垣康男・C.H.LINE)は、現在進行中のエピソードが非常に盛り上がっていて、これが最高の傑作になりそうです。それ以外では、センターカラー・巻頭カラーを何度も担当し、増刊でもたびたび外伝が掲載されるなど、「牙の旅商人」(七月鏡月・梟)の扱いの大きさが目立ちます。ヤングガンガン編集部は、この作品をかなり推しているのではないでしょうか。さらに、「死がふたりを分かつまで」「新選組刃義抄 アサギ」「魍魎の揺りかご」 など、コンスタントに読める連載が本当に多い。
 一方で、コメディやギャグ、萌え系の作品も健在ですが、唯一「はなまる幼稚園」がここで終了。まだまだ続くかと思っていたのですが、まだ人気のあるうちにやめたのでしょうか。ただ、作者の次回作は、来年始めにすぐに始まるようで、こちらも期待できると思います。


<ビッグガンガン>
 拡大を続けるスクエニ雑誌に、今年また新しい雑誌が加わりました。10月になって創刊されたビッグガンガンです。元々、ヤングガンガン増刊ビッグとして、ほぼ季刊ペースで定期的に刊行されてきましたが、ここにきてついに月刊誌として創刊することになりました(*雑誌としてはまだヤングガンガンの増刊扱いとなっています)。増刊時代からコンスタントに良作を出し続けていただけに、創刊したばかりの今においても、既に質・量ともに充実した誌面となっています。

 まず、連載・読み切りを合わせて、既に30近い掲載作品を確保している点が挙げられます。これは、他の紙媒体のスクエニ雑誌のどれと比較しても多い。もう本格的な雑誌としての体裁を整えています。

 肝心の連載では、増刊時代からの継続連載に加えて、創刊に際しての新しい連載が加わり、そのどちらにも良作が多く見られます。継続連載の中では、「ハイスコア・ガール」(押切蓮介)を一押ししたい。90年代初頭のゲームセンターを舞台にしたコメディマンガで、作者のゲームへの思い入れが顕著に感じられる良作となっています。他、女子弓道部マンガの「射!」や、二世帯同居ものコメディ「ペコロス」なども期待したい。
 一方で新規連載では、創刊号で表紙にもなった女子駅伝部マンガ「群青」(桐原いづみ)が、かなりの良作として期待できそうです。編集部も看板作品として扱うつもりのようですね。さらに、Gファンタジーで「ぱにぽに」が最終回を迎えた氷川へきるの新作CANDY POP NIGHTMARE(氷川へきる)。「ぱにぽに」と同じようなテイストの作品ですが、より作風に合う読者層を求めて、こちらでの連載になったようです。他に、ひぐらしシリーズの原点と言える一作のコミカライズ「雛見沢停留所〜ひぐらしのなく頃に原典〜」や、高校バンド部青春もの「階段途中のビッグ・ノイズ」なども注目したいと思います。


<ガンガンONLINE>
 以前より非常に精力的に展開してきたスクエニのウェブ雑誌・ガンガンONLINEですが、今年に入ってさらに新連載が相次ぎ、さらに規模を拡大したようです。現在、マンガだけで50近い連載本数をかかえ、さらに小説やイラストコーナー、情報ページなども毎週何かしら更新される体制が続いており、その規模は他のどのスクエニ雑誌をも上回っています。

 そして、これだけの数のマンガ連載の中でも、特に人気のある作品がそろそろ出始めているようです。まず、ついにONLINE初のアニメ化が決まった男子高校生の日常(山内泰延)を挙げるべきでしょう。タイトルどおり、男子高校生のしょうもないグダグダな日常を描いた作品ですが、これが大評判となり、コミックスの累計発行部数は100万部を突破。コミックスアニメ放映に先行して公開されたPVも人気で、アニメの前評判も上々のようです。これはかなり期待できるのではないでしょうか。
 もうひとつ、それに匹敵するほど人気があるのが、「ばらかもん」(ヨシノサツキ)ですね。五島列島の田舎で過ごすことになって若き書道家を主人公にした作品で、田舎の個性的な住人を描く作風が大人気となり、こちらもコミックスの累計発行部数は100万部を突破しています。このふたつが、とりわけ大きな話題作となってきたとみてよいでしょう。
 これ以外だと、あの「魔法陣グルグル」のスピンオフ作品「舞勇伝キタキタ」(衛藤ヒロユキ)も評判で、これも突出した人気作のひとつに加えてよさそうです。

 これらの人気作品に加えて、さらに多くの連載があり、実力のある作品も多い。そして、今年に入って「毎週新連載16作品プロジェクト」と称して、なんと16もの作品が連続して始まるという企画もあり、さらに膨大な数の連載本数となりました。これらの新連載の中には、壱河柳乃助やあるまるみ、林ふみの、福盛田藍子など、かつてスクエニ他誌で連載を行っていた作家の新作も含まれ、連載終了作家の新しい掲載先として、このガンガンONLINEが選ばれるようになったと思われます。他では掲載場所が確保できなかった作家の新天地として、ガンガンONLINEには意義がありそうです。
 この16の新連載の中では、「花とゆめ」で活躍中の少女マンガ作家による4コマ「月刊少女野崎くん」(椿いずみ)が面白い。少女マンガ家の男子高校生を主役に据えたコメディで、スクエニの4コマでまた期待できる新作が出てきました。

 また、このガンガンONLINEでは、かつての紙媒体の新人読み切り雑誌・フレッシュガンガンがオンライン上に移転される形となっており、定期的に新人の読み切りがまとまった形で掲載されています。新人の育成という点においても、このONLINEの重要性は高まっているのではないでしょうか。他誌の連載作家の移籍先・新人の読み切りの掲載先など、他の雑誌では取れない場所を確保する、スクエニ出版にとっての柔軟な活用地となっているようです。


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