<ステンシル休刊に際して>

2003・4・3

 このたび、ステンシルの休刊が正式に明らかになりました。これについて思うところが色々とありましたので、ここでページを取ってあれこれ書いてみることにしました。

 ・・・いや、雑誌が面白くなくて休刊するのなら別に構わないんです。しかし、今のステンシルが面白くないとは到底思えないんですね。今のステンシルは実際面白い。はっきりいって、雑誌を構成するマンガの面白さだけを見るなら、今のステンシルが休刊する理由は全く無いと言えます。

 しかしその一方で、休刊になるほど雑誌の人気が出なかった理由というのも簡単に思い当たるあたりが悲しいところ(笑)。考えれば考えるほど理由がはっきりしてきます。

 まず、ステンシルはそもそもあまり人気のある雑誌ではありません。エニックスの4誌の中では間違いなく一番下でしょう。これには、ステンシルという雑誌のカラー、あるいは方向性自体が関係しています。
 一応ステンシルは少女マンガ雑誌ということになっていますが、実際にはオーソドックスな少女マンガ雑誌ではなく、むしろ他のエニックスの雑誌とかなり近いものです。マンガの内容自体、オーソドックスな恋愛系の少女マンガは少なく(全く無いわけではない)、誌面の雰囲気はGファンタジーあたりに近いでしょう。実際、かつては書店で少年マンガのスペースに置かれていることが多く(今でもそうか?)、実際の読者層も他のエニックス雑誌の読者層とかなり共通するのではないかと思われます。

 しかし、そうはいってもある程度女性向けの誌面であることは間違いなく、男性読者にとっては他のエニックスの雑誌よりも縁の薄い存在でもあります。また女性読者にとっても、もともとエニックスを読んでいる人にとってはオードドックスな少女マンガはあまり興味がないでしょうし、やはり他のエニックス雑誌を選んでしまう傾向が強い。総じてステンシルはエニックスの雑誌の中でも4番手であって、どうしても他の雑誌からは遅れを取ってしまう存在です。まず今のエニックス系(ガンガン系)で読む雑誌となるとまず何といってもガンガン、次いで人によってはWINGかGファンタジー、となるとステンシルまで手を伸ばす人はエニックスファンの中でもかなりの少数派でしょう。休刊するならまず真っ先にステンシルが来ることは予想が出来ていました。

 しかし、これだけならば休刊の直接の理由にはなりえません。人気がないとはいえこれまで数年来続いてきたのですから、今になって休刊になった理由(=売上が落ち込んだ理由)は別にあります。で、これが極めてはっきりしていると。

 結論から言いますとね、萌え要素が足りないんです(笑)。いやはや、ドラクエモンスターズが終わった理由と待ったく同じですな。つまり、「テーマ」や「ストーリー」といった作品における本質的な面白さは確かに持っているんだけど、人気を得る要因たる「萌え要素」が足りないんです。
 ここでいう「萌え要素」とは、いわゆる「キャラ萌え」だけを指しているのではありません。マンガにはキャラクター以外にも萌える要素はいくらでもあるのです。

 そして、その萌え要素がなくなってしまった契機となったのがやはりブレイド・ゼロサム陣の離脱でしょうね。この事件によって、何らかの萌え要素を持つ連載陣が大量に離脱してしまい、雑誌が大変地味になってしまったのですね。

 具体的には、まず「ビズゲーマー」の離脱は痛いでしょう。峰倉さんということで女性に対するキャラ萌えは絶大なものがある上に、作品の設定やふんだんに盛り込まれたバトルシーンでも「設定萌え」「バトル萌え」を誘発しまくってくれました。
 そして、「AQUA」の離脱がとても痛い。このマンガはキャラ萌えもさることながらそれ以上に「世界観萌え」の要素が非常に大きい。もう世界観萌えを体現しているようなマンガです(笑)。特にこのマンガは男性読者のファンが多く、これを目当てにステンシルを読んでいた人も大勢いたはずです。それもマンガの世界観にこだわるコアなマンガマニアの読者を大いにひきつけてくれました。そういう意味では「ビズゲーマー」の離脱以上に痛かったかも?
 「南国動物楽園綺談」「心に星の輝きを」の2大定番連載の離脱も痛い。どちらもキャラ萌え・設定萌えにあふれるマンガでした。
 「僕と彼女の×××」「ベイビートロン」の離脱もかなり痛かった。どちらもかなりマニア向けのマンガでして、やはりマニアをひきつける萌え要素をふんだんに所持していました。

 そして、これらの「萌え要素」を持つ作品が大量に抜けた後、ステンシルの編集部は雑誌の建て直しに同じような萌え要素を持つ作品を補充するようなことはしませんでした。これには「ブレイド」や「ゼロサム」に対する対抗意識もあったのかもしれませんが、とにかく異なる雰囲気の誌面作りを目指していたように感じられます。
 具体的には、あまり派手な萌え要素で読者をひきつけるようなことをせず、地味ながらも内容重視といいますか、じっくりと読ませるタイプのマンガが増えたように思えました。その際たる例が「灰色の乙女たち」でしょう。真に少女マンガ的な作品も増え、なんとも落ち着いた誌面となりました。

 そして、このように内容の充実したステンシルを愛読する読者を得た反面、大勢としては大きな人気を回復することはできずに、結局のところ休刊に至ったのではないかと。休刊の理由が簡単に推測できてしまいます。
 正直、今のステンシルは世界観にこだわるマンガマニアには魅力の無い誌面かもしれません。今のステンシルで世界観でひきつけるマンガとなると「KAMUI」「夢喰見聞」程度でしょうか。雑誌に派手な人気が出ないのもうかがえます。今のステンシルは地味ではあるが極めて通好みの雑誌といえる存在です。

 しかし、いくら地味でひきつける要素に乏しいとはいえ、このような面白さを持つ雑誌が休刊というのは無念でなりません。いや、本当に面白いんですよ。世界観で人をひきつける「KAMUI」「夢喰見聞」ですが、単に世界観萌えのマンガではなく、ストーリーもほんとにしっかりしています。定番の長期連載である「渋谷君友の会」「モーツァルトは子守唄を歌わない」(←これは最近連載を終了しました)もよい(よかった)。ギャグ王時代から続く「天空物語」も健在。ギャグマンガである「パパムパ」「QPエンジェル」も面白いです。笑えます。新規連載である「現神姫」も魅力的です。そして何といっても「灰色の乙女たち」が素晴らしい。これは他のどのエニックスの雑誌でも読めないタイプのマンガではないでしょうか(もちろんブレイド、ゼロサムでも)。同じ事はこがわみさきさんの読み切りシリーズにも言えますね。今のステンシルでは面白くないマンガの方がごく少数で、実に安定して面白い誌面作りが出来ていると思います。


 このように、真に内容があって面白い雑誌が売れないというのは実に残念です。今のマンガ・・・っていうかマンガや、アニメや、ゲームや、ライトノベルは、何らかの萌え要素がないと売れないのかなあ。「本当に面白ければどんな作品でも売れる」というのはもはや幻想なんでしょうか。


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