<輝竜戦鬼ナーガス・モンスター名鑑(2)>

2009・6・7

*モンスター名鑑(1)はこちらです。


<ギレウス>
 そして、ナーガスと言えばそのライバルであるギレウスも忘れてはなりません。ナーガスを殺すために生まれてきた暗黒竜と炎魔神のハーフという設定で、黒いボディでナーガスと寸分たがわぬような姿をして、しかしその力ははるかにナーガスを上回る最強のライバルキャラとして、大いにその存在感を示してくれました(「ロトの紋章」でいうジャガンのような設定のキャラクターでしたね)。実際非常にかっこいいキャラクターだったのですが、ただ、ほぼ完全にナーガスの2Pキャラみたいな姿だったので(笑)、もう少し特徴的な違いがあった方が個人的にはよかったかなと思ってます。

 ナーガスを倒すために炎魔皇帝によって作られ従属してはいるものの、自らも強固な意志を持ちもっぱら反抗的、最初にナーガスと闘った時には圧倒的な実力で完膚なきまでに打ち倒すも、「この程度の奴を倒しても意味がない」とうそぶき、ナーガスを鍛え直すために見逃して魔精界へと送り込み、最後には「強くなったナーガスを倒してその実力を吸収、そして炎魔皇帝を倒して自分が頂点に立つ」という目標を掲げて突き進みます。なんだかこのあたりの設定やストーリーもジャガンっぽい(笑)。
 しかし、後半になるとある理由から体に変調をきたし、ナーガスと闘うも激闘の末に敗れ去ります。この闘いは3話に渡って密に描かれ、この作品最後の見せ場になりました。

 あと、ギレウスといえば彼に付き従う女魔神・モリガンも忘れてはなりません。当初はギレウスの監視役として登場するのですが、次第にギレウスの生き様に引かれ、ついには彼に尽くす最愛のパートナー的な存在となり、その一途な女性らしい性格が美貌とあいまって人気を集めました(増田さんの描く女性はどれもすごく美人である)。しかし、作者の後書きによると、意外にも最初の予定では、ギレウスを早い段階で裏切って殺されるだけのザコ的な役柄だったらしいのです。それが、描いているうちに次第に情が移り、読者の人気も得てこのように出世したのだとか。モリガンというネーミングも、元ネタはケルト神話やアーサー王伝説に登場する狡猾な女妖精ですが、結果的にこの名前からは反する性格になってしまいました。が、それはそれでよかったと思っています。


<ウエウエテオトル>
 ヴァグーラに仕える最強の部下「炎魔六将軍」のひとり。その中で最初に登場したキャラクターで、しかもまともに活躍できた唯一の存在だったりします。元ネタはアステカ神話に登場する同名の火の神。

 舞台が魔精界(魔神や精霊たちが住む世界)に移ってから最初のバトルで登場し、水界のレジスタンスたちを大いに苦しめ全滅寸前まで追い込むものの、危機に駆けつけたナーガスによって倒されます。グライマーに次に登場することになった炎界の強敵で、グライマー戦ほどではないにしてもかなり盛り上がった、連載後半の数少ないバトルシーンを見せてくれました。

 ただ、グライマーと違ってあんまりかっこよくない(笑)。竜輝によって「でっかいタラコの化け物」と言われたように、頭の上に巨大で異様なパーツを載せ、泰然と佇む老人の姿で描かれます。しかし、この頭の中には、「原初の火」という大いなる炎と、そこから生まれた千の軍団が潜んでおり、その圧倒的な戦力でナーガスたちを大いに翻弄します。しかも、千の軍団とは過去の炎の精鋭たちを蘇らせた姿であり、その中の一体としてあのグライマーも登場。ここでもう一度ナーガスと激闘を繰り広げることになります。

 このウエウエテオトルは、泰然と佇む老人の姿で描かれている点や、かつ自分よりも部下の精鋭軍団に闘わせるという狡猾な戦術を有している点において、これまでの戦闘系モンスターと異なり「知恵者」的な存在で描かれているところが大きな特徴でしょう。いわゆる頭脳派のボスモンスターとして、これまでのモンスターにはない魅力がありました。これは「ロトの紋章」で言えば、敵四天王のひとりゴルゴナに近いイメージがあります。あちらもあれこれ策をめぐらせる頭脳派で、正体は老人であり、しかも蘇らせたアンデッドたちを操るという点まで共通していたりします。なにかこういうタイプの敵キャラクターとして、共通概念があるのかもしれません(他の少年マンガでも似たようなキャラクターがいそうです)。

 最後にはナーガスの捨て身の攻撃で敗れ去りますが、初めて登場してからかなり長い間活躍しており(コミックスだと5巻終わり〜7巻の終盤まで)、連載後半におけるナーガスの主要なライバルキャラのひとりとなりました。しかも、このあとに登場する炎魔六将軍たちが、ある事情によりほとんど活躍できないままで連載が終わってしまったため、最初に登場したこのウエウエテオトルだけが、六将軍の中で幸運にもまともに活躍できた唯一のモンスターになってしまったのです。


<ドーベント、スグシス>
 これまではボスキャラ的なモンスターばかり紹介してきましたので、このあたりで下っ端系モンスターも紹介しようかなと・・・。

 ドーベントは、炎魔皇帝ヴァグーラに仕える側近のようなモンスター(侍従長らしい)で、自分ではおそらく大した戦闘能力はなく、いわゆる参謀的な存在としてヴァグーラに助言を与えるモンスターです。しかし、これといった鋭い助言で情勢を変えるようなシーンはあまり見られず、ほとんどの場合ヴァグーラと意見が合わずに一方的に平伏するようなシーンばかりが目立ち、情けなさばかりが強調されているようにも見えました。このマンガでは、やはり強さ、戦闘力こそが第一に重要であって、彼のような口先だけの行動が中心のキャラクターには、あまり日の目が当たらないのかもしれません。個人的には、こういう頭脳派タイプのモンスターにも、それ相応の活躍の機会があっても良かったと思いますが・・・。なお、ウィキペディアの記述によると、ドーベントの名前と姿の元ネタは、原猿のアイアイの学名「daubentonia」かららしい。さらには、実は地魔神であるらしいです(作中では最後まで記述なし)。昔リアルタイムで読んでいたころは、そんなことはまったく知らなかったですが(炎魔皇帝の側近なので炎魔神かと思っていた)、今になってそれを知るとは、インターネットとは本当に便利ですね・・・。

 次にスグシスですが・・・。これは連載の初期、あのボレアース戦において、その前座を務めることになるモンスターです。ヴァグーラの命でボレアースを呼び出したドーベントが、ボレアースの尊大な態度に腹を立て、彼を出し抜くために先にナーガスを倒す使命を与えて人間界に遣わします。しかし、その姿と言動はいかにも小物的で、闘い方も竜輝の父親を人質にとってナーガスをいたぶるという典型的な小悪党的(ザコ的)戦法を披露。これに腹を立てたボレアースにあっさり捻りつぶされて死ぬという、本当にどうしようもない小物として描かれています。一応、このモンスターがナーガスが初めて闘った炎魔神なのですが、実際にはまともな戦闘にもならないうちに死んでいるので、無視していいと思います(笑)。ナーガスが初めて闘う炎魔神は、グライマーということでよろしいでしょう。

 しかもこのスグシス、ネーミングがまたひどいもので、すぐ死ぬからと言う理由で命名したらしいのです。さすが増田さん、下っ端の弱いザコに対しての扱いが軽すぎます(笑)。あまりにも哀れな扱いで、逆にちょっと同情するくらいで個人的にはそんなに嫌いなモンスターではなかったりします。


<ナーガスの襲来に慌てふためくグライマーの部下の方々>
 今度は特定のモンスターではなく、ひとつのシーンで登場する大勢のモンスターを紹介してみます。増田さんは、このようなモブシーンでの多種多彩なモンスターの造形にも見るべきものがあります。いや、このモブシーンこそが、増田デザインのヴァリエーションの深さが分かる最良のシーンかもしれません。

 まずは、グライマーと共に越界の鏡を守る部下の方々。ナーガスに外側(人間側)の守備隊であるクザンたちが倒されたのを知って慌てふためくザコ的なモンスターとして描かれています。グライマーは、ここに誘い込んで一斉攻撃した方がいいという忠告を突っぱねて、一神で鏡を越えてナーガスを倒しに行きますが、まあこの程度のザコならばいくら加勢しても戦力にはなりそうもないので、その選択は間違ってなかったと思われます(笑)。

 ただ、ザコとはいえモンスターの多彩な造形はこのシーンでも健在で、人型だったり鳥みたいな頭だったり竜(蛇)のような体だったりと、実に面白い。個人的には、頭でっかちでいかにも弱気で弱そうなモンスターが気に入っています(笑)。あるいは、グライマーに鏡使いと呼ばれている、なんだか妙な顔のモンスターも妙に愛嬌があって面白い。グライマーに一括されて焦る姿も笑えます。こういうザコモンスターのモブにまで気を使ってしっかりと描く増田さんはさすがですね。


<炎界の襲来に果敢に抵抗する水界のレジスタンスの方々>
 ナーガスが魔精界に行って彼の窮地を救い、頼りになる味方として活躍する水界のレジスタンスの方々。水界に属する水魔神は、唯一ナーガスにとって味方となる勢力ですが、全体的に多種多様でいろいろなタイプのモンスターがいて面白い。ディーナのように人間と変わらぬ美しい姿のモンスターもおり(女性はみな美しい)、あるいは水棲生物をモチーフにしたグロテスクに見えるタイプのものまで、実にバリエーション豊かで面白い。

 彼らの中には、ストーリーに大きく関わってくる重要なキャラクターも何人かいて、レジスタンスのリーダーである竜タイプの魔神・サルマリュートと、彼の強力な副官で気難しいながらも最後にはナーガスを認めることになるラーザニル、この作品では珍しい子供の魔神で、ナーガスのために懸命な活躍を見せるカイルのふたりは特に注目度が高い。それぞれ、ラーザニルはカニ(笑)、カイルはオウムガイ(?)をモチーフにしたフォルムで、海の生物をうまくモンスターデザインに取り入れています。ラーザニルは最終的にナーガスを守るために捨て身の攻撃でグライマーと相討ちになりますが、この死に様が読者の大きな共感を呼びました。カイルの活躍ぶりも顕著で、尖った頭を武器にした突進攻撃・転身貫通撃(ボーリングブレイク)は、炎の回廊を越える強力な手助けとなったり、グライマーに最後のとどめをさしたりと、かなりの奮闘ぶりをみせています。

 それ以外のレジスタンスの方々も、いずれも水棲生物をモチーフにしたり半魚人っぽかったりと様々なモンスターが見られ、そのバリエーションで楽しませてくれましたが、最後にはウエウエテオトルの攻撃で次々と倒れ、わずか5体にまでなってしまったのが残念でした。個人的には、その5体の中に残ったタコっぽいモンスターと太り気味の半魚人系モンスターが気に入っています。


<水界のレジスタンスにやられる炎界の出涸らしのザコの方々(笑)>
 そして、竜輝が最初に魔精界にやってきたときに、彼に襲い掛かる炎魔神のザコたちも印象深い。彼らは、ラーザニルに言わせると「出涸らしのザコ」らしく、最初は力がなかば尽きていた竜輝に一斉に襲い掛かるものの、かけつけた水界のレジスタンスの面々にあっさり倒されまくるという、究極のザコとして描かれています。しかし、ザコとは言えこのシーンでのモンスターの多彩ぶりも見るべきものがあり、アップにされたモンスターも中々に迫力があってよいものがありました。しかも水界のレジスタンスたちに一斉攻撃されて倒されまくる大写しの戦闘シーンに大迫力があって素晴らしい。それ以外にもシーンごとにたくさんのモンスターが登場し、見るものを楽しませてくれます。

 このモンスターたちは、のちにウエウエテオトルに率いられて再び登場しますが、「役に立たんザコはいらん」というテオトル様の偉大なる意志によって、あっさり水界のアジトごと焼殺されるという哀れな末路を迎えます。さすが増田さん、やっぱり下っ端の弱いザコに対しての扱いが容赦ありません(笑)。ある意味情けなさすぎて哀れすぎて笑ってしまうようなシーンでもあります。

 この後に登場する、ウエウエテオトルに率いられた「千の軍団」の方が、力強いイメージで統一されており、見ごたえがあったのとは正反対の存在になってしまいました。こちらの方は、「原初の火」から生み出された炎の魔神たちという設定で、どれも炎のイメージの凶悪な強敵として描かれています。


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