<個人的な思い出> ──「東京アンダーグラウンド」──

2007・5・12

 このマンガには、個人的にも数々の思い出があります。

 まず、今でも思い出すのは、このマンガの連載予告です。97年ももう末の時期で、当時のガンガンは月2回刊時代でしたが、その予告ページの絵が非常に気に入ってしまい、新連載を本気で楽しみにしていました。97年のガンガンは、「ジャングルはいつもハレのちグゥ」や「PON!とキマイラ」などの優良新連載がかなり見られ、この連載にも期待が高まったのです。
 その予告絵には、主役格の男女3人のキャラクターが描かれていたのですが、そのうちの髪の長い女の子(チェルシー)がやたら気に入ってしまい、「このキャラは人気が出るんじゃないか」と予想したくらいですが、それはのちに見事に現実のものとなります。

 そして、次の号から連載がいよいよ始まりました。当時は月2回刊ということで、速いペースで連載が追っていけるのが嬉しく、毎回のガンガンの楽しみがこれで増えたような感じでした。序盤の展開も期待していたとおり面白く、月2回連載というペースにも問題なくクオリティを維持しており、当初から連載は軌道に乗りました。
 この連載最初期においては、面白いエピソードがあります。ガンガンについているアンケートハガキに、「今後の『東京アンダーグラウンド』に、どのような展開を望むか」というような質問があり、以下の3つから選ぶことになっていました。

  1. 主人公たちが地下世界に入っていき、敵の本拠地へと攻め込んでいく展開。
  2. 主人公たちは地上に残り、やってくる敵を迎え撃つ展開。
  3. 主人公たち男女の恋愛を中心にした、ラブコメ的展開。
 あくまで参考程度の質問だと思いますが、ここまでダイレクトに今後の展開を読者に問う質問も珍しく、今でもこのアンケートは記憶に残っています。マンガ本編では、結局のところ1の展開が採用されることになったわけですが、もし2や3の展開が採用されたらどうなっていたのか、それが興味深いところです。個人的には、広々とした空の描写が開放的で心地よかった、序盤の地上世界が舞台の雰囲気も魅力的だったので、2の展開もかなり見てみたかったような気がします。

 しかし、ますます連載が軌道に乗ると思われていた矢先、なんと連載開始してわずか5号目にして、ガンガンの月2回刊行は打ち切りとなり、月刊に戻ることが決定します。これは個人的に大変なショックで、月2回刊で大手週刊誌に迫る展開を見せていたガンガンが、結局その試みを断念、元の月刊誌に戻るということで、その勢いは大きく削がれてしまいます。そして、この「東京アンダーグラウンド」のような面白い連載が、月に1回しか読めなくなるという点に、まず何よりも落胆してしまいました。

 しかし、月に1回しか読めなくなったのはひどく残念でしたが、しかし作品のクオリティは変わらず、そのまま順調に連載が進んでいきました。元々、月2回刊ペースでも全く問題なく連載を続けており、月刊に戻ってももちろんその質は変わらず、むしろ作画の質はさらに向上した感がありました。そう、この初期の「東京アンダーグラウンド」は、絵がとにかく安定していて、そのビジュアルの魅力には見るべきものがありました。綺麗な絵から来るキャラクターの人気にも高いものがあり、のっけからコアな読者層を瞬く間に確保していきます。
 また、この当時は、作者の有楽さんによるオリジナルの読み切り作品(Gファンタジー掲載の「BLADE」)や「東京アンダーグラウンド」の読み切り外伝も描かれており、そちらの方の絵もこの作品同様に魅力的でした。この時代はまさに天国だったと言えます。

 その後、(私的に)最盛期と言えるのが、99年の4月にインターネットを始めた前後の時代でした。ネットにつないで、最初にアクセスしたのが「ガンガンNET」だったんですが、その次にアクセスしようとしたのが、この「東京アンダーグラウンド」関連のサイトでした。それくらいこのマンガにはまっていたわけです。そして、ほどなくして、「有楽街」という当時の「東京アンダーグラウンド」サイトの中心となる場所を発見します。このサイト、厳密には作者の有楽さんのサイトではないんですが、有楽さんの友人が運営するサイトで、有楽さん自身のイラストが多数あり、有楽さん自身の発言コメントもあるという、作者の公式にかなり近いサイトでした。ここで有楽さん自身のイラストを見て、本気で感動した記憶があります。「インターネットではこんなことが出来る」という、ネット初心者の素朴な感想でした。

 そして、当時は作品自体も最盛期ということもあって、多くのファンがネット上でも集まっており、掲示板でも盛んな発言が見られたのですが、その時にあの「トライガンパクリ事件」(笑)が起こり、ネット上でも大いに盛り上がりまくりました。わたしも大いに面白がっていた記憶があります。この「有楽街」は、ほどなくして縮小し、じきに実質的に更新を停止、完全に消滅してしまうので、ほんの一時の楽しい時間でした。

 作品自体は、99年いっぱい、長く見て2000年前半くらいまでは全盛期が続きます。この時期が一番楽しかったですね。この当時の「東京アンダーグラウンド」の魅力は、とにかく絵とキャラクターに尽きます。綺麗な絵で描かれたキャラクターがすばらしく萌えた(笑)。コミックス2巻表紙の絵などは、まさに絶品であると言えるでしょう。本屋に買いに行った時には、本気で感動しましたよ。ネット上でもやはりキャラクターが大人気で、やはりチェルシー・ローレックの人気が圧倒的でした。これほど萌えるキャラはガンガン系の錚々たる萌えラインナップの中でも・・・いや、当時のガンガン系なら珍しくはないかな。実は、わたしは、昔からオタク的な気質を持ってはいたのですが、どうもこのあたりのガンガン系雑誌で、本格的にオタクに目覚めたようです(笑)。その中でも、この「東京アンダーグラウンド」は、そんな作品の中でも、特に中心的な存在であったことは間違いありません。

 もちろん、そういった趣味だけでなく、純粋にマンガの内容も面白かった。特に、コミックス4巻での白熱バトルの連続は、今見てもあの時同様に楽しめる、最高の場面だったと 思いますね。当時は毎月のガンガンでも1、2を争うくらいに楽しみなマンガとなっていました。

 しかし、楽しかったのは連載が始まって2年か2年半くらいまで。その後、2000年後期以降の「東京アンダーグラウンド」は、一気に作品のクオリティを落とし、まさに悪夢のような転落を体験することになりました。
 とにかく、一気に絵のクオリティが落ち、毎回の絵が全く安定しなくなってしまいます。絵が最大の魅力のひとつであるこのマンガにおいて、これはもう致命的と言ってもよい状態でした。このために、とにかく毎回の連載で「今回の絵はどうか」と絵の出来ばかりを気にするようになってしまい、作品を心から楽しむことは出来なくなってしまいます。そして、連載を重ねるうちにさらに絵は劣化し、2001年、お家騒動で一旦中断する直前の頃には、もう見るも無残なまでにひどいビジュアルになってしまいます。このあたりで、もうこのマンガに対する興味は半分以上冷めてしまいました。

 そして、この作品の劣化と時を同じくして、ガンガン自体も、急速かつ強引な路線変更で混乱していきます。お家騒動に近づくにつれ、さらに混乱の度合いは増していき、もはやガンガンがどうなるのか、そちらの方にばかり気が取られてしまい、もう個々の作品をじっくりと楽しむ余裕もなくなってしまいました。こうして、かつてあれほど夢中になって読んでいた「東京アンダーグラウンド」への興味は、お家騒動直前には、完全に冷めてしまいました。

 そして、2001年後期、ついに「エニックスお家騒動」が勃発し、多くの作家と作品がガンガンを離れ、ブレイドへと行ってしまいます。そして、「東京アンダーグラウンド」の作者の有楽さんは、ブレイドへ行くのか、それともガンガンに残るのか、相当悩んだらしく、一旦連載を中断せざるを得なくなります(「第一部完」扱い)。その後、なんとかガンガンに残ることに決めたらしく、数カ月のちに再開します(以後は「第二部」扱い)。こののちのブレイドとガンガンの行く末を考えると、ガンガンに残ったことは正解だったように思えますが、肝心の作品の内容は、決して持ち直すことはありませんでした。

 そして、お家騒動以後のガンガンが、強固な「少年マンガ路線」を採り始めた影響か、このマンガも、少年マンガ的な熱さ・力強さを押し出した作風となり(絵的にも内容的にも)、以前とはかけ離れた作風になってしまいます。質的には、再開直後のバトルシーンで、一部かなりよい時があったものの(「ベストバトル」の項参照)、それ以降の質はおしなべて低いもので、随分と粗雑な絵になってしまい、それが最後まで回復することはありませんでした。ストーリーももはや盛り上がりに欠け、完全に惰性で毎月読んでいるような状態でした。

 また、再開後の比較的早い時期に、TVアニメ化されますが、もう原作自体が到底楽しめなくなってから長い期間が過ぎており、正直「いまさら」の感は拭えませんでした。内容的にはそこそこだったみたいで、原作を知らないアニメファンにはそこそこ楽しまれたようですが、原作からのファンとしては、もうどうでもよいものでした。

 最後の数年はこのような状態でしたから、2005年に最終回を迎えた時も、もうなんの感慨もありませんでした。ラストの終わり方も、かなり不満の残るものでしたが、実際にはそれすらどうでもよい心境だったことは言うまでもありません。

 このように、連載の後半は非常に不幸な状態にまで落ちてしまい、かつての興味は完全に失われてしまった「東京アンダーグラウンド」ですが、それでも面白かった時代の記憶はしっかりと残っており、やはり個人的には非常に思い入れの深い作品であることには変わりありません。今になって序盤の頃のコミックスを引っ張り出して読んでも、熱中して読み進められるだけの魅力があります。そして、あのガンガンの全盛期を形作った主要作品のひとつであり、当時のガンガンの象徴的なイメージだったことを考えても、このマンガの持つ存在意義は、わたしの中で揺らぐことはありません。

 そしてもうひとつ、このマンガが、わたしをこの道へと引き込む最大の要因のひとつとなったことも大きいです。このわたしをオタクの道へ強引に引きずり込んだその功績は、何をもってしても変え難いものがあります(笑)。今のわたしがこのようなサイトを作るような人間になった、その大きな要因がこの「東京アンダーグラウンド」にあることを考えれば、それは計り知れない業績と言えるでしょう。


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