<CHOKO・ビースト!!・ベストエピソード5> ──「CHOKO・ビースト!!」──

2008・2・11

 「CHOKO・ビースト!!」は、ちびっこヒロイン・ちょーこの精神獣がらみの大きなストーリーを進めつつも、基本的には1話完結のコメディ話で構成されています。ここでは、そんなエピソードの中でも、特に面白いと思った5つの話を紹介してみようと思います。

 とはいえ、「CHOKO・ビースト!!」のエピソードは、どれもこれも非常に面白いものばかりなので、どれか5つを選ぶといっても難しいところです。実際には、これ以外にも面白い話はたくさんあり、迷いながらも割愛することになってしまいました。


<第5位:第26話&27話 アイドルを探せ!>
 この作品に限らず、浅野りん作品では定番のネタとして、母親がやたら強いというのがあります。このマンガもその例にもれず、主人公・京太の母親の強いこと強いこと。その真骨頂が味わえるのが、このふたつの話です。
 このふたつは、一応それぞれ独立した話で、どちらもちょーこがアイドルオーディション(コンテスト)に参加する話なのですが、最初の話でさんざんな目に遭って懲りたと思いきや、次の話で別のオーディションに参加してさらにえらい目に遭うという、二重に楽しめる話となっています。

 そもそも、ちょーこをオーディションに参加させたのが京太の母親で、その理由が賞金目当てであんま器を買うというしょうもない理由であり、そんなことで参加させられたちょーこと、付き添いで行くことになった京太がとんでもない光景を目にします(ほとんど京太が)。

 最初の話(26話)でこの母親は、なぜか優勝候補の女の子(一条麗華というらしい)の母親と敵対心むき出しで張り合うことになり、醜い争いを最後まで続けることになります。麗華とちょーこはそれぞれにマイペースで頑張ったのですが、母親の方は最後にはつかみ合いの大げんかに発展し、そのためにもちろんちょーこは失格、大恥をさらすことになります。

 それに懲りてやめればよいものの、今度は「元気っ子コンテスト」なるものに参加することになり、これまた大騒ぎになります。今度は、まず大会そのものが滅茶苦茶に破天荒で、毎年多数の怪我人を出すという過激なコンテストであり、そこでちょーこが持ち前の運動神経を発揮、大活躍することになります。そしてついに優勝し、それでめでたく終わればよかったのですが、今度もまたライバルの保護者と必要以上に張り合い、最後には椅子でぶん殴って流血沙汰にまで発展し、もちろん失格となってしまいます。

 どちらもどうみても京太の母が悪いのですが、それでも懲りずにまだもう一度参加しようとして、止めようとした京太にあんま器の代わりの肩たたきを強制して、最後まで傍若無人のままで話は終わります。今改めて読んでみると結構とんでもない話だったような気もしますが、コメディのノリがテンポよく、最後まで明るく読めてしまいます。


<第4位:第6話 水族館へ行こう>
 「CHOKO・ビースト!!」に登場するキャラクターたちは、誰も彼も個性派揃いですが、そんな中でも最も異様に印象的なのは、やはり東山檀(ひがしやままゆみ)ではないでしょうか。精神獣使いの一族の中で、唯一能力を使えないことへの引け目からか、異様な被害妄想に捉われており、ありえないほど卑屈なキャラとなっています。
 このキャラクターが出る話はどれもこれも面白いのですが、中でもあえてひとつ選ぶとすれば、この「水族館へ行こう」でしょうか・・・。檀だけでなく、ちょーこの活躍がやたら光ります。

 まず、檀とその姉である楓(かえで)とのやりとりがやたら楽しい。卑屈全開で自分の世界に入っていく檀を、一発ぶん殴ってあっさり引き戻すくだりがやたら笑えます。どうにもこのマンガに出てくる女性キャラはやたら強いですね。
 そして水族館に行った後では、檀が係員相手に大騒ぎする一方で、ちょーこが持ち前の無邪気さで大活躍。始めてみる海の魚に感動し、磯の生き物を触れるコーナーで、うみうしやうにやヒトデをあさりまくってコロニーを作り(笑)、ついにはシャチの背中に乗って大ジャンプ。この光景は非常に爽快で、本来はコメディで笑えるシーンではありますが、それにとどまらない魅力がありました。最後にイルカにもてあそばれるちょーこもかわいいです。ちょーこの無邪気な魅力が全面に出た話だったと言えるでしょう。(あれ?檀は?)

 この「CHOKO・ビースト!!」は、基本的には賑やかなコメディ中心の作品として見る人が多いと思いますが、こういう鮮やかで爽快な光景の美しさにも見るべきところがあると思います。これは後でも触れますが、意外に豊かな自然を感じさせるシーンが多いのです。


<第3位:第28話 パーティー・ビフォア・クリスマス>
 作中でちょーこが通う保育園を舞台にした話は、どれも大変面白いのですが、その中であえてひとつ選ぶとしたらこれでしょうか。クリスマスのプレゼント会で、ひとりだけプレゼントをもらえなかった女の子に、ちょーこが自分の大好きなお菓子をあげてしまう話です。

 保育園関連の話には実に面白いものが多く、個性的な園児や保母さんとの賑やかなコメディは、どれもこれも本当に笑えます。悪ノリ好きな保母さん達が『不審者対策演習』の犯人役と間違えて精神獣使いを散々な目に遭わせる話(第8話)、冒険好きの園児・健と一緒に遠足でオリエンテーリングをする話(第10話・11話)、園児のいじめっこたちを果敢に打ち負かす話(第20話)など、どれも本当に爆笑できる話ばかりなのですが、そんな中でもこの第28話は、単に笑えるだけのコメディではなく、ちょーこのちょっとした成長と、それを見守る京太の優しさが垣間見られ、ちょっとしんみりとして感動できるいい話になっていました。

 無邪気に絵本のサンタさんのことを信じているちょーこは、クリスマス会で近所の兄ちゃんが演じたサンタからおかしのプレゼントを貰い、それで大喜びします。しかし、手違いから用意したプレゼントがひとつ足りず、もらえなくなってしまった女の子がいました。そんな女の子に、ちょーこは迷った末に自分の持つおかしをあげてしまうのです。
 この話は、連載中でも後半にあたる話ですが、それまでのちょーこならば、大好きなおかしを手放すことはなかったでしょう。しかし、ここにきてほんの少し成長が見られました。おかしを与えて寂しそうな姿と相まって、これまでとは意外な印象を残す話で、今まで見られなかったちょーこの姿にちょっとした感慨を覚えます。そして、そんなちょーこの様子をみて、「サンタさんからだ」と言ってこっそりとお菓子をプレゼントする京太の様子がまたいい。ちょーこの成長と京太の優しさ、その両方が共に垣間見られ、心地のよい読後感を残す1話だったと思います。

 「CHOKO・ビースト!!」は、とにかく笑える楽しいコメディであり、それだけでも十分に楽しめます。しかし、このような読後にちょっとした余韻を残すいい話こそが、実は最大の魅力だとも思っています。単なる楽しいだけのコメディでは終わらない優れた特長が、この作品にはあります。


<第2位:第22話〜第25話 「山へ帰る」〜「山から帰る」>
 ちょーこは、元々は山で天狗に育てられていたのですが、人間界に来ても散々な騒ぎを引き起こし、それに耐えられなくなった京太は、とうとう山の天狗の下へちょーこを帰そうとします。これが、物語の中盤で4話に渡るエピソードで、基本的に1話完結の多いこのマンガの中では、珍しく長めのエピソードになっています。物語中盤の重要なシーンと見てもいいかもしれません。

 ここでは、山の中で凄い運動神経で逃げ回るちょーこと、それに翻弄される京太の追いかけっこがまず楽しい。ちょーこの幼児とは思えない凄い身体能力は、見ていてとても爽快です。
 そして、山で再び出会う天狗たちの様子がまた面白い。特に、天狗のじーさん(住職)の、京太の弱みをたてに部屋の掃除や風呂掃除や草むしりなど、あらゆる雑用を試練として押し付ける様が特に笑えます。散々働かされる京太にとっては、最大の受難の回だったと言えるでしょう。最後には、普段は井戸を使っているのに山の上まで水汲みに行かせ、あとでそれを知った京太が大激怒します。

 そんな様子の京太を尻目に、ちょーこは遊び放題・寝放題・夢の中でもおかし食べ放題で、京太が川に流されてピンチに陥った時にもまるで無関心、なんとか天狗たちに散々導かれて、最後の最後で京太を精神獣の力を救うことに成功します。この時点では、ようやく最後でちょっとした成長が見られただけのちょーこだったのですが、のちの話ではさらに成長が見られるようになるのは、上記で書いたとおりです。

 それともうひとつ、天狗の住む山が舞台ということで、豊かな自然の描写が端々で見られるのがいい。これは、、「CHOKO・ビースト!!」の隠れた魅力だと思っています。決して凝りに凝った背景描写というわけでもないのですが、それでもこの細やかに描かれた木々や山々、そして美しさを感じる滝の描写には、何かほっとさせるものがありました。


<第1位:第3話 「ちょーことじーさん」>
 これは、連載でも最初期、ほとんど最初のエピソードに当たる話です。連載第1話と第2話は、京太が天狗の山でちょーこと出会い、自分の元へと引き取るまでを描いた話で、いわば作品のプロローグに当たる部分です。となると、最初に独立したエピソードとして語られるのは、この第3話が最初ということになります。

 この話は、コメディシーンとひょっといい話とのバランスがよく、どちらでも十分に楽しめるのが優れたところです。京太の住む町にやってきたちょーこは、近所に住むおじいさんで、子供にあらぬウソを付きまくって楽しむ悪いくせをもつ「門前のじーさん」と出会い、素直な無邪気さからあっさりと騙され、家に帰って桃に手を合わせてお祈りするという奇行を演じます(笑)。まず、このときのお祈りをするちょーこがやたらかわいい! これが第一の評価ポイントです。

 そして、今度は「町の西にある池に夜行くと、お化けが出てきて願いをかなえてくれる」というウソを信じ込み、京太を連れて夜の池(青浜ヶ池)に行くことになります。このときの夜の池と周りの林の光景が中々雰囲気があって好印象なのですが、こうした落ち着いた環境描写こそが、ちょーこの隠れた魅力であり、これまでも何度も書いてきた通りです。

 そして、最後にお化けに扮したじーさんが登場し、蚊にかまれまくって膨れ上がった顔を見てふたりとも大いに驚き、ちょーこは精神獣まで出して大騒ぎになります。そして、そのことでじーさんもちょーこの素性を知ることになり、山の中で育った無邪気な幼女にウソを付いていた自分を恥じ、以後行いを改めてウソを付かなくなるのです。この、最後のしんみりとして自分の行いを反省するくだりは、読者に落ち着いた感動を与え、心地よい読後感を残してくれる名場面であると思います。賑やかなコメディで大いに笑わせつつ、最後はちょっといい話で締めくくり、読者の心に何かを残す。これこそが、「CHOKO・ビースト!!」の最大の魅力であることは言うまでもありません。

 そして、この話は、連載最初期の第3話にしていきなり登場していたことが、特筆に値します。こういう優れたエピソードが、連載が始まっていきなり出てきたことで、一気に読者の間で人気が高まり、連載が軌道に載ったことは間違いないでしょう。同時期に始まった「浪漫倶楽部」でも、序盤のうちに優れたエピソードが続いたことが、連載を軌道に乗せる大きな原動力となっていました。それは、この「CHOKO・ビースト!!」にも言えており、連載最序盤のうちから「これはいいマンガが出てきたな」と多くの読者の心を掴むことに成功したのです。


<番外:読み切り版第2話>
 これは、連載開始前にフレッシュガンガンで掲載された読み切り版の第2回目に当たります。この2回の読み切りが好評を得て、連載化へと繋がるわけですが、さすがに連載のきっかけとなっただけあって、本編に負けず劣らず非常に面白いものなのです。

 特にこの2回目は素晴らしい。ちょーこが幼稚園に入り、そこでませた冒険好きの男子園児・太一(連載版の健に相当)に出会い、毎晩謎の光を発する夜の山に冒険に出ることになります。この時の夜の山の情景が雰囲気たっぷりで、いかにも幼い幼児ふたりの冒険という感じがして、話に彩りを添えています。のちの連載版での自然描写が、この読み切り版でも顕著に見られるのです。

 話自体も、中々に緊迫感があってよい。謎の光の下で、何か隠したものを掘り出そうとしている怪しい大人ふたりを見つけたちょーこたちは、一目散に逃げ出そうとしますが、追われるうちに崖から転落、間一髪のところで巨大化したちょーこの精神獣に助けられ、翼が生えて空を飛ぶ精神獣の背中に乗って空を駆けるのです。この、夜の空を飛ぶパノラマが素晴らしいもので、実に爽快さと雄大さを感じる屈指の名シーンとなっています。なお、ちょーこの精神獣が翼で空を飛ぶという設定は、連載版では完全に失われているため、まさにこの読み切り版でしか見られないシーンともなっています。

 そして最後には、実は怪しいふたりは、かつて子供の頃に自分達が埋めたものを掘り返そうとしていただけということが判明し、実は悪人だと思っていたのは勘違いだと分かり、そのままハッピーエンドを迎えます。結局、最後まで悪人が存在しない物語になっており、これがこの作品の優しい魅力ともなっています。

 そして、これだけの優れたエピソードを読み切りで打ち出せたのだから、これが連載化を達成したのも、至極当然のことだったと言えるでしょう。わたし自身も、この読み切りにえらく感動した記憶があり、連載化してほしいと切に思っていたので、いざ連載が決まった時には本当に嬉しかったものです。


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