<CHOKO・ビースト!!・キャラクター名鑑(2)> ──「CHOKO・ビースト!!」──

2008・2・14

*キャラクター名鑑(1)はこちらです。

<天狗の住職・鴉>
 天狗のキャラクターでは、飛鳥と羽鳥のコンビが最も人気がありましたが、こちらの住職や鴉(からす)らの年長組も、実に個性的で魅力的なキャラクターたちでした。

 特に、天狗のおじいさんで住職(子毬山の寺の住職)は、飄々としながらも実はかなりの食わせ物で、散々京太を手玉に取ることになります。その老体に似合わないフットワークの軽さが絶妙で、住職(僧侶)にしては非常に俗っぽいところも親近感が持て、毎回毎回様々なリアクションでも楽しませてくれました。
 最も面白かったのは、やはり連載の第1話、京太にちょーこを押し付けるために、「持病の肺結核が・・・」とか言って見え見えの仮病をするシーンでしょうか。「今までピンピンしてたじゃねーか」という京太のツッコミにも動じず、地面に寝て迫真の演技(?)を繰り広げるバカバカしさには、誰もが思わず笑ってしまいます。そんな住職のフォローをして、後で迫真の演技だとごまをすりまくる羽鳥とのやり取りも笑えます。総じて、飄々として性格のいい爺さんといった呈のキャラクターで、年寄りのキャラクターとして目立った人気こそ見られませんでしたが、一方でマンガの明るい雰囲気に大いに貢献した人物であることは間違いありません。このように、年配で人のいいキャラクターがいることで、作品に安心感が生まれます。

 その住職のパートナー的存在として、無口かつ無表情かつマイペースな天狗の鴉も、意外に見逃せません。目立って表に出ることは少なく、なんとなく画面の中にいるようなキャラクターなのですが、そのマイペースな存在感にはあなどれないものがありました。作者によるとなにげにゲームは強いらしいですが、それも納得できるような存在です。おそらくは、毎日俗っぽい住職のゲーム相手を飄々と務めていることでしょう(逆に、住職はゲーム弱いらしいですが、これも思わず納得できます)。



<保育園の人々>
 ちょーこが通う保育園絡みの話は、どれもこれも非常に面白いのですが、それにはこの保育園の個性的な人々の魅力が大きいことは間違いないでしょう。この保育園の存在は、連載前の読み切りの段階で既に見られており、「CHOKO・ビースト!!」のエピソードでは最大の定番となっています。幼児であるちょーこの魅力が最大に発揮できるのが、この保育園でののびのびした活動であり、他の園児とは一味違う常識外れの行動が際立って見えるのも、一層ちょーこの魅力を引き出しています。

 まず、ちょーこと共に遠足でちょっとした冒険を繰り広げることになる少年・桂健(かつらたける)は外せません。冒険好きのちょっとませた男児で、ちょーこの不思議な能力に興味を持ち、精神獣に実際に遭遇することで俄然盛り上がります。その妙に背伸びした言動と、正反対にかわいらしい年相応のリアクションが、実に面白い。なお、この健くんは、連載前の読み切り版にも、これに相当する冒険好きのキャラクターが既に登場しており(田嶋太一)、そちらでは夜の山でちょっとした大冒険を繰り広げることになります。エピソードとしてはこちらの方が最も面白かったと思います。

 そして、それ以上に個性的で面白かったのが、なんといっても保育園の保母さんたちですね。3人いる保母さんが揃いも揃ってオモシロいことに目のない悪ノリ好きの性格で、子供たちをダシに使って自分たちが好き放題に遊ぶエピソードが何度も見られました。子供に対してなにげに容赦ない一言を浴びせたり、脅し声で恫喝したりと、保母さんとしてはありえない黒い性格(笑)でも、大いに笑いを誘ってくれました。かといって、決して悪いイメージの不快なキャラクターにはなっておらず、一方で子供たちのために親身になって接する描写もあり、親しみの持てるバランスのとれたキャラクターとして好感が持てました。いかにも浅野作品らしいキャラクターであったと言えます。


 ところで、昨今のヤングガンガンの連載マンガに「はなまる幼稚園」という作品があるのですが、これを読むと、なにかこの「CHOKO・ビースト!!」の保育園エピソードを彷彿とさせるところがあります。個性的な園児たちと、個性的な保母(先生)たちによる暖かな、そして何かを残すエピソードという点で、なにかかぶるところがあるのです。夜の森に園児が迷い込んでいく話もあり、その時にはこの「CHOKO・ビースト!!」のエピソードを思わず思い出してしまいました。


  <京太の母と父>
 浅野作品では、「母親が強い」というのが定番であり、その強すぎる豪腕ぶりにはあなどれないものがあります。この「CHOKO・ビースト!!」はその最たるもので、その破天荒な活躍ぶりには目を見張ります。息子である京太を蹴っ飛ばすくらいは当たり前、時には赤の他人とも一歩も引かない激しいバトルを繰り広げたりします。めざとい性格でおまけに地獄耳でもあり、京太のたくらみを未然に完膚なきまでに打ち砕くところも、思わず笑ってしまうシーンです。
 その一方で、自分の家で引き取ることになったちょーこに対する溺愛ぶりも見逃せません。その京太に対する扱いとは正反対の溺愛ぶりは、あまりにも露骨でここでも笑いを誘います。

 このように、あまりにもアクの強い存在感を持つ母親の影で、父親(拓三)の存在はいまひとつ影が薄い。連載第一回こそかなりの出番がありましたが、それ以降は母親の尻に敷かれているのか(笑)、根はいいが押しの弱いヘタレ的な父親像に終始しています。

 しかし、そんな父にも、ひとつとてもいい話が用意されていました。第30話「父の日常」がそれで、父親の会社での一日を、京太の学校での一日と比較して丹念に追っていき、その真面目ながらもいまひとつ報われない日常を面白く、あるいはしんみりと描く内容で、実に情感のこもった良エピソードとなっていました。最後には、一人会社に残され、楽しかった昔を思い出してため息をつきます。そして会社からの帰り道、憂さ晴らしに酒を飲みにいこうと思ったその矢先、出迎えに来た京太とちょーこに出会い、ちょーこの無邪気な笑顔に癒され、そこで思わず自分の存在を再確認することになります。京太の言葉も温かく父親を出迎え、それでついに明るさを取り戻して帰宅の途に着くのです。このシーンには本当に感動してしまいました。ページ数は少ない話でしたが、これも屈指のエピソードだったと言えます。


<佐方と海原>
 京太の学校での友人ふたりとなるキャラクター。ここまで見てくると、この「CHOKO・ビースト!!」は、なにかふたりでセットになっているキャラクターが多いような気がします。京太とちょーこ、飛鳥と羽鳥、檀と楓、京太の母と父・・・。この佐方と海原は、セットというほどの繋がりはありませんが、どちらも学校での京太の親しい友人ということで、両方揃って学校のシーンで登場することが多いようです。

 「CHOKO・ビースト!!」では、意外に学校を舞台とした話は多くありません。学校が中心となるのは、作者の次回作「PON!とキマイラ」です。そのため、このふたりも意外と出番は多くないのですが、それでもその個性的なキャラクター性は浅野作品独特のものが感じられ、しかも「PON!とキマイラ」のキャラクターに繋がるような性格まで強く見られます。

 佐方は、典型的な悪友といった感のキャラクターで、悪ノリに満ちた軽い性格です。そしてこのようなキャラクター性は、そのまま「PON!とキマイラ」のクラスメイトたちに受け継がれます。この作品ではあまり目立ちませんでしたが、次回作において、こんなキャラクターたちによる学園コメディが一気にブレイクすることになります。

 そして、さらに重要(?)なのが海原です。このキャラクター、決して出番は多くなかったのですが、一部読者には非常な人気を博しました。なにげに、「CHOKO・ビースト!!」最大の萌えキャラと言っても過言ではありません(笑)。当時のエニックス系総合サイト「エニックスのお部屋」においては、

 「この海原は『PON!とキマイラ』のシアンと共に、20歳以上の男性読者に大人気」

などと書かれていたのが印象的です。「20歳以上の男性読者」というのがすごく生々しいんですが(笑)、要するにやたら萌えるキャラクターだったのです。そのかわいい外見で強気な性格は、「PON!とキマイラ」のヒロイン・シアンに確かに近いところがあり、シアンの原型となったキャラクターではないかとも思えます。 京太との激しいやり取りも、まさに「PON!とキマイラ」の八満(主人公)とシアンとの間柄を彷彿とさせるもので、同じようなファンが付いてしまったのも納得できるというものです。


 このように、この佐方と海原のふたりのキャラクターは、次回作「PON!とキマイラ」に近い性質のキャラクターとなっており、そちらの連載への布石となったと見ることも出来ます。「PON!とキマイラ」は、「CHOKO・ビースト!!」の連載終了後、あまり間をおかずにすぐに連載が始まるのですが、これは「CHOKO・ビースト!!」の学園シーンの執筆において、最初からある程度次回作の形が見えていたからかもしれません。そのために、スムーズな形で次の連載へ移行できたのではないでしょうか。


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