<個人的な思い出>──ドラゴンクエストへの道──

2012・11・8

 さて、この「ドラゴンクエストへの道」、作品自体の面白さもさることながら、個人的な思い入れもかなりのものがあります。これは、他のドラクエ関連本と並んで、わたしをエニックスの世界へと誘った歴史的な作品でもあるのです。特に、他の関連本と違って「マンガ」であることが、のちのドラクエ4コマ、そして少年ガンガンを始めとするエニックスのマンガ雑誌へとはまるきっかけとなったと思います。その点において、この「ドラゴンクエストへの道」が、わたしの人生へと及ぼした影響は、とてつもなく大きいと言えます(笑)。

 まだガンガンが創刊されていない80年代。わたしは、当時からマンガは好きでした。では、その頃は一体どんなマンガを、どんな雑誌を読んでいたのか。
 まず、最もはまっていたのが、コロコロコミックでした。特に80年代前半のコロコロが好きでした。この雑誌は、元々小学生向けのホビーをよく扱う雑誌でしたが、あのファミコンブームをきっかけに、80年代後半以降一気に子供向けホビー色が強くなるのですが、それまでのコロコロは、今よりもオリジナルのマンガが多く、純粋に面白いマンガが数多くありました。わたしがこの雑誌を買うきっかけとなった「ゲームセンターあらし」などは、まさに少年マンガの金字塔ですし、「あまいぞ男吾!」や「がんばれキッカーズ!」なども今に知られた名作です。これらのマンガを筆頭に、この雑誌は本当に多くのマンガにハマらせてくれました。

 そのコロコロほどではないですが、あの「週刊少年ジャンプ」にも例外なくはまっていました。こちらはわたし以外の同級生の多くが読んでいて、それから読むようになったというよくあるパターンです。あのころは本当にみんなジャンプを読んでいた。わたしは、最初の頃こそコロコロに特別な思い入れを抱いていて、「ジャンプよりコロコロの方が面白い(キリッ)」とか勝手にこだわりを決めていたのですが、しかし結局はジャンプを読むようになって毎週ドラゴンボールやジョジョを追いかけていたので、それほどまでにあの頃のジャンプは面白かったのだと思います。

 それと同時に、ゲームでは無論ファミコンにもはまっていました。特にドラクエへのはまり方は著しく、ファミコンを持っていなかったのに友達から借りて全部クリアするまでになっていました。今思えば、コロコロにジャンプにファミコンと、まさに当時の平均的な子供の姿だったと思います。


・ドラクエ関連本こそがのちのガンガンにはまるきっかけとなった。
 しかし、そのファミコンのドラクエが、のちにガンガン・エニックスへと大きく傾倒するきっかけとなりました。ドラゴンクエストは1を友達にやらせてもらって以来ずっとはまっていましたが、特に3のはまり具合が著しく、当時受験が迫っていたにもかかわらず、勉強などまったくせずに、本気でドラクエ3ばかりやっていました。いや、当時はクラスの生徒のそれこそ半分以上がドラクエ3をやっていたくらいだったと思います。

 そして、そのドラクエ3の大ヒットを受けて、エニックスが「ドラクエ関連本」を出すようになるのですが、これにもそのままはまってしまい、関連本が出るたびに本を買いあさるようになります。最初に出たのは、あの「公式ガイドブック」で、このデータ重視・ビジュアル重視の攻略本の面白さにはまって、シリーズ全部を買って何度も読み返していたことを思い出します。その後、今度はドラクエのサイドストーリー本も出るようになり、のちに「モンスター物語」「アイテム物語」とシリーズで出るようになるのですが、これも確か全部買っていたはずです。さらには、ゲームブックや小説も刊行されるようになるのですが、これも次々に購入。冗談抜きでエニックスから出るドラクエ関連本を全部買っていました(笑)。

 そんな風にドラクエ関連本がどんどんたまっていく日々だったのですが、そんな中で比較的後発で出てきたのが、この「ドラゴンクエストへの道」。最初は、表紙の帯に書かれた「エニックス発!迫真のドラクエコミックついに登場!」というコピーを見て、一体なんだこれはと思ってしまったのですが、いざ買って中身を見ると、ああこれはいわゆる制作秘話を描いたマンガなのだなと気づきました。そして、これこそがまさにエニックスが出した記念すべき初のマンガ本だったのです。読み始めは、劇画調の青年誌的な絵柄に少し抵抗を感じましたが、しかし、読み進めていくと、その確かな面白さに夢中になり、何度も読み返すほどに気に入ってしまいました。ガンガン創刊以前、まだドラクエ4コマすら出ていない時代、まさに最初にはまったエニックスのマンガだったのです。


・ドラクエにはまっていたから面白かったのではなく、純粋にマンガとして面白かった。
 それも、単にわたしがドラクエにはまっていたから、その制作秘話たるこのマンガにはまったのではありません。純粋にマンガとして面白かったからこそ、何度も読み返すほどはまったと言えるのです。
 まず何といっても、あのドラクエの有名なスタッフたちが総登場していたことに、真っ先に惹かれました。当時から、堀井雄二や中村光一といえば、ドラクエのスタッフとしてもうひどく知られた存在でしたし、さらにはすぎやまこういちや鳥山明まで出てくるとなると、それは本当に魅力的に移ったのです。また、個人的には、彼らほどには知られていなかった、影の功労者と言えるプロデューサーの千田幸信が、大きく取り上げられていたことを、とても嬉しく思いました。

 次に、やはりドラクエというゲームの制作の詳細が描かれていたことが、ひどく面白かったです。これは、ここまでの記事でも散々取り上げましたが、当時からTVゲームを作るゲームデザインについても大いに興味があり、その具体的な姿が描かれているこのマンガは、自分の興味を満たしてくれるに十分でした。このマンガを読んで、「自分もゲームデザイナーになりたい」と本気で思ったものです。
 そして、マンガのストーリーそのものが面白かったことが、何よりも重要でしょう。彼らドラクエスタッフたちの人となり・過去の出自が丹念に描かれ、そんな彼らが熱意を持って真剣にゲーム作りに取り組んでいく。途中でスタッフ同士の意見の対立もあり、またデザインの上で何度も難問を乗り越え、ついには苦労に苦労を重ねてゲームの完成に至る。熱いセリフも随所で飛び出し、いわば「少年マンガ」的な熱さ・面白さを強く感じることが出来ました。のちのガンガンの名作にもつながるような面白さが、このマンガでも既に見られたのです。ここまで面白ければ、たとえドラクエを知らなかったとしても文句なくはまれたと思います。まして今よりもずっとドラクエにはまっていた当時、最高にはまったことは間違いありません。


・劇画調の絵柄の青年マンガ的作品だったことは非常に特徴的だった。
 ただ、今「少年マンガ」と描きましたが、実際のこのマンガは、少年マンガというよりも青年マンガ的な印象の強いものでした。特に、滝沢ひろゆきによる作画が、いかにも劇画調のものとなっていて、これはかなり意外に思いました。当時から子供たちにも大人気だったドラクエで、さらには今よりもゲームが子供向けだと思われていた時代、もっと子供向けの絵柄で描かれるものだとばかり思っていたからです。

 そして、これは、のちの初期ガンガンでも継続して見られる傾向となります。「ロトの紋章」や「南国少年パプワくん」「魔法陣グルグル」などのイメージが強い初期ガンガンですが、実はその影で青年誌的な劇画調の絵柄の作品が、なぜか何度も掲載されていたのです。
 典型的なのが、ガンガンで創刊直後から掲載された、「激闘!!一番」や「EBE(イーバ)」でしょう。「激闘!!一番」は、後半になって異様なギャグ展開となる格闘もの、「EBE(イーバ)」はあの矢追純一監修のUFOドキュメンタリーという異色中の異色作品。人気だったロト紋やパプワくんの影に隠れて、話題になることの少ない連載群の中に、なぜか劇画的な絵柄の作品がいくつも見られたのです。
 これは、ガンガン創刊数年後もずっと続いており、たとえば剣名舞原作のスポーツものや、菊地秀行原作作品の作画も手がけていた細馬信一による伝奇ファンタジー、もしくはホラー作品までが掲載されていました。最終的には、これは90年代中期の月2回刊行時代まで続き、完全に払拭されるのは90年代も後半になります。

 なぜ、このように初期のガンガンで劇画調の作品が数多く見られたのか。これはいまだによく分からないところですが、当時は、劇画調ならずとも、いがらしみきおやくぼたまことのような青年誌で活動していた作家の起用も何度も見られましたし、一部の編集者がそちら方面の作家とつながりがあったのか?とも推測しています。そして、その最初の作品となったのが、紛れもなくこの「ドラゴンクエストへの道」でありました。
 そして、それがこのマンガについては、独自の面白さを生んだと思います。すなわち、青年マンガ的な絵柄をあえて起用することで、大人の鑑賞にも堪えうる重厚な作品になったと思うのです。これが、いかにも子供向けの少年マンガ的な作画なら、ここまでリアリティのある作品にはならなかったかもしれないと思います。現実にあるリアルなメイキングドラマを作ろうとして、このような作画の起用になったのかも知れませんが、これは大正解だったと思っています。


・今に至るまで細部までよく覚えている名作。これは少しでも多くの人に読んでほしい。
 というわけで、これほどはまってしまったこのマンガですが、しかし他のドラクエ関連本と違って、これ単体の作品に終わり、この続巻のようなものが作られることはありませんでした。個人的には、その後のドラクエシリーズの制作秘話を描いた続編が描かれても面白かったと思いますが、そういった企画は最初からなかったのでしょう。

 わたし自身も、このすぐ後に刊行された「ドラクエ4コマ」にこれ以上にはまり、さらにはそこから続けて登場することになる「月刊少年ガンガン」へとはまっていったため、この「ドラゴンクエストへの道」を読み返すことは、次第に少なくなっていきました。ガンガンコミックスの創刊に際して、そのコミックスとしてもう一度刊行されますが、そちらの版を買うことも結局ありませんでした(後で知ったのですが、そちらは重要な箇所が省かれていたり章立てが消えていたりするらしいので、買わなくてよかったと思っています)。

 しかし、このマンガ、たまに収納した場所から取り出して読むたびに、また夢中になって読むほどに面白いもので、今でも事あるごとに思い出す思い出のマンガでもあるのです。実は、当時あれだけ集めていたドラクエ関連本、いつの間にかそのほとんどを処分してしまっていたらしく、サイドストーリー本も小説もゲームブックもなにもかもなくしてしまい、今では非常に残念な思いをしているのですが、そんな中でドラクエ4コマとこの「ドラゴンクエストへの道」だけは、きっちりと保存していました。やはり、昔から自分の中で特別な作品だったのだと思います。

 今となっては、さすがにもう20年以上も前の作品ですし、これから入手するのは中々難しいでしょう。しかし、このマンガだけは、今でも少しでも多くの人に読んでほしいと思っています。少年ガンガンやドラクエ4コマなどエニックスマンガの原点となる歴史的な一作ですし、そして何よりこれほど面白いマンガはそうそうない。機会があれば是非とも読んでほしいところです。




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