<ロトの紋章・ベストバトル5> ──「ドラゴンクエスト列伝 ロトの紋章」──

2006・7・10

 「ロトの紋章」と言えば、やはり最大の見所は、幾多の迫力あるバトルシーンだと思う。「少年マンガ」としても、「ドラクエマンガ」としても、あるいは「王道ファンタジー」としても、強敵とのバトルが作品中最大の魅力のひとつであることは疑いないところだ。ここでは、数ある「ロトの紋章」のバトルシーンの中でも、個人的に最も印象に残った5つのバトルを採り上げてみたいと思う。


<ベストバトル・第5位:バラモスゾンビ戦(inカーメン城)>
 「ロトの紋章」の主人公アルスは、カーメン城の王子なのであるが、この「カーメン城」とは、原作ゲームであるドラクエ3で、魔王バラモスの居城であった「バラモス城」のことである。勇者一行は、久々に帰還したカーメン城で、何者かの手によって復活したかつての魔王の成れの果てである「バラモスゾンビ」と熾烈な闘いを繰り広げることになる。

 物語序盤の最初の山場と言える、このバトルでの見所は、やはり巨大なバラモスゾンビの姿と、それに敢然と立ち向かうアルスたち勇者一行の勇姿だと思う。原作ゲームのバラモスも、ファミコンのチープなグラフィックながらその巨大さがよく表現されていたと感じたが、それが藤原カムイの手がけるマンガとなって、より鮮明にその威容ぶりを感じることが出来る。このような「巨大な敵に立ち向かう」というのは、ドラクエの戦闘のひとつの魅力だと考えるが、それを最初に感じたのがこのバトルシーンだった。

 死闘の果てのバラモスの死に様も良かった。無理矢理復活させられた自分を倒してくれた勇者に感謝しつつ、かつ魔王の威厳を保ったまま崩れ落ちるその姿は、単なる悪者退治の結末ではない、深いドラマを感じることが出来たように思う。また、作中で初めてドラクエ3からのボスが登場したことで、最初に原作ゲームとの直接のつながりを感じさせてくれたバトルでもあった。


<第4位:海王リバイアサン戦(in海)>
 バラモスゾンビは原作ゲームからの直接の採用だったが、こちらのボスは完全なオリジナル。今度は海上で巨大な敵と闘う。
 これまた敵の巨大さでは圧巻である。前述のバラモスゾンビをもはるかに上回っており、そのレベルはほとんど島クラス。一体こんな敵をどうやって倒すのか、バトルが始まった時はその結末が予想できなかった。海の上のバトルというのも新鮮で、いつ船が沈められるのかという緊迫感があった。
 最終的には、リバイアサンの核に侵入して、そこに寄生していた魔獣を倒すという形で結末を見たわけだが、ここでもまた深いドラマがあって感動させられる。

 ところで、このエピソードにおいて、「海の魔物は昔から海王によって治められていて、かつての大魔王ゾーマ(ドラクエ3のラスボス)の支配下ではなかった」という設定が出てくるのだが、これは原作ゲーム公式の設定なのだろうか? 言われてみれば、確かにそんな気がしないでもないが・・・。いずれにせよ、ドラクエシリーズでは海の上でのボス戦というのはかなり珍しいものなので(ドラクエ3ではひとつもない)、その点でも新鮮な印象のバトルだった。


<第3位:獣王グノン戦・十万体バトル(inアリアハン)>
 「ロトの紋章」と言えばこれ、とすら言われる、非常に有名なバトルシーン。主人公のアルスが、たったひとりで敵魔王(四天王)のひとりである獣王グノンの部下十万体と闘うという驚きのバトルシーンだ。異様なまでの数のモンスターを描ききった藤原カムイの力量と熱意を存分に感じることが出来る。
 そして、十万体のモンスターとのバトルで力尽きそうになったアルスの元に、次々と仲間たちが駆けつけてそのたびにピンチを救うという展開が、また最大の魅力だ。こういうのはお約束だと分かっていても、ついつい盛り上がってしまうものである。

 しかし、強さがインフレしがちが少年マンガにおいても、十万体というのはちょっとやりすぎでは?と感じたこともある。あの「Z MAN」でさえせいぜい三百体ですよ、ねえ? ただ、この「ロトの紋章」の場合、このような派手な設定だけでなく、それをカムイ氏が圧倒的なビジュアルで見せるところが魅力であって、十万体なる無数のモンスターが集う、壮大な規模と壮観な光景こそが最大の見所なのだと思う。


<第2位:異魔神戦(第一形態)>
 この物語の最後の敵である異魔神とのバトル、その第一ラウンド。さすがにラスボスだけあって、異魔神の巨大さは圧倒的だ。町ひとつを容易に滅ぼすほどの巨体と力を持ち、その上に「高密度魔法言語」とかいう、たった一言の言葉を発するだけで巨大な火球やら氷河やら隕石やらを使うというありえない能力をも持つ。ていうか、こんなんどうやって勝つの?いくら勇者でも無理っしょこれ、というような感じでした(笑)。
 しかし、実はこのようなありえないスケールの敵とのバトル、というのが、「ロトの紋章」の最大の持ち味なのだと思う。言うなれば、壮大な規模と壮観な光景で見せるスペクタクルバトル。まるで映画のような壮大なシーンと、それを描ききる藤原カムイの画力に感嘆しつつ読むのが、作中最大の楽しみなのだと思う。海王の生まれ変わりである巨大な海竜とのバトルも最大の見所だ。

 その意味では、このバトルの後に描かれる異魔神・第二形態とのバトル(真のラスボス戦)は正直いまいちだったと思う。一旦第一形態を倒したあとで、さらにストーリーが進んだあとでもう一回バトル、ということで、展開上盛り上がりに欠ける上に、異魔神の姿が思いっきり小さくなってしまい、その壮大な強さが感じられなかった。一応「姿は小さいが強さは凝縮されて圧倒的に強い」という設定ではあるのだが、正直なところ見た目ではそれを感じられなかった。その異魔神に対して、勇者のパーティーがよってたかって倒しにかかったように見えたのも気分が悪い。姿が勇者たちと同じスケールなだけに、どうしてもそう見えてしまう・・・。これが、スペクタクルバトルで巨大な敵に立ち向かうシーンならば、「圧倒的な敵に対して、力を合わせて全力で立ち向かう」というイメージが強く出て、むしろ良い印象になるのだが・・・。


<第1位:ヤマタノオロチ戦(inジパング)>
 そして、このバトルこそが最大のスペクタクルだと思う。一般的には、ロト紋のバトルと言えば、やはりアリアハン編の十万体バトルを真っ先に思いつく人が多いとは思いますが、個人的にはこちらを強く推したい。
 とにかく敵であるヤマタノオロチの姿が凄まじい。ただでさえ圧倒的な巨大さの上に、戦いが進むごとに再生が進んで無茶苦茶に首の数が増えてそのフォルムも異様な形になってもうめちゃくちゃ(笑)。こんなのをよく描くなと本気で思った。藤原カムイという人がいかに凄い実力者なのか、それを本当によく思い知りました。
 賢王であるポロンがドラゴラムで変身した竜とのバトルも、また大迫力の怪獣大決戦の様相を成し、とにかく最高に盛り上がった。最終的にはアルスがヤマタノオロチの体内に侵入して倒すことになりますが、倒して崩れ落ちる時の姿もまた圧巻。

 やはり、このバトルこそが、ロトの紋章の最大の見所である「スペクタクルバトル」を存分に味わえる最大の戦いだったと思う。ストーリー的には他にもっと盛り上がるバトルはあると思うが、ビジュアル的な凄さではこれがベストではないか。



<番外:VSドラゴン>
 ベスト5には入れられなかったが、やはりドラクエと言えばドラゴンバトルだと思う。圧倒的な巨大さのドラゴンの威容と、それに立ち向かう勇者たちの姿は、最も盛り上がるシーンであることは疑いない。それを最初に見られたのが、ストーリー序盤で大賢者カダルが変身したドラゴンとのバトル。このドラゴンの姿は本当にかっこよかった。そして、ドラゴンと言えば、やはり最終決戦での竜王とのバトルも見逃せない。ドラゴンの巨大で威容な姿を描けるというのは、ドラクエにおいては、そしてファンタジーにおいては非常に重要なことである。



<まとめ>
 これは非常に個人的な意見ではあるが、「ロトの紋章」の最大の魅力は、やはり壮大なスケールと壮観な光景で繰り広げられる、映画のような大迫力のスペクタクルバトルだと思う。これこそが、他の少年マンガと比較して、「ロト紋」の持つ最大のアドバンテージだと思うのである。

 その意味では、個人レベルのスケールの戦いには、相対的にさほど惹かれなかったように感じる。作中のライバル対決である、アルスVSジャガン戦や、剣王の宿敵であるサーバイン戦などは、確かにストーリー的には盛り上がるが、ビジュアル的にはあくまで個人レベルの戦いであって、それは他の少年マンガでもよく見られるもので、さほどのオリジナリティは感じなかった。異魔神・第二形態とのバトルもそれに近い。個人的には、そのような超越的な能力を持つ者同士の個人バトルなどは、それこそ「ドラゴンボール」にでも任せておけばいいのであって、やはり「ロトの紋章」の最大の売りは、圧倒的に巨大な敵や無数の敵に力を合わせて立ち向かうスペクタクルバトルだと思うのである。

 結果として、ベスト5には、とにかく壮大な規模を感じるスペクタクルバトルなシーンばかりを集めてしまったが、皆さんはこのあたりどう感じられるだろうか。


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