<ベストエピソード10(後編)>

2013・7・8

前編はこちら


<第5話 先生の古時計>
 この作品では珍しく、学校の先生がゲストキャラクターとなる回です。生徒たちがゲストとなることが最も多いこの作品ですが、先生がなることは本当に少なく、ほとんどこれくらいしかありません。しかし、あえて先生をクローズアップしたこの話は非常に面白く、かつ意義深いものがありました。

 技術家庭科の桜井先生は、厳しい先生として生徒みなに恐れられ、火鳥でさえこの先生を苦手にしていました。さらに、火鳥のクラスメイトでサッカー部員の矢野という生徒が、特にこの先生に何度も注意されたことから、とりわけ嫌っていて、恨みの感情まで抱いていました。
 そんな時、桜井先生が今年限りで定年退職するという話が広まります。厳しい先生がいなくなると生徒たちみなが喜び、矢野に至ってはいなくなる前に仕返ししてやるとまで言う中、火鳥は、掃除中に桜井先生と話すきっかけを得て、技術家庭室にある古時計について尋ねます。掃除と関係ない質問に怒られると思った火鳥ですが、意外にも先生から帰ってきたのは優しい返事でした。これは、はじめて学校に来た年に卒業生から寄贈されたものであると。以来40年この時計と教員生活を送ってきて、命と同じくらい大切な時計であると。
 その言葉を、同じく掃除中だった矢野が聞きつけ、それが壊れたらさぞ楽しいだろうと憎まれ口を叩く一方、先生の方は、「私はそんなに生徒から嫌われているのだろうか・・・」と火鳥に寂しく語りかけます。

 そんな折、月夜ちゃんが深刻な顔をして火鳥の元に駆けつけ、「矢野くんに時計を壊させるようなまねをさせないで」と必死に訴えます。月夜は、先生とは親しく大親友でもあると。その必死の願いを受け入れた火鳥は、技術家庭室に張り込んで古時計を守ることになります。
 しばらくして、件の矢野がバットを持って部屋に入ってきます。バカなことはやめろと火鳥は迫り、二人がもみ合いになる中、突き飛ばされた矢野が技術の機械に挟まれ、しかもレバーが戻らなくなって窮地に陥ります。必死になってふたりで戻そうとしても戻さない。近くにいた月夜ちゃんに助けを求めるように言っても、普段からは信じられないような顔をして「先生のあんな大切にしてた古時計を壊そうとする人なんて助けることはない」と叫びます。その上、火鳥の必死の説得を受けてふっと倒れてしまいます。

 そんな中、もう古くて鳴らなくなったはずの時計の音を聞きつけた桜井先生は、必死になって駆けつけふたりを助け出します。「オレのような生徒を助けることないだろ」と言う矢野に対しても、「バカなことを言うな」「お前は私の大切な生徒だ」と叫び、全力でレバーを押し戻し窮地を救うことになります。
 こうしてひとつの事件が終わりましたが、月夜ちゃんはそのときのことを何も覚えておらず、先生と話したことすらないと言います。そしていよいよ先生が退職して学校を去る日、火鳥の目には先生の背中が寂しく見えました。しかし、そこであの矢野が屋上に現れ、先生に対して精一杯の笑顔で見送り、ここでようやく先生も振り返って本当にうれしそうに微笑むのです。

 この話は、これ自体とても感動できるものですが、それに加えて、こうした堅物の先生を、生徒からは嫌われやすい存在をあえてゲストに据えたことに、大きな意義が生まれたと思います。厳しく見える先生にも本当に生徒を思いやる気持ちがあり、反発していた生徒の方もついにそれに応え、最後の最後で心がつながった。前述のように、このマンガは決して社会派とまで言えるマンガではありませんが、しかしこうした学校でよく見られるであろう先生と生徒の関係、その一面を取り上げることで、本当に深いテーマが生まれたと思うのです。
 なお、このことは、この話を収録したドラマCDのブックレットにも記載されていたことであり、最初からこういったタイプの先生と生徒のエピソードを描こうと考えていたようです。作者と編集者の意気込みの高さを感じることが出来る、とても意義深い一編でした。


<第12話 眠り続ける想い>
 「浪漫倶楽部」は、やはり浪漫倶楽部のメンバーが中心となる話が最も多いですが、たまにそのメンバーの家族に焦点が当たる話が要所で見られます。特に、火鳥(火鳥泉行)の家族で姉の真兎(まと)はよく登場しますが、それに加えて火鳥の父も登場するのがこの話。

 春のうららかな休日、学校の裏山で花見をすることになった、泉行と真兎と父、そしてコロンの4人。学校の敷地内で怖い結城先生にあったことで肝を冷やしますが、なんと父が結城先生とかつての同級生だったことが判明。意気投合するふたりを残して、先に泉行と真兎、コロンだけが裏山へと向かいます。
 そこは、一面に桜が咲き誇る見事な光景が広がっていました。中でも一番大きい桜の下で花見をしようとすると、そこにひとりの少女がいることに気づきます。見慣れない黒いセーラー服をきた少女は、泉行の顔を見ると何かを思い出したように笑って近寄ってきますが、しかしふと何かに気づくと離れてしまいます。一言もしゃべらない彼女は、ただずっと木の下に佇み続けています。

 泉行は、その桜に「サクラ/リキ」と名前の彫られた相合傘を見つけますが、それにも少女は近寄らせようとしません。勘のいい泉行は、サクラが少女の名前であることに気づき、「リキくんを待っているの?」と問いかけます。
 とたん、急に景色が揺れ、彼ら3人ともどこか知らない場所に迷い込みます。今いた裏山のようにも見えるが、どこか違う・・・。そこでは、サクラと、リキと思われる学生服の少年が、桜の下で佇んで楽しそうに会話していました。「いつまでも春になったらこの桜の下でお花見しよう」とサクラはどこか寂しそうに語っていたかと思うと、また場面は変転、「リキ・・・なぜ来てくれないの?」というサクラの悲痛な叫びだけが頭に響き、そして今度はリキが同級生に「サクラはもういない」と寂しそうに語る場面が映し出されます。

 はっと泉行が気が付くと、そこは最初にいた裏山でした。近くにいた真兎とコロンも同じものを見たと言います。その、サクラの見せたであろう幻想の光景から、泉行は、桜の木の下に想いがあると直感し、そこを掘り出すと、サクラがリキに当てた人形と「自分は死ぬ」という置き手紙を発見することになります。
 3人が悲しみにくれていると、そこでようやく遅れて父がやってきます。彼は、この桜を見て懐かしいと口を開き、サクラという初恋の人とよく花見をしていたと言いました。そう、泉行の父の名前は力人(りきと)。ここで、ようやくサクラの想い人の正体が判明することになります。父に掘り出した人形を渡すと、その瞬間「ありがとう・・・」という声とともに一瞬だけサクラの幻影が現れ、そして消えていきました。

 このエピソードは、非常に物悲しいものであると同時に、一面に咲く桜の光景がとても美しく、胸が締め付けられるような読後感を残す傑作になっています。火鳥の父にスポットを当てた構成も見事で、キャラクターの掘り下げに一役買っています。


<第15話 ハートキャンバス>
 これは、「浪漫倶楽部」のエピソードの中でもちょっと変わった話になっています。この作品では珍しく、ホラーやミステリーの要素が入っていて、夏休みの学校のちょっと怖い怪談話の雰囲気を持っています。

 ある暑い夏休みの一日、火鳥は、追試の課題のために学校の美術室に来て絵を描いていました。同じく課題で来ていたのは、火鳥の親しいクラスメイト3人。火鳥の幼なじみで同じマンションに住んでいる睦美(むつみ)ちゃん。演劇部員の八ツ橋(やつはし)。睦美と隣同士の席でよくお弁当を一緒に食べてる香織里(かおり)ちゃん。これに火鳥を含めた男女2人ずつの計4人で、輪になって絵を描いていたのです。

 そうして課題に励んでいる時、誰かが、この学園に伝わる7不思議のひとつ「美術室の幽霊」という話をします。授業の間だけ、ひとりクラスメイトが増えていることがあると。どんなに調べても顔なじみなのに、確かに人数だけが1人増えている。そして授業が終わって自分たちの教室に帰ると元の人数に戻っていると。そんな話をなんとなく薄気味悪く聞いていた火鳥ですが、そんな折、彼について学校に来ていたコロンが、美術室に帰ってきます。コロンは、みんなに頼まれてジュースを買いに行っていたのでした。

 しかし、ジュースを渡す時になって、コロンがあれ?と言います。1個足りない。ジュースが。しかも、「さっきは三角になって絵を描いていたのに、なんで今は四角になってるの?」と問いかけます。これを聞いて誰もがちょっと前のことを思い出そうとするのですが、記憶があいまいになっているようで誰もどうしても思い出せない。ここにきて香織里ちゃんが、「7不思議の・・・幽霊?」とつぶやいたことで、一気にメンバーの間に緊張が走ります。

 みなが互いに幽霊ではないかと疑い始める中、「俺たちは互いに隣の人の肖像画を描いていた。絵に描かれていない奴が4人目だ」と八ツ橋が提案。それを聞いてみなが一斉に絵を出しますが、なんと4人とも絵に描かれています。コロンが数を間違えたのではないか?との可能性も指摘されますが、しかしコロンちゃんはわたしたちひとりひとりからお金をもらって出て行った。間違えるはずがないと香織里ちゃんが主張。ここに来て一同は完全にパニックに陥ります。
 とりわけ香織里ちゃんが激しく取り乱し、走って美術室を出て行ってしまいます。しかし、学校から脱出しようとしても、なぜかまた美術室に戻ってしまう。窓を思い切り叩き割ろうとしても、それすら出来ない。完全に閉じ込められたと悟った一同は、恐怖からついに言い争いを始めてしまいます。

 そんな中、「もうやめて」と主張したのは睦美ちゃんでした。ついさっきまでみんな仲良く絵を描いていた。それなのになんで今はいがみあっているの、と。それを聞いて取り乱していた香織里も一瞬落ち着き、そして火鳥もその言葉に賛同します。もし幽霊がいたとしてもそれは楽しく過ごしたいだけ、それにここにいるのはみんな仲良しのクラスメイトだとやさしく説得したのです。ここに来てみんなようやく落ち着き、今度こそ再び楽しく絵を描く時間に戻っていくのです。

 そうして日が傾いて絵が完成した頃、コロンが美術の先生を連れて帰ってきます。部屋に入ってきた先生は、「3人とも・・・課題は終わったようだね」と語りかけます。3人? ここでまた記憶があいまいになる火鳥たちですが、ここで「ありがとう・・・」という優しい声を聞きます。そして、とあるキャンバスにかけられた布が風で飛ばされ、先生が描いた肖像画、そこに描かれた子供の姿があらわになります。それは、子供に恵まれなかった先生が空想で描いた子供の姿でした。その子供の名前は・・・。

 この話は、典型的な怪談話としての面白さ、誰が幽霊かの犯人探しをするミステリーの面白さ、そして「浪漫倶楽部」ならではの心から感動するラストと、様々な要素が詰まっている、この作品の中ではやはり異色の物語となっています。火鳥(とコロン)以外のキャラクターが、すべてこの話限りのゲストキャラクターで、他の浪漫倶楽部のメンバーがまったく出てこないのも珍しい話となっています。


<第13話 いつか見上げた空に>
 これは、浪漫倶楽部の部長が主役となるいくつかの話のうちのひとつで、実に爽快感溢れる話となっています。部長(綾小路宇土)は、外見も性格もあまりに個性的で、周囲からは変人だと思われている キャラクターですが、しかし本当はとても優しく素敵な心を持ち合わせています。部長がいなければ、そもそも浪漫倶楽部は存在していませんし、そんな彼が活躍するエピソードは、本当に感動する名作が多いのです。

 火鳥、月夜、コロンの3人が部室でゲームをして遊んでいたある日。部長が弟3人を引き連れて部室へとやってきます。なんでも、小さい頃飾ってもらった鯉のぼりを持ってきて、最近はどこも高い建物や電柱が増えてしまって、家の庭では飾れなくなったから、学校の校庭で飾ることにしたと。しかし、学校の校庭で勝手にそんなことをしたら先生に怒られるのは必至。案の定厳しい結城先生に見つかって、浪漫倶楽部一同しこたま説教されてしまいます。

 その鯉のぼりは、部長の子供の頃の思い出の品で、なんでも分かり合える友達のような大切な存在でした。昔から変人扱いされていた部長は、いつもひとりぼっちだったのです。
 しかし、その翌日、火鳥が授業を受けていると、窓のすぐ外に巨大な鯉のぼりが飛んでいるのを見かけます。鯉のぼりが一人で空を飛んでいて、しかも他の人には見えない。これは自分の眼だけに見える不思議事件に違いないと、浪漫倶楽部の面々に報告すると、この箱の中に鯉のぼりはしまってあるのに・・・とみんな驚きます。これは、空を飛びたいという鯉のぼりの願いで、幻影だけでも空を飛ばせているのだと考えた一同は、では本物を思い切り空を飛ばせてやろうと、今度は夜の校庭に忍び込んで鯉のぼりを掲げることになります。

 しかし、ここでも部長が無駄に騒いだことで、当直だった結城先生に気づかれ、あわや見つかる寸前まで追い詰められてしまいます。もう結城先生が来て見つかってしまうと思った瞬間、なんと鯉のぼりがみなを乗せて夜空に一気に舞い上がっていきます。これにはさすがの結城先生もびっくりして、「なんなんだあれはー!」と叫ぶ有様。そう、鯉のぼりはいつの間にか正真正銘の龍に変身していたのです。
 そのまま、龍の赴くままに空を飛ぶ浪漫倶楽部の一同。このとき眼下に広がる夢ヶ丘の町の大パノラマが、このエピソード最大の見所です。海岸沿いに広がる街とその向こうの広大な海、空には美しい満月。この爽快感溢れる眺望にみんな大喜びですが、そんな時、どこからともなく「いい友達が出来てよかったね・・・うど君」と部長に語りかける声が聞こえます。その声の主はもちろん・・・。

 その翌日、結城先生が、職員室で同僚の宮本先生に疲れた顔で語りかけます。昨夜は鯉のぼりが龍になって夜空の彼方に翔んでいく幻影を見てしまったと。それを聞いた宮本先生は驚きつつも喜び、それは中国の伝説そのままで、黄河上流の龍門という滝を自力で登った鯉が龍になるという話があると言います。だから端午の節句に男の子の立身出世を願って鯉のぼりを飾るようになったと。

 このエピソードは、以前からの部長の人となりと寂しい境遇、そんな中で鯉のぼりが友達だったというよき思い出、そして龍に変化した鯉のぼりで飛翔する爽快感溢れるシーン、さらには最後に鯉のぼりが龍に変化した意味が語られる後日譚と、どこを取ってもひどく読ませる話になっています。とりわけ、この飛翔シーンで見られる大パノラマの光景は、のちの風景描写で高い評価を得た「ARIA」につながるものもあったと言えるかもしれません。


<第4話 消えゆく想い>
 そして、その部長が主役となる話の中で、最大の感動を呼ぶ名作となったのが、まだ連載序盤の第4話で登場した「消えゆく想い」です。この4話があまりに素晴らしかったので、これでこの作品に対する読者の評価が一気に上がり、連載が軌道に乗った感すらありました。それほどまでに印象的な感動を呼ぶ物語だったのです。

 ある夏の暑い日。部長は、登校中に蜘蛛の巣にかかっている小さな黒い虫を見つけ、優しくそれを助け出します。「もう捕まるんじゃないぞー」と。
 それからしばらく経ったある日。登校するバスの中で、部長は同乗の女生徒に痴漢と間違われます。必死に誤解だと弁解する部長ですが、相手の女の子は部長の顔を見て、変人だと知れた浪漫倶楽部の部長だと名指しし、さらには「変人を超えた変態よ、このチカン部長!!」とののしります。無実だと主張する部長の言葉も聞かず、「とてもじゃないが女の子に縁のある顔とは思えない。まあ彼女でもいるならチカンじゃないって信じてもいいけど」と突き放します。それを聞いた部長は激昂し、「私にだって彼女くらいいるのだ!」と大法螺を吹いてしまいます。
 この部長の言葉をバスに乗っていた生徒みんなが聞いてしまい、そこから噂が広がり、学校中で「本当に彼女がいるのか」と騒然となってしまいます。「なんでそんなこと言ったんですか!」と部長を責める火鳥。もし彼女がいないことがばれたらと嘆く部長に対して、さすがの火鳥も自業自得ですねとあきれてしまいます。

 そんな時、見知らぬ女の子が部室にやってきて、「なぜ部長のピンチを救おうとしないんですか!」と突然訴えます。彼女は、1年8組の源氏雛子と名乗り、浪漫倶楽部に入部したいといい、さらには部長のお役に立ちたい、彼女にしてくれと訴えます。これを聞いて「こんなかわいい娘が部長の彼女に・・・?」とメンバー全員が驚くことになります。

 その後、学内でところかまわず仲睦まじいふたりの姿が見られたことで、彼女がいたのは本当のことだったんだ・・・と学校中にその噂が広まります。これで痴漢の疑いも晴れた部長は、雛子ちゃんに大感謝することになりました。その後も雛子ちゃんの部長への献身はとどまることはなく、部長の家について行って夕食の準備をするまでになり、弟たちにかわいがられ、部長の妹にも「兄貴のことよろしくな」と頼まれるまでになりました。その帰りの夜道、光って飛ぶ蛍を見かけた部長に雛子は問いかけます。「部長は・・・蛍好きですか?」。部長は答えます。「ああ大好きさ!」と。短いひと夏の命を燃やしている蛍を嫌いな人は絶対いないと。

 しかしその翌日、登校中の部長は、女生徒たちが話している場面に遭遇します。それは、部長を痴漢と決め付けたあの女生徒でした。「部長の彼女はかわいいけど、あの変態部長の彼女になるような娘よ。きっとその娘も変人に違いないと」。それを聞いた部長は、雛子ちゃんに迷惑がかかることを恐れ、別れようと告げます。雛子ちゃんは、それに大きすぎるショックを受け、学校を飛び出して走り去ってしまいます。
 疲労困憊で夜道を走る雛子ちゃんに、ようやく浪漫倶楽部一同は追いつき介抱しますが、ここで思わぬ生徒と出会います。それは、部長を痴漢と決めつけ、さらには雛子も変人に違いないと決め付けた例の女生徒たちでした。彼女たちは、ここでもふたりを嘲り、雛子ちゃんに対しても「部長の顔ちゃんとみたことあるの?本当に変な顔なんだから別れた方が絶対いいって」とひどい言葉をかけます。

 しかし、雛子ちゃんは、「・・・外見だけでしか人を判断できないあなた方は・・・・・・とっても寂しい人たちだと思います・・・!!」と精一杯の言葉で応じます。これに反論できなかった女生徒たちは、捨て台詞を残して去っていくことになりました。

 その後、具合の悪そうだった雛子ちゃんは、「もう・・・だめみたいです」と力なく語ったかと思うと、その全身が光り始めます。そう、彼女は、一週間前に部長が命を救った蛍だったのです。最後に、部長に感謝の言葉と、今度生まれてくるときには本当の彼女になりたいとの言葉を残して、ぱあっと光の粒となって彼女は消えていきました。

 このエピソードは、雛子ちゃんの儚い最期に涙する珠玉の感動物語ですが、しかし決してそれだけの物語でもありません。これは、部長という、その外見と言動から誤解や偏見を受けやすい人のことを、真正面から描いている点が、非常に大きいのではないかと思います。このことは、上記の雛子ちゃんの言葉にもよく表れていますし、そうしたキャラクターにスポットを当てた物語を描こうとしたことを、何よりも高く評価したいと思います。


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