<キャラクター名鑑(後編)>

2013・8・4

 前編はこちら


 前編に引き続いて、今度はサブキャラクターやゲストキャラクターを紹介したいと思います。「浪漫倶楽部」では、一度限りの登場であるゲストキャラクターにも、高い人気を得た名キャラクターが数多くいました。


<矢野>
 火鳥のクラスメイトとして最もよく登場するのが、サッカー部員の矢野です。火鳥とは入学式の時に既に知り合っていますが、その話は連載終盤の第31話です。最初に登場するのはずっと早く第4話で、この時には不良とは言わないまでも、かなり素行の悪いところもある生徒として描かれていました。
 特に技術科の桜井先生とはひどく折り合いが悪く、何度も厳しく叱られたことを恨みに思い、先生の大事な古時計を壊そうとまでします。しかし、その時に起こった事件で大いに改心することになり、最後には退職して学校を辞める矢野先生を笑顔で見送ることになります。

 その後の矢野は、サッカー部で活動する元気で明るい生徒となり、学校のシーンでちょくちょく登場します。特に印象的なのは、部活対抗の競技会を行う連載第21話で、この時は寒中水泳大会に浪漫倶楽部・風紀倶楽部と並んでサッカー部の代表として出場します。しかし、あまりの寒さに入った途端に凍り付いてしまい、あえなく敗退。しかもその時に得た2位と3位の賞品がとてつもなく寒いもので、サッカー部の先輩たちもあきれて帰ってしまうという散々な結果で終わってしまいます。この時の矢野の姿は、この物語の明るいギャグ的な側面がよく出ていて、非常に面白かったと思います。


<学校の先生たち>
 その矢野の話でも登場した学校の先生たちも何人も登場し、その姿がよく描かれています。「終わらない放課後」をひとつのテーマに、楽しい学校生活をよく描いている本作ですが、それは生徒だけでなく、魅力的な先生たちの姿にもよく表れていると思います。

 まず、第4話の1回限りの登場となった桜井先生。技術科の授業においては生徒に対して厳しく、多くの生徒に嫌われる存在でした。特に矢野には恨みを持つまでに嫌われていたことは上記のとおりです。
 しかし、そんな先生ですが、実際には誰よりも生徒思いの優しい先生でした。ただ中々生徒に対して接し方が分からないだけだったのです。結局ほとんどの生徒との関係は変わることなく、最後は寂しく退職してしまいますが、しかし心を変えた矢野に「また来てください」と力強く声をかけられることで、やっと見せる笑顔で救われた気がします。

 桜井先生と異なり、作中で何度も登場するのが、まず結城先生。こちらも非常に厳しく生徒に恐れられる先生で、特に珍妙な活動の多い浪漫倶楽部の活動には日々目をつけていて、浪漫倶楽部の部員にとっては一番やっかいで恐ろしい(笑)先生となっています。連載第13話では、学校で鯉のぼりを上げようとした浪漫倶楽部をとがめ、火鳥は「2時間も説教された」と嘆いています。その日の夜には、宿直として学校に泊り込んでいて、学校に忍び込んで再び鯉のぼりを上げようとした部長の奇声に驚き、校庭に確かめに行こうとしますが・・・。

 結城先生とは対照的に、人当たりの良い先生として描かれているのが、宮本先生です。第11話では、ひな祭りの日に飾る雛人形をコロンにあげる優しい姿を見せます。さらには、第13話では、校庭に出て龍の姿を見て驚いた結城先生の話を聞く聞き手として登場。鯉のぼりが龍に変身するとは、それはまさに中国の故事であり、結城先生が見たのはまんざらでもないかもしれないと楽しそうに語りかけるのです。生徒も先生にも気持ちよく接することのできる先生だと言えるでしょう。


<火鳥の家族たち>
 浪漫倶楽部の部員の中でも、とりわけ火鳥くん(火鳥泉行)の家族は何度も登場します。姉の真兎(まと)、父の力人(りきと)、そして(名前は出てこないですが)母も終盤の話に登場し、全家族が揃うことになります。

 姉の真兎は、泉行にとってはがさつな行動も多い姉ちゃんですが、しかし肝心なところでは火鳥を導く聡明な姉として描かれています。それがよく出ているのが第9話、泉行まだずっと幼いころの話です。他の人には見えない不思議な目を持っている泉行は、その力で年老いた梅の木を助けようとしますが、しかし他の子供たちにはそれが分からなくて拒絶されてしまう。自分の力を否定しかける泉行に対して、真兎は「あんたの瞳はとても素晴らしいものなんだよ」と優しく諭すのです。さらには、逃げ出そうとする泉行に対して「ただの弱虫になってしまうぞ!」とも。これこそが、泉行にとっては不思議事件1号であり、のちの浪漫倶楽部の活動につながることになるのです。

 さらに印象的な登場をするのが、父の力人。かつて学生時代に夢が丘中学校に通い、あの結城先生とも同級生でした。そんな彼は、サクラという女の子と付き合っていたようですが、しかし若くして彼女は死に、悲しく別れることになります。泉行と真兎、コロンは、現代の裏山でそのサクラの幻影に出会い、かつての力人とサクラの姿を夢で目の当たりにすることになります。最後に遅れてきた力人がやってきて、懐かしくサクラのことを語ったとき、一瞬だけサクラの姿が現れ、みなの前から消えていく。この父にまつわるエピソードは、まさに屈指の感動物語になっています。

 連載も最後の大詰め第32話で登場するのが、最後に残った母です。普段は留守にしているようで、久しぶりの帰宅だったようですが、どうも姉の真兎とは折り合いが悪いらしく、再開した後も豪華なホテルを取っての晩餐会に真兎が一方的に反発し、ことあるごとに対抗しようとします。しかし、そんな母は、真兎を誰よりも強く思っていました。
 昔、まだ真兎が幼いころ、お城で綺麗なドレスを着たお姫様になるという願いを覚えていた母は、あえてその真兎の誕生日に、お城のようなホテルを取って豪華な食事と極上のドレスを用意していたのです。これには思わず父と母の前で真兎は泣き崩れてしまうのです。家族の絆がくれるぬくもりをよく表現した、一連の家族のエピソードを締めくくるにふさわしい1話でした。


<儚い願いを抱くゲストキャラクターたち>
 そして、「浪漫倶楽部」と言えば、なんといってもほとんどが1話限りの登場となる、火鳥たち部員に救われる儚い存在、それが最も心に残ります。1話限りで出番が終わるにはもったいないくらいの印象的なキャラクターばかりで、本当に惜しいのですが、そんな儚い姿がまたこの作品の魅力なのかもしれません。

 まず、彼らの多くは人間ではない存在なのですが、それでいて小さくかわいらしい姿のものも多く、思わず和んでしまいます。第7話で登場するペンギンの落書きたち、第8話では人形劇の人形、第14話の雨の精霊(?)の子供、第17話ではタキシードを着たかわいいうさぎ、第23話では角の生えた小さな小鬼の女の子も登場します。これら小さくか弱い存在の多くが、その場限りで消えてしまったり、あるいはどこかへ去ってしまったり、とそんな最後がとても切ない。

 それとともに印象的なのは、火鳥らと同年代の女の子たちでしょうか。女の子のかわいさには定評のある天野さんだけに、特にこの世代の女性キャラクターは、1話のゲストで終わらせるにはあまりにもったいないキャラクターぞろい。第10話で登場する雪だるまの精の睦月さん、第12話のサクラちゃん、第15話の美術部員たち(香織里ちゃんと睦美ちゃん)、第20話で登場する図書委員の赤井さん、あたりが、やはり儚く消えていくラストで特に強く心に残ります。

 しかし、何といっても最大の名キャラクターと言えるのは、第4話で登場する雛子(源氏雛子)ちゃんでしょう。部長の彼女としてかいがいしく尽くし、浪漫倶楽部のみなに愛されながら、最後には一週間しか生きられない蛍として儚く消えていく。心無い女生徒に投げかける名セリフもあいまって、あまりにも美しい印象を残す名キャラクターでした。
 読者の人気もとても高かったためか、のちの第30話で再び登場。ここでも感動的な物語を展開してやはり消えてしまいます。基本的に1話限りのゲストキャラクターの中で、異例の再登場を果たす辺り、やはり特別な存在だったのだと思います。


<心ない言葉を投げかける女生徒たち>
 この「浪漫倶楽部」は、基本的に悪役といえる存在はほとんどいなくて、みんないいキャラクターばかりなのですが、わずかながらに学校の女子生徒の間で、どうもあまりよくない性格の生徒がいるようなのです。具体的には、第2話で月夜ちゃんをいじめていた女生徒の集団、第5話で部長をチカンと決めつけ、雛子ちゃんにも心ない言葉を投げかけた女生徒、また第11話の雛人形の話でも、古くて汚い人形はいやだ捨ててしまえという女生徒がいます。(このうちの何人かは共通した生徒である可能性があります。)

 これらの生徒は、基本的にいい人ばかりのこの「浪漫倶楽部」では例外中の例外で、なぜこのようなキャラクターがいるのかちょっと不思議なくらいです。これ以外だと、図書室の話で出てきた本を大切にしない男子生徒が挙げられるかもしれません。また、先生に恨みを抱いていた時代の矢野も、悪い心を持っていたと言えますが、しかし彼はのちに改心しています。しかし、これら女生徒は、どうも改心したという描写はなく、その後どうなったのか、やはり悪い奴のままなのか完全に不明となっています。

 このような、作品に合わないとも言えるキャラクターをあえて出した理由。それは、部長のような、誤解を受けやすいキャラクターに対する理不尽な扱い、それをあえて出したかったのではないかと思うのです。月夜ちゃんのような、真面目でおとなしい生徒対する理不尽ないじめも、同じような意味合いがあるのだと思います。何の罪も無い生徒に対する理不尽な境遇、そんな学園生活の負の部分も、あえて問題提起したかったのではないでしょうか。


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