<GA -芸術科アートデザインクラス->

2009・2・13

 「GA -芸術科アートデザインクラス-」は、芳文社の月刊4コママンガ雑誌「まんがタイムきららCarat」にて連載中の4コママンガで、同誌の中でも、あるいはきらら系と呼ばれる一連の雑誌の中でも、特に人気の高い作品です。また、単に人気が高いだけでなく、4コママンガの読者、きらら系の読者以外にも幅広く高い評価を受けている点が特徴で、同系の4コマの中でも一目置かれたところがあるかもしれません。元々は、平和出版の「COMICぎゅっと!」という4コマ誌に掲載されていたのですが、これはわずか3号で休刊となり、その後今の雑誌に移籍して長期の連載となっています。すでに連載開始当時の状況を覚えている人は少なく、実質的にこの「まんがタイムきららCarat」の作品となっていると見てよいでしょう。

 作者はきゆづきさとこ。現在、「Carat」の姉妹誌である「まんがタイムきらら」の方でも「棺担ぎのクロ。」という4コママンガを連載しており、こちらの方でも非常に高い評価を得ています。やはり、他の4コママンガとは一線を画する評価を獲得しており、確かなストーリー作りと絵のうまさ(特に造形バランスの良さとカラーページの美しさ)で定評の高い作家となっています。

 この「棺担ぎのクロ。」と「GA」は、どちらも甲乙付け難い作品ではあるのですが、人気の上ではやや「GA」の方が上回っているかもしれません。「棺担ぎのクロ。」は、その重く哀しいストーリーが特徴で、人によっては少々好みが割れるのに対して、この「GA」は、高校の美術系クラスの楽しい日々を描く明るい作品となっており、その点でよりとっつきやすい作品となっているようです。さらには、このような美術をテーマにした4コマには、他にも高い人気を得た作品がいくつもあり、その中のひとつとしてもより高い注目を集めています。
 現在では、きらら系4コマでは久々のアニメ化を達成し、元から特に人気の高い作品ということで、まさに待望のアニメ化という形となりました。「まんがタイムきららCarat」では、もうひとつ、アニメ化で大成功を収めた「ひだまりスケッチ」という同じく美術系4コマがありますが、このマンガもそれに匹敵する成功が期待できるかもしれません。

 なお、雑誌での連載とは別に、同人ショップ「とらのあな」の無料広報誌である「とらだよ。」でも、「GA材置き場」という1ページの短編コミックを連載しており、こちらの方も人気です。このマンガを読むために「とらだよ。」をもらいに行く人もたくさんいるようです。


・とにかく評価の高いきゆづきさとこの二大連載。
 上記の通り、作者のきゆづきさんは非常に評価の高い作家で、4コママンガの中でもその評価は突出しています。いわゆる「萌え4コマ」の中心的存在であるきらら系4コマの中でも、このきゆづきさんの作品の評価は突出しており、普段あまり4コマを読まない人、他の4コマ(萌え4コマ)をあまり高く評価しない人でも、このマンガだけは別、とする人もかなりいるようです。言わば、この作家だけが別格のような扱いで、他の同系の4コマとは切り離して扱う人も多いように見受けられます。

 そのような高い評価を得る最大の理由は、ひとつにはその突出した絵の印象にあることは間違いないでしょう。まず、バランスの取れた絵柄の好感度の高さ。4コママンガだけあって、通常のコマ割は一コマ一コマがかなり小さいのですが、その中でもきっちりとキャラクターのデッサンと頭身のバランスの取れた描き方となっていて、そこに違和感がありません。極端にデフォルメされた描き方になっておらず、通常の1枚絵のイラストと比較してもそこに大きな差異を感じさせない絵柄となっています。これが、普段4コマをあまり読まない読者にも受け入れられる大きな要因ともなっているようです。
 加えて、カラーページの美しさに高い定評があります。色彩感覚が豊かで、グラデーションの描き方がとても綺麗に映えます。特に「棺担ぎのクロ。」では、雑誌掲載時のカラーページのほとんどを再現しており、そのコミックスの質の高さにも注目が集まりました。きらら系4コマのコミックスは、通常のコミックスと比べるとかなりの高額なのですが、「このコミックスならばこの値段で買ってもいい」というコメントを各所で聞くことが出来ました。

 絵だけでなく、内容にも特筆すべきものがありました。「棺担ぎのクロ。」では、童話的な世界観の中で重く哀しいストーリーが展開されており、その寓話的な話の奥深さと、4コママンガの中では特に連続するストーリーを重視した構成で一目置かれることになりました。そしてこの「GA」でも、こちらはコミカルなエピソードが中心ながら、時にひどく読者を引き込む奥深い話も随所に見られ、やはり高い評価を受けています。これほどの連載はそう多くはないでしょう。


・美術系4コマの中でも美術に最も近い作品。
 さて、この「GA -芸術科アートデザインクラス-」は、「棺担ぎのクロ。」と比較すると、コミカルな日常の出来事を中心に描いている点で、より一般的な萌え4コマ作品に近い印象があります。しかも、美術を題材にした美術系4コマということで、同系の作品、特に同じ雑誌で連載中のアニメ化も達成した人気作品「ひだまりスケッチ」や、コミックブレイドで連載中でこちらもアニメ化を達成した「スケッチブック」と比較されることが多いようです。

 そして、この「GA」の場合、それらの作品と比較して、明らかに最も美術寄りというか、美術系のネタや知識を絡めた話が多い印象があります。多くのエピソードが日常のコミカルな出来事で構成される点では、上記他の2作とさほど変わりません。しかし、中でも学校の美術クラスを舞台にしたエピソードが多く、内容も美術関連の授業や課題の様子、美術関連の小ネタ知識がふんだんに盛り込まれている点に、このマンガならではの魅力があります。さらに、そんな美術関連の知識がかなり見られるにもかかわらず、美術を知らない読者にも読みやすく、美術にちょっとずつ詳しくなれるという利点も大いに喜ばれているようです。一方で、美術を知っている読者ならばさらに楽しめるようで、美術経験者の間での評価も高いようです。

 そんな美術要素の中で、特に人気が高いのは、やはり「色」関連の知識ではないでしょうか。元々、色(カラー)というもの自体に人気があり、しかも普通の人はあまり知らないような色の知識がふんだんに登場し、そして何よりもそれが美しいカラーイラストでも楽しめるのが大きく、色関連のエピソードは特に人気が集まっています。メインキャラクター5人それぞれにイメージカラーのようなものが見られるのも魅力的で、これがキャラクターの個性付けにも大いに貢献しています。

 この色関係のネタは、「とらだよ。」掲載中の「GA材置き場」の方では特に顕著であり、毎回のようにフルカラーで色関連の話が読めるということで、特に好評です。この「GA材置き場」、いまだにコミックスに収録されていないのですが、是非ここはフルカラーで完全収録してほしいところです。


・和気あいあいとした楽しい日常と、時にシリアスで奥の深い話が読める点が最大のポイント。
 さらには、そんな美術の知識を常に絡めつつも、キャラクターたちの日常の楽しいエピソードが丹念に描かれます。このあたりは、いかにも同系の4コマらしいところで、「棺担ぎのクロ。」が暗く重いストーリーを基底に抱えているのに対して、こちらは掛け値なく明るい。きゆづき作品で「クロ。」がダークサイト作品とすれば、こちらはライトサイドの作品と言えるでしょう(笑)。
 登場するキャラクターたちも裏表なく明るい人物が多い。中心となる5人のキャラクターたちがまず非常に個性的かつ魅力的です。真面目な眼鏡&ポニーテール少女・キサラギ(山口如月)、寡黙な優等生でどこかずれた感性を持つキョージュ(大道雅)、外見も中身も男っぽい熱血漢のトモカネ(友兼)、明るいムードメーカーでトラブルメーカー・ノダ(野田ミキ)、姉御肌で面倒見のよいグループのまとめ役・ナミコさん(野崎奈三子)。この5人には、前述のようにイメージカラーとでも言うべき色も設定されているようで、例えばキョージュの「黒」、友兼の「赤」、ノダミキの「黄」などはまさにキャラクターそのものを表しているようです。

 そして、彼ら5人が楽しい掛け合いを繰り広げつつ、日々の学校生活を過ごしていく様子、それが適度に美術関係のネタを織り込みつつ描かれます。それは、美術クラスの本当に楽しい日々を描いているようで、実に好感が持てます。たまに美術と直接的な関係の薄いテーマの回もありますが、それはそれで面白く、特に5人が集まって闇鍋をやる話などは、実に楽しくこのマンガの中でも屈指のエピソードとなっています。

 しかし、そんな楽しく明るい描写の一方で、時にしんみりとさせるようなシリアスで奥の深い話が読めるのも、またこのマンガの価値を高めています。いや、これこそが、作者のもうひとつの連載の「棺担ぎのクロ。」とも共通する、作者の真の持ち味かもしれません。個人的に特に気に入っているのは、かつてキサラギが高校受験の前に買った鉛筆のお礼を言いに行く話、そしてキョージュが巣から落ちた鳥のヒナを見つける話でしょうか。どちらもちょっと哀しい事実が明るみに出てしまうのですが、しんみりとしつつもそこから先に繋がっていく結末になっていて、ひどく感じ入るものがありました。


・「GA」は「ひだまりスケッチ」とどう違うのか?
 さて、このように非常に優秀な作品である「GA」ですが、これと同系の「美術系」とも言える4コマには、前述の通り他にも優秀な人気作品がいくつもあります。特に、同じ「Carat」の連載で、先にアニメ化を達成し圧倒的な人気作品となった「ひだまりスケッチ」は、何かと比べられることの多い作品と言えます。では、この「GA」は「ひだまりスケッチ」とはどのような違いがあるのでしょうか?

 まず、なんといっても、「美術」というテーマに関するアプローチの違いが挙げられます。やはり「GA」の方が直接的に美術関連のネタが多く、美術系の知識、とりわけ「色」に関する興味深い知識が色々と得られたり、あるいは美術系クラスの日常の授業や課題の様子が見られたりと、そういった要素が多くの読者に支持されています。「GA」の方がより美術に近い位置にある4コママンガと言えます。
 では、「ひだまりスケッチ」はどうなのか? こちらも、確かに高校の美術系クラスという点では共通しているのですが、美術系のネタはやや少なめとなり、むしろキャラクターたちの日常描写、特にキャラクター同士の緊密な交流に大きなウエイトが置かれている点が非常に目立ちます。つまり、美術そのものよりも、美術科クラスに通うキャラクターたちの楽しい日常、交流に重きを置かれている点が、最大の違いと言えます。

 加えて、メインキャラクター以外の広がりにもちょっとした違いがあります。どちらも、数名のメインキャラクターが作品の中心に置かれているのは間違いないのですが、「ひだまりスケッチ」の方が特に強くメインキャラクターに強く焦点が集まっており、彼女たちが中心の話が極めて多いのに対して、「GA」の方は、ややメインキャラクター以外のキャラクターへの広がりが見られます。特に、要所で登場する美術教師たちの集まりや、コミックスで2巻から登場となる「美術部」の構成員たちです。彼らは、メインキャラクターとは独立したエピソードでの登場も多く、メインキャラクターの外側の世界の広がりが感じられます。あるいは、1回のみで登場するゲストキャラクター絡みの話でも、よりゲストの方に重点が置かれている感が強く、印象に残る人物が多い。これらの点を踏まえると、強固にメインキャラクターに収束している「ひだまりスケッチ」の構成に対して、「GA」はややゆるやかに外側に拡散している構成が感じられるのです。

 とりわけ、2巻から登場する美術部の構成員たちは、メインキャラクターと同等の個性的な存在となっていて、特に部長である芦原ちかこ(あーさん)のかわいさは尋常ではありません。先輩キャラにしてチビッ子で妙な中部弁な強気キャラというのはまさに反則的な萌え要素全開であり、個人的には最高レベルの萌えキャラクターとなっています(笑)。


・きらら系でもトップクラスの実力派作品。アニメにも大いに期待できる。
 以上のように、この「GA -芸術科アートデザインクラス-」、実力派作家が手がけた作品レベルの高さ、確かな面白さが感じられる一作になっており、多くの読者に広く薦められる優れた作品になっています。とりわけ、カラーイラストに代表される印象深い作画、色関係の知識に代表される美術関連の要素、楽しくも時にシリアスで奥の深さも感じられるストーリーと、作画・内容双方において見所が非常に多い優秀な作品になっていると言えます。4コマ読者以外にも高い評価を得ているのもうなずけるような作品であり、萌え4コマの経験の少ない、あるいは抵抗のある読者にも薦められます。

 そして、このマンガもついに満を持してアニメ化されることになりました。既に「ひだまりスケッチ」や「スケッチブック」等、先行する美術系4コマ作品はアニメ化されており、いずれも極めて高い人気と評価を獲得するに至っています。そんな中で、この「GA」のアニメは後発になってしまうのですが、しかしこの原作の完成度の高さから見ても、先行する作品以上に期待できることは間違いないでしょう。
 しかも、きらら系からは久々のアニメ化作品という点でも期待したいところです。これまでのきらら系のアニメ化作品は、わずかに「ひだまりスケッチ」と「ドージンワーク」のみだったのですが、2009年に入って立て続けにこの「GA」と共に「けいおん!」「かなめも」のアニメ化まで告知され、今までにない活況を呈しています。その中でも、この「GA」こそが最大の期待作になることは間違いないでしょう。残念ながら、今はまだあまり外への認知度が高くない4コママンガ界隈ですが、その中でも数少ない4コマ読者以外にも評価されている作品のアニメ化ということで、これを契機に他の4コママンガへの注目が集まれば実に素晴らしいと思います。

 そして、このアニメ化を契機に、他のきゆづきさとこ作品、具体的には「棺担ぎのクロ。」ににも注目が集まるとさらにうれしい。こちらも「GA」と同等の人気と評価があり、「GA」とどちらが先にアニメ化されてもおかしくはない作品でした。今回は「GA」の方が先にアニメ化の栄誉に浴したわけですが、「クロ。」の方もストーリーの奥の深さではさらに一歩上を行くような作品であり、こちらの方も是非読者が増えてほしいと思うのです。


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