<ご注文はうさぎですか?>

2013・12・12

 「ご注文はうさぎですか?」は、まんがタイムきららMAXで2011年3月号から開始された連載で、いわゆる「きらら系4コマ」の中でも最もスタンダードな作品のひとつではないかと思います。洗練されたかわいらしい絵柄とキャラクター・優しい世界観・くすっと笑える楽しいコメディと、このジャンルならではの要素がどれもよく完成されていて、連載初期のころからかなりの人気を集めていました。以前から「ごちうさ」の愛称で親しまれているようです。

 作者はKoi。くせのないかわいらしい絵が特徴の作家で、それはこのマンガのキャラクターに遺憾なく発揮されています。特に、カラーページの綺麗さには特筆すべきものがあり、カラーイラストが最も光る作家ではないかと思います。最近では、その絵の実力が認められたのか、あちこちでイラストの仕事を見かけるようになりました。同じ芳文社のアンソロジーやアニメのエンドカードのほか、エンターブレインから出た小説「魔法少女禁止法」の挿絵イラストの仕事もやっていて、見かけた時は少し驚きました。これから先さらに伸びる作家ではないかと思います。

 内容は、女の子たちの楽しい日常を描いたいわゆる日常系の作品と言えますが、作品の舞台が「木組みの家と石畳の街」にある喫茶店となっていて、西洋風の綺麗な街並みが特徴的です。コミックスの後書きによると、「ストラスブールやコルマールの街並み、ハンガリーの温泉チェスなど、ヨーロッパの色々な場所をモデルにしている」らしく、瀟洒な喫茶店、学校、かなりの規模の図書館、大きな温泉プールなど、魅力的な施設が多数見られます。
 一方で、登場人物の多くは明るくも少し変わったところもある女の子たちで、ちょっとずれた会話の応酬が笑える楽しいコメディになっています。独特のコメディのノリや、西洋的な要素が入った世界観などは、同じMAXで連載中の「きんいろモザイク」とも似た雰囲気があり、読者の層も共通したところがあるような気がします。

 そして、その「きんいろモザイク」に続いて、この作品もテレビアニメ化されることが決まりました。近年、こうした日常系作品を求めるファンはかなりの数にのぼっているようですが、この「ご注文はうさぎですか?」は、そうした作品の中でも最もスタンダードかつレベルの高い人気作品で、次の大本命と言える作品になっていると思います。


・最近のきらら系の作風が最もストレートに表れた作品。
 上記で、「きらら系4コマの中でも最もスタンダードな作品」と書きましたが、しかし一口に「きらら系」と言っても、その形は少しずつ変わってきていると思うのです。

 きらら系で最初に創刊された「まんがタイムきらら」が創刊されて10年が経過しました。姉妹誌であるこのMAXキャラットも、それに近い年数を重ねてきています。しかし、その10年という年月の間、そこに掲載された4コマが、ずっと同じ形を維持してきたわけではないでしょう。おそらくは、創刊初期のころと今とでは、その中身はかなり違ってきているはずです。

 初期の頃から、より若い読者層をターゲットにした萌え指向の方向性があったことは確かですが、しかしその一方で、芳文社がそれまで刊行していたファミリー系の4コマ誌とも共通点が多く、そちらからの作家も多かったと思います。それが刊行を重ねるにつれ、次第にさらにその「きらら色」を強める形で進化していきました。
 そんなきらら系の作風がほぼ確立したのは、「ひだまりスケッチ」や「GA」など、ここからの人気作品がいくつも登場し、それが雑誌の看板となったあたりだと思います。およそ2000年代の半ばあたりでしょうか。その後、さらなる人気作品である「けいおん!」も登場したあたりで、ほぼきらら系のカラー(俗に萌え4コマと呼ばれる作風)は完全に固まったと見ています。

 しかし、これらこの当時の人気作品と、ここ最近の「ゆゆ式」「きんいろモザイク」などの人気作品を比較すると、さらに作風が一定の方向に固まってきているような気がするのです。それは、「よりゆるい雰囲気とゆるやかなネタで構成されるようになった」ということ。

 例えば、「ひだまりスケッチ」という作品は、4コマのネタが毎回実によく出来ていて、かなりしっかりした読後感があります。「GA」では、毎回のように美術の知識がかなりしっかりと盛り込まれ、それが非常に濃く表れた独特の作風を形成しています。それに対して、「ゆゆ式」や「きんいろモザイク」は、1本1本の4コマのネタはかなりゆるく(あるいは”薄く”)、そして”ゆるやかな雰囲気”で読ませるところがあるような気がするのです。

 もちろん、「ゆゆ式」にも会話の題材の面白さや独特の掛け合いの楽しさがあり、「きんいろモザイク」にも意外なほど個性的なキャラクターの交流という楽しさはあります。しかし、ひとつの4コママンガとして考えると、1本1本のネタはゆるめで、まったりとした雰囲気に浸る楽しさがより強調されているように感じます。
 そして、これはこの「ご注文はうさぎですか?」にも共通する作風なのです。むしろ、さらにその作風がはっきりと表れていると言ってよい。その点において、まさに今のきらら系4コマの主流を最もよく体現している作品だと思うのです。


・かわいすぎるキャラクターたちが織り成すちょっとずれたコメディがとても楽しい。
 さて、その「ご注文はうさぎですか?」ですが、やはり何といってもキャラクターのかわいさが際立ちます。作者のKoiさんのキャラクターの作画に素晴らしいものがあるのですが、加えて個性的なキャラクターの設定も面白く、ちょっとずれた会話が楽しいコメディが展開されます。

 主人公は、ココア(心愛)という高校に入学したばかりの女の子。「ラビットハウス」という喫茶店に下宿することになるのですが、そこのオーナーの孫娘であるチノ(智乃)をやたらかわいがり、さらにはこの喫茶店で働いていたリゼ(理世)ともあっさり打ち解け、3人で店員として日々働くことになります。ココアは、明るくまったく人見知りのしない性格で、店の先輩であるチノやリゼに対してもまったく気兼ねすることなく店員の仕事を始め、さらには実家のパン屋で得意だったパンを持ってきて作り始めてそれが看板メニューになるなど、まさに天真爛漫な性格でこの作品のムードメーカーにもなっています。

 チノは中学生ながら小さなかわいらしい姿で、それでいて店長である父の手伝いをして店を切り盛りしています。ココアとは対照的にややおとなしくクールとも言える性格ですが、自分の容姿が幼く小さいことを気にしていたり、笑顔があまり作れなかったりすることを気にするかわいらしい側面もあります。
 リゼは、お嬢様学校に通うれっきとしたお嬢様なのですが、しかし軍人の娘として生まれてそのように育てられたからか、普段からモデルガンやナイフを持ち歩き、レーションのような軍隊食を好んで食べたり、力もあり護身術にも長けるという極めて特徴的な性格付けがされています。その一方で女の子らしさに憧れるところもあり、時々真っ赤になって照れたりするようなとてもかわいらしい姿を見せます。

 さらに、ラビットハウスとは別の和風喫茶・甘兎庵の娘として登場するのが千夜(ちや)で、まさに大和撫子といったおっとりとした性格と容姿ですが、しかし意外にも自分の店のメニューに変わった名前をつけたり、初めて会ったココアをいきなり気に入って自分の店に来ないかと誘ったり、どこか茶目っ気もある女の子になっています。
 その甘兎庵の隣に住む千夜の友達で、さらにはリゼの後輩として登場するのがシャロ(紗路)です。お嬢様学校に通っていて、ココアたちからはすごいお嬢様と思われるのですが、本当はすごく貧乏で、いくつもバイトをして暮らしています。普段はハーブティ専門の喫茶店、フルール・ド・ラパンに勤め、日々懸命に働く姿にいじらしさを感じるかわいらしいキャラクターとなっています。

 このように、ひとりひとり個性的な性格と設定が与えられていて、そんな彼女たちが日々楽しい会話を交わし交流する姿がとてもほほえましく、またひとりひとりどこか感覚がずれた会話が楽しく笑えるものになっています。4コママンガとしては、1本1本のネタがはっきりとして印象的なものが多く、しっかりとした読後感を与えてくれる良作になっていると思います。


・マスコット的な存在のうさぎたち、そして女の子たちの着る制服などすべてがかわいい。
 さらには、チノが飼って(?)いていつも頭に載せているティッピーというまるまるとしたうさぎのような物体(アンゴラうさぎ)や、甘兎庵で千夜にかわいがられている看板うさぎ・あんこなど、このマンガのタイトルにもなっているマスコットのうさぎたちがまたいいアクセントになっています。また、実はティッピーは、かつてのオーナーだったチノの祖父の人格(らしきもの?)が入っているらしく、実はしゃべることができたりします。

 また、個人的に非常に気に入っているのは、女の子たちが来ている店の制服や学校の制服です。まず、ココア・チノ・リゼの3人が着ているラビットハウスの制服ですが、わたしには一瞬学校の制服に見えてしまいました(笑)。ベストと大きめのリボンとそして色合い(ココアはピンク、チノとリゼは青)がとてもかわいくて、一目見てこのコスチュームを気に入ってしまいました。
 さらには、甘兎庵の和服、フルール・ド・ラパンのメイド服のデザインもかわいく出来ていて、三者三様の店の制服を見ているだけで楽しい。普段はそれぞれの勤める店の制服を着ていますが、リゼが甘兎庵やフルール・ド・ラパンで一時働くことになるエピソードでは、それぞれの制服姿を見せてくれて、これにはとてつもなく萌えてしまいました(笑)。

 これに加えて、学校の制服がかわいいのも見逃せません。5人のうちココアと千夜、チノ、リゼとシャロがそれぞれ別の学校に通っていて、3通りの制服を見せてくれるのですが、それがまたセーラー服にブレザー、ワンピースとバリエーションに飛んでいて(もちろんそれぞれに夏服Ver.もある)、どれもいちいちデザインがかわいいのです。

 また、毎回の扉絵で見せてくれる何らかのコスプレ的な衣装も、それぞれのキャラクターに合っていてよく描けています。総じて、彼女たちの着る服装にみんな華があって、それがキャラクターのかわいらしさをさらに高めているような気がするのです。


・西洋風な街並みの世界観も魅力。
 そしてもうひとつ、きらら系の4コマではやや珍しい、西洋風の世界観も魅力です。西洋風とはいえキャラクターたちの多くは日本人のような名前で、さらには通貨単位も円であることが確認できるなど、どうも日本のどこかではある設定のようですが、しかしその雰囲気は紛れもなくヨーロッパのどこかの街にずっと近い。 前述のように、ヨーロッパの様々な場所を直接モデルにして作られており、特に主人公たちが勤める喫茶店が西洋風な外見であることが(甘兎庵だけは和風喫茶ですが)、そのイメージをより強くしています。

 ただ、喫茶店以外の場所では、街並みや建物が映える印象的な場面が意外に少ないのが、少々残念なところです。そもそも喫茶店が舞台となる話がかなりの割合を占めていて、次点が彼女たちが通う学校で、それ以外の場所に行く話がやや少ない。かつ、4コママンガとしてやや背景が少なめで、町並みの雰囲気を感じられるコマが意外に少ないのは、せっかく魅力的な舞台を用意しているのにちょっと惜しい気がします。

 そんな中で、西洋の街の雰囲気を感じられる貴重なシーンとしては、まず5人が揃って温水プールへと行く話があります。非常に大きく古風な建物で、古い建物を改造して作ったらしく、まるで古代ローマの浴場のような場所となっていました。こういった建物はさすがに日本にはほとんどなく、最も西洋的な雰囲気を感じてしまいました。さらに、その中で入浴しながらチェスを打つシーンがあり、これなどはハンガリーの温泉チェスを素材にしたのだと思います。また、図書館へ行くエピソードでは、非常に大きな図書館の内部が見られて、こちらも同じような雰囲気を感じました。

 また、ココアとチノが街の公園で散策をするエピソードも、綺麗な街並みや緑の木立がよく描かれていて、非常にいい雰囲気を感じられました。街の店舗に様々な意匠を凝らした看板がかかっていたり、瀟洒な洋服店でリゼと出会ったりクレープの出店でシャロと出会ったり、あるいはふたりで公園のベンチでのんびりと休憩するシーンなどは、穏やかで暖かい日差しの当たるとても気持ちのいいシーンになっていました。


・きらら系4コマの次期大本命。アニメにも期待がかかる。
 以上のように、この「ご注文はうさぎですか?」、今のきらら系4コマの中でも屈指の人気作品のひとつで、Koiさんの描くかわいすぎるキャラクターと、西洋風の瀟洒な街にある喫茶店という魅力的な舞台、4コママンガとしてもしっかりしたコメディネタで笑わせてくれる良質な作品に仕上がっていると思います。今のきらら系4コマの主流と思われる、かわいいキャラクターとゆるやかな雰囲気のコメディというスタイルをよく再現していて、これこそ日常系萌え作品のひとつの完成形ではないかと思います。キャラクターのかわいさでは、先行する人気連載の「きんいろモザイク」と一、二を争うものがあると思いますし、個人的にはこれほど萌える作品は他にありません(笑)。

 そして、ついにこの作品も、アニメ化されることが決まりました。「ゆゆ式」「きんいろモザイク」「桜Trick」とここ最近きらら系作品のアニメ化がコンスタントに行われる中、次のアニメ化候補としては紛れもなく大本命で、最も予想される作品が来たという感想です。「ゆゆ式」と「きんいろモザイク」のアニメが非常に熱心なファンを獲得したこともあって、これにも大いに期待がかかります。最近では、こういった日常系アニメが終わった後の喪失感を癒せず、「難民」と化す人が多数出現しているようですが(笑)、次期難民の最大の受け入れ候補となるのがこの作品だと思われます。

 ただ、ひとつだけこの「ごちうさ」のアニメで気になるところとして、やはり作画の出来が挙げられます。原作が何よりKoiさんの絵の力が大きい作品なので、アニメでもどうしてもそれを再現してほしいのです。「きんいろモザイク」のアニメは、そこが唯一の不満で、あまり原作の絵を再現していなかったのが非常に残念でした。それでも「きんいろモザイク」の場合、かろうじて原作の雰囲気は再現できたところはあったのですが、しかしこの「ご注文はうさぎですか?」で同じことをやるのは厳しいと思います。まずKoiさんのキャラクターデザインをきっちり 再現して、さらに原作でやや物足りなかった西洋風の街並みをアニメで補完してもらえれば、もはや言うことはありません。ここは制作スタッフの奮闘に大いに期待したいですね。


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