<会長クンのしもべ>

2013・10・20

 「会長クンのしもべ」は、ウェブ雑誌のCOMICポラリスで2012年10月から月刊掲載されている作品で、2013年10月にコミックス1巻が発売されました。 掲載誌のCOMICポラリスは、かつてコミックブラッドなどを刊行していたフレックスコミックの1ウェブ雑誌らしく、その中でも女性向けの作品で構成された雑誌になっているようです。

 作者はほずの都。これが商業の初連載作品ですが、ウェブや同人で作品をいくつも発表しており、どのマンガもかなり読める実力を持っていたと思います。それゆえに、この初商業連載は非常にうれしく、ついに抜擢されたかという気持ちになりました。

 作品の内容ですが、生徒会長ながら実は極道(ヤクザ)の息子の九条くんと、不幸にも彼の正体を知ってしまい、日々脅されどつかれる羽目になったオタク少女・平山さんの掛け合いを描く学園コメディとなっています。極道少年とオタク少女という主役ふたりの個性つけが面白く、互いに突っ込みを入れまくる賑やかな作風が楽しい作品です。ポラリス掲載ということで、女性向けの少女マンガ的なコメディと言えるかもしれません。

 しかし、この作品、以前は読み切りとしてスクエニの少年ガンガンで掲載されていたのです。そのときのタイトルは、「となりの極道くん。」。新人による読み切り競作企画を見事勝ち抜いて、読み切りの掲載権を獲得したもので、読者の好評を得た作品ということで、読み切りとしてはかなり大きな扱いだったと思います。
 この読み切りも非常に面白かったため、このままガンガンで連載されるのかなと思いましたが、しかしその後まったく音沙汰なく、しかものちに他社のCOMICポラリスにおいて、タイトルを変えて連載が開始されることになりました。ガンガンではうまくいかなかったために、他社に持ち込んでそちらで採用されたのだと思いますが・・・、元からガンガン的な面白さを持っていただけに、これは非常に惜しいと思ってしまいました。


・最近のGGグランプリの勝ち抜き作品では最も面白いと思っていたが・・・。
 上記のように、この「会長クンのしもべ」、以前は「となりの極道くん。」というタイトルで、新人による読み切り競作企画に掲載された作品でした。この競作企画は、ガンガンの巻末で毎月恒例で行われているもので、今では「勝ち抜きGGグランプリ」と呼ばれています。

 この企画の始まりはかなり古く、お家騒動のしばらく後から始まっていて、最初のころは「2Pでギャグをやってみないか?」と呼ばれていたこともありました。この名のとおり、新人に2ページのマンガを投稿させて毎号6人程度で読者アンケートで競争を行い、5回ほどアンケートで勝ち抜いた作者が晴れて読み切り掲載権を獲得、という主旨で行われてきました。2ページ少ないページ数の規定から、4コママンガの作品が多く、この「となりの極道くん」も最初は4コママンガだったと記憶しています。

 優秀な新人の発掘が目的のこのページですが、当初から成果はあまりそれほどでもないようで、ここから次々と人気連載作家が出てきているというほどではありません。しかし、かつては、火村正紀(「はじめての甲子園」)や堀田きいち(「君と僕。」)などの優秀な作品が登場し、それが晴れて連載を獲得して人気作品となったケースもありました。ただ、最近はそういった例が以前より少なくなっており、前にも増してこれはという作品が減っているとは感じていました。

 そんな中で、この「となりの極道くん」は、当初からかなりの面白さが感じられ、予想通り見事にGGグランプリを勝ち抜き、読み切りとして掲載される運びとなったのです。最近のここからの作品の中では目立って優秀で、読み切り掲載時のガンガンでの扱いも比較的大きなもので、編集部も期待していると思っていたのですが・・・。思ったほど読者の反響がなかったのか、あるいはほかに理由があるのか、結局そのまま読み切りのみで終わってしまいました。


・極道会長とオタク少女の激しい掛け合いが最高に楽しい!
 さて、このマンガの面白さは、何といっても生徒会長にして極道の息子・九条くんと、学校でもノートの漫画を描いたりする重度のオタク・平山さんとの掛け合いコメディでしょう。

 九条くんは、普段は「人望厚き優等生生徒会長」で通っていて、頭脳明晰運動神経抜群、おまけに美貌で女子生徒に大人気と、それを鼻にかけない立ち居振る舞いで男子生徒や教師の信頼も厚いと、「まさに『完璧』の権化」でした。

 対して、普通の女生徒である平山さんの方は、三次元にはまるで興味の無いオタクの権化(笑)。普段は九条くんと特に接点もなく、気にかけてもいなかったのですが、ある日図書委員の仕事で放課後の図書室で九条くんと出会ったとき、その本性を目の当たりにすることになるのです。

 そこで、九条くんは、親父(ヤクザの組長)に向けた電話で、すさまじい罵声でどなっていました。その姿を平山さんに見られた九条くんは、自分の正体をヤクザの息子だと明かし、絶対にばらすなと平山さんをおどしにかかるのです。しかも口止めするばかりか、こうなったら利用するしかないとのたまい、お前のオタク趣味をばらすとおどしてパシリをさせるまでになるのです。

 しかし、平山さんの方も負けてはいません。九条くんの外道な仕打ちに抵抗し、さらには九条くんの弱みを握って嫌いな虫を持って迫ったり、家に来たときに無理矢理同人誌の執筆を手伝わせたり(笑)、逆に九条くんをあしらう姿まで見られるのです。

 このように、九条くんと平山さん、双方が激しく相手を攻める掛け合いが本当に楽しい。一方的にいじられる、いじめられる作風だとちょっと抵抗も生まれたかもしれませんが、このマンガにはあまりそんなネガティブな雰囲気を感じない。極道とオタクという個性溢れるキャラの掛け合いが楽しい、明るいコメディとなっています。


・新キャラクターの多数追加でさらに楽しくなった連載版。
 また、かつてのガンガン掲載の読み切りでは、ほとんどこのふたりのキャラクターが中心で、それ以外のキャラクターはあまり見られませんでしたが、ポラリスでの連載では、序盤から新しいキャラクターが多数追加されていて、さらにコメディの面白さを増しています。

 連載2話から早速登場するのが、神成亜子という一つ先輩の女生徒。九条くんの極道方面での知り合いで、九条くんよりも立場は上、彼をあしげにして翻弄しまくる美女として登場。これまで一方的にいばっていた九条くんが頭が上がらない女の子が登場し、さらに平山さんが彼女から九条くんの弱みまで聞いたことで、一気に反撃の機会を得ることになります。

 すこし遅れて5話から登場するのが、スペインから来た明るいラテン系?オタク少年・ハヤ。なぜか最初から会長の九条くんを知っていて、さらには平山さんのことも天使と呼んでいきなり抱きついてきます。実は、彼は、インターネットを通じて平山さんの同人活動を知り、日本のイベントに来て直接平山さんを見た時から天使だと思い込み、尊敬するオタクのそばにいたいと思い込んで転校してきたのです。会長のことを知っていたのも、平山さんのブログで会長の愚痴の書き込みを見たからでした(笑)。同じオタク同士意気投合したふたりは、楽しいオタク会話を繰り広げる友達となります。

 さらには、九条くんの組のヤクザの組員たちや、あるいは父親である若作りの組長も登場。さらにはふたりの担任の速水先生も、組長から九条くんを見守る目的で派遣されていたことも判明。組員たちに愛され、父親からもひそかに見守られる九条くんのかわいい側面を見ることが出来ます。

 このように、九条くんの極道・平山さんのオタク趣味というふたりの個性をさらに広げる形での新キャラクターの登場で、ますます作品の世界が広がって面白くなったと思います。ガンガンの読み切り版を知っている者としては、連載が順調な発展しているようでうれしくなりました。


・この正しくガンガン的な作品が、ガンガンで連載されなかったのが残念でならない。
 以上のように、この「会長クンのしもべ」、個性的過ぎるキャラクターたちによる賑やかな掛け合いのコメディがとても楽しく、本当に面白いマンガになっていると思います。女性向けと思われるポラリスの中でも、比較的男性でも誰でも楽しめるマンガになっていると思われますし、こういったコメディマンガが好きな人には特にお勧めできます。

 しかし、惜しむらくは、このマンガが、最初の掲載先であったガンガンで連載されなかったのが、とても残念でなりません。なぜなら、このマンガ、ガンガンやスクエニ雑誌で連載するにふさわしい、「正しくガンガン的なマンガ」ではないかと思ったからです。

 正しくガンガン的なマンガとは何か。ここでは、「中性的で少女マンガ的な作品」を指してみたいと思います。上でも書いたとおり、このマンガは、女性向け雑誌に載っていることから、比較的女性読者に好まれる、少女マンガ的作風を持っていることは確かです。しかし、それと同時に、絵柄やあるいはストーリーも中性的で、男女問わず楽しめる作風を持っているのではないかと思うのです。

 癖の少ないかわいらしい絵柄は、他のポラリス連載と比較しても、最も中性的で抵抗少なく読めるもので、何より女の子のキャラクターがかわいい。どちらかと言えば萌え系の要素も兼ね備えているようにも感じます。ストーリー面でも、例えば平山さんのオタク趣味がえらく男性向けだったり、オタクマンガのそれに近いものを持っていると感じます。スクエニ雑誌では今でも普通に見られる作風ですし、もちろんガンガンで連載してもまったく問題ありませんでした。

 それが、どういう理由かガンガンでの連載が行われず、結局ポラリスという新興のウェブ雑誌でなんとか連載を獲得したわけで、本当に連載出来てよかったと思う反面、やはりガンガンがこれを逃したのはあまりにも惜しいと思ってしまいました。落ち込みの激しい最近のガンガンの貴重な戦力となったはずですが・・・。


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