<きんいろモザイク>

2011・9・30
一部改訂・画像追加2013・9・7

 「きんいろモザイク」は、芳文社のまんがタイムきららMAXで2010年6月号から掲載されている作品で、同社のきらら系雑誌連載のマンガに特徴的な、いわゆる日常系4コマのひとつとなっています。同誌で2010年2月号と3月号に読み切りとして掲載され、好評を博してそのままの形で連載化されたようです。

 作者は、原悠衣。元々は、2004年〜2007年頃にマッグガーデンのコミックブレイドで活動していた作家で、「堕天使カナン」「星のウイッチ」のふたつの連載を残しています。しかし、いずれも短期連載で終了しており、その後のブレイドでの掲載は途絶え、かなりの間をおいて、今度はこの芳文社のきらら系雑誌に登場することとなりました。マッグガーデンでの作品は、小粒ではあるものの中々の良作だと思っていましたが、しかしいずれもかなりの短期で終了するなど、完全に成功したとは言いがたいところもありました。個人的には非常に惜しい結果だと思っていましたが、その作家をのちに芳文社が拾い上げたような形になっています。

 その「きんいろモザイク」ですが、イギリスから日本にやってきた金髪少女・アリスと、彼女の家に以前ホームステイしていた日本の少女・忍(シノ)、そしてその周囲を取り巻く友人たちで織り成される学園コメディとなっています。絵柄もエピソードも非常にかわいらしく、見た目は誰もがほっと和むような作風になっています。一方で、どのキャラクターもちょっと変わった個性が活きていて、コメディやギャグのネタに意外にもかなり激しいネタも多く見られ、賑やかに楽しいマンガになっていると思います。

 きらら系雑誌の中では、きららMAXの4コマは比較的賑やかでアクティブな作品が多いと個人的には思っているのですが、この「きんいろモザイク」もまさにそのとおりの作風で、ひときわかわいらしい絵柄と賑やかなコメディが同居する良質の作品となっています。楽しい日常系作品が好きな人には、特におすすめできるマンガではないかと思います。作者の以前のマッグガーデン時代の連載よりも、こちらの方が高い人気を得た成功作となり、2013年にテレビアニメ化を達成しました。アニメも良質で非常に好評のようで、原作初期からの読者としては大変うれしく思いました。


・ほのぼのとした作風だった「堕天使カナン」「星のウイッチ」。
 作者の原悠衣さんの、コミックブレイドでの活動は、2004年頃まで遡ります。この頃から読み切り作品を掲載し始め、「ウソツキ勇者」「GEMINI」「運命の王様」などの作品を残していました。その後、その読み切りの実績が認められたのか、2005年から「堕天使カナン」の連載を開始。これはわずか5ヶ月の短期連載に終わり、コミックスも1巻で終わっています。

 その後、2006年になって、当時の作者の代表作とも言える、「星のウイッチ」の連載を始めます。こちらも短期連載と言えますが、それでも1年以上の連載となり、コミックスも3巻まで刊行されました。
 この「星のウイッチ」、善いことをしようとする魔女と、彼女に協力する少年の奮闘を描く物語で、ほのぼのとして、それでいて優しい物語となっています。コミックス1巻の表紙が非常にかわいらしいですが、この雰囲気そのままの物語となっています。この頃からとてもかわいらしい絵柄で、今と雰囲気はほとんど変わっていません。
 短期連載に終わった「堕天使カナン」も、やはり堕天使の少女が人を幸せにしようと頑張る物語で、シリアスな内容ながらやはりとても微笑ましい話となっていました。最初の連載だけあってまだ未熟さを感じるところはありましたが、それでもこの内容は「とても善い」と言い切れるものとなっていたと思います。

 しかし、このような佳作をいくつか残しながらも、その後原さんのブレイドでの活動は途絶えてしまいます。当時のブレイドは、全体を通して最も誌面が落ち込んでいた時期で、原さんの作品も小粒な良作にとどまり、誌面ではあまり目立たなかったように思いました。それゆえに、後に続くほどのいい評価は得られなかったのかもしれません。思えば、「星のウイッチ」も、最後はちょっと駆け足気味の展開で、早期での終了を余儀なくされたのかなと思えるところがありました。

 その「星のウイッチ」が終了したのが2007年。以後ブレイドでは音沙汰なくなってしまうわけですが、はるかのちの2010年になって、芳文社のまんがタイムきららMAXに4コママンガの読み切りで登場。それがこの「きんいろモザイク」で、思わぬ場所での再登場となりました。こちらは、4コママンガであるためか、コメディやギャグのネタにアクティブなものが多く、かつてのストーリーマンガとはちょっと変わった作風も見られるようです。


・金髪イギリス人少女と黒髪日本人少女の交流を描く。
 このマンガのタイトル「きんいろ」とは、おそらくは金髪のこと。その金髪のイギリス人の少女が、日本人の少女の家にやってくることで物語は始まります。

 その少女の名前は、アリス(アリス・カータレット)。コミックスのキャラクター紹介では、「すこやか」と紹介されているように、素直な性格で愛される少女となっています。外見は、背も小さくてかわいらしいまるでお人形のような姿ですが、それでもれっきとした16歳。日本の文化が大好きで、さらには、かつて自分の家にホームステイしてきた女の子・忍に会いたいばかりに、日本にやってきて高校に通うことになります。

 アリスが憧れた日本人の少女は・大宮忍(シノ)。キャラクター紹介で「しとやか」と紹介されているように、見た目は黒髪ボブカットでおとなしそうな外見で、まさに大和撫子といった雰囲気。しかし、実は外国の文化がとても大好きで、好きが高じて無理に英語をしゃべろうとしたり、髪を似合わなそうな金髪に染めようとしたり、ちょっと(かなり)変な性格ともなっています(笑)。金髪少女のアリスも大好きで、彼女をお人形にしたいというくらいかわいがっています。

 このふたりは、かつてシノがアリスの家にホームステイしていたこともあって、旧知の間柄であってまったく気兼ねがありません。また、アリスの方も、日本の文化が大好きで、シノも好きで彼女を追いかけてきたくらいで、そしてシノの方も、外国の文化に憧れてさらにはかわいいアリスも大好きと、人種や文化の違いなどまったく感じず、むしろ互いの文化をこよなく愛する大の仲良しとして描かれています。そして、そんな二人の様子がとてもほほえましい。シノの後をどこまでもちょこちょこと追いかけていくアリスの様子など、まるで姉妹を通り越してカルガモの親子みたいで、どこまでも和む姿を見ることができます。アリスが意外に人見知りで、普段は日本語ぺらぺらなのに知らない人にはカタコトで話すところとか、本当にかわいいなと思いました。


・意外にひねった個性のキャラクターによるコメディが楽しい。
 さらに、アリスとシノのクラスメートとして、綾と陽子のふたりの少女も登場します。

 小路綾(アヤ)は、「たおやか」と紹介されているように、落ち着いた外見で頭もよいしっかりものとして描かれています。ギャグシーンでは突っ込み役を演じることも多い役柄なのですが、その一方で、ちょっとはずかしがりやで人見知りしたり、あるいはどこか抜けていておっちょこちょいなところもあり、時にあたふたと慌てふためく様がとてもかわいらしい少女でもあります。頭はいいはずなのに普段の行動でそれをあまり感じないところがとてもかわいい。
 猪熊陽子(ヨーコ)は、「にぎやか」と紹介されているように、明るくアクティブな性格のムードメーカー。運動神経がよくて体育も得意。とても気持ちのいいキャラクターになっています。メンバーの中では最も常識人で、周囲の変な行動に対する最大のツッコミ役になっています。また、アヤにとってヨーコは転校した時の初めての友達で、そのためふたりの結びつきはとても強く、特にアヤの方が陽子に特別な感情を抱いている描写が見られます。このマンガ、いわゆる百合マンガというわけではありませんが、このふたりの間柄にはそれを感じさせるシーンが何度も見られます。

 さらには、連載中盤からは、もうひとりの金髪少女として、イギリス人と日本人のハーフの九条カレンが登場。「のびやか」と紹介されているとおり、アリスに比べるとより明るくびのびした性格で、クラスメイトとも積極的に打ち解けようとする、屈託のない明るいキャラクターとして描かれています。

 以上、この5人がメインキャラクターなのですが、いずれのキャラクターも、随所でちょっと変な個性や行動をのぞかせることがあり、それが意外なほど激しいコメディ・ギャグを演じるシーンが随所に見られ、これがこの「きんいろモザイク」の見た目からはちょっと意外な特徴となっています。
 例えば、アリスは普段はとても純真な性格をしているはずですが、時にちょっと黒い性格をのぞかせたり、カレンも時にじーっと周囲を観察して時にちょっといじわるな?ツッコミを入れたりします。アヤは上で書いたとおり慌てるあまりにとんでもない言葉を発することもあります。一番まともと言えるのはツッコミ役の陽子ですが、逆に彼女もどこかずれたボケを発することがしばしばあります。

 中でも、一番変な性格をしているのが、5人の中でも主人公格と言えるシノでしょう。見当違いのボケを発することが多く、しかもそれが主にアリスに対して結構ひどい言葉になっているのですが(笑)、しかし悪気はまったくなく完全に天然そのもので、これがとても笑えるポイントとなっています。


・光や季節を感じさせる一枚絵が素晴らしい。
 と、このように時にかなりえげつない(!)ネタも見られる4コママンガなのですが、しかしそれとはまったく異なる側面もあります。それは、本来のテーマである日英の少女たちの異文化交流、その優しい交流を描いたシーンの数々です。

 とりわけ、扉ページや雑誌のカラー表紙などで見られる、一枚絵のイラストはその美しさが光ります。原さんは、以前からイラストがうまい作家だと思っていましたが、この「きんいろモザイク」のイラストは、さらに群を抜いて目を引かれるものがあります。2013年に発売されたこの作品の画集には、「光や季節を感じるイラストを目指した」という作者のコメントが書かれており、実際にそのようなイラストがとても多いのです。コミックス1巻の表紙も、本来は背景付きで描かれていたようで、その雰囲気の良さに思わず感心してしまいました。

 本文中では、コミックス1巻冒頭のカラーページでもそのような絵が見られます。「大人になったらもう一度イギリスに行きたいと思っていたけど、アリスが来て夢がかなった」と笑顔で語るシノ。その後、4人で飛行機雲が流れる青空を眺める印象的なシーンが入ります。これは本当に美しい場面で、どこか切ない郷愁のようなものまで感じられます。もっともその後に、「あの飛行機イギリス行きかな」と飛行機を眺めるアリスに対して、「あれは多分東京行きだよ」というアヤのまったく空気を読まないツッコミが入るのが、またこのマンガらしいとも言えるのですが・・・(笑)。

 それと、「きんいろモザイク」という作品のタイトルも、こうした美しい雰囲気を象徴していると思います。この言葉は、シノが金髪に染めようと考えた時に、「もしわたしが金色に染めたら似合わなくてモザイクかかっちゃうかも」と言うコメディのネタとして使われて、それがタイトルのひとつの元ネタではあるようですが、どうもそれだけではないように思えるのです。これは「きんいろ」という美しい色と「モザイク」という細やかな美しい装飾、このふたつから連想される作品の美しいイメージをも表しているのではないでしょうか。このタイトルが描かれたコミックスの表紙も、キャラクターたちがしとやかな筆致で描かれていて、そこにタイトルどおりとても美しいものを感じる絵になっていると思います。


・アニメも最高に面白い! 4コマならではの成功作になった。原悠衣さんの今後の活動にも期待。
 さらには、2013年夏に放映されたテレビアニメ、これがよく作りこまれた非常にいい出来となっています。原作を掘り下げた新しい面白さまで提示してくれました。

 とりわけ、1話の最初で、シノがアリスの家にホームステイした時のエピソードが描かれ、これがほほえましくも泣けるとてもいい話になっていたことが驚きでした。声優が巧みな英語でしゃべるのも驚きで、さらには作中で登場するイギリスの家は、現地に赴いて実際にある家をモデルにして製作されたという力の入れようです。原作でもこのときの話はほんの少し出てきますが、わずか数コマ程度で断片的に描かれたにすぎませんでした。それをあそこまで掘り下げてくれたことに本当に感動。このエピソードは、アニメで初めてこの作品を知った人にも非常に好評だったようで、これで序盤から高い人気を得るきっかけとなったようです。

 その後は、原作の4コマコメディを忠実に再現する回が続きますが、こちらもテンポよくひとつひとつのネタを見せていて、盛んにアイキャッチの入る思い切った画面の切り替えもよく出来ていて、忌憚なく4コマのアニメ化を成し遂げていると思います。
 原作の意外なほどどぎついギャグもよく描いていて、思わず笑ってしまうこともしばしば。特にシノのアリスに対する発言もそのまま描かれ、そのあまりにもあまりな天然ボケの数々に、鬼畜こけしなどというあまりにもな愛称までつけられる有様(こけしはアリスのシノに対するイメージ)。原作にもあるアリスのシノに対するプレゼントを「ゴミですか?」というくだりは、アニメでも大いに話題になってしまいました(笑)。

 このところ、きらら原作のテレビアニメは、前季の「ゆゆ式」も非常に好評で、好調が続いているようですが、これもまた非常な成功を収めたと言えるでしょう。かつて、ブレイドで目立たないながらも良作を残して消えていた原さんが、こうして芳文社のきらら系で復活しただけでもうれしいことでしたが、アニメ化までされて成功するとは、予想以上の僥倖でした。

 現在の原さんは、一迅社のREXでも「宇宙ヨメ」というストーリーマンガを連載し、さらには「きんいろモザイク」のヒットを受けて画集が発売され、かつて休刊した雑誌で一時期連載された作品(「わかば*ガール」)のコミックスまで発売される運びになるなど、以前よりも注目度は俄然上がってきたと思います。これからの活動にも期待ですね。


「他社の作品」にもどります
トップにもどります