<放課後アトリエといろ>

2012・1・11

 「放課後アトリエといろ」は、角川書店のコンプティークで2012年12月号から開始された4コママンガの連載で、のちにコンプエースでも連載が開始されました。現在でも2誌で並行して連載しているようで、あるいは角川が出している書店向けの販促誌「角川HOTLINE」にもゲスト掲載され始めたようです。先日発売されたコミックス1巻には、2誌で掲載されたものがまとめて載っています。

 作者は、華々つぼみ。元はイラストの方で主に活動していた新人作家でしたが、ネット上のお絵描き投稿サイト・Pixivにおいて開催された「高校生マンガ・コミックイラストコンテスト2010」のマンガ部門で見事受賞し、そこに投稿した4コママンガが、ほぼそのままの形で連載化されることになったようです。これがこの「放課後アトリエといろ」です。華々さんは、実はこのコンテストのイラスト部門の方でも受賞しており、しかも前年に開催された2009年度のコンテストではグランプリまで受賞していて、元々はイラストでの活動がとりわけ目立つ作家でした。そんな華々さんが、4コママンガの方でデビューするとは、何が起こるか分からないものです。しかも、デビューした当時はまだ現役の高校生で、非常に思い切った抜擢だったと思います。

 作品の内容は、「放課後」「アトリエ」のタイトルどおり、学校(高校)の美術部で活動する部員たちの姿を描いたほのぼの4コマとなっています。ウェブ上に掲載されているコンテストの受賞作品を見る限り、かなり近い形で連載化されているようです。投稿作品がそのまま連載化されるというのは、作者にとって最高に理想的な成果ではないでしょうか。自分の描きたいマンガをそのまま描けるというのは本当にうれしいのではないかと思います。


・この作品が、角川が推すポスト「らき☆すた」か?
 前述のように、このマンガ、コンプティークとコンプエースの2誌同時掲載という形で連載されているわけですが、これと同じ形式で連載されている、もっと有名なマンガがあります。「らき☆すた」(美水かがみ)です。こちらのコミックスも、2誌で掲載されたものをまとめてひとつの形にしており、さらには他の場所で描かれたものもまとめて載っています。その中に、角川が出している書店向け販促誌「角川HOTLINE」掲載のものもあります。

 そして、こちらでつい最近、この「らき☆すた」の掲載が終了し、この「放課後アトリエといろ」へと掲載作品がバトンタッチされたらしいのです。角川の販促誌において、あの「らき☆すた」の後釜に抜擢されるとは、相当に大きな扱いではないでしょうか。さらには、コンプティークの表紙においても、「らき☆すた」と一緒に表紙の一角を飾るなど、着々とその存在感を増しているようです。今ではまだコミックス1巻が発売されたばかりで、まだまだ(特に雑誌の外での)知名度は低いと思いますが、それでもこの編集部の推進ぶりは心強い。角川が推すポスト「らき☆すた」候補のひとつなのかもしれません。

 なお、そのコミックス1巻ですが、発売に際してこちらでも「らき☆すた」の9巻と、こちらはコンプエースの連載である「あか☆ぷろ!!!」1巻(あらきかなお)と3冊同時に発売され、3冊まとめてフェアが開催されるなど、その積極的な販売攻勢に目立つものがありました。コンプティークもコンプエースも、どちらも掲載コミックスは原作付きのものが中心なのですが、そんな中で数少ないオリジナルの連載が、編集部に期待されているのではないかと思います。


・高橋さんと華村さんのコンビが素晴らしい。
 さて、肝心の内容ですが、このマンガの中心となっているのは、とある高校の新入生である高橋さん(高橋寧々)と華村さん(華村香)です。このふたり、高校生活初日に出会ったばかりなのですが、同じクラスで高橋さんが華村さんと自分の席を間違えたことがきっかけで知り合い、やがて友達となって仲良く付き合っていくことになるのです。

 高橋さんは、高校生になった今でもドジで子供っぽく、学校まで家のスリッパを履いてきたり、教室の席を間違えたり、かばんに名札をつけてきたり、自己紹介の文を家から書いてきたり、机から物を落としまくったり(笑)と、やることなすことうまく行かずに、高校入学早々落ち込んでしまいます。中学の時も同じであまり友達も出来ず、高校に入った今度こそ頑張って友達がほしいと願いつつ、それも最初は失敗してさらに落ち込む。最後には美術部に入って頑張ろうと部活体験に行こうとするも、それすらうまくいかずに泣きべそをかいてしまいます。

 そんな時に現れたのが、同じ新入生の華村さん。高校生活初日に自分の席を間違えられたことがきっかけで、彼女のことを覚えていた華村さんは、高橋さんがあまりにもドジで子供っぽいのを目の当たりにして、それが気になって放っておくことができず、最後には思い切って彼女に声をかけて助けることになります。同じ美術部志望として、彼女を部室に連れて行って、さらに友達になろうと積極的に提案する華村さん。その、高橋さんの手を引っ張って一緒に行こうとする華村さんの姿が、最後にページいっぱいに大写しとなって、これが第1話のクライマックスになっています。この、「ドジでかわいらしい高橋さんと、彼女を助けて導くしっかり者の華村さん」という構図が、とてもほほえましいものとなっていて、これがちょっとした名シーンともなっています。

 なお、この第1話の物語は、高校生マンガ・コミックイラストコンテストに投稿された4コマでも、ほぼそのままの形で見られ、このふたりの話が作品の原点だったことが分かります。そして、このふたりが美術部に入り、そこで個性的な部員と出会うことで、連載ならではのさらに広がりのある物語が展開されることになります。


・さらに個性的な美術部の2年・3年生たち。
 高橋さんと華村さんはどちらも高校の新入生(1年生)でしたが、入った先の美術部には、3年生と2年生の先輩が2人ずついて、彼女たちが登場することでさらに賑やかなものとなります。

 最初に登場するのは、3年生の部長の小早川成。3年生なのにちんまりしたちびっこで、その姿も言動も子供っぽく、しかしそれでも部長だと背伸びしているところがすごくほほえましい。もうひとりの3年生は、副部長の藤乃綾子で、部長とは対照的に背の高い黒髪のたおやかな美人さんなのですが、一旦絵の作業にはまると性格が一変、服の汚れもいとわずものすごい勢いでキャンバスに筆を叩きつけて描く姿に圧倒されます(笑)。

 さらに登場するのが、2年生の先輩の霧島凛。あまりしゃべらず人見知りですぐ人の後ろに隠れるような性格なのですが、絵に関しては天才的で、そして部長とは仲が良く(?)、部長にいつもちょっかいを出していじるのが日課で、部長がそれに対して怒るのが定番の光景となっています。
 そして、遅れて最後に登場するのが、同じく2年生の犬飼ふみ。かわいいもの、特に猫が大好きで、同じ部員の女の子にもしょっちゅう抱きつき、特に同級生の凛をひたすらかわいがっています。また、凛と対照的に、明るくよくしゃべる性格で、最後に彼女が登場することで、さらに賑やかな4コマになりました。

 こうして、美術部に集まった6人がメインキャラクターなのですが、こうした美術部やあるいは美術学校が舞台の4コママンガは、先行する作品がかなり多く見られます。そうしたマンガと比べると、この「放課後アトリエといろ」は、さほど美術色・美術ネタは多くなく、彼女たち6人の和気あいあいとした高校生活が中心になっているようで、コミックス裏表紙に見られる「放課後系?美術部ライフ」という言葉がぴったり当てはまる作品になっています。


・可愛さの結晶と言える絵が素晴らしい。
 かわいさという点では、まずなんと言っても絵にそれが表れています。華々さんの絵は、柔らかくかつバランスの取れた絵柄となっていて、これがそのままマンガのイメージとなっています。コミックス1巻の帯に、「らき☆すた」の美水かがみさんがコメントを寄せていて、「見ていて羨ましくなる”可愛さ”の結晶!」と言っているのですが、まさにこれはその通りだと思います。

 元々、イラストでの活躍の方が目立っていただけに、そもそも非常に整った絵柄なのですが、マンガを描いても絵のレベルはあまり下がっておらず、その絵のかわいらしさは健在。というか、ここまでマンガが上手な方だとは思っていませんでした。イラストでの作品と同様に、とにかく女の子がかわいくて萌え死ぬ(笑)。

 ちょっと残念なのが、マンガではモノクロの原稿が中心で、イラストで見られた美しいカラーの絵を見る機会がやや少ないこと。コミックスでも、カラーはカバーの表紙と裏表紙、冒頭の数枚のピンナップイラスト程度にとどまっていて、かつてコンテストで何度も賞を取った時のような、見ごたえのあるカラーの一枚絵があまり見られないのはちょっと惜しい。出来ればそういう絵を載せるぺージがあってもいいと思ってしまいました。


・まだまだ若い新人作家によるほほえましくも楽しい4コマ。これは注目したい。
 最近の角川は、4コママンガにも力を入れているようで、「4コマnanoエース」という4コマ誌を創刊するほどで、そちらも中々好調のようです。この「放課後アトリエといろ」は、nanoエースの連載でこそありませんが、コンプティーク・コンプエースという、同じく角川が力を入れている両誌で期待の新作オリジナル4コマ、それもあの「らき☆すた」の後を継ぐ4コママンガの扱いをされているようで、注目していい作品ではないかと思います。今はまだ雑誌の外での知名度はさほど高くないものの、2誌の中ではすでに中心的な連載のひとつとなっていますし、更なる進展に期待していいのではないでしょうか。

 最近では、ウェブで活動しているイラストレーターやマンガ家が抜擢され、商業誌の仕事を任されるケースがとても多く(特にイラストレーター)、昔よりも商業誌デビューの敷居が低くなっていると思いますが、この「高校生マンガ・コミックイラストコンテスト」からのデビューとなった華々さんのケースは、その最たるものだと思います。このコンテスト、あのお絵描き交流サイトのPixivがひとつの主体となって開催されたという点でも、まさに今ならではの商業誌連載デビューだと思いました。

 しかも、連載が始まった頃の華々さんは、まだ現役の高校生だったということで、高校生が同じ高校のマンガを描くという非常に素晴らしい構図となっていました(笑)。今ではもう卒業しておられるようですが、それでもマンガ家としてはまだまだぐっと若い。各所で見られるコメントにも初々しさとやる気が感じられますし、この新人作家の活動にはこれからずっと注目していきたいと思います。


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