<ゲーム雑誌のクロスレビューの問題について>

2002・9・20

 *このページは「Ever17」を契機にゲーム雑誌のクロスレビューについて考えるの続編記事です。


 上記のページにおいて、Ever17に関するクロスレビューの問題についていろいろと書きましたが、今回はより範囲を広めて、ゲーム雑誌のクロスレビュー全体の問題について検討してみたいと思います。

 今回の例に限らず、雑誌のクロスレビューのあり方は長く問題視されてきました。今このページを読まれている皆さんでも、雑誌のクロスレビューを完全に信頼している人は多くないと思います。あえてクロスレビューを見るにしても、せいぜい参考程度に軽く読み流すか、あるいは自分なりに解釈を加えて読まれる方が多いのではないでしょうか。

 なぜそこまで雑誌のレビューが信頼できないのか。それには大きく分けて次の3つの理由があると思います。

1.レビュアーの資質の問題。
2.ゲームのプレイ方法の問題(主にプレイ時間)。
3.外部からのなんらかの「圧力」の可能性。

 では、ひとつひとつ検討してみましょう。

1.レビュアーの資質の問題。
 いまやゲームのジャンルも多岐にわたりまして、同じ「ゲーム」とはいえ作品によってデザインの方向性が全く異なることは珍しくありません。というか、むしろ当たり前です。システムがむき出しになったアクションやシューティングと、物語を読ませることに重点を置いたノベル系のゲームとではゲームの方向性がまるで違います。これらのゲームすべてを個人でカバーすることはかなり難しいのではないでしょうか。
 さらに、あるひとつのジャンルのゲームについても、本当にそのジャンルをよく知るにはかなりの経験が必要になります。「シューティング」と名の付くゲームでも、個々のゲームによって戦略性にはかなりの差がありますし、ましてRPGやシミュレーションとなるとジャンルそのものがあいまいで、本当にどんなタイプのゲームかを見極めるにはかなりの眼力が必要となるでしょう。

 したがって、そもそもひとりの人間に多くのゲームをやらせてレビューを書かせること自体が相当厳しい。いくらレビュアーが数多くのゲームをこなしたプロの書き手だとしても、その資質にはおのずと限界があります。複数のゲームをひとりで受け持つ形式のクロスレビューが信頼できないのも無理はありません。

 さらに、レビュアーにはこれら既存のジャンルに関する眼力だけでなく、新しいタイプのゲームを見抜く眼力も必要になります。真に斬新な試みをしたゲームを選び出し、それが完成度の高いゲームになっているかを見極める。これは非常に難しい仕事です。複数の、さまざまなジャンルを一度に評価しなければならないレビュアー陣に、そこまでの仕事を求めることができるでしょうか?


2.ゲームのプレイ方法の問題(主にプレイ時間)。
 これもかなり深刻な問題です。昔からレビューで問題がでるたびに「レビュアーはゲームを最後までプレイしていないんじゃないか」といった不満の声があがり続けてきました。

 これは実にもっともな不満でして、実際のところ最後までゲームをプレイしないで評価を下すケースがほとんどでしょう。RPGやシミュレーション、アドベンチャーに関してはそもそも最後までやる時間などないでしょうし、アクションやシューティングなど、比較的プレイ時間の短いゲームでも、本当にゲーム性を理解するにはかなりやりこまないといけないはずです。

 つまり、結局のところ雑誌の評価というのは「やりこんで得た最終的な評価」には程遠く、むしろ「ファーストインプレッション」に近いのではないでしょうか。まあこれでも参考程度にはなるでしょうが、しかしその程度のやりこみで厳然とした点数付けをおこなっていいものかどうか? これは雑誌の読者よりもむしろ、作った開発者の方が納得いかないんじゃないかなあ。


  3.外部からのなんらかの「圧力」の可能性。
 これが最大の問題か? ひとくちに「圧力」といっても多岐にわたりまして、はっきりと「こうだ」と言い切るのは難しいんですが、しかしゲームの評価にゲーム自体の面白さ以外の要素が入っている点は否定できません。

 わたしはゲーム業界とは縁の無い人間で、業界内部の事情はほとんど知りません(ネットで調べれば少しは入ってきますが)。しかし外から推測した限りでは、よく言われるような「メーカーからの直接的な圧力や金銭的な取引き」は存在しないような気がします。「レビュー1点で100万円」というのはいくらなんでも信用しがたい。

 むしろ現実的にあり得るのは、「レビュアー自身がゲームの前評判に左右されて、それなりの点数をつけてしまう」という事態。つまり、大作とか話題作とかいう前評判の高いゲーム、人気作の続編、一定の評価を得た移植作品などは、最初から高い点数を「つけてしまう」。逆に、さほど話題性のないゲーム、完全なる新ジャンルの新作ゲーム、マイナージャンルのゲームなどにはそれなりの点数しか「つけない」。つまり、書いているレビュアー自身が周りからの無言の圧力を勝手に想定して、それなりの点数をつけてしまうのです。

 もちろん、これらの圧力を受けにくいタイプのゲームも存在します。このタイプのゲームには、きちんとしたレビューが成されて認められたものもあるでしょう。具体的には、

・大手メーカーからの大作、話題作ではない。
・続編ではない。
・移植作品ではない。
・全くの新ジャンル、新作ではない。
・ギャルゲーのようなマニアックなマイナージャンルではない。

・・・といった要素を満たすゲームです。とはいえ、大作・話題作ではなく、続編でもなく、移植でもなく、かつ新しいジャンルでもなく、マイナーなジャンルでもないゲームとは一体全体どんなゲームなのか(笑)。とにかく、非常に狭い範囲のゲームしかきちんとした評価がなされていないような気がします。


・きちんとレビューが出来ないなら発売後にフォローをせよ。
 ・・・というわけで、あらゆる点から考えて、雑誌のレビューが正常に機能しているとは言い難いというのが正直な感想です。そもそもこのような不完全なレビュー体制において、ゲームに点数付けまで行うのはひどいのではないでしょうか。この場合、読者よりもむしろゲームを作った開発者のほうが哀れです。メーカーの方は今の雑誌レビューのあり方に納得しているんでしょうか。

 もう、このような雑誌のレビュー自体別に無くてもいいと思うんですが、それでもあえて続けるというのなら、せめて発売後にゲームのフォローをしていただきたい。

 今のゲームは、もう最初から売れるゲームと売れないゲームが決まっているような状況です。話題作や人気作は黙っていても売れるし、そういったゲームは雑誌でも盛んに取り上げられる。逆に話題性のないゲーム、マイナーなゲームはなにか「奇蹟」でも起きない限りまず売れません。ゲームの完成度、面白さとは全く無関係に売れ行きが最初から決まっているような状況です。
 で、ゲーム雑誌というのは単に通り一遍の紹介のみならず、本当にいいゲームを発掘して積極的に取り上げるという役割があるはずです。ところが、現況ではこれがほとんど成されていない。発売前の紹介記事では話題作中心(まあこれは仕方がない)、いいゲームを見極めるはずのレビュー記事ではまともな評価がされておらず、しかも発売後もなんのフォローもなし。これで本当に面白いゲームが出てくるのでしょうか。

 せめて発売後のゲームに関して、なんらかの積極的な企画はできないのか。ゲーム雑誌がいいゲームを発掘したっていう話をほとんど聞かないんですけど(わずかに電撃PSが魔人学園とガンパレを支援したくらいかな?)。果たして今のゲーム雑誌が本当にゲームをバックアップしているのか、はなはだ疑問といえるでしょう。


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