<グラフィックの向上によるゲーム性の変質について>

2005・1・5

 この記事は、「昔のゲームの方が面白かったというのは本当か?」の関連記事です。


 ゲームのグラフィックが極限まで進化して久しいですが、別にゲームのグラフィックの進化は最近始まったわけではありません。昔からひとつの流れとして確実に存在していました。そもそも、ゲームセンターのアーケードゲームなどは、「家庭用では味わえない、最先端のグラフィック技術のゲームがある」ことが長い間ひとつの「売り」だったわけですし、一方で家庭用のゲームでも、新しいハードが出るたびに、まず話題にのぼるのはグラフィックの進化です。最近になって「今のゲームはグラフィックばかりで内容が面白くない」といった意見はどこでも聞かれますが、別に最近のゲームだけがグラフィックにこだわっているわけではなく、昔からグラフィックの進化は確実に存在していました。「グラフィックばかりで面白くない」といった意見は、それこそ10年前、15年前でも全く同じ意見が常に存在していたのです。

 しかし最近では、そのようなグラフィックの向上によって、ゲームの内容そのものが変化してきた兆しがあります。今までのゲームでは、グラフィックは単に演出上の効果でした。グラフィックが綺麗であれば、同じ内容でグラフィックが劣ったゲームよりも、演出の上でより楽しむことが出来る。古いハードからの移植作品などは、まさにその効果を狙ったものだと言えます。
 しかし、今のグラフィックの進化は、単に演出上の効果に留まらず、ゲームの内容・・・いわばゲーム性の部分にも深く影響を与えています。グラフィックの向上によって、ゲームの内容そのものが変わってきた可能性があるのです。


・3Dポリゴンの影響が大きい。
 具体的には、やはり2Dのドット絵から、3Dのポリゴンに変わった影響が予想以上に大きい ものでした。
 もともと、3Dをゲームに採用した最大の理由は、「2Dでは再現できなかった『高さ』を利用した戦略性」であり、高さを駆使した3Dならではのゲーム性・戦略性が最大の売りでした。 しかし、実際に3Dでゲームを作ってみると、影響はそれに留まりませんでした。ゲームを3Dにして、ポリゴンを駆使したゲームを作ったことで、思いもかけない効果が生まれたのです。


・リアリティ・臨場感を目指したゲームの登場。
 まず、3D空間の再現によって、ゲーム内世界のリアリティ・臨場感の再現を目指したゲームが目立つようになります。
 もともと、ゲームが3D化したのは、単に戦略性の上での理由だけでなく、3Dによる立体世界を構築し、その中を自由に動けるという、演出上の理由も大きいものでした。コマンド型RPGの3D化などは、システム上では何ら意味のないものがほとんどでしたが、それでもほとんどのRPGが3Dを目指したのは、やはり『3DのRPG世界の再現をしたかった』という理由が大きいのだと思われます。
 しかし、今のゲームでは、この方向性を大幅に推し進めて、ゲーム世界のリアリティを徹底的に追求し、ゲームのシステム・戦略性よりも、むしろゲームのリアリティ・臨場感の方を重視するゲームが登場してきたのです。


・海外ゲームの影響が大きい。
 しかも、このゲームにおけるリアリティや臨場感の追求においては、日本のゲームよりも、海外のゲームの方が盛んです。
 海外のゲームといっても、現状ではその多くはアメリカのゲームであり、「海外ゲーム≒アメリカのゲーム」と言っても過言ではないのですが、とにかくそのアメリカのゲームは、リアリティや臨場感を全面に押し出したゲームが人気を集めています。
 とにかくアメリカのゲームプレイヤーは、見た目のグラフィックに引かれる傾向が非常に強く、リアルで派手な演出のゲーム、特に、自分がゲームの世界に入っていけるような臨場感溢れるゲームに人気が集まります。このあたりが日本のゲームプレイヤーとは大きく異なる点で、日本のプレイヤーが「ゲームはゲーム、リアリティがなくてもゲームとして面白ければよい」と割り切ってゲームを楽しむのとは対照的です。

 さらには、これもアメリカ人の国民性によるものなのか、とにかくアメリカのゲームには「映画」を意識したものが非常に多い。さすがは映画大好きアメリカ人だけあって、明らかに映画が元ネタになっているゲームが多く、しかも最近では、ハリウッドがゲーム製作を視野に入れ始めたこともあって、映画をそのまま原作にしたゲームが多く登場するようになり、ハリウッドの大作映画ならば、ほぼ同時期にゲーム版も発売されることが当たり前になっています。
 ちなみに、これらの「映画原作ゲーム」は、最近では日本でも発売されるようになりましたが、しかしこちらではほとんど売れていません。やはり、日本では「映画は映画、ゲームはゲーム」として割り切って考えるプレイヤーが多く、わざわざ映画原作のゲームをやろうとは思わないようです。
 そして、このような映画を意識したゲームとなると、当然のように映画なみのリアリティ・臨場感が求められるわけで、こちらの点からも海外(アメリカ)ゲームの「リアリティ・臨場感重視」の方向性は明らかです。

 このような「リアリティ・臨場感に溢れ、映画をも意識したゲーム」の例を挙げればきりがありませんが、例えばたくさんの住人が住む街全部をまるごと作ってしまった「グランド・セフト・オート」シリーズ(ちなみに、これは映画「スカーフェイス」が元ネタ)、組織の命令に従う暗殺者のミッションをゲーム化した「ヒットマン:サイレントアサシン」、戦争映画そのままの臨場感が売りのFPS「メダル・オブ・オナー」シリーズ、そしてFPSの元祖的存在とも言える「007」シリーズ(もちろん同名の映画が原作)と、最近では日本人プレイヤーの間でも評価の高いゲームが非常に多くなっています。
 さらに近年では、極限までのリアリティを追求し、実写そのままのグラフィックや効果音だったり、操作系をすさまじく複雑にしてリアルさを求めたりしたゲームまでも登場しています。例えば、つい最近発売されたFPS「Half-Life 2」では、実写ばりの超精密グラフィックに加えて、現実の物理エンジンをゲーム内で採用していて、ゲーム内の物体が現実の物理法則にしたがって動くという、まさに凄まじい凝りようです(レビュー記事)。なんでも、ゲーム内の坂道でドラム缶を転がしたら、現実と全く同じように転がっていくそうで、ゲーム内でシーソー遊びまで出来るみたいですね。この徹底的なまでのリアリティの追求は、日本のゲームではちょっと考えられないのではないでしょうか。

 そして、このように徹底的なリアリティ・臨場感重視の海外ゲームの影響を受け、日本のプレイヤーでもそのような要素を重視するプレイヤーが増加してきたのです。つまり、従来のゲームでは中心的な要素だった、ゲームにおける戦略性(頭を使ってゲームをクリアしていく楽しみ)よりも前に、まずはゲームの世界での臨場感・圧倒的なグラフィックによる没入感、そのようなものを第一に求めるプレイヤーが多くなってきたのです。
 つまり、「臨場感・リアリティ > ゲーム性・戦略性」と考える立場で、まずはゲーム世界への臨場感や没入感を優先して求めていく。ゲーム性よりも、まず「現実シミュレーター」としてのゲームを求める、と言ったところかな。そのような傾向が、日本のプレイヤー間でも顕著に見られるようになりました。
 さらには、日本のプレイヤーだけでなく、ゲーム製作側においても、グラフィック・臨場感・没入感重視のゲームが開発され始めています。例えば、少し前のゲームですが、「ICO」などはどうでしょうか。あのゲームは、ゲーム的には(システム的には)単なるミニパズルの集合体で、別に大したことはやってないような気もするんですが、それでもあれだけのプレイヤーが熱中し、極めて高い評価を得たのは、やはり精緻なグラフィックによるゲーム世界の臨場感・没入感、あるいは映画ばりのストーリー、等々の要素にあったのではないでしょうか。

 このようなことは、昔のゲームでは絶対に考えられないことで、例えば、20年も前のゲームならば、そもそもそこまでリアリティ溢れるグラフィックを作ること自体が不可能です。つまり、今のグラフィック技術の進歩が、今までにないゲームの楽しみ方を可能にしたわけで、まさに「グラフィックの向上によって、ゲームの内容そのものが変わってきた」と言えるのです。


・臨場感だけでなく、爽快感重視の傾向も。
 3Dグラフィックの採用によって加わったゲームの新要素は、何も臨場感だけではありません。ポリゴンによる爽快感も非常に大きい要素です。これは、特に3Dのアクションゲーム(対戦格闘ゲーム含む)においては非常に顕著に見られる要素で、しかもこちらは海外ゲームよりも、日本のゲームの方が盛んです。
 一番大きかったのが、やはり「真・三国無双」シリーズのヒットでしょうか。大勢の敵をガンガンなぎ倒していく爽快感は、従来のアクションゲームとは一線を画する凄まじいもので、多くのプレイヤーがこの爽快感に病みつきになりました。従来型のアクションゲームでも「デビルメイクライ」や「アヌビス ZONE OF THE ENDERS」のように、とにかくアクションの爽快感を重視したゲームが非常に多くなっています。
 確かに、アクションゲームは、そもそも爽快感が強いジャンルではあります。自由にキャラクターを動かす気持ちよさ、向かってくる敵を倒していく快感。これらの要素は、もちろん昔のアクションゲームにもありました。しかし、今の3Dポリゴンを駆使したアクションゲームは、そのような一昔前のゲームとは、爽快感のレベルがまるで違うのです。従来のアクションゲームにおいては、爽快感はあくまでゲーム内の一要素に留まっていたのですが、今の3Dアクションでは、最初から爽快感を全面に押し出しているのが特徴です。


・「ポリゴンを殴った方が気持ちいい」
 そして、この爽快感重視の方向性も、3Dポリゴンというグラフィックの進化がなければあり得なかったものです。
 なんていうか、2Dのドット絵よりも、3Dのポリゴンを殴った方がはるかに気持ちいいのです。なぜポリゴンを殴るのがこんなに気持ちいいのかは、プレイヤーたる自分でもよく分かりませんが、とにかく3Dのポリゴンというものが、より人間の破壊本能に訴えることは確かなようです。
 そして、この「3Dのポリゴンを殴る」という爽快感を全面に押し出したのが、まさに前述の「真・三国無双」シリーズであり、「デビルメイクライ」であり「アヌビス ZONE OF THE ENDERS」であり、あるいはその他多くの3Dアクションゲームも、この要素を広く打ち出しているわけです。
 特に「真・三国無双」シリーズでは、何も知らない初心者でも、とりあえずボタン連打で簡単に爽快感が味わえるようにデザインされており、従来の、ストイックに技術を磨かないと先に進めないアクションゲームとは一線を画しています。「まず何よりも、圧倒的な爽快感を楽しんでもらおう」というゲームのコンセプトが顕著に窺えるのです。とりあえず何も知らなくても爽快感は楽しめる。従来のゲームの戦略性よりも、まず先に爽快感の提供の方が優先されているわけです。
 もちろん、だからと言って「真・三国無双」にゲーム性がないわけではありません。ボス戦ではそれなりのテクニックが要求されますし、戦場全体を見据えた大局的な戦略もやがては要求されます(何も考えないで戦っていると、自分の本陣が陥落することもあります)。それでも物足りないならマニア向けに難易度を高く設定することも出来ます。
 しかし、そのようなゲーム性の存在はあるにしても、それ以上に、まず第一のゲームの「売り」として、爽快感を全面に押し出していることは明らかで、実際にその圧倒的な爽快感が、「真・三国無双」最大の人気の理由であることは疑いようがありません。プレイヤー側でも、まずその爽快感にひきつけられた人が大半で、やはりここでも、臨場感の時と同様に、爽快感の方をゲーム性よりも重視する傾向が感じられるのです。
 すなわち、ここでも「爽快感 > ゲーム性・戦略性」と考える立場が顕著に見られるわけで、まさに「グラフィックの向上によって、ゲームの内容そのものが変わってきた」と言えるのです。


・「臨場感」や「爽快感」も「ゲーム性」の一種と言えるのではないか。
 ここまで、わたしは「爽快感」「臨場感」等の要素を、従来の「ゲーム性」(ゲームにおける戦略性、頭を使ってクリアを目指す知的遊戯としての要素)とは区別して記述してきました。従来のゲーム性よりも、まずは臨場感や爽快感が重視されるようになった・・・そう主張してきました。
 しかし、視点を変えれば、実はこの「臨場感」「爽快感」というものも、実は「ゲーム性」の一種なのかもしれません。確かに、これらの要素は、従来の「ゲーム性」(知的遊戯としての要素)とは異なります。だが、今や多くのプレイヤーが、これらの「臨場感」「爽快感」を求めており、つまりは「ゲームに求められる要素」という点において、これらの要素もまた「ゲーム性」だと言えるのではないでしょうか。
 そもそも、「ゲーム性」という言葉はかなりあいまいな言葉です。一体どういうものを「ゲーム性」といっているのか、人によって異なっており、判然としません。今、ゲームにまず臨場感(or爽快感)を求める人にとっては、ゲームの最も重要な要素はまさに臨場感(爽快感)なのであって、すなわち、その人にとっては「ゲーム性=臨場感(爽快感)」だと言えるのではないでしょうか。
 すなわち、進化した3Dグラフィックの採用によって、「ゲーム性」と呼ばれる物自体も変わっているのです。

 「グラフィックの向上・進化によって、『ゲーム性』そのものが変質した」 そう考えるのがより適切ではないかと思います。


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