<なぜKOFは今まで人気があったのか?>

2003・10・22

 10月発売の「ゲーム批評」において、対戦格闘ゲームの「KOF(キングオブファイターズ)」シリーズ及び「SVC CHAOS」についてのコラムが掲載されておりました。で、そのコラムの中で「これは明らかに違うだろ」という部分があったので、ちょっとこのページで検証して見ます。

 そのコラムは、全体的に「KOF」シリーズと「SVC CHAOS」を徹底的にけなしまくる内容でした(笑)。
 まず、そのコラムの筆者は、「SVC CHAOS」に標的を定め、「ゲーセンに登場して数週間のうちにゲーマーからクソゲーと認定された完全なる駄作」と記述しています。
 そして、わたし自身もこの意見には大賛成です(笑)。このゲームはどう考えても面白くありません。全体的に対戦格闘としての基本部分(操作性や爽快感)が劣る上に、CPU戦は超反応モードでやる気半減、対戦も待ちプレイばかりが強くて到底遊べるゲームではありませんでした。この点に関してはわたしも異論はありません。

 次に筆者は「KOF」シリーズに話を移し、「『SVC CHAOS』は 『KOF』シリーズとほとんど変わらない、実質的なシリーズ作だ」と断言しています。
 この点もわたしは賛成です。確かに「SVC CHAOS」は「カプコンキャラクターも参戦している」「チーム制ではない」等の数点においてはKOFシリーズとは違いますが、ゲームの基本システムに関しては、KOFのそれをベースにしていることは明らかで、「KOFの続編」とまでは言えなくとも「KOFシリーズの流れを汲む作品」であることは間違いありません。実質的なシリーズ作、と言い切ってもよいでしょう。この点でも異論はありません。

 さらに筆者は「『SVC CHAOS』は『KOF』シリーズからキャラを変えて、ちょっとした追加システムを加えただけの作品にすぎない」と断言し、さらに論を進めて「実はここ数年の『KOF』シリーズもその路線で、毎年新しいキャラと少量の追加システムを加えていくだけで、グラフィック的にもシステム的にもなんら新鮮味のない凡作シリーズ」とも記述しています。
 わたしはこの意見にも賛成です。「KOF」は10年近く続いてきたシリーズですが、システム的に斬新な変更が見られたのは前半の数年だけで、ここ5年ほどはまるで変化がありません。グラフィック的にはもはや前世代の産物ですし、それ以上に基本システムがまるで変わっていません。「新作というより、単なるマイナーチェンジ」と考えたほうがいいくらいです。この点でもやはり異論はありません。

 問題はその次の記述です。
 筆者はここで「では、なぜこのような面白みのないゲームが今まで続いてきたのか?」という疑問を提示し、その答えとして、
「このシリーズは同人系のキャラクターマニアの人気が高く、彼らによって今までゲームセンターでの人気が維持されてきた。いまやコミケの人口は40万人。彼らはキャラクターさえよければいくらでもプレイするので、それでゲーセンのインカムが保たれてきた」
と記述しているのです。
 わたしはこの意見には大変な疑問でして、結論から言えば「そんなわけない」です。
 確かにKOFシリーズはキャラクター人気が高く、実際にキャラマニアなプレイヤーもたくさんいるでしょう。しかし、それだけでゲームの人気が保たれたとするのはあまりに浅薄な意見です。
 実際にゲーセンに行ってみれば誰でも分かりますが、KOFシリーズをプレイしている人々の多くがキャラマニアとは到底思えません。ほとんどはごく普通の格闘ゲーマーに見えます。というか、ゲーセンのほかのゲームをプレイしている人々とまったく同じに見えます。店舗によってはキャラマニアなプレイヤーが集まる所もあるのでしょうが、ほとんどのゲームセンターではそのようなことはなく、彼らが普通のゲーマーであることは一目瞭然です。「キャラマニアによってインカム(収入)が維持されている」という意見は明らかに的外れでしょう。
 キャラマニアの立場から考えても疑問です。そもそもキャラマニアがそこまでゲームそのものをプレイしないでしょう。まあ、中にはゲーマー顔負けのやりこみを見せるプレイヤーもいますが・・・。また、キャラマニアの人口もそこまで多いとは思えません。いくらコミケの人口が40万といっても、それ全員がKOFのファンというわけでもない。全国のゲームセンターでインカムを維持するほどの人数がいるとも思えません。さらには、KOFシリーズの同人系キャラ人気が既に全盛期を過ぎており、ここ数年は昔ほどの勢いがない点も挙げられます。彼らが今までKOFシリーズを維持してきた、と言うには苦しい。

 というわけで、「同人系キャラマニアによってKOFのインカムが維持されてきた」という記述は明らかに間違いだと思います。おそらく、この筆者は「KOFのキャラ人気が高い」という事実だけで推測してこの記事を書いているか、さもなくばたまたまキャラマニアが集まるゲームセンターに行っただけか、どちらかでしょう。


 さて、本題はここからです。
 以上のように「KOFのインカム=同人系キャラマニア」という意見は明らかに誤りです。KOFをプレイしているのは、ほとんどが他の格闘ゲームと変わらない普通のゲーマーです。しかし、となるとここで新たな疑問が生じます。つまり、

 「では、なぜ彼らゲーマーが、KOFシリーズという面白みのないゲームを延々とプレイしているのか?」

 ゲーム性に興味の無いキャラマニアなら話は分かります。しかし、彼らはゲームを良く知っている(はずの)ゲーマーです。なぜ、ゲームの玄人であるゲーマーが、決して面白いとはいえないKOFというシリーズを毎回プレイし続けるのか?
 (*そもそも前述のコラムの筆者も、「ゲームを良く知っているゲーマーが、KOFのような面白みのないゲームをプレイするはずがない。ということは、実際にゲームをプレイしているのはキャラクターにしか興味のないキャラマニアだろう」と勝手な推測をたててコラムを起こしたのだと思われます。)

 これには様々な要因が考えられますが、その中でも最大の要因として、
 「ゲーセンのゲーマーに、実は保守的な人間が多い」
という点が挙げられます。
 ゲームに新しいシステム・斬新なゲーム性を求めるのもゲーマーですが、その一方で安定して遊べるゲームを求めるのもゲーマーなのです。新しいゲームというのは、もちろん新鮮な面白さを与えてくれるものですが、一方でそのゲームを理解するまでにはかなりの苦労を伴います。将棋や囲碁のルールを覚える時の苦労を想像してください。基本的なルールで覚えることが多く、さらにはゲームの定石を覚えてまともな対戦ができるようになるまではかなりの労力と時間が必要でしょう。
 逆に、既にやり方を覚えているゲームをプレイするのは簡単です。最近のKOFは確かに新鮮味に乏しいゲームですが、それは一方では「シリーズ共通のシステムでとっつきやすく、安定して遊べる」ということでもあります。
 最近ではゲーセンのビデオゲーム自体が完全に衰退し、そもそも新作ゲームが非常に少ない状態が何年も続いています。その中で「毎年安定して遊べるKOFシリーズ」の存在は大きく、ゲーセンのゲーマーが「とりあえず今年もやるか」という感覚でプレイし続けるのも無理はありません。安定して遊べるゲームだから、とりあえず無条件でプレイするというわけです。

 さらには、やはり格闘ゲームならば対戦相手を求める必要がありますが、その点でも安定してプレイヤーがつくKOFシリーズが最も対戦相手を得やすい。「毎回安定して遊べて、毎回対戦相手もいる」。KOFシリーズがインカムを稼ぎ続ける理由はここにあると思います。

 しかし、これはよく考えると大変な問題です。そもそも面白くないゲームが売れていいわけがありません。KOFが売れる一方で、ほかの面白いゲームが見過ごされてきた可能性があります。


・「ギルティギアゼクス」と「KOF2000」の関係。
 もう3年前の話になりますが、このふたつのゲームがほとんど同時にゲーセンに登場したことがあります。どちらも人気シリーズですが、その完成度・ゲームの面白さは全然違います。
 「ギルティギアゼクス」を初めとするギルティシリーズが、「2D格闘の最高峰」という最大級の評価を得ているのに対して、KOF2000はとんでもない超クソゲー(笑)。まともに遊べるゲームではありません。2つのゲームの間にはまさに天と地の差があります。
 となると、「ゼクス」の方が一方的に人気を得て、「KOF」の方は不人気全開となるのが当然のはずですが、当時のゲーセンでは必ずしもそうではありませんでした。むしろ、とっつきやすいKOFの方を優先して遊ぶプレイヤーが実に多かったのです。それどころか、全く新しい未知のゲームであるゼクスを警戒して遊ぼうともせず、始めからKOFしかやらないというプレイヤーまで多数存在していました。これでは話になりません。

 しかし「ギルティギアゼクス」は幸運でした。とにかく「ゼクス」の面白さがずば抜けていて、かつ「KOF2000」があまりにもつまらなすぎて、まるで勝負にならなかったからです。大体この2つのゲームを比較すれば、

 ギルティギアゼクス>>>>>>>>>>∞>>>>>>>>>>KOF2000

であることは間違いない。ここまで明らかな差がつけば、いくら保守的なゲーマーでもやがて心が動きます。新しいゲームに積極的に取り組む、心あるゲーマーならなおさらでしょう。
 ちなみに、わたしが通っているゲーセンでは、「KOF2000」はゲーセンに来てわずか3日で常連全員がプレイを放棄(笑)。そして全員がゼクスのみを集中してプレイし、KOFには誰一人として寄り付かなくなりました。まあ、心あるゲーマーなら当然の反応でしょう。皆さんのゲームセンターではどうでしたか?

 しかし、ゼクスが幸運だった一方で、不幸にもKOFの影で売れずに消えていった対戦格闘ゲームがなかったでしょうか? どうもですね、ゲーセンではKOFのような定番の格闘ゲームだけが安定して売れて、新興のメーカーが作ったゲームはプレイされずに消えるケースが多かったような気がするのですよ。確かに新しいメーカーのゲームには完成度の低いゲームも多かったですが、その一方で不運にもあまりプレイされないだけで消えたゲームも多かったのではないか? わたしは、そのようなゲームが「あった」と思っています。なにしろあの「ゼクス」ですら最初はプレイされなかったくらいですから、生半可な完成度のゲームでは定番のKOFには太刀打ちできなかったと思われます。

 つまり、KOFシリーズは、自身が大して面白くないゲームであるばかりか、ほかに心あるゲームの存在すら否定してしまうという、非常に困った存在といえます。しかもそのようなゲームが延々と続いてきたわけですから、まさにその存在はゲームセンターの悪性腫瘍といえます。
 なにかヒット作が出ると、そのあとに安定した人気が期待できる続編が延々と出てきてしまうのがゲーム業界の常ですが、この「KOF」というシリーズはその中でも最も悪質な、ゲーム業界の暗黒面を象徴する続編シリーズではないでしょうか?

 そして本当に悪いのは、そのようなゲームを「安定して遊べる」という理由だけで延々とプレイする保守的なプレイヤーたちです。このようなプレイヤー層が、いまのアーケードゲームの衰退を招いた一因であることは間違いないでしょう。そして今でも、いまだにSVC CHAOSをやっているような人間は大勢います。マリアナ海溝よりも深く反省しなさい。


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