<音楽系ゲームがゲームセンターを滅ぼす>

2001・6・28

 実はこの論を最初に書いたのは今から2年前になります。たしか99年の5月ごろ・・・DDR2ndが大人気でギターフリークス・ドラムマニアが出たころだったかな。あのころとはかなり状況が違いますが、多分いまでも通用する話だと思うのでまあ聞いてください。

 ゲームセンターが下火になってからもう何年もたちます。最初におかしくなったのは95年だったかな。以後リリースされるビデオゲームは質・量ともに低下の一途をたどってきました。そんな時に救世主のごとく現れたのがリズムサウンド系のゲーム、いわゆる「音楽系ゲーム」です。その先駆けとなった「ビートマニア」の発売が97年末。当初はまったく話題になりませんでしたが、まずゲーマー層の人気を集めてそれが一般層にも広がり、相当の人気を集めました。以後バージョンアップ版である「ビートマニア2ndMIX」「3rdMIX」さらにダンスにまでジャンルを広げたDDRこと「ダンスダンスレボリューション」等は空前の大人気となり、そして以降の音楽系ゲームの発展については皆さんご存じのはずです。
 実際冷えきっていたゲームセンターがこれで一気に活気づいてきた点は大きく、最初のうちはわたしも素直に歓迎していたのですが、どうも最近ですね・・、素直に喜べない、むしろゲームセンターにとって弊害となっている点がひどく目立ってきたのですよ。今からそのことで思い付く点をすべて列挙してみます。

(1)筐体の値段が高い。
 ちょっとビデオゲームに詳しい人なら誰でも知っていることですが、ゲームセンターのゲームには「基盤売り」のゲームと「筐体売り」のゲームがあります。「基盤売り」というのは筐体の中の基盤を取り替えることで新作として機能するもの。「筐体売り」というのは筐体そのものを新しく仕入れて新作とするもの。ほとんどのビデオゲームは基盤売りです。筐体売りのビデオゲームというのは一部の大型筐体を必要とするもの・・・例をあげればガンシューティングなんかがその代表です。音楽系ゲームはもちろん「筐体売り」です。
 で、問題なのは「筐体売り」のゲームは「基盤売り」のゲームにくらべてはるかに値段が高いこと。新作ゲームの基盤が一枚10万円台〜20万円台なのに対して、筐体一台の値段はその10倍くらい。「ビートマニア」が96万円、「DDR」が148万円、「ビートマニア2DX」が196万円だったかな? ゲームセンターとしては当然この仕入れ値以上の売り上げを出さなければ収入になりません。つまり筐体売りのゲームというのは仕入れる段階でゲームセンターに相当な負担、ないしはリスクを背負わせているわけです。これはもともと資金力の少ない、中小のゲームセンターにとっては大問題です。
 もちろんこのことは音楽系ゲーム自体に罪があるわけではありません。音楽系ゲームの性質上、大型筐体化はやむを得ない。ただ結果的に音楽系ゲームの流行がゲームセンターに大きな負担をかけていることは事実です。

(2)筐体が場所をとる。
 これは(1)とも関係しているんですが。大型筐体というのは当然場所をとります。これがまたゲームセンターにとって大きな負担となります。たとえば大型筐体一台で通常のビデオゲームの筐体二台分のスペースをとった場合、その一台で二台分のインカム(収入)がなければ割に合いません。つまり、大型筐体というのはその値段だけでなく、そのスペースの上でも相当な負担となるわけです。まして規模の小さい中小のゲームセンターの場合、置くだけでも大変です。

(3)ゲーム性自体が変わらない。
 リズムサウンド系のゲームってどれをとってもやってることは同じというのは偏見ですかね? 楽器が変わっているだけでやってることは変わらないでしょ、はっきりいって。まして2nd,3rdといったバージョンアップの場合、曲が変わっているだけだし。このように目新しい要素のないゲームの場合、一定の固定ファンはつくものの、通例少しずつ人気は下がっていきます。そりゃそうでしょう、だれだって同じことやってりゃ飽きますよ。つまり、高い金をだして音楽系ゲームを次々に仕入れても、最初ほどの人気はもう得られないということ。結局次々にリリースされる音楽系ゲームというのは「二匹目、三匹目のドジョウ」でしかないと思います。

(4)難易度の急激な上昇。
 これが大問題。(3)とも大いに関係しているんですが、ゲーム性はほとんど変わらないのに難易度だけが急激に上がっている。「ビートマニア」も2ndから3rdにかけてかなり難易度があがりましたが、それ以上に顕著なのが「DDR」で、初代から2ndにかけての難易度の上がり方がシャレになりません。一般人が手のつけられない難易度になっています。このようにゲーム性が変わらないのに難易度だけが上昇すると何が起こるのか。それはゲームのマニア化です。つまり一部のマニアだけのゲームになってしまってそのジャンル自体が衰退します。音楽系ゲームはゲームにあまり関心のない一般層を引き込んだ功績は大きいのですが、これではその一般層が離れるのもやむなしでしょう。・・・しかしねえ、このマニア化によるジャンルの衰退っていうのはアーケードでは今に始まったことではないんですよ。シューティングゲームも、対戦格闘ゲームも皆この道をたどって衰退していったのです。それを今また繰り返すというのもアーケードの宿命か。

(5)人気が他のゲームに波及しない。
 もともと対戦格闘ブームの時でも、格闘ゲーム以外をやらないプレイヤーが多い、ということが問題になったんですが、今回の音楽系ゲームに関してはこれがさらにひどい。ゲームセンターに来て、音ゲーしかやらないという人は確実に存在します。というか、大多数。そもそも音楽系ゲームというのは普段ゲームをやらない一般層を引き込んだわけで、それらの一般層というのはゲームに関してはせいぜいがライトユーザー、もしくは完全な非ゲーマー。で、そいつらはゲームセンターにきても他のビデオゲームには見向きもしません。当たり前か。でもこれゲームセンターにとっては大変な痛手なんですよ。本来ゲームセンターというのはいろいろなジャンルのゲームを手軽に1コインでプレイできるのが大きな特長で、いろんなゲームをプレイしてもらうことを前提に成り立っています。それが音楽系ゲームに関しては期待できない。結局ジャンル自体が閉塞しているわけです、いろんな意味で。

(6)メーカーが他のゲームを作らなくなった。
 単純に98年のAMショーと99年のAMショーを比較してですね、98年のAMショーでは10近くの格闘ゲームが出品されたのに対して、一年後の99年にはたった1つしか出品されませんでした。その代わりに大量の音楽系ゲームが出品されてるんですけれども。まったくメーカーの変わり身のはやさにはあきれるばかりですな。しかしこれは従来のビデオゲーム中心の経営をしてきたゲームセンターにとっては死活問題です。実際わたしが働いているゲームセンターでも一年前にはどの格闘ゲームをいれるか迷うほどだったのに今では入れるゲームが無いという有り様。これではビデオゲーム中心のゲームセンターというものは近いうちに成り立たなくなるでしょう。


 まあ、こんなところかな? いろいろ書いてきましたけど、これだけの悪条件が重なるとゲームセンターにとってはあまりにつらい。実際、規模の小さい地方型のビデオゲーム中心のゲームセンターは四苦八苦しているはずです。特にメーカーがビデオゲームを出さなくなったのが最大の痛手でしょう。この先中小のゲームセンターがやっていけるのかどうか。これはわたしの予想ですが、今から10年後、下手をすれば5年後には地方型の中小のゲームセンターは完全に絶滅します。残るのは都会のアミューズメントパーク型の大型ゲームセンターだけでしょう。


<追記>
 最初に書いた通り、この文章は今から約2年前、99年5月頃に書いたものです。あの当時わたしはゲームセンターでバイトをしていました。ここで挙げた音楽系ゲームの問題点というのはすべて実体験に基づいています。その店の店長ともよくゲームについて話をしたんですが、上にあげた問題点はことごとく店長自身が口にして嘆いていたことです。ある意味わたしはそれを受け売りしているに過ぎません。
 この当時からすでにあちこちのゲームセンターが毎月のように潰れていたんですが、あれから2年たってもうわたしの回りでも目に見えてきました。わたしはいま地方に住んでいますが、どこのゲームセンターも崩壊寸前。さらにショックを受けたのは、最近かつて住んでいた京都にいった時、小さいとはいえかつてはゲームマニアで活気に満ちていたゲームセンターが軒並み潰れていたこと。もはや京都のような都会でも、ビデオゲーム中心の本当にゲームが好きな層が集まるゲームセンターがやっていけない。もう来るところまで来たかな、という気がします。下手をすれば5年後に中小のゲームセンターは絶滅する、と2年前に書きましたが本当に現実味を帯びてきたなあ。まあこういうことは大都会で大きなゲームセンターにしか行かない人には分からないでしょう。


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