<Ever17 -the out of infinity->

2002・9・4

 うー。これは面白いです。自分は根っからのシステム派のプレイヤーでして、こういったノベル系のゲームはあまり積極的にはやらないんですが、しかしこのゲームはノベルゲームとして非常に出来がよかったのであえてコンテンツを作ってみました。

 システム的には、本当にただのノベルゲーム(サウンドノベル)です。それも「街」とか「YU−NO」とか「Lの季節」のようにゲーム性を重視したスタイルではなく、純粋にノベル(小説)を読ませることのみを重視したごく一般的なスタイルで、「ゲーム」とはいえゲーム性らしきものは非常に少ない。
 ここで、わたしのようなシステム派のゲーマーがそもそも「なぜそのようなゲームを買ったのか」という問題に直面しますが、それは、何ていうか直感です。雑誌やホームページの紹介を見て「なんか面白そうだ」と直感したから。わたしはたまにこのような直感(直観?)に見舞われることがあり、それで買ったゲームは大抵あたりです(ここで紹介しているゲームも直感で買ったものは多い)。・・・それと、前作にあたる「Never7」が面白かったというのもありますが。

 さて、このようなノベル系のゲームというのは、基本がノベル(小説)ですから、あえてゲーム性を付加する必要はなく、純粋にノベルを読ませるスタイルをとっても構わないと考えます。したがって、このようなスタイルのゲームに対して「ゲーム性がないからつまらない」という評価は当てはまりません。いまだにゲーム雑誌のレビューでこのような記述がよくみられますが、これは筋違いではないかと思います。この「Ever17」もそのようなノベル性重視のごく一般的なスタイルのゲームで、その評価はまずなによりも「ノベル(小説)として楽しめるか」という一点に尽きます。

 そして、このゲームに関してはそのノベルとしての完成度が高い。つまり、一般的な小説と同様のレベルで、テーマやストーリーが作りこまれているということ。まあ、あるストーリーがいいかどうかというのは個人の感性に多分に影響されますし(いかに夏目漱石の作品の評価が高くても、その一方で「夏目漱石は嫌いだ、面白くない」というひとは絶対にいる)、このゲームのストーリーが面白くないという人ももちろんいるでしょう。しかし一方で、どう低くみても相当な作りこみがなされているのもまた事実。個人的にはサスペンス、ミステリー的な「知性」に訴える謎解きの楽しみと、テーマ性を追求し「感性」に訴える人間ドラマと、その両方が存分に楽しめるのがよかった。さらには設定的に近未来のSF的要素や緊迫した脱出劇の要素も多分に入っていて、エンターテインメントの要素も多くとても楽しめる。一方でSFやミステリー系が好きな読者から、他方では本格的な人間ドラマを好む読者まで幅広く楽しめるのではないかと思います(誉めすぎか?)。

 それに加えて、この手の「選択肢つき小説」独特のパラレルストーリーのギミックもよく出来ている。ひとつのルートをクリアするごとに謎が解けていき、すべてのルートをたどることで物語の全貌が見えるというギミック・・・これは今やこの手のノベルゲームでは定番ですが、この「Ever17」ではこのギミックにものすごい作りこみがなされている。一部にこの手のノベルゲームの表現技法を逆手にとったトリックもあり、とても面白い。ゲームソフトならではの手法を満喫できます。

 ノベルの質だけでなく、量的な作りこみもいい。いくらストーリーがよくても「6800円で買って10時間で終わり」というのではあまりにコストパフォーマンスが悪い。その点、このゲームでは普通にプレイすれば30〜40時間、かなり急いでプレイしても25時間はかかるでしょう。今回わたしは「既読スキップを全く使わずに」最後までプレイしましたが、60時間近くかかりました。これだけのボリュームがあればまず合格でしょう。ただのノベルを読むのに数千円もかかるのだから、最低でもこれくらいのコストパフォーマンスは欲しいです(個人的に今回の「かまいたちの夜2」は20時間で終わるため、あまりにコストパフォーマンスが低すぎる)。

 それともうひとつ、このゲームはいわゆる「ギャルゲー」と呼ばれるジャンルだと考えて構わないんですが、いわゆる「美少女を売りにしてそれ以外の要素をおざなりにした」質の悪いギャルゲーではなく、きちんと「まじめに」サウンドノベルしている点が大きい。わたしのプレイした印象では、どちらかといえばこれは本格的なノベルを意識していて、ギャルゲー的な要素を意図的に低く押さえている印象がある。これも非常に好印象。ギャルゲー的な恋愛要素が非常に薄く、キャラクターデザインが中性的で、さらに男キャラがやたらかっこよかったり(笑)、全体的に女性プレイヤーまで視野に入れたような部分が多いような・・・。まあ、女性プレイヤー云々はともかく、この内容なら万人に楽しめると思います。
 というかですね、どうもこのゲームは「一応」ギャルゲーとしての体裁を採っているけれども、実は作品のベクトルが全く別のところを向いているような気がします。「実は本格的なノベルを作りたいんだけど、諸事情により仕方なくギャルゲーにしました」みたいな。たまにあるんですよ、こういうゲームが。(「Lの季節」あたりはまさにそう。「久遠の絆」もこのタイプかな。)まあ、KIDのゲームも全体的にそんな感じですが、この「Ever17」はその最たるものではないかと。

 あとは・・・文章を読む上でのインターフェイスが充実している点もいい。この手のゲームが一大ジャンルをなしている昨今、いまだに基本的なインターフェイスが充実していないソフトが多いんですが、この作品の場合繰り返しプレイを快適にするあらゆるインターフェイスが取り入れられていてとても助かりました。まあ、このゲームに限らずKIDの作品はこの点は非常に充実していますが。


 ざっとこんなところでしょうか。全体的に「ノベルを読ませる」という点ではあらゆる点が充実していて、特に欠点が見当たりません。非常にいい作品です。もちろん、これはノベル(小説)なんで、ゲームにシステム性、戦略性、知的遊戯としての楽しみを求める人にはやはりお勧めできません。「斑鳩」でもやりなさい(笑)。逆に、ゲームにある程度ストーリーを求める人、とくに字で書かれた小説に興味のある人には是非プレイしていただきたい。ストーリー志向の作品なら今年度のまさにベストゲーム。「かまいたちの夜2」よりも絶対こっちのほうが面白いと思うんだけどなあ。


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