<Missing Blue(ミッシングブルー)>

2002・10・7

*このページを読む前に、前作に当たる「Lの季節」のレビューを読んでおくことをお勧めします。


 自称「システム派のゲームプレイヤー」で通していて(あくまで自称)、ノベル系のゲームを積極的にやらないわたしが、例外的にもっともやりこんだゲームがこれです。通例この手のノベルゲームは、とにかくストーリー(シナリオ)面での評価ばかりが目立ちますが、このゲームはストーリーの質的な完成度だけでなく、それ以上に圧倒される量的な作りこみ、そして何といっても「ゲームとしてやりこめる」という点が素晴らしいものでした。

 つい最近、「Ever17」という非常によくできたノベルゲームをプレイしまして、これはこれで非常に面白く、プレイ後しばらく興奮状態にあったんですが(笑)、こうして日を置いて冷静になって考えてみますと、やはりゲームの総合力では「Missing Blue」の方が上ではないかと改めて思いあたりました。コンシューマーのノベルゲームでは間違いなくトップクラス。というかPCのゲームだってこれを超えるものはないでしょう。

 さて、いよいよゲーム内容の説明に入ります。

 このゲームをプレイして、まず誰もが驚くのが「量的な作りこみ」でしょう。膨大なテキスト量だけでもすさまじいんですが、それ以上に膨大な選択肢と分岐の量が従来のノベルゲームの常識を超えています。
 元々、この手のノベルゲームの元祖として登場したサウンドノベル「弟切草」は、その大量に用意された選択肢と分岐によるやりこみ要素が大きな特徴でした。何回プレイしてもやり尽くした感じがしないほどの選択肢の作りこみが「弟切草」の最大の魅力のひとつだったと思います。
 ところが、この元祖ノベルゲームともいえる「弟切草」を頂点として、これ以降のノベルゲームではこのような作りこみは見られなくなります。ゲームとしてのやりこみよりもまずストーリーを見せることが重視されたのか、選択肢や分岐はどんどん少なくなっていき、ゲームとしてのやりこみ要素は次第に薄れていきます。

 「Missing Blue」は、まるでこの「弟切草」に先祖がえりしたかのようなすさまじい作りこみが圧倒的です。というか、完全に「弟切草」を超えている! このゲーム最大の特徴として、ゲーム内分岐をビジュアル化した「3Dマップ」というフィーチャーがあります。が、まるでジャングルジムと化し、先の方は霞がかかっている壮大なマップを見て、まずあきれます(笑)。いや、ゲームとして面白いとか面白くないとかいう以前にですね、「よくここまで作る気になったな」とあきれ果てるわけです。分岐ブロック数が3300以上というのは尋常ではない。「弟切草」を遥かに凌駕する作りこみです。
 もちろん、テキストの量も圧倒的。なんでもこのゲームの台本は電話帳なみの厚さで、それがダンボールに何本も放りこまれているそうですよ。一回のプレイ時間も非常に長く、しかもそういったシナリオが何本も用意されているのだからボリューム的には全く申し分ない。

 そもそも、このゲームで達成率100%を目指すとなると、一体どのくらいのプレイ時間がかかるのか。まず個々のシナリオ量の多さに加えて、膨大な分岐ブロックをすべて埋めていく作業を続けていくわけで20時間、30時間では絶対に終わりません。元々攻略本がないとまともにプレイできないほど難易度の高いゲームですが、その攻略本と首っ引きになってプレイしても大体100〜150時間はかかります。いや、100時間というのはかなり急いでプレイしての話で、普通にストーリーを楽しんでプレイするとなるとどうしても150時間はかかります。人によってはもっとかかるでしょう。ちなみに攻略本がないと達成率100%はほとんど無理でしょう。

 実際問題として、定価6800円でこれだけ遊べれば文句なしでしょう。というか、普通のRPGよりもはるかに遊べます。このゲームを基準に考えると、10時間くらいで終わって8800円とかいうPCのゲームはサギです(笑)。


 そして、「量的な作りこみ」に加えてこのゲームの最も優れたポイント。それは「ゲームとして遊べる」という点につきます。

 前作にあたる「Lの季節」に比べると、ややシステム上の特徴が薄れているような気がするのが残念ですが、それでも「分岐の条件を推測して3Dマップを埋めていく」という作業の楽しさは健在です。テキストから分岐の条件を推測して、見事にマップが埋まった時の快感は相当なものです。実際にはこの分岐が大量かつ複雑すぎて、攻略本なしでは達成率100%はおろかまともにエンディングも見られないくらいですが、その攻略本を見ながらの作業的なプレイでも、なおマップを埋める快感が得られるのだから大したものです。主要なエンディングをすべて見て、ほぼ物語的な興味は終わっているのに、このマップを埋める作業が楽しくて100%達成まで延々とプレイしてしまう。それだけの魅力がこのゲームにはあります。

 ただ、逆にいえば、このゲームはシナリオだけを求めるプレイヤーには向かない可能性があります。ただ単にシナリオだけを求めるなら、これだけの膨大な選択肢や、攻略本なしではまともにプレイできないほどの高い難易度は必要ないはずです。その意味では、このゲームは明らかにゲーム的な面白さ、やりこみ要素を求めるプレイヤー向けといえる内容で、そういったプレイヤーこそがこのゲームを堪能し尽くせるといえるでしょう。


 そして、ノベルゲームでは非常に重要な要素である「ストーリー(シナリオ)」について。ここまで「量的な作りこみ」「ゲーム性」といった直接ストーリーと関係ない点を評価してきましたが、では多くの人がノベルゲームに第一に求めるであろう、ストーリー、シナリオ面での面白さはどうなのか。

 実は、このシナリオ面でも驚くほど完成度が高い。というか、単純にシナリオだけを取り出して、同系のゲームとガチンコ勝負をさせても十分に勝てます。シナリオ面だけでも文句なく勝っているのです。とにかく真摯にテーマ性、ストーリー性の構築に力を注いでいる点が高く評価できます。他の同系のゲーム(ギャルゲー)と違い、地に足の付かないような不可解な設定は全く見られない。すべての登場人物の設定にストーリー上の確固たる理由があり、無駄なキャラクターというものはいない。前作「Lの季節」同様、より本格的な物語を提供しようというデザイナーの意志が感じられて実に好感が持てます。

 前作と同じく、すべてのルート、すべてのストーリーをたどることで物語の全貌が明らかになるギミックも健在。これがまた「すべてをやりこもう」というプレイ意欲をそそる一因でもあります。このようなマルチストーリーのギミックはいまやノベルゲームでは定番ですが、このトンキンハウスの一連のデジタルノベル(「Lの季節」「Missing Blue」)のそれが最も高いレベルで完成していると言えるでしょう。


 この手のノベルゲームで重要視される、演出面での作りこみもいい。キャラクターの汎用グラフィック(立ち絵)の豊富さや、50曲以上に及ぶBGMなど、ここでも「量的な作りこみ」が感じられます。もちろん、個々のグラフィックやサウンドの質も申し分ない。キャラクターデザインはなんと言っても渡辺明夫さんだし、サウンド面のクオリティも前作より明らかにパワーアップしています。


 ちょっと残念なのがインターフェイス。いや、基本的にはかなり作りこまれているんですが、インターフェイスにおいて業界最高峰とされるKIDのゲームと比べるとさすがに見劣りしてしまいます。
 まずスキップが遅い&オートスキップが出来ないという点がちょっと。スキップが遅いのはプレイ時間が150時間もかかる一因でもあります。加えてオートスキップが出来ず、ずっとボタンを押しっぱなしにしないといけないのは結構ストレスがたまります。ストーリー分岐が複雑かつ壮大で、セーブ&ロードを繰り返しながらスキップを駆使してマップを埋めていくゲームですから、やはりスキップは快適にして欲しかった。
 そう、そのセーブが8箇所しかできないというのも今思えば少ないですね。なにしろ、エンディングが52種類もあって、メインのルートだけで9つもあるんですから、これを8箇所のセーブでやりくりするのは大変です。これ以外のインターフェイスは非常によく出来ていて、中には相当な工夫が感じられるところもあるのに(×ボタンで文章送り、○ボタンで選択肢決定とか)、ただスキップとセーブに関してつめの甘さが見られるのが残念です。


・「ギャルゲーらしくないギャルゲー」最右翼作品。
 それと、このゲームは見た目は明らかにギャルゲーで、実際にそのようなプロモーションを行っているのは事実ですが、どうも作っているデザイナー本人はあまりそれを意識していないようです。
 なにしろプロデューサー自身が「ギャルゲーやエロゲーは全くやらない」という人らしく、全体的に「ギャルゲーのスタンダード」から逸脱している部分が多い。ギャルゲーを知らない人が無理矢理ギャルゲーを作るとこうなるんでしょうか(笑)。ネットをまわってレビューサイトを当たっても、「普通のサウンドノベルに近い」という意見がかなり多く、それ以前にギャルゲーマーやエロゲーマーでこのゲームをプレイしている人をあまり見かけません。つまり、ギャルゲーマー(エロゲーマー)にとっては、この「Missing Blue」というゲームは訴求対象になりえないのではないかと。ギャルゲーなのにギャルゲーらしくない、非常に特異な位置にある作品といえるでしょう。


・まとめ
 まとめとして、この「Missing Blue」はとにかくゲーム全体の総合力が素晴らしい。とかくストーリー・シナリオ面での評価が先走りがちなノベルゲームにおいて、ストーリーの面白さだけでなく、遊べるゲーム性、徹底的にやり込める量的な作りこみといった「ゲーム本来の面白さ」も完備しています。
 ストーリーだけ見ても他のどのノベルゲームにも負けておらず、それに加えて量的なボリュームと遊べるゲーム性。まさに総合力ではNo.1。「ギャルゲーらしくない」という点で、ギャルゲーをやらない人にも、いやむしろギャルゲーをやらない人にこそお勧めできます。個人的には、このゲームをプレイせずにノベルゲームを語るべきではないと思いますが、どうでしょうか。


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