<俺の屍を越えてゆけ>

2001・9・15

 このゲームは、完全にシステム指向のゲームです。まず「こういうシステムのゲームを作りたい」というコンセプトがあって、あとからそれに設定(ストーリー・キャラクター・背景世界設定など)をかぶせていってゲームとして成立させています。ほぼ100%のシステム派ゲーマーのわたしにはまさにうってつけのゲームで、やめるきっかけがつかめないくらい徹底的にはまりました。
 こういったシステム原理主義なゲームは、実はほかにもちらほら見られるんですが(例:トライエースの作品、特に「ヴァルキリープロファイル」)、このゲームの場合それが徹底していて、ほとんどまともなストーリーすらありません。さすが桝田省治さんだけあって、このあたりのデザイン方針は本当に徹底しています。考えてみれば、桝田さんの前作品である「リンダキューブ」だってシナリオAとBにはストーリーありましたし、「ヴァルキリープロファイル」にも一応ストーリーがあるにはあった。それがこのゲームには本当にない。オープニングとエンディングと、あと中盤に大きなイベントがひとつあるだけ。すばらしい(笑)。
 システム派のわたしとしてはこれ以上ないほど満足でしたが、逆にストーリー派の人にはこのゲームは向かないかもしれませんね、ひょっとすると。なにしろゲーム中やることといえば戦闘、戦闘、また戦闘ですから。

・「俺屍」のゲームシステム
 では、肝心のゲームシステムについて説明します。このゲームは、一応RPGとは呼ばれていますが、実際には既存のRPGとはまったく異なるゲームシステムを一から作り上げています。つまり、RPGとはいってもやっていることはまるで違う。
 じゃあどんなシステムなのかといわれると・・・これを説明するのが難しいんですが(笑)、まあこれは「血統強化計画ゲーム」というか、つまりひとりのキャラクターを育てるゲームではなく、キャラクターを世代交代させて、より強い子孫を作っていくゲームです。

 まず最初に主人公を作成しますが、最初だけあってパラメータ的にはとても弱い存在です。で、それ以上に問題なのは、このキャラクターに寿命があって、時間が経つとあっという間に死んでしまうこと。当然、死ぬまでに稼げる経験値にはおのずと限界があって、いくら寿命ギリギリまで経験値を稼いでレベルアップしたところで、ゲームをクリアできるまでには強くなりません。いや、クリアするどころか、最初のボスを倒せるかどうかすらあやしい。そこで、死ぬまでに自分の子供を作って、子孫に使命を託そうということになります。
 で、まあ子供を作るわけですが、このゲームでは、主人公の一族は人と交わることができず、お相手はもっぱら神様です。割と謎な設定ですが、システムを優先してゲームを作ると、どうしてもこういう後づけの強引な設定が生まれてしまいます。で、問題なのは、その神様にランクがあって、ランクの高い神様ほど強い子供を授けてくれることです。ならば一番ランクの高い神様とさっさと最強の子供を作って、それで一目散にクリアを目指せばいいのかというと、まあそれではゲームにならないんで(笑)、ここにゲーム上の制約が存在します。すべての神様には「奉納点」というパラメータがあって、ランクの高い神様ほどこの数値が高い。そして、この奉納点は、プレイヤーの稼ぐ経験値に対応しています。つまり、敵モンスターを倒して経験値を稼ぎ、個々の神様の奉納点を越える数値を彼らに貢がないと、その神様とは交神(子作り)ができません。先ほど述べたとおり、このゲームには「寿命」という名で個々のキャラクターに制限時間が存在し、稼げる経験値に限界がありますから、当然交神できる神様が限られてきます。奉納点の高い神様ほどランクが高く、いい子供を授けてくれるわけですから、「定められた時間(寿命)の中でいかに多くの経験値を稼いで少しでもランクの高い神様と交神できるか」という点が、ゲームの鍵となります。つまり、このゲームは、「定められた寿命の中でいかに効率よく経験値を稼いで、いかに強い子孫を残すか」というゲームにほかなりません。・・・というか、ゲームをやれば誰でもすぐ理解できるんだけど、いざ説明すると本当に大変です(笑)。

・サイクルをつくろう。
 上で書いた説明だと簡単そうなシステムですが、いざプレイしてみるとこれが一筋縄ではいきません。
 ゲーム中で「1人のキャラクターの寿命は2年以内」と設定されています。まあ、実際にはほとんど2年もたず、1年半程度で寿命がきます。ゲーム中の時間は1カ月単位で進み1カ月の間にできるのは出陣(戦闘と経験値稼ぎ)か交神(子作り)のいずれかです。子作りにまるまる1カ月かかるんですよ。寿命は2年持たず、ただでさえ経験値を稼げる月数は多くないのに、交神の月は経験値を稼げません。これが第一の難関。
 さらに問題なのは、このゲームの戦闘が4人までのパーティー戦闘でして、1人だけの子供では不十分です。1人でも戦闘はできますが、やはり最大人数の4人でパーティーを組んで少しでも強い敵を倒していったほうが経験値は稼ぎやすい。つまり、1年半の寿命内で一回の子作りでは不足で、常に4人でパーティーが組めるように子作りを行う必要があります。これがとても大変です。1人のキャラクターの寿命が1年半で、しかも4人でパーティーを組むとなると大体3〜4カ月に一回は子作りをしないといけない。ますます経験値を稼げる月が減ります。
 さらにさらに問題なのは、生まれてきたばかりの子供は、最初の2カ月は戦闘に参加できません。それだけならいいのですが、その最初の2カ月に誰か指導者をつけて「訓練」させないと、成長の上で多大な不利をこうむります。指導者として子供に訓練させるキャラクターは、その月は戦闘に参加できないので、ますます戦力のやりくりに工夫が必要になります。
 つまり、このゲームは機械的に経験値を稼げばいいというものではなく、上にあげたさまざまな条件をクリアしつつ、計画性をもってプレイする必要があるのです。
 具体的には、効率よく経験値を稼ぎつつ世代交代を繰り返すために、一定のサイクルを作る必要があります。定期的に子作りを行って、現有戦力を常に最強の状態に維持しつつ1ポイントでも多く経験値を稼ぎ、それを子孫に託していく。このサイクルを辛抱強く繰り返し、少しずつ強い子孫を作っていくわけです。
 この時に特筆すべきは、このゲームのバランスの良さです。非常にバランスが練りこまれていて、自分たちよりも少しでも強い敵にはなかなか勝てません。常に自分と同等の強さの敵を求めて、ギリギリのバランスで少しでも多くの経験値を稼ぐことになります。
 この絶妙のゲームバランスのおかげで、世代交代を重ねてキャラクターが少しずつ強くなっていくことが実感できます。数世代前のご先祖様がまるで歯がたたなかった敵を、今のキャラクターなら簡単に倒すことができる。これがとてもうれしい。プレイヤーが強くなったことを本当に実感できます。

 何度でも言いますが、このゲームの素晴らしいのは、このシステムを一から作り上げていることです。わたしは、今のRPGはストーリーと戦闘システムが変わっているだけだと思うのですが、このゲームはそうではない。まあ、強い子孫をつくっていくというシステムはおそらくダービースタリオンの配合が原点にあるでしょうし、戦闘システム自体もオーソドックスなドラクエ方式です。ただ、部分部分は目新しくなくても、全体としてそれらをひとつにまとめて新しいゲームを作り上げているというところがよい。加えて徹底的に練りこまれたゲームバランス。完全に新しいものを作りながら、細かいゲームバランスまで配慮が加えられ、ひとつのゲームとしてきっちりと完成しています。細かい部分での欠点も少なく、まさに職人芸。万人にすすめられる傑作です。


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