<ソニックウイングス>

2004・10・4

 かつてのアーケードで出た縦スクロールシューティングの名作です。「ビデオシステム」という会社から92年に発売されました。
 しかし、このゲームを作ったスタッフは、この直後に「彩京」というメーカーを立ち上げ、そこでこの「ソニックウイングス」のシステムを受け継いだ一連のシューティングゲームを作っていきます。そして、この一連の「彩京シューティング」こそが、90年代のアーケードシューティングで最も人気を得た存在となります。その点で、その彩京の原点である「ソニックウイングス」というゲームの存在は、非常に重要なものと言えます。


・一見してごく普通のシューティングに見えるが・・・。
 しかし、このゲームは、パッと見ただけではごく普通のシューティングにしか見えません。アーケードゲームでは、まず最先端の技術力を駆使したグラフィックに注目が集まりますが、このゲームのグラフィックはごくごく平凡なもので、地味な印象は否めません。
 ゲームの基本システムも、極めてオーソドックスなものです。ショット+ボンバーの2ボタン制で、画面中を漂うPアイテムを取ってパワーアップ、というごく普通のボンバーシステムのパワーアップシューティング。ありきたりな、どこにでもありそうなシューティングに見えます。当時のゲーセンでも、発売当初は全く話題にも登らないゲームでした。

 ・・・だが、しかし。このゲームは、実は従来のゲームとは全く異なるコンセプトで作られていたのです。


・ステージの短さとランダム性の意味するもの。
 まず、プレイしてみて誰もが気付くのが、ひとつのステージが極端に短いことです。気持ちよくザコを撃ちつつ、あっという間にボスまで辿り着けます。ゲーム自体のプレイ時間も短く、一周クリアまでに20分ほどしかかかりません。
 さらに驚くのが、前半のステージがランダムな順番で登場することでしょう。具体的には、前半の3つのステージの登場順が完全なランダムで、どの面が一面、二面、三面に来るのか分かりません。
 単に登場順が異なるだけでなく、ステージの内容も変わってきます。同じステージでも、一面よりも三面に登場する方が難しくなっていますし、ボスの攻撃も激しくなります。

 この「ステージがランダムな順番で登場する」というシステムは、従来のシューティングでは全く考えられなかったことで、ある種衝撃的なものがありました。何が衝撃的かというと、つまり学習効果についてですね。
 それまでのシューティングでは(あるいは、シューティング以外のゲームでも)、ゲームの最初のうちは簡単で、先に進むにつれて徐々に難しくなる、というスタイルを採るのが当たり前でした。そうすることで、プレイヤーに少しずつ上達を促していく。少しずつゲームのやり方、攻略法を覚えて、うまくなっていく。これが「学習効果」です。
 しかし、このゲームのように、ステージがランダムに登場するとなると、一見して学習効果が成立していないように見えます。「毎回来るステージが違うのに、一体どうやって覚えていけばいいんだ」と思う人もいるかもしれません。当時のゲーム開発者の中にも、ソニックウイングスに触れてみて、「このゲームのシステムは、わたしたちのゲームデザインでは絶対にあり得ない」といった趣旨のコメントを残した人がいました。

 しかし、この異色とも言えるシステムが、実は大変面白かったのです。それも、シューティング初心者から上級者まで、幅広いプレイヤー層に受け入れられました。

 まず、初心者にとっては「毎回登場順が異なる」ということで、ある特定のポイントが抜けられないという、いわゆる「ハマリ」の状態が少なく、何回でも気軽に挑戦できるという利点がありました。加えて、「ひとつのステージが短い」というのも、気軽にプレイできる大きな要因となっています。1プレイの時間が短く、しかも毎回違った展開が楽しめる。この気軽さが大いに受けて、当時のシューティングとしては珍しく「ライトユーザー」たちに広く人気を集めました。

 次に、上級者にとってはどうか。彼らは、ライトユーザーとは違い、最終的にはゲームクリアを目指すわけですが、そうなると、前半で登場するランダムステージを完全に極める必要があります。つまり、どんな順番でステージが登場しても、そのすべてをきちんとクリアできるパターン作りが必要になる。つまり、上級者にとってはさらに深いやりこみを要求されるのです。
 つまり、このゲームには「すべての登場パターンの攻略法を覚えていく」という点で、実はきっちりと学習効果が存在しており、しかも従来のゲームよりさらに深いやりこみを求められる、極めて優れたシステムだったのです。


・対戦格闘ゲームの影響があったのか?
 しかし、このような「ひとつのステージが短く、しかもランダムに登場する」というシステムは、このゲームよりも先に存在していました。そう、対戦格闘ゲームです。
 実は、この「ソニックウイングス」は、対戦格闘ゲームから影響を受けて製作された可能性が高く、つまりは、「対戦格闘ゲームのシステムを、あえてシューティングに採用した」という側面があります。考えてみると、「ひとつのステージが短い」「登場するステージ(対戦相手)がランダム」なんていうのは格ゲーでは当たり前。しかし、それをあえてシューティングで採用し、シューティングに新しい風を採り入れた、という点が大きいのです。

 そして、このようなゲームスタイルは、予想通り対戦格闘ゲームのプレイヤーにも大いに受け、当時下火だったシューティングゲームの中で例外的に大ヒットします。グラディウスIIIのような、プレイ時間が長く、しかも一回死んだらすべてが終わりというようなシビアなゲームとは正反対で、まるで格闘ゲームのような感覚で気軽にプレイできる。これが大ヒットの最大の要因でしょう。


・キャラクター性の追加も大きい。
 加えてこのゲームでは、自機が選択制で、しかも個々の機体ごとに操縦士役のキャラクターを設定し、そのキャラクター性を全面に押し出した点が非常に大きい。その上、選べるキャラクター(自機)が8人で、ステージクリア後にセリフが入る演出があるなど、まさに「ストII」そのままであり、この辺りを見る限り、やはり対戦格闘(というか、ストII)のシステムの採用は明らかだな、という気がします。
 しかし、だからといって、このゲームが「ストIIのパクリ」だと言われるようなことはほとんどなく、誰もが素直にこのゲームを楽しみました。それは、やはり対戦格闘とシューティング、ということでゲームの根本が明らかに異なること、そして何よりも、「ソニックウイングス」というゲームそのものが圧倒的に面白かったからに他なりません。


・シューティングとしての完成度も極めて高い。
 そう、このゲームは、ステージのランダム性等の新要素を抜きにしても、非常に高い完成度、圧倒的な面白さを持っていたのです。
 当時のゲーメストの石井ぜんじ編集長曰く、『まず、通常ステージでの爽快感が高い。ステージがとても短く、気持ちよく敵を撃ちつつボスまでたどり着ける。そして、ボス戦はボス戦で実に熱い。一見して簡単によけられるように見えて、実は非常によけにくい弾の撃ち方がなんとも言えない。』
 そう、このゲームは「他人のプレイを後ろで見ていると、とても簡単によけられそうなのに、自分でやってみるとやたら難しい」という理不尽なゲームでもあります(笑)。

 さらには、このゲームはボンバーの使い方が実に戦略的です。このゲームは、敵に接近すればするほどサブウェポン(副武装)の連射が効き、攻撃力が高まる、という性質があるのですが、これとボンバーとを組み合わせると実に強い。
 通例、シューティングにおいて敵に接近するという行為は非常に危険ですが、思い切ってボンバーを使ってしまえば容易です。そして、ボンバーで敵の弾を消している間に、接近してサブウェポンを連射してボスに大ダメージというプレイが実に効果的です。さらには、ボスの最も激しい攻撃に合わせてボンバーを使えば、激しい攻撃をかわしていく必要もなく、さらに効果的。つまり、このゲームのボンバーは、危険な時に緊急回避的に使うものではなく、あらかじめ使う場所を決めて、計画的に使っていく方がはるかに有効なのです。このあたりの戦略性が素晴らしい。


・そして彩京シューティングへ。
 このように、最初の地味な印象とは正反対に、実に面白かったソニックウイングスは、当時の対戦格闘ブームの中で、シューティングとしては異例の大人気を獲得します。そして、このまま人気を受け継いで続編が出てくるのかと思いきや、このゲームの開発陣は独立して新メーカー「彩京」を立ち上げ、ソニックウイングスの路線を受け継いだ一連のシューティングの開発を始めます。これこそが、90年代のアーケードシューティングの主流のひとつである「彩京シューティング」であり、ここから「戦国エース」「ガンバード」「ストライカーズ1945」「ドラゴンブレイズ」「ゼロガンナー」等の数々の名作が生まれたことは言うまでもありません。
 これらのシューティングは、「ソニックウィングス」同様に、短いステージとプレイ時間・ランダムな登場順のステージという路線を維持しており、対戦格闘ゲームが主流となった90年代のゲームセンターにおいて、常に安定した人気を獲得できました。当時のゲームセンターで、主に対戦格闘ゲームをプレイしていた人でも、「対戦格闘ゲームの合間に、これらのシューティングをプレイした記憶がある」方は多いのではないでしょうか?
 ただ、これらの彩京シューティングが、いわゆる『彩京弾』(異常に速い高速弾)を採用しており、初心者にとって非常に恐ろしい存在なのに対して、この原点である「ソニックウイングス」にはその『彩京弾』が存在せず、誰でもとっつきやすい点が大きいと思われます。そして、その他の点においても、決して後発の彩京作品にも劣らない完成度をすでに所持していました。やはり、原点である「ソニックウイングス」は偉大な存在です。


(余談)
・その1
 このように、肝心の開発陣が独立して新会社を立ち上げてしまい、残されたビデオシステムとしては非常に困ってしまったわけですが、ここで残った開発者たちが、なんとか続編である「ソニックウイングス2」「同3」を作りました。しかし、どちらもやはり初代の完成度には及ばなかったと記憶しております(個人的には結構好きなんですが)。
 しかしですね、このように人気ゲームの開発陣がどこかへ去って別のシリーズを製作し、残された開発者が続編を製作するという事態は、ゲーム業界ではよく見られる現象みたいですが(テイルズ・タクティクスオウガ・ファイアーエムブレム等々)、このビデオシステムと彩京の関係は、そのような事態の最初の例だったと記憶しております(笑)。


・その2
 この「ソニックウイングス」は、のちにスーファミに移植されるんですが、その時に(先ほども名前が出ましたが)アーケードゲーム雑誌の「ゲーメスト」がこれを早くから取り上げ、読者から移植に関しての意見募集なども行なっていました。
 で、それで登場したスーファミ版なんですが、まあ当時の移植としてはかなり頑張ってはいるものの、いまいち完全とはいえない移植であり、ゲーメストの協力の成果もほとんど感じられなかったため、「ゲーメストが関わったゲームは、大抵ろくなことにならない」という通例のひとつになってしまった感がありました(笑)。


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