<タクティクスオウガ>

2001・10・3

 このゲームは、割と語り尽くされたところがあるのでいまさら・・・という気もしないでもないですが、あえて今一度ゲーム性について再考察することにさました。
 このゲームは、いわゆる「シミュレーションRPG」と呼ばれるジャンルの代表格とも呼べるゲームで、のちの同系のゲームに多大な影響をもたらしました。今の同系のゲームは、ほぼすべて何らかの形でタクティクスの影響を受けていると言ってよいでしょう。

 わたしは、この手のシミュレーションRPGをプレイする時にはいつも、「これはシミュレーションなのか、それともRPGなのか」ということを考えるのですが、このゲームに関してはRPGに近いといえるでしょう。なぜなら、経験値をいくらでも稼げるからです。経験値が無限でいくらでも自軍を強化できるのなら、それはRPGのプレイスタイルとさほど変わりません。普通のRPGでエンカウント方式の戦闘だったのがシミュレーションっぽいマップ戦闘に変わっているだけですね。
 実際のプレイスタイルも、RPGのそれに近いような気がします。本来、こういったウォーシミュレーションタイプのゲームは、マップ上の地形効果や敵味方の位置関係が重要で、ひとつひとつのマップごとに攻略パターンがまったく異なるのが普通ですが、この「タクティクス」の場合、どのマップでもたいして攻略パターンが変わらないような気がします。一旦ある程度のセオリーを覚えてしまえばそれがどのマップにも通用するというか、そんな感じです。普通のRPGの戦闘で、一旦戦い方を覚えてしまえばそれが新しい敵にもだいたい通用するのと同じように。
 こんなことを書くと、
「それは違う。タクティクスでは高さの概念を絡めた地形効果が重要で、ひとつひとつのマップで攻略パターンは全然違う。」
という反論が返ってきそうですが、わたしはそれはちょっと違うと考えています。具体的には、確かに地形による影響は受けるものの、毎回地形の利用法が同じであるため、結局基本となる攻略パターンは変わらないということです。ようするに「とりあえず高いところに登っとけ」ということです。どのマップについても。
 地形だけではありません。全体的にシミュレーションとしては意外にマップごとの独自の攻略というものが希薄で、ある一定の攻略のセオリーに従いつつ、マップごとに細部の違いに臨機応変に対応する形の攻略になると思います。このあたり、リセットを多用してまで各マップごとに厳密な攻略パターンを作りあげないといけない「ファイアーエムブレム」シリーズとは対照的です。
 さて、ではそのすべてのマップに普遍的に通用する「一定の攻略のセオリー」とは何か。実はこれこそがタクティクスオウガのゲーム性の中心であると考えます。具体的には次の3つをあげたい。

(1)強力なユニットを組み合わせたパーティー編成
 このゲームは、シミュレーションにしては珍しくユニット間のバランスがとれていません。ある一定の兵種・・・具体的には「弓」と「魔法」が強すぎますね。攻撃は弓使いと魔法使いにまかせておけばいいでしょう。あとは回復系のユニット(クレリック・プリースト)を加えれば最強パーティーの完成。まあ、実際には最初からすべてのクラスにつくことはできませんし、魔法使いも最初のうちは魔力が弱いため、レベルをあげて鍛える必要はあります。しかし、逆に言えば、最初からこのような強力なパーティー編成を目指して、クラスチェンジ&育成の計画を立てて、各ユニットを育てていくことがプレイの大きな目標と言えます。

(2)高さの概念を取り入れた戦略
 「タクティクスオウガ」の最大の特長である、高さの概念を取り入れたマップデザイン。これが戦略の上で非常に重要で、とにかく敵よりも高い位置にいた方が絶対的に有利です。そこで、パーティーの初期配置が高台の場合なら、その場所を死守して上から弓で攻撃を仕掛ける。逆に低い位置の場合なら、とにかく上に登るように努める。あるいは、高さに影響されない飛行ユニットや魔法攻撃を使う。マップ中央に高台があるなら、まず飛行ユニットを派遣して敵よりも早く制圧する。・・・などなど、どのマップでも高さの概念を取り入れた戦略は無視できません。

(3)ウェイトターンを把握した柔軟な対応
 「タクティクスオウガ」のもうひとつの特長である、ユニットの素早さによって行動順がきまる「ウェイトターン」。これを把握した戦略も外せません。例えば、次の行動が迫ってきている敵を優先的に倒して数を減らす。回復ユニットの行動順を調整して、ダメージを受けた直後にすぐ回復できるようにする。このように、ウェイトターンを把握することで戦況は一気に楽になります。

 つまり、このゲームは、「(1)まず強力なパーティーを編成し(2)高さを生かした戦略パターンを作り(3)ウェイトターンを把握して柔軟に戦略に対応する」ことでほぼあらゆるマップの攻略が可能だといえるでしょう。個々のマップごとに個別の戦略を考える必要があまりないので、意外にも簡単なゲームであると言えます。さらに、このゲームは、なにしろトレーニングやランダムマップで経験値稼ぎ放題という側面もあり、その気になればいくらでも戦力を増強できるため、ますますもって難易度は低い。いわゆるシミュレーションRPGの中ではかなり簡単な部類に入るのではないでしょうか。「とりあえずトレーニングでレベルを上げて、一定の戦略で各マップをクリアしていく」というプレイ方針は、やはりRPGのそれに近い。ウォーシミュレーションゲームで見られる「各マップごとに緻密な攻略パターンを立てて進む」という戦略上のシビアさがあまりないですね。ユニットの育成とかのRPG的な楽しみは十分味わえるんですが、反面シミュレーション的な面白さがちょっと弱い。これが「タクティクスオウガ」の欠点ではないかと。

 そう、実はこのゲームはシステム的には完璧なゲームではなく、シミュレーションゲームの観点から見ると、いろいろと問題をはらんでいるような気がするのです。今からちょっとこのゲームの問題点についても語りたいんですが、しかしこのゲームに関してはほとんどすべての人が絶賛していて、わたしのように批判的な意見を述べる人はほとんどいないんですよね。でも、まあ一人ぐらいわたしのような異端者がいてもいいでしょう(笑)。

 まず、誰でも気づく問題点として、

(1)ユニット間の相性関係が成立していない。
 という点が挙げられます。普通こういったシミュレーションの戦略性の根幹には「ユニット間の相性」があります。ユニット間に強弱関係があって、「AというユニットはBには強いがCには弱い、BはCには強いがAには弱い」といったじゃんけんのような関係が成立していて、どんなユニットにも長所と短所があり、万能なユニットはいない。これが理想です。
 ところが、この「タクティクスオウガ」では、この相性関係がまったく成立していない。とにかく弓系ユニットと魔法系ユニットが強すぎて、直接攻撃系のユニットを使うメリットがまったくない。これでは弓系と魔法系以外のユニットを使う必要性は皆無であり、すなわちこれらのユニットでパーティーを組むだけで最強のパーティーができてしまう。
 ちゃんと相性関係が成立していれば、「敵のユニット編成を見て、その都度相性のいいユニットでパーティーを組んで攻略に当たる」といった戦略性が成り立つのですが、このゲームの場合、単純に強いユニットでパーティーを組むだけですべて事足りてしまいます。さらに、

(2)敵の思考パターンが単純
 というのも大きな問題です。基本的に味方ユニットに対して一直線に近づいてきて攻撃を仕掛けるだけ。マップには戦略性に富んだ地形があるのに、敵ユニットがその地形を利用しようとしない(城壁の上から守備隊が自分から降りてきて攻撃してくる!)ため、攻略が非常に単純なものになってしまう。(向かってくる敵を各個撃破するだけ。)

 つまり、このゲームは、とりあえず強い弓系・魔法系のユニットでパーティーを組んで、向かってくる敵を各個撃破するだけでほぼすべてのマップを攻略できてしまうんですね。もちろんマップによっては敵が高台にいて初期配置が非常に不利だったり、一度に大量の敵が攻めてきて各個撃破が間に合わなかったりとそれぞれ難しい局面はありますが、しかし基本的な相性関係と敵ユニットのアルゴリズムが変わらない以上、その場の工夫だけでなんとかクリアできてしまうような気がします。敵ユニットの中には直接攻撃系の弱いユニットも多いし、地形を利用しようともせずに突進してくるので対処は難しくない。もっとも、このゲームで敵がすべて弓&魔法ユニットで高台から一歩も動かずにひたすら弓と魔法を連打されたらやってられないと思いますが(笑)。
 そしてこれだけでも簡単なのに、

(3)トレーニングモードでいくらでも経験値を稼げる。
 という点がさらにこのゲームの難易度の低下に拍車をかけています。そもそもユニットを成長させすぎてバランスが崩れるという問題はファイアーエムブレムの時から既にあったのですが、このタクティクスオウガの場合、トレーニングという名目で無限の成長を完全に認めてしまっている点がさらに問題だと思います。
 しかも、その無限の成長を認めたうえでさらにバランスを取ろうと思ったのか、「味方のレベルに合わせて敵のレベルもあがってしまう」という本来使ってはならないバランスの調整方法を使ってしまっています。これでは一体何のためにレベルが存在するのかまったくわかりません。それどころか、敵ユニットとのレベルを合わせるためだけに退屈なトレーニングを要求されるという、本末転倒な事態さえ起こっています。

 結局のところこのゲームは、とりあえずトレーニングでユニットを成長させて最強のパーティーを作り、あとは一定の攻略パターンですべてクリアできるといっても過言ではないでしょう。今ひとつシミュレーションとしては不満が残るつくりだと思います。


 ・・・と、いろいろと文句を言ってきましたが、それでもこのゲームは抜群に面白いです。ユニットを成長させてクラスチェンジを駆使して強力なパーティーを作り、高さの概念とウェイトターンを理解してユニットを動かしていく。これだけでも十分に楽しめます。
 しかし、やはり厳密にシステムを考察すると今挙げたような不満点が残るのも事実です。「80点は確実に付くけれども100点は絶対に付かないゲーム」これがタクティクスオウガに対する偽らざる感想です。


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