<天地を喰らうII>

2005・5・14

 カプコンのファイナルファイト(FF)タイプアクションの一作品で、おそらくは同系のゲームの中で最も人気の出たゲームだと思われます。本宮ひろしの同名の三国志コミックを原作に置いた、三国志を舞台にしたアクションゲームです。これがリリースされたのは92年ですが、その後長い間多くのゲームセンターで稼動し続け、10年以上たった今でも置いてあるゲーセンはたくさんあります。この、ファイナルファイトタイプのアクションゲーム(厳密には「ベルトフロアタイプ」と言うらしい。以下「FFタイプアクション」と表記)は、カプコン90年代のアーケードゲームでは、同社の対戦格闘ゲーム(「ストII」シリーズや「ヴァンパイア」シリーズなど)と並ぶ大ヒット作となりますが、その中でもこの「天地II」の人気はずば抜けていました。特に一般層への人気が非常に高く、マニアだけでなく一般層までが幅広く楽しめたゲームだったと思います。

 このゲームは、同社のFFタイプアクションでは中期の作品で、先行のゲームを直接参考にして製作された部分が多く、オリジナリティの点では今一歩のところがあります。が、先行した名作ゲームの血を引き継いだおかげで、ゲームの完成度自体は非常に高いものがあり、同社のFFタイプアクションの集大成と言えるものです。この後もカプコンは同系のゲームを出し続け、これよりもさらに進化したレベルの高いゲームも出てくるのですが、純粋に人気の上ではこのゲームが最高でした。

 ちなみに、このゲームが「天地を喰らうII」というタイトルである以上、前作である「天地を喰らう(I)」というゲームも当然存在しますが、こちらはFFタイプのアクションではなく、横スクロールのアクションゲームです。しかし、これがただの横スクロールアクションではなく、手前・中央・奥の3ライン制を採用し、ライン移動を駆使して敵の攻撃をかわしつつ攻略していくという、非常にオリジナリティの高いゲームでした。こちらはこちらで独創性の点が高く評価されたゲームだったため、続編の「天地II」が単なるFFタイプアクションとなってしまい、オリジナリティが薄れたことが少々残念でした。しかし、大多数のプレイヤー(特に一般層)にとっては、「II」の方がはるかにとっつきやすいゲームであり、人気・知名度の点ではるかに上回っていたと思います。

 もうひとつ、同名のタイトルで、同社からファミコンでシミュレーションゲームも出ていましたが、原作が同じであるだけでゲーム内容は特に関係はありません。


・とっつきやすさと爽快感が大人気の最大の理由。
 このゲームがそこまで人気を得た理由は、なんといっても他のアクションゲームよりもはるかにとっつきやすく、手軽に爽快感が得られる点に尽きます。
 もともと、この手のゲームの元祖である「ファイナルファイト」自体が、手軽に爽快感が得られるということで大ヒットしたゲームでした。「天地を喰らうII」も、その「手軽な爽快感」の方向性をさらに推し進めたゲームだったと言えます。

 元々、黎明期のアクションゲームはどれも難しいものでした。同じカプコンのゲームでも、例えば「魔界村」などは、初心者がプレイしても一面の半分も進めないでしょう。初心者がゲームを味わう前に、いきなりゲームオーバーになってしまうのです。
 それが「ファイナルファイト」では、最初のうちはとりあえず適当にボタン連打で殴っていくだけで進めていけます。しかも、この「殴り」のアクションの爽快感が抜群で、そのために幅広く一般層のプレイヤーまでが、気軽に爽快感を求めてこのゲームをプレイしていったのです。

 そして、「天地を喰らうII」の場合、この「手軽なプレイで爽快感を得られる」方向性がさらに進み、非常にとっつきやすいゲームになっています。
 まず、序盤の難易度がかなり低い。「ファイナルファイト」では最初のうちは手軽なボタン連打でもいけますが、それでは1面のボスも倒せるかどうか怪しい。仮に倒せても2面の最初でゲームオーバーでしょう。
 しかし、「天地II」では、序盤から難易度がかなり低いため、適当なプレイでも1面のボスはごり押しで倒せ、2面までは誰でも行けます。運がよければ2面のボスくらいまでは行けるかもしれません。何も知らない初心者でもある程度は遊ばせてくれるのです。
 そして、ボタン連打の連続技のアクションがとにかく爽快で、この爽快感を求めてプレイを続ける人をたくさんひきつけました。このFFタイプアクションは、初心者や一般層のプレイヤーが連コインして延々とプレイする姿をよく見かけましたが、この「天地II」はその最たるゲームだったと言えるでしょう。
 個人的には、このように連コインでひたすらコンティニューを繰り返すプレイは好きではないのですが、しかしこのようなプレイスタイルが確立されることで、多くのプレイヤーがゲームを楽しめたのも、また事実です。


・真剣にクリアを目指すなら、ストイックなプレイが必要。
 しかし、このゲームをやりこみ、真剣に1コインでのクリアを目指すならば、かなり慎重でテクニカルなプレイが必要です。この当時のカプコンのゲームは、格闘ゲームの「ストII」にも代表されるように「力強い」「男らしい」イメージのゲームが多く、カプコンのゲームに力強さを感じてプレイする人は多いものでした。しかし実際には、カプコンのゲームは非常にテクニカルな本格派のゲームであり、見た目とは正反対の「緻密で繊細なプレイ」が要求されます。

 この手のFFタイプアクションでは、大勢の敵と闘うシーンが非常に多く、いかに複数の敵に対処するかが最大のポイントとなります。特に、左右から同時に攻められるのが一番怖いため、何とかして「敵を一方向にまとめる」必要があります。
 「天地を喰らうII」では、この「敵をまとめる」ための投げ技が非常に有効です。特に、通常の殴り攻撃の連続技から強引に投げ技に移行する「連続技投げ」の使い勝手がよく、これをマスターすることがクリアへの第一歩です。連続技投げ自体は「ファイナルファイト」にもありましたが、「天地II」の連続技投げは、敵を自在に左右に投げ分けることが出来るため、使い勝手はすこぶるよく、比較的簡単に敵を一方向にまとめることが出来ます。さらには、敵に直接近づいて行なう、通常の「つかみ投げ」も有効なので、とにかくこの2種類の投げを駆使して敵を一方向にまとめるプレイに終始することになります。大勢のザコ敵が一度に出てくる「ザコラッシュ」のシーンでは、いかに手際よく投げを駆使してザコ敵をまとめるかが最大のポイントと言えます。

 ボス戦でも基本は同じです。「天地II」のボスは、行動パターンが単純であり、他のFFタイプアクションのように手ごわい動きをするボスがいません。確かにボスの攻撃力や体力は非常に高いのですが、肝心の行動パターンが読みやすく、簡単にあしらえるので、一対一の闘いならば大して手ごわい敵ではありません。
 むしろ、問題なのはボスと同時に出現するザコ敵です。ボスそのものよりも、ボスのお供として同時に出現するザコをいかにあしらうかが最大のポイントなのです。これは、「ファイナルファイト」以来のFFタイプアクションでは毎回見られるポイントなのですが、「天地II」では、ザコの対処法がプレイに占める割合が特に高くなっています。ある意味「ボスが弱い分、一緒に出るザコを強くすることでバランスを取っているゲーム」だと言えるかもしれません。
 そして、このボスと同時に出現するザコに対しても、投げによるまとめプレイが有効です。この場合、ボスとザコを一方向にまとめるより、ボスとザコを別方向に離しておいて、効率よくボスのみにダメージを与える方が安全かつ素早くボスを倒せるシーンが多い。さらには、ボス戦でザコを全滅させてしまうと、新たに複数のザコが同時に補充されてしまうため、あえて「ザコを1〜2体だけ残しておいて、ボスに集中的に攻撃を加える」という戦術も有効です。とにかく「一緒に出てくるザコにいかに対処するか」という点が、「天地II」のボス戦では最大のポイントなのです。


・FFタイプアクションの中でも比較的簡単なゲームだ。
 そして、上記のような特徴から、「天地II」は、数あるFFタイプアクションの中でも、比較的簡単なゲームであると言えます。
 とにかく「連続技投げ」の性能が非常によく、簡単にザコを一方向にまとめることが出来るため、厳密なパターンを考えるシーンが少ないのです。とにかく、連続技投げの使い方さえ覚えれば、かなり多くのシーンを確実に乗り切ることが可能です。もちろん、敵の種類ごとに対処法を覚える必要はありますし、あまりに多くの敵が登場するシーンではやはり難しいところもあります。しかし、基本となるアクションの性能がよい分、決して個々のパターン作りは難しくない。 他のFFタイプアクションに比べて、アドリブで抜けられるシーンが多いのです。

 ボス戦も比較的簡単です。ボス自体のアルゴリズムが大したことがないため、とにかくザコの対処だけしっかりと行なっておけばよい。他のFFタイプアクションでは、異常にアルゴリズムが凶悪で、クリアへの「壁」となるボスが一人や二人は必ずいるものなのですが(「ファイナルファイト」だとソドムやアビゲイルあたり)、「天地II」ではそんなボスはいないため、非常に気が楽です(笑)。ボスよりもザコの対処の方が重要ということは、ある意味ではボス戦もザコ戦の延長とも言えるわけで、ザコ戦同様のパターン作りが可能なのです。

(余談その1)
 以上のように、このゲームでは「連続技投げ」が最重要なわけですが、この技はインストカードに記載されていません。よって、何も知らない初心者や一般層の場合、この技を知らずにゲームを進め、簡単に死んでいくケースが圧倒的です。逆に、ゲームをよく知っている熟練者やマニアならば、当然連続技投げをばんばん使ってゲームを進めているわけで、このゲームの場合、他の人のプレイを後ろで見ているだけで、その人が何も知らない初心者か、ゲームをよく知っている熟練者か、それが一発で分かってしまいます。

(余談その2)
 このゲームの使用キャラクターは、三国志の英雄である関羽・張飛・趙雲・黄忠・魏延の5人なのですが、このうち「黄忠」だけは連続技投げが使えません。代わりに、遠距離の敵を攻撃できる弓矢攻撃が使えるのですが、この性能がいまいちで、非常に使いにくいキャラクターとなっています。そのため、ゲームの切り札とも言える「連続技投げ」を使えない、よりテクニカルなプレイが求められる存在として、非常にマニアックな、プレイしがいのあるキャラクターと言えました。


・多彩なアクションがさらなる魅力。
 しかし、比較的難易度が簡単だからと言って、このゲームがつまらないわけではありません。
 確かに、手堅くクリアだけを目指すならば、連続技投げを中心に一部の使いやすい技だけでもクリアできますが、実際にはこのゲームにはさらに多彩なアクションが用意されています。それらの技をいろいろと試していくのもまた楽しいのです。
 まず、(通常の)つかみからの投げ技が多彩で、キャラクターによっては使い分けが重要だったりしますし、さらには大ダメージを与える必殺技(コマンド入力による特殊技)もあります。そして、「天地II」と言えばやはり「馬」。決して使い勝手がいいとは言えないものの、馬に乗ったときのアクションは非常に多彩で、爽快感があり、これはこれで非常に楽しいものでした。もっとも、あまりに使い勝手が悪すぎて、「馬に乗ると逆に不利になる」という有様で、まともな攻略にはほとんど使えないのが非常に残念でありました。
 そして、これらのアクションは、全体的に得点効率が高いものが多く(特に「必殺技」と「馬」)、ハイスコアプレイには必須と言えるものでした。ハイスコアを目指すプレイならば、また違った面白さが出てくるのです。


・前期FFタイプアクションの集大成。
 そして、これらの多彩なアクションは、その多くが、過去のFFタイプアクションから改良されて採用されたもので、その意味では、このゲームは「FFタイプアクションの集大成」とも言える作品になっています。
 そのために、アクションの自由度が非常に高く、遊びがいがあり、さらには比較的難易度が低く万人向けで、初心者でもとっつきやすく爽快感も抜群と、実に優秀なゲームに仕上がっており、マニアから初心者まで幅広いプレイヤー層に絶大な人気を集めました。この当時(90年代前半)のゲームセンターでは、あの「ストII」に代表される対戦格闘ゲームに並んで、この「FFタイプアクション」が大きな人気を獲得していましたが、この「天地II」はその中でも最大の成功例だと思われます。

 そして、このゲームがあまりに成功してしまったため、以後しばらくの間これを越える同系のゲームが現れず、それどころか、二番煎じとも言える質の劣ったゲームが他社から頻発するようになり、ジャンルの質が伸び悩むようになります。そして、他社のみならず、カプコン自体も、しばらくは「天地II」を越えるゲームを出すことが出来ず、この壁を打破するのに非常に苦労することになります。最終的には、かなりの間をおいてから、ようやくこの「天地II」の影響を脱した新機軸のゲームを出すことに成功しますが、それはまた別のページで話すことにしましょう。


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