<ヴァルキリープロファイル:個人的な思い出>

2006・6・18

 いよいよ今月(2006年6月)の22日に、あの「ヴァルキリープロファイル」の続編がリリースされることになりました。わたしは、この「ヴァルキリープロファイル」に関しては、今までのゲームの中でもひどくはまったゲームのひとつであり、もう発売されて5年以上経ったにもかかわらず、いまだにその印象は強く残っています。そこで、今回は、続編発売に先駆けて、この偉大なる前作についての思い出をねちねちと語ってみようと思います。なお、これは単なる個人的な思い入れであって、客観的なレビューではありません。レビューに関してはこちらを参照してください。

 ヴァルキリープロファイル

 さて、そもそもこのゲームは、わたしが個人的に評価しているだけでなく、一般的な評価も非常に高いものです。製作元は「トライエース」というゲーム開発会社ですが、そのトライエースの代表作で最大のヒット作である「スターオーシャン」シリーズをも上回る評価を得ており、おそらくはトライエースのゲームの中でもトップランクに位置する作品でしょう。
 そして、発売元のエニックス(現スクエニ)のゲームの中でも、ほぼトップクラスの評価を得ているかもしれません。エニックス(スクエニ)は、数多くのRPGのヒット作を出してきた「RPGメーカー」ですが、その錚々たる作品群の中でも一目置かれている存在です。
 いや、もしかすると、それを通り越して、プレイステーションの全RPGの中でも、ほぼ最高の評価を得ている感すらあります。しかも、通例ヒットしたRPGの続編が、数年後に製作されることが多い中で、このゲームの続編は長い間まったく出てくる気配がなかったため、時が経つにつれて、そのただ一作の存在感がさらに高まり、今では半ば伝説化された名作となっている感があります。もちろん、それだけの扱いをされているのも、ゲーム自体が非常に素晴らしい出来だったからに他なりません。


・秀逸だったゲームシステム。
 「ヴァルキリープロファイル」は、ゲーム中の様々な要素が実に出来ており、その魅力は多岐に渡っているのですが、あえてひとつに絞るとすれば、それはやはり独創的なゲームシステムに集約されるのではないかと思います。
 特に、神界転送という秀逸なシステムと、そして最高に楽しかった戦闘システムは、数あるRPGのシステムの中でも異彩を放っており、これだけを取り出しても傑作であるといって差し支えないでしょう。

 「神界転送」とは、戦闘で育成したキャラクターを神の世界へと送り届ける行為であり、これが主人公たるヴァルキリーの使命となっています。このゲームでは、当面の戦闘で使用するキャラクターだけでなく、転送用のキャラクターまで同時に育てる必要があり、いわば「人材育成ゲーム」の感があります。この人材を選別・育成する戦略性が秀逸で、しかも、そのキャラクターを育成する場である戦闘が非常に楽しい。元々、人材をひたすら育成する経験値稼ぎの戦闘を延々と重ねるゲームだけに、肝心の戦闘が面白くなければ到底やってられないわけですが、このゲームの戦闘はこれ以上ないほどに楽しいため、まったく経験値稼ぎが苦にならず、これには文句のつけどころがありません。

 そして、特筆すべきは、この「神界転送」と「戦闘」の繰り返しだけで、ひとつのゲームとして成立していることです。そのため、このゲームにはストーリーらしいストーリーは非常に希薄なのですが、システムをこなすことで自然とストーリーが出来上がるともも言える内容になっているだけに、まったく問題ありません。


 そして、神界転送や戦闘システムだけでなく、そもそもゲームの基本となるシステムも非常に斬新なものです。なんといってもサイドビューで横スクロールのRPGなど他に聞いたこともありません。一体どういう思いつきで、こんな画面構成のRPGを作ろうとしたのか不思議ですが、それを実際に作ってしまうところも凄い。なんでも、最初にこのゲームを企画会議にかけたときには、エニックスのお偉いさんから、

 「は? 横スクロールのRPG? なにそれ?」

と聞かれたらしいんですが(笑)、結局その企画を通してしまった強気な精神にも恐れ入ります。


・システムだけではない。演出面が素晴らしい。
 しかし、このゲームは決してシステムだけが優秀なのではありません。それ以外の各要素もことごとく良く出来ていて、総合的な完成度も非常に高いものがあるのです(そうでなければここまで高い評価にはなりません)。中でも、ビジュアルやサウンド等の演出面が素晴らしい。

 まず、このゲームはグラフィックは本当にすごい。このゲーム、PS時代でも後期、1999年末に発売されたゲームなのですが、にもかかわらず2Dのドット絵なのです。そして、そのドット絵の書き込みがすさまじい。特に、壮大な建物の表現に目を見張るものがあり、その精緻なグラフィックは美しいの一言に尽きます。3D全盛時代の作品の中において、このゲームは見た目からして際立った存在感がありました。

 実際、これ以前に出ていたトライエースのRPG「スターオーシャン セカンドストーリー」では、すでにポリゴンを採用していたのですが、その後発として出た「ヴァルキリープロファイル」は、まるで先祖帰りしたかのように2Dのドット絵であり、その点でも印象深いものがありました。そして、2Dでありながらポリゴンのグラフィックと比べてもまったく劣るところがなく、むしろこの「ヴァルキリープロファイル」の2Dグラフィックの方が好きだというプレイヤーも多数生まれました。PS後期のポリゴン全盛期にさしかかろうかという時代において、このゲームだけは異彩を放っていた感があります。

 そして、やはり音楽ですね。このゲームの音楽を担当しているのは、他のトライエースゲームでもおなじみの桜庭統(さくらばもとい)氏で、彼の音楽はもともと評価が高いのですが、この「ヴァルキリープロファイル」の音楽に関しては、その中でも特に突出した出来栄えではないでしょうか。スターオーシャンシリーズよりもこっちの方が明らかに上ではないかと思います。プログレ調と言うんでしょうか、あんまり音楽には詳しくないんですが、とにかく荘厳さとテンポのよさが両立している聴きごたえのある曲が揃っています。戦闘シーンの音楽が特に評価が高く、特に中ボス戦の曲である「Confidence in the domination」あたりは屈指の名曲です。通常戦闘の曲(「未確認神闘シンドローム」)も良いですね。ダンジョンでもいい曲が揃っていて、中でも「An illusion of the brain stem」や「否定的な無意識下へ」などは個人的にかなり好きです。そして、フィールド(空)の音楽である「天空の扉」は、このゲームで最も頻繁に聞く曲でありながら、最も印象深い名曲です。このゲームの場合、戦闘にダンジョン、フィールドと、プレイ中に最も聞く機会の多いものに名曲が多いのが幸いです。


・ストーリーやキャラクターも大人気。
 そして、日本のRPGではかなり重要な要素である、ストーリーやキャラクターでもかなりの異色さを発揮していました。
 もともとストーリーが非常に希薄なゲームではあるのですが、各キャラクターごとの緻密に語られるエピソードと、主人公のヴァルキリーの運命にまつわるストーリーについてはかなり詳細なイベントが用意されており、他のRPGでは見られない暗く悲劇的なストーリーに強く惹かれるものがありました。

 そして、キャラクターがまた良かった。このゲームのキャラクターデザインを手がけたのは、アニメーターの吉成鋼・吉成曜両氏なのですが、彼らの描く絵は、日本のRPGで一般的なライトイメージのキャラクターではなく、随分と描き込まれた絵画調の、いわゆる「濃い」絵柄で、到底売れ線とは思えなかったため、当初はこれがプレイヤーに受けるのか危惧されたのですが、ふたを開けてみればこれが大人気でした。もっとも、ゲーム中のグラフィックはデフォルメされた2Dのドット絵だったのですが、こちらの方も大人気。神界転送というシステムの関係もあって、全部で25人ものプレイヤーキャラクターが登場するのですが、その中から人気キャラクターがたくさん生まれました。主人公のヴァルキリー(レナス)はもちろん、ヴァルキリーの上司とも言える女神であるフレイ、豪快無双の戦士であるアリューゼ、きままな姫君であるジェラード、ヴァルキリーと関係の深い悲劇の青年・ルシオ、勝気な魔術師であるメルティーナあたりが特に人気が高かった。かと思えば、一方でジェイクリーナスのような渋い親父キャラに人気が出たのも印象深い(笑)。

 しかし、何といっても、異常な人気を得たのが悪の(?)錬金術師であるレザード・ヴァレスです。この、明らかに背徳的な性格で、完全に悪人とも言えるようなキャラクターがメインとして出てくる(しかも、クリア後の隠しダンジョンでは仲間にもなる)というのは本当に異色でした。このようなキャラクターは、他のRPGではほとんど見られないもので、そのキャラクター性はのちに長く語り継がれました。ボイスが子安武人で、その特徴的な声にも人気が集まりました。魔法の呪文のひとつである「クール・ダンセル」を「クゥゥル・ダンセル」(巻き舌)という口調でしゃべるのがやたら耳に残ります(笑)。


・当時のエニックスは絶頂期ではなかったか。
 このように、この「ヴァルキリープロファイル」、素晴らしいゲームシステムだけでなく、グラフィックや音楽などの演出面や、ストーリーやキャラクターに至るまでなどあらゆる点で良く出来ていて、まさに数あるPSソフトの中でも屈指の完成度でした。今でも名作として伝わる理由が分かるというものです。

 そして、この「ヴァルキリープロファイル」が発売された1999年末という時期は、発売したエニックスという会社も絶頂期だったのではないかと思うのです。当時は、特にトライエース発のRPGの人気が高く、このひとつ前に発売された「スターオーシャン セカンドストーリー」もまた大人気で、とにかく熱心なファンが多かった印象があります。
 そして、このサイトで主に採り上げている、コミック出版事業の方面においても、この当時が最も充実していました。中心雑誌であるガンガンを筆頭に、すべての雑誌に熱心なファンが付き、さらにはエニックスのマンガが全体的に近いイメージを持っていることで、雑誌を越えてエニックスの作品全体にはまるという人も多かった時代でした。コミックにおいても絶頂期であったと言えるでしょう。
 そして、このエニックスのゲームとコミック、その両方にはまったという人もこの当時は多かった。特に、少年ガンガンで「スターオーシャン セカンドストーリー」が連載されていた関係で、このトライエースのゲームとガンガンと、その双方ではまっていたファンが多かったのです。コミック版の「スターオーシャン セカンドストーリー」も大人気で、ゲームとの相乗効果が効いていました。しかも、「ヴァルキリープロファイル」発売直後に、早々とガンガンでコミック化連載も始まったのですが、こちらも連載開始時の印象は非常によく、ゲームファンの間でもかなりの評判を呼びました。当時は、ネットの各所の掲示板を見ても、例えばゲーム関連のサイトの掲示板でガンガンの話題が頻繁に出たり、コミック関連のサイトでもトライエースのゲームをプレイしている人が多数見られ、ゲームの話で盛り上がるなど、双方の親密なつながりを感じることができました。この頃は、ゲームとコミックの双方が理想的な関係にあったと言えそうです。

 しかし、このまさに直後において、この絶頂期のコミックが、中心雑誌であるガンガンの路線変更をきっかけに大きくその質を落とし、あげくの果てにお家騒動で一部編集者と多くのマンガ家が離脱する大混乱まで巻き起こし、当時の熱心のファンもほとんどが去ってしまうとは、一体誰が想像したでしょうか? そして、「ヴァルキリープロファイル」のコミック化連載も、おそらくは路線変更のあおりを直接受けて短期間での打ち切り仕様で終了してしまい、「スターオーシャン セカンドストーリー」の方も非常に中途半端なところで最終回となってしまうという、なんとも後味の悪い顛末を迎えてしまったのです。当時のエニックスのゲーム・マンガにはまっていた熱心なファンの方々は、この状況をどう見ていたのか・・・それを思うと、なんともやるせないものがあります。

 そして、エニックスという会社自体も、のちにスクウェアと合併するという、当時としては考えられないような変化が起こり、かつてのエニックスとは大幅に変わってしまったのです。もっとも、合併後も、ゲームに関しては割とコンスタントにやっているとは思いますが、多かれ少なかれ大企業的なビジネス優先指向が強くなったことも事実で、もうこの「ヴァルキリープロファイル」のような斬新なゲームは生まれにくい状況になっていると感じます。もはや、この「ヴァルキリープロファイル」は、過去の最もエニックスが輝いていた時代を象徴する遺作にして、もう二度と出ることのない奇跡の傑作だったのかもしれません。


 ところで、非常にどうでもいい話ですが、この「ヴァルキリープロファイル」の主人公ヴァルキリー(レナス)が、人間の街に入る時には人間の姿をとるのですが、この時の2Dグラフィックが、当時のガンガンで大きな人気を誇っていた「まもって守護月天!」のヒロイン・シャオリンになんとなく似てます。というか、ぱっと見た印象がまさにそれでした。特に髪型と髪の色が似ているのです。ネットでも同じことを思った人が何人かいるようで、同じような意見を何度か目にしたことがあります。ガンガン全盛期を彷彿とさせるエピソードでした。


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