<ファンタスティックフォーチュン2☆☆☆(トリプルスター)>

2005・7・23

 女性向けゲームの育成シミュレーション+アドベンチャーと言った感じのゲームです。2年前に発売された「ファンタスティックフォーチュン2(略称:ファンタ2)」のリメイク改良版です。以下、元となったゲームの方を「ファンタ2」、リメイクされたこちらのゲームの方を「トリプルスター」と表記します。

 元々、女性向けのゲームも試しに一度やってみたいと前から思っていまして、「ファンタ2」もいずれやりたいとは思っていたのですが、「システムが非常に悪く、文章のスキップも読み返しもできない」と聞いてしまったので、今時そんな面倒なゲームは到底やる気にならず、長い間手を出せずにいました。しかし、今になってシステムを改良したリメイク版である「トリプルスター」が発売されると聞いて、いよいよ今度こそ手を出してみたわけです。


・女性向けゲームならではの特徴。
 「ファンタ2」はオーソドックスなストーリー中心のノベルゲーム(+育成の要素あり)で、その点では男性向けのノベルゲーム、いわゆるギャルゲー(エロゲー)とほど近いタイプのゲームと言えます。が、同じノベルゲームでも、女性向けと男性向けでは色々と異なる特徴が見られるのが面白いところです。単に主人公と攻略対象キャラクターの性別が異なるだけではありません。

 まず、第一の特徴として、このゲームが異世界ものであることがあります。元々、この手の女性向けゲームの元祖であるコーエーの「アンジェリーク」が異世界ものであったことが発端なのか、とにかく女性向けゲームには、ファンタジー的な異世界を舞台にしたり、あるいは一応現実の世界でも、現代とは異なる過去や未来の時代が舞台だったり(例:「遥かなる時空の中で)」)するゲームが多い。もちろん現代を舞台にした学園ものなどもありますが(例:「金色のコルダ」)、それと同じくらい異世界ものが多い。
 実は、この点が男性向けのギャルゲーとはなぜか異なる点であり、ギャルゲーの方では現代の日本を舞台にしたもの(それも学園もの)が圧倒的に多い。もちろんファンタジーもののゲームもいくらでもありますが、全体の中では明らかに少数派。なぜ男性向けと女性向けで設定の傾向がここまで異なるのか、非常に謎です。

 次に、このゲームが育成シミュレーションの要素があることも大きな違いです。この手の女性向けゲームでは、とにかく主人公の育成(パラメータ上げ)の要素があるゲームがかなり多い。育成だけでなく、RPG的な戦闘の要素があるゲームもあります(「遥かなる時空の中で」)。つまり、単なる選択肢つきのノベルゲームではなく、なんらかのゲーム的なシステムが入っているものが多いのです。
 これがまた今のギャルゲーとは大きく異なる点で、今のギャルゲー(エロゲー)のほとんどが文章と選択肢だけの完全なビジュアルノベルと化しているのとは対照的です。もちろん、数多いエロゲーの中にはRPGやシミュレーションとして遊べるものもありますが、全体の中では圧倒的少数派です。
 ギャルゲーでも一昔前のゲームでは、「ときメモ」のような育成の要素が入ったゲームが主流だったわけですが、女性向けゲームでは、いまだにそのような一昔前から見られるゲームシステムが健在なのです。「女性はゲームが苦手な人が多い」とよく言われますが、ことこの手のノベルゲームに関しては、女性向けゲームの方がゲーム的な部分をよく残していて、男性向けのギャルゲーの方がゲーム性を完全に放棄している。このあたりが非常に不思議なところです。


・まともな攻略はほぼ不可能?
 しかし、ゲーム性を残しているとはいえ、多くの女性向けゲームでは、女性にゲームが苦手な人が多いことを考慮しているのか、難易度はかなり低く抑えられています。が、この「ファンタ2」および「トリプルスター」はこの点がまるで違います。「女性向けとは思えないほど難易度が高い」と言われているようですが、男性向けでもこれほど難易度が高いゲームはほとんど見当たらないと思います。
 もともと、リメイク前の「ファンタ2」がありえないほど難しかったらしく、それもまたわたしが手を出さなかった理由のひとつです。そして、リメイク版である「トリプルスター」ではそのあたりが改良されていると期待して買ったのですが、しかし相変わらず難易度は理不尽に高いままでした。

 このゲームは、単に育成でパラメータを上げまくり、お目当てのキャラクターを追い掛け回していればエンディングまで辿り着けるようなゲームではありません。今のギャルゲーでは、数少ない選択肢を選んで一定のルートに入れば後はエンディングまで一直線ですが、もちろんそのようなゲームでもない。
 エンディングまである一定のルートが存在する点は同じです。しかし、そのルートを辿ることが非常に難しい。このゲームは、エンディングまでのルートが必須イベントの繰り返しでできている点が最大の問題です。つまり、

 必須イベント → 必須イベント → 必須イベント → (×α) → エンディング

という仕組みです。もちろん、これらのイベントはすべて必須ですから、ひとつでも逃すとその時点でアウトです(笑)。しかも、この必須イベントが起こる条件がひどく難解で、普通にプレイしてすべて見つけ出すのは限りなく不可能に近い。そして、これこそがこのゲームの攻略の最大の問題で、何回やってもバッドエンドにしか辿り着けないのはそのためです。ひとりだけでまともな攻略をするのはほぼ不可能でしょう。
 そして、困ったことにこのゲームは攻略本も出ていないので、そうなるともう後はネットでの攻略頼みとなります。わたしなどは、最初の内は攻略の見当もつかず、ゲームの公式サイトの攻略と、複数の個人サイトの攻略を見つけ出して、それらと首っ引きになってそれでも数ヵ月かけてようやく全クリアしました。この手のゲームでこんなに苦労したのは初めてです。これでも元の「ファンタ2」よりは簡単になっているというのだから冗談ではありません。

 個人的には、今の時代にこのような難易度の高い挑戦的なゲームは評価したいところですが、ちょっとこのゲームに関しては理不尽に過ぎるところがありました。次に述べるように、ストーリーに関してはいいと思えるゲームだけに残念なところです。


・異色のストーリーとキャラクター・演出。
 そして、異色なのは難易度だけではありません。肝心のストーリー自体も興味深いものがありました。
 まず、女性向けゲームでありながら、意外にも恋愛要素が薄い点があります。オープニングこそ女性向きの華やかな印象なのですが、実際に本編を始めてみると、ストーリー自体に恋愛の要素は少なく、むしろまったく別のストーリーの印象を受けました。もっとも、このような「必ずしも恋愛がメインの話ではない」作品はギャルゲーでも珍しくはなく、例えば、かの有名な「Ever17」などは、SF的な謎解きが主体で、恋愛要素はむしろおまけのような印象があります。こういったタイプの作品が女性向けゲームで見られてもおかしくはありませんが・・・。

 しかし、それ以上に面白いと思ったのは、このゲームのストーリーが、他の多くのノベルゲームではほとんど見られないタイプの話だったことです。具体的にどんな話かと言うと、これは必ずしもストーリーの展開を楽しむだけの話ではなく、むしろ、「登場人物の言動を通じて、人としての考え方や生き方、人生の指針となる教訓を得る」ことを主眼にした話なのです。分かりやすく言えば「ためになる話」といったところです。そのためか、キャラクターが会話中に長い語りモードに入り、延々と自己の思想を語ったりするわけで、その点でも異色です。このゲームの企画・シナリオ担当はゆうきあずさという女性デザイナーさんで、ほとんどのテキストを一人で書いているらしいですが、さしずめこのゲームは「ゲームデザイナーが語る人生論」といった趣きもあります。
 さらに、ストーリーに政治的な要素が極めて強いのも特徴です。一見して華やかな雰囲気に見えるファンタジーの異世界なんですが、その裏で極めて現実的なところがあり、個々のキャラクターも決して理想的な人物ばかりではなく、むしろ裏に思惑を抱えている者の方が多い(ある意味では悪人とも言えます)。一見して女性向けの華やかな舞台に見えて、プレイを進めるにつれてどんどん政治的な内実が暴露されていくという、非常に困ったゲームなのです(笑)。正直、このゲームのストーリーはあまり女性向けとは感じられません。

 そして、このようなタイプのストーリーは、他のノベルゲームでは見られないものだと思われます。男性向けのギャルゲーでこのようなストーリーは見たことがないですし、仮にそんなものを企画して作ったとしても人気が出るとは思えません。というか、出てくる女性キャラが延々と自己の思想を語るようなゲームを君はやりたいと思うか? 政治の要素が強いギャルゲーというのもあまり聞いたことがないですね。この手のゲームでは非常に珍しいタイプの話だと思います。

 キャラクターたちがおおむね真っ当な人物だというのも評価が高いところ(一部例外はある)。というか、ギャルゲーの方でよく見られる変な個性を持ったキャラクターが、こんな真面目な話をしても説得力はないわけで、ある意味ではこれは当然でしょう。全体的に、他のゲームのストーリーではあまり見られない「手堅い」「真面目な」作りになっていると言えます。もっとも、その分地味な話である点は否定できず、ストーリーの展開でどんどん引っ張っていくような作品ではないため、人によって好みが割れるでしょう。

 ゲームを彩るグラフィックやサウンドも良い。このゲームのCG・キャラクターデザインは、企画シナリオ担当と同じくゆうきあずささんが担当していますが、一人でシナリオと絵と両方やっているというのはかなり珍しいですね。彼女のCGは絵によって少々完成度にばらつきがあるような気がしますが、全体的にはおおむねレベルが高い。ついでに言えば、彼女の絵は中性的で男性でも抵抗が少ない点がポイント。なにしろ彼女は女性向けゲームだけでなく、美少女系の方の仕事もやっているという珍しい人なので、女性主人公などはむしろ非常に萌え(笑)。ていうか、女性キャラを攻略するギャルゲーより、むしろ女性が主人公であるゲームの方が萌えるんじゃないかとか最近思うようになってきました。「アカイイト」の例もあるし。
 サウンドも派手さはないが良作。かなり曲数が多いのも良い点です。


・システムが致命的に劣る。
 と、このように肝心のストーリーや演出については評価できるゲームなのですが、問題なのはゲームのシステム(インターフェイス)関連です。これが非常によくない。これでも「トリプルスター」はリメイク改良版なわけで、前にくらべればマシになっているはずなのですが、それでも他のノベルゲームに比べれば激しく劣ります。一応スキップ(文章飛ばし)とバックログ(読み返し)という、最低限必要なふたつのシステムだけは備えていますが、それ以外の細かいシステムで劣っており、快適とは言いがたいものです。
 そして、なんといってもセーブ・ロードが長すぎです。こんなに頻繁にロードが入ったのではやっていけません。ポリゴンも使っていない昔ながらの2Dノベルゲームなのに、一体何をロードしているのか。あまりに頻繁にロードが入るため、プレイに相当な忍耐力が必要です。
 前述の難易度の厳しさに加えて、このシステムの悪さが重なって、ゲームを進めるのにひどく苦労し、肝心のストーリーが素直に楽しめない環境にあるのがひどく問題です。


・良い部分と悪い部分がはっきりしているのが残念。
 このように、このゲームは良い部分(ストーリー・演出)と悪い部分(難易度・インターフェイス)がはっきりしているのが特徴で、そのために素直に評価しずらいゲームでもあります。個人的には、今の時代に高い難易度でやりがいがある点は評価したいところなんですが、さすがにちょっとこの難易度は理不尽すぎます。システムも今のノベルゲームの中ではかなり劣りますし、2年もかけてリメイクしてこれではという思いもあります。他にないタイプのストーリーと、ゲーム的な攻略を必要とする点は非常によいと思うんですが(攻略がうまくいっているときは楽しいんだけどねえ)、それ以上にゲームをプレイしていてつらい点が多いのは悔やまれますね。悪いゲームではないものの、プレイするには少々の覚悟が必要なゲームです。


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